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キャラクター詳細 — 未来にキスを

主人公・ヒロイン4名・主要登場人物の文芸的分析。各キャラの真相・エンド別顛末を含む完全解説。▼ネタバレ詳細 はネタバレを含みます。

主人公
笹本康介 ささもと こうすけ
主人公
読みささもと こうすけ
立場主人公
所属高校2年生
一人称「俺」
高校2年生 一人称「俺」 ツッコミ型 居候 ボイスなし 名前変更可

両親が「アディオス」と言い残して南米へ行ったきり戻らないため、叔母夫婦(霞の両親)の家に去年から居候している高校2年生。霞とは同じ屋根の下に住む同級生・同クラスメイトでもある。

地の文では没個性的に書かれ、外見描写は極端に少ない。中谷から「君みたいな顔」を「寝起きのアザラシ」と例えられる程度。霞・式子・椎奈・悠歌・彩子の4人+αに対して横並びで配置される立ち位置。

性格はちょっとシニカルで口が悪いが、根は面倒見が良い。霞のために朝食を作り洗濯し掃除する。「結局、労働するのはいつも俺になる」と独白しながら、霞には「鳥頭」「いやらしい子」と容赦ない口撃を入れる。一方で式子の哲学的議論には対等に応酬し、中谷の意味不明な台詞には呆れつつも返答する。

本作の康介は、典型的な「中立で受動的なエロゲ主人公」とは異なる。終盤、各ヒロインが抱える「言葉にできない違和感」「世界への絶望」を、最終的に言語化して救済する立場にある。それも、「俺もどっちかというと鈍くて、悠歌の気持ち、実感としては理解できないけどな」と言い切った上で、「実感できないからこそ救える」という構造を取る。

霞ルートでは「お兄ちゃん」概念を引き受ける受け皿として、式子ルートでは「現実の残骸でも、そこが居場所だ」と返す肯定者として、椎奈ルートでは彩子から「自分で動いてる。何にも支配されてない」「奇跡的なくらい」と評される自由の体現者として、悠歌ルートでは「目を閉じればいい」「キスは世界を閉じるための儀式だ」と告げる啓示者として——4ヒロインそれぞれに対し、別々のアプローチでテーゼを返す役を担う。

霞ルート終盤では「俺たちはもう、新しい人になっている」「存在してるってこと自体が幸せだ」「俺たちは平面的な感じがする……絵に描いたみたいって言うか、2次元的っていうか……そんな、存在してないみたいな存在だからこそ、幸せなんだろうな」と、ほぼ作者の主題そのものを口にする。「鈍さ」「全部肯定する力」「ぼうっとしてるだけで人を変える力」が、本作の康介に与えられた特権的な属性である。

共通ルート前半の脱力した日常から、後半・各ルートでは一気に観念的なモノローガーへと色味を変える内省家。「特別」「奇跡」「断絶」「希望」というキーワードを終盤で語り出す。

攻略可能ヒロイン
飛鳥井霞 あすかい かすみ
メインヒロイン
飛鳥井霞
読みあすかい かすみ
立場主人公の従妹・メインヒロイン
所属高校2年生・同クラス
従妹・同居・同級生 一人称「ボク」 「お兄ちゃん」呼び 朝弱い 料理音痴 擬人化癖 NEW TESTAMENT

康介の従妹で、同じ高校の同じクラス。自分を「ボク」、康介を「お兄ちゃん」と呼ぶ。康介の方がちょっとだけ早く生まれているという理屈で「お兄ちゃん」呼びを正当化しているが、本人いわく「呼びたいから呼んでいる」だけ。

朝に弱い。岡崎さん(おもちゃのピコピコハンマー)で叩かなければ起きない。岡崎さんのほかにも身の回りの物に「山倉さん」「有田さん」「呂さん」「加藤さん」「西本さん」など、よく判らない名前をつけている擬人化癖。料理音痴で、冷蔵庫いっぱいのハンバーグを買い込み、トースト作っただけでキッチンを散乱させる。それでも諦めずに作り続ける向上心はあり、最終的に味噌汁を作れるようになる。

口癖「はみゃー」「はみゅみゅ」「むーっ」「お兄ちゃんの判らず屋ー」「えへへー」。康介には「えっち」「いやらしい子」と言われると怒るが、最終的に受け入れる素直さがある。中谷のサーフボードを「しゃもじ」だと言い張る独特の感性は、椎奈にも伝染している。

物語冒頭、両親不在の夜、霞は同じ布団に潜り込んできて「お兄ちゃん、ボクのこと、奴隷にして?」と告げる。翌日昼の説明も「ボクね……お兄ちゃんのものになりたいの」「だからね、ボク、お兄ちゃんの奴隷になりたいの」「ボクに……その……えっちなこと、して?」と、本人も意味を正確に把握していない。

霞ルート終盤、叔父側の親戚の少女・飛鳥井慧子が短期滞在に来て、霞に告げる。

「霞ちゃんはお兄ちゃんという個人が好きなんじゃなくて、『お兄ちゃん』っていう概念が好きなんだよ」「元々霞ちゃんの中に『お兄ちゃん』っていう概念が用意されてて、そこにお兄ちゃんという素材が現れて、うまくはまったんだよ」「霞ちゃんが好きなのは、お兄ちゃんそのものじゃなくて、霞ちゃんの心の中の『お兄ちゃん』なんだよ」

これは作品全体のテーゼを担う台詞で、霞は「概念しか見ない愛」を持っているからこそ、新しい時代の人類の希望の体現者である、という構造になっている。

NEW TESTAMENT(新約)では、康介は霞の犬用首輪を外し、翼を持つ蛇のリングを贈る。「楽園」と題された後日譚で霞は「お兄ちゃんといっしょにいなかったとしても。お兄ちゃんの全部がボクのものじゃなかったとしても。どんな時でも、ボクの中にはお兄ちゃんがいる」と独白し、束縛=安心の構造そのものを引き受ける。霞の幼さ・支配欲・「お兄ちゃん」呼びは、新しい人類の「意思疎通を介さず自分の中の相手を所有する愛」の原型として再定義される。

他ルートでは霞は背景に退いたままだが、その「お兄ちゃん」呼びは終始一貫しており、GENESIS で日常へ完全回帰する核として機能する。

柚木式子 ゆずき しきこ
IN CHAOS
柚木式子
読みゆずき しきこ
立場霞の友達・神託研究会員
所属高校2年生・同クラス
高校2年生 霞の親友 神託研究会員 皮肉屋 文学少女 理屈っぽい 「メガネさん」

霞の親友で、今年から同じクラスになったクラスメイト。神託研究会(通称「巫女部」)の幽霊部員。康介に「メガネさん」と呼ばれ、霞には「式子ちゃん」と呼ばれる。両親は在宅しており、康介や霞のように親が不在ではない。

クールで皮肉屋。霞に「数学の宿題やってきた?」と振って、霞が慌てた瞬間に「んーん、ない。言ってみただけ」と平然と返す茶目っ気。「茶目っ気」という言葉を好んで使い、「便利だもん」と肯定する。約束には30分平気で遅刻する。

知的でクセが強い。「自分は元々後ろ向き」「結構どころじゃない、もう、かなりの後ろ向き」と自己分析する。「現実なんて言っても、そんな教条主義的なものが存在しないのは判ってる」「現実に帰れなんて言ったところで、とっくの昔に帰るべき故郷なんてなくなってる」と早口で哲学を語る。康介に対しても容赦なく抽象的議論を仕掛ける、本作で最も多くの言葉を交わす相手。

式子は本作で最も「思想を喋るキャラ」。最終話に近づくにつれ、慧子の語る「新しい人類」を引き継ぐような台詞を発するようになる。

「わたしたちは進化しようとしてるの。『社会性』を克服してね」「今まで人類を支配してきた最悪の檻を抜け出して、自分だけの檻に入るの」「存在を存在として認識せずに、非存在への愛を存在に対して注ぐ」「旧い人類が滅びて、わたしたちが生き残ったの」「だから霞……笑っていいのよ?」「この先にはパラダイスがあるだけなんだから」

これは式子ルート固有の発言ではなく、霞ルートの終盤でも語られる。式子は他者の心が判ってしまう絶望(悠歌のテーマ)と、現実が残骸でしかない絶望(康介の引用元)を、どちらも理解した上で「だからこそパラダイスだ」と引き受ける役を担う。

一方で、康介の前ではどんどん「変態」になる。露出、自転車置き場、ご休憩、自分から足を開いてみせる、自分で触ってみせる——式子ルートのH場面はほぼ「式子の変態的提案」で進行する。「どうせあなたとの間だけのことなんだし、それだったら別に変態でもいいかなって」とカミングアウトする式子の方が、康介から見ると変態ぶりは強い。

IN CHAOS(混乱したままの定常状態)は、明確な進展のないまま続く関係の状態をそのままタイトルにしたエンド。「あなたとの物語をね、前みたいに強制的じゃなくてね、自分の意志で選び取りたい」という式子の宣言は、関係そのものを「自分だけの」として引き受ける、本作のテーゼの式子流の応答である。

守里椎奈 もりさと しいな
AUTOMATON
守里椎奈
読みかんざわ ゆうか
立場神社の娘・神託研究会部長
所属高校3年生(先輩)
高校1年生 後輩 霞の幼馴染 「〜です」口調 くきゅくきゅ笑い 寝坊魔 彩子の娘

近所に住む1学年下の後輩。霞とは小さい頃からの幼馴染で、今年から同じ高校に入学した。電柱に正面から突っ込んで初登場。「電柱がぶつかって来たんじゃなくて、椎奈が突っ込んだんだろ」「大した違いはないですよ」と康介とのやりとりで関係が始まる。

一人称「わたし」。康介を「おにーちゃん」(霞の真似だが本人にとってはあだ名)、霞を「霞ちゃん」と呼ぶ。語尾「〜です」「〜ですよ」、笑い擬音「くきゅくきゅ」「くきぃ」「ふにゃー」「ふみゃ」。中谷を「しゃもじの人」「しゃもじの貴族」と呼び続け、霞と一緒に中谷をいじる相棒。

「兵器の開発」「ししおどし・改」など、子供っぽい遊びに本気で取り組む。「ダメージを受ける度に自己進化したり、哀しい過去があって人類に恨みを持ってたりする彼氏を求めたとしても、なかなかいないです」と、フィクション過剰な発想を真顔で語る。

椎奈ルートの中核は「家族という、人の頭の上で動く形のないものに支配されている」状態。椎奈は表面的には自由に振る舞っているが、内面では「お母さん」「家族」というものに強く縛られている。母・彩子を「悪魔のお母さん」と呼ぶのも、その内面の不安の表れ。

椎奈は霞と康介の関係を見抜くが、それを揶揄するのではなく「霞ちゃんはうらやましいです」「絵に描いたような青春さんですよ」と素直に思う。康介に対しては「人並みの青春」を求めて愛着を示すが、それは典型的なツンデレ的恋愛感情というより、康介という「自由な存在」への憧れに近い。

椎奈ルートの結末「自動機械から人間へ」(AUTOMATON)で、椎奈は康介と二人で夜の街を放浪する。「何かを反抗的にしたい」のではなく、ただ「」から出る必要があった。河原で朝を迎え、家を見上げて「あそこはもう……檻じゃないです」と告げる。寝ぼけ眼で「おにーちゃん、できたらおんぶで運んで欲しいですー」と甘えてくる椎奈は、母から独立した「人間」として家に帰る。

椎奈ルートのHシーンは「お母さんに言われたから」ではない、自発的な選択であることが強調される。「子供っぽい」喘ぎ表現(「くきゅ」「ふにゃ」)が混じる独特の語彙が特徴。

神澤悠歌 かんざわ ゆうか
DIVINE
神澤悠歌
読みもりさと しいな
立場近所の後輩・霞の幼馴染
所属高校1年生
高校3年生 先輩 神社の娘 巫女見習い 神託研究会部長 三人称「悠歌さん」 浮世離れ

神社の娘で、神託研究会部長の高校3年生。康介・霞・式子の先輩にあたる。父親は神主かつ巫女研究の学者(学会会長経験あり)で、母親と二人で外国の大学に呼ばれて出国中。悠歌は神社で一人暮らししている。

「髪がすごく長い」と式子に紹介される。「ふわふわした感じ」「ぼんやりと体操座りしている」など、頼りない雰囲気。マイペースで天然——掃除をサボる、約束を忘れる、日曜日に制服で学校に行ってしまう、貧血で立ちくらみする。「悠歌さん」「康介さん」と双方とも「さん」で呼び合うことに執着し、「これで対等?」「うん、対等」と決める。

「鋭い」とも「鈍い」とも形容される。康介の感情や考えていることは表情で察するが、自分のことを語る時は何度も同じ説明を繰り返す。神社の娘らしく、神道と巫女の話を哲学的に深堀りする。霊感(?)もあるらしく、「夜の神社で出るおばけ」を本気で怖がる。康介には「ありがとう、康介さん。今日もおばけ出なかったよ」と境内見回り終了時に必ず告げる。

悠歌ルートの中核は、悠歌の父親が研究していた巫女論。「巫女さんの『神様の言葉を聞く』っていう力は、人が元々持ってる力なんだって。ただ、それが強くなっただけで」。だから巫女は「神様より近くにいる人の心を、普通の人よりももっと知ることができる」。

しかし悠歌はそれを呪いとして体験する。

「人の気持ちが判っちゃったら……その人のことでもうどきどきできなくなっちゃう」「自分にどきどきできないでしょ? 自分のことって、知っちゃってるから」「悠歌さん、人のことなんか知りたくない。康介さんにどきどきできないのなんて、そんなの嫌だよ」

幼い頃の友達・よりこちゃんが、悠歌が転んで膝を擦りむいた時に「ゆうかちゃんがいたい。だからわたしもいたい」と泣いた——それを見た悠歌は「人の気持ちが判る」ことの恐ろしさに目覚めた。康介への愛も「特別の好き=どきどきする好き」になれないという屈折を抱える。

悠歌ルートの結末「ファーストコンタクト」(DIVINE)で、康介はこの絶望の構造を「断絶こそが希望」と理解する。神社へ走り、悠歌の肩を掴んでキスをし、「目を閉じたらいい……ただそれだけなんだ。そうしたら……ほら、俺も悠歌も新しいだろ?」と告げる。そして「言葉っていうのは、相手に伝えるように話すものじゃないんだ。むしろ、誰にも伝わらないように話すものなんだ」と諭す。

悠歌は「キスっていうのは、世界を閉じるためにするんだね」と気づく。タイトル「未来にキスを」が直接的な意味を獲得する瞬間。悠歌の鋭さは、ここで初めて呪いから祝福へと反転する。

その他の登場人物
飛鳥井慧子 あすかい けいこ
霞ルート真エンド
読みもりさと あやこ
立場椎奈の母
属性近所の主婦・椎奈ルート重要人物
親戚少女 霞より年下 早熟 古文書を読む 哲学的トリックスター

霞ルート終盤の数日間にだけ登場する、叔父側の親戚の女の子。霞より年下だが「ひょっとしたら霞より年上に見える」と式子に評される程度の落ち着き。叔母の口添えで霞の家に短期滞在する。最初に会ったのは慧子が赤ん坊の時で、それ以来。

一人称「わたし」、礼儀正しい敬語が基本だが、霞や康介と打ち解けてから少し砕ける。図書館で借りた古文の本を読む。「習ってないから知らない」と謙遜しながらも、霞より遥かに賢い。「うち、ポケコンならあるんですけどねー」と古風で知的な発言が混じる。携帯ゲーム機に初挑戦して十字キーの概念に戸惑う。

慧子は本作の哲学的トリックスター。霞に対して「お兄ちゃんという個人が好きなんじゃなくて、『お兄ちゃん』っていう概念が好きなんだよ」と、霞自身も気付いていなかった愛の構造を言語化する役を担う。

「人間っていう存在がね、どんどん消えていってるの」「本当の意味での人間は、もう滅びかけてるの」「人間が滅んで、新しいものが生まれようとしてるの」「名前とかはついてないけど、今までの人間とは違う、新しい人」「わたしたちは相手の本当の像を見ようとすることなしに、自分の中の相手を見てるの」「だからわたしたちは幸せなの。そうして初めて、相手をずっと永遠に手に入れることができるから」「霞ちゃんがほんとのお兄ちゃんを見てないのは、全然悪いことじゃなくて、それは希望なの」

慧子のこの長台詞は、霞ルート(真ルート)の核心であり、本作全体のテーマを集約する。子供の口を借りて語ることで、知的さと無垢さが混ざる独特の効果を生む。

正体は明確には書かれない。「さあ、どうしてだろ。どうしてなのか、自分でもよく判らない」「ただ、何となく予感がするの」「……新しい世界の予感が」と本人は説明する。短期滞在の後、また帰っていく。「霞ちゃんの未来は薔薇色だってこと、覚えておいて欲しいの」が最後のメッセージ。

守里彩子 もりさと あやこ
椎奈ルート
読みなかたに うみひこ
立場通学路の常連・コミックリリーフ
属性海を愛する青年
椎奈の母 穏やかな美貌 檻の告白者

椎奈の母親。康介の眼にも「ロリータと言ってもいいくらい若く可憐」に映る母。霞や椎奈が「彩子さんが怒ってるとこなんて想像できない」と評するほどおっとり。康介には「いつも椎奈と遊んでくれてありがと」と頭を下げる。

椎奈ルートの河原で、彩子は康介に長台詞を語る。

「もしもわたしが椎奈を支配してたんだとしたら、それはすごくいいことだったの」「けど椎奈は……わたしでもなくて、椎奈自身でもなくて、何か別のものに支配されてたのね」「家族って、一緒にいたら幸せだし、便利なものだけど……それがいつの間にか、独りでに動き出して、その中にいる人を支配するようになっちゃう」「この世の中には人しかいないはずなのに、人以外のものが人の上に立つようになっちゃう」「人が人でないものに支配されたら……それはもう人じゃなくなってる」

「人による支配」と「制度による支配」を区別しながら、自身が娘を閉じ込めた「永遠の檻」の主であることを告白し、康介に椎奈の解放を託す。「康介くんは特別よ」「自分で動いてる。何にも支配されてない」「ほとんど、奇跡的なくらい」「眩しい子」と評する。式子の言う「自走するシステム」と地続きの「檻」の理論を、母親の立場から具体化する役割を担う。

中谷海彦 なかたに うみひこ
通学路の常連
読みにしお なおき
立場主人公の男友達(メガネ君)
所属高校2年生・同クラス
近所のサーファー 行動する哲学者 横滑り移動 コミックリリーフ

近所に住む青年で職業不明。「眩しい白い歯」「褐色の肌」、いつもサーフボードを抱えている。「海彦」という下の名前の通り海をこよなく愛し、移動は「横滑り」する。毎朝、康介たちの通学路の途中に現れる。

一人称「僕」、です・ます調の落ち着いた口調。サーフィンしか頭にない。「波という美女は、勤勉な人にしか微笑んでくれないからね」「波という美女は、時間にルーズな男を嫌うからね」が決め台詞。大袈裟な比喩を多用し、「君たちは君たちの目指すところに行きたまえ。僕は僕だけの宝島を目指す」「海にはね、お土産はないよ。……なぜならね、海っていうのは一期一会だからね」と意味不明な発言を残して去っていく。

質問には必ず煙に巻く返答をする。「黒い車に連れ去られた?」と問われると「あれはタクシーだよ」と否定し、追及されると「実は……僕には双子の弟がいてね。山彦という名前なんだが」と話を逸らす。霞は中谷のサーフボードを「しゃもじ」、椎奈は「しゃもじの貴族」と呼ぶ。中谷の正体・背景は最後まで明かされない。

各ルートの GENESIS でも「時間というものが過去から未来へと一方通行に流れている限り、それによって失われるものは確実にある」と急に哲学的なことを言う瞬間がある。変化する世界の中で唯一「変わらない日常の象徴」として機能する、コミックリリーフかつ行動する哲学者ポジション。

西尾尚樹 にしお なおき
男友達
読みあすかい けいこ
立場霞の親戚の女の子
属性年下・エピローグのみ登場
クラスメイト メガネ 朝練熱心 真面目派

康介のクラスメイトで男友達。「メガネ君」と康介に評される。一人称「僕」、丁寧な口調。真面目で素直で、康介と話が合う「ちょっと奇特な奴」(康介評)。

朝練をしている部に所属しているが、部活名は本人も「朝練は朝練だよ。何の朝練なんてないよ。朝にしなかったら朝練なんて言わないよ」と曖昧化する。「好きなことだからね、飽きたりしないよ」「毎日違う発見があるからね」が部活を語る台詞。日直の押しつけを察知して「康介、僕に仕事を押しつけようって考えてたね?」と釘を刺す抜け目なさ。

主要ルートには深く絡まないが、生真面目に部活と勉強を両立させる「旧い人類」側のキャラとして機能する。「毎朝部活に行ったりサーフィンに行ったりするのも……そっちの方が楽だからかも知れない」と漏らす場面はテーマの周辺を示唆する。

親族(物語の枠組み)

霞の母(叔母さん)

かすみのはは/おばさん
物語の枠組みを作る母

康介の叔母で、霞の母。康介を居候として可愛がっている主婦。心配性で、霞を残しての2週間旅行にあたっても「ほんとに大丈夫かな、この子」と何度も繰り返す。霞の天然っぷりを最もよく知る人物で、出発当日まで母らしい不安を引きずる。物語の枠(叔父夫婦が2週間留守にする)を作る役回りで、霞ルートの真エンドでは親戚の少女・慧子を「ちょっとの間だけど宜しくね」と紹介して連れてくる窓口にもなる。叔母自身は最後にきちんと帰宅し、共通ルートの日常へと戻していく安全装置として機能する。

「ほんとに大丈夫かな、この子」— 出発前、霞を残していくことを何度も気に病んで

霞の父(叔父さん)

かすみのちち/おじさん
無言の父

康介の叔父で、霞の父。同居家族の中で唯一、ほぼ台詞を持たない人物。出発の場面でも終始無言のまま叔母の隣に立ち、結婚記念旅行へと去っていく。スクリプト上の発話量は極めて少なく、霞の家庭の安定要素として「ただ存在している」位置を引き受ける。本作では「父親」が物語の前面から退いている設計が一貫しており、叔父さんもその一例として、語らないことで家庭という枠を背景化する役を担う。

(出発時、終始無言)— 叔母が「ほんとに大丈夫かな」を繰り返す傍らで