キャラクター詳細 — ミステリート〜不可逆世界の探偵紳士〜
PC DVD-ROM版『ミステリート〜不可逆世界の探偵紳士〜』(2004年・18禁)の導入(客船マリア=テレジーア号)と第一話〜第四話、終幕に基づき、登場人物の正体と結末まで解説する。PS2版以降の移植版ではキャラクターやイベントの追加・変更があるため、他の版とは一部が異なる。年齢は作中に明示があるものだけを記した。各人物の「ネタバレ詳細」を開くと、真相と最後がどうなるかまで踏み込む。前作『不確定世界の探偵紳士』から続く人物には、約1年前の出来事を短く添えた。
ちびキャラ画像は『ミステリート〜不可逆世界の探偵紳士〜』のキャラクターを基に当サイトで作成した二次的イラストです。原作の著作権は現在の権利者に帰属します。
八十神かおる
| 読み | やそがみ かおる(日本での偽名「九十九」は つくも、女装時の姓「神代」は かみしろ) |
|---|---|
| 役割 | 主人公。ロンドンの探偵で、アイドラーのクラスAディテクティブ(31人目で最年少)。日本では偽名「九十九かおる」、クラスDとして動く |
| 年齢 | 18歳 |
| 外見 | クセっ毛のボサ髪に眼鏡(少し近視で、伊達ではないと本人は言う)、吸わないパイプ、上品なスーツ、黒い手袋。まつ毛が長く、女の子に見られる顔立ち |
日系イギリス人の探偵。住み込みのアシスタント七尾芹奈とロンドンで暮らしていた。導入の客船で、クラスAに昇格したその日に殺人事件を解き、警備主任に化けた殺し屋を見破るが、海へ逃げられる。芹奈を日本の《しあわせ探偵事務所》へ送り出してから一年、手紙も電話も途絶えた彼女を捜すために来日し、コナー局長から頼まれた「元所長の失踪」の件を名目に、《しあわせ探偵事務所》へクラスDの研修生として入る。
一人称は「オレ」。皮肉屋で口が悪いが、自分を「英国紳士」と呼び、決め台詞は「初歩的なことさ」「推測じゃない。推理だ」。紅茶党で、考え事をするときはバイオリンやピアノを弾く。変装が得意で、女装の「神代かおる子」として捜査に出ることが多い。本人は「趣味じゃないぞ」と言い、若いクラスAとしてマスコミに顔を知られているために身に付いた技だと説明する。探偵を続ける理由は金ではなく「信念」で、「事件は勝ち負けじゃない。真実を解き明かすか否かだ。」と言う。
変装。第一話は清楚なお嬢様「神代かおる子」、第二話は女子高生、第三話はビジュアル系・パンクルック・社長秘書の女装で動く。どれもかおる本人で、麻生優希、マルタ・アルゲリーチ、舞ノ小路水陰らには見抜かれる。第四話は「身分を偽る必要が無い」として変装しない。
第一話。執事の鈴木が犯人でないと知りながら、真犯人に逃げられるのを避けるため、東に釣り糸の密室トリックの推理ショーをさせて鈴木の偽りの自白を引き出す。夜の地下室で、如月俊郎が怪盗サファイアの変装で、しかも女性だと暴くが、「オレの仕事は、この殺人事件を解決することさ。」と見逃す。続いてクロスボウを構えて現れた堂島香苗を犯人と指摘し、自首を勧める。手柄は《しあわせ探偵事務所》のものになり、かおるは沢田とともに深雪の南条探偵事務所へ移る。
第二話。バー「ジプレ」で老紳士・綾小路といる七尾を見つけ、5分だけ話すが、七尾は何も答えない。連れ帰ろうとした瞬間に綾小路の杖で打ち倒され、目覚めるとホテルで七尾に介抱されている。「オレと一緒にロンドンへ帰ろう。」を拒まれ、七尾の「最後のわがまま」に応じて一夜を共にし、別れる。自室に閉じこもったところを深雪に叱りつけられ、「七尾は敵だ。救わなくてはいけない敵だ。」と立ち直る。事件では、遺言の暗号から依頼人の牧師が偽者だと見抜き、偽の星野恵の正体(殺し屋マイ)も暴く。玲が父を焼き殺した偽者を刺していたと分かったうえで、マルタ・マイ・蘭子を陪審員にした即席の裁判を開き、「民の声は、神の声。百合原玲、君は釈放だ。」と玲を放免する。水陰はのちにこの処理を「遵法精神に反する」と批判する。
第三話。シンポジウムで深雪に頼まれ、過去半年分の解決案件のポイントを南条探偵事務所へ移して最優秀オフィス賞を取らせる。その量が、水陰に正体を見抜かれるきっかけになる。研究所へ向かう前夜、深雪の申し出を受けて交際を始める。研究所では加茂に首を絞められて死にかけ、水陰に救われる。閉じ込めの《8人目の監視者》と殺人の《復讐者》を別の事件として切り分け、轟木警部が変装を解いた自分を一目で見抜いたことから、警部が偽者と入れ替わっていたと見抜く。加茂を犯人と指摘するが、逃げた加茂は轟木に化けていたマイに返り討ちにされる。工事現場でマイと一対一で闘って勝ち、穴へ落ちかけたマイの手首をつかんで救い、「オレのモノになるか?」と問う。綾小路の勧誘を「杖を持ってオシャレを気取ったスーツ姿の爺さんが、オレは大嫌いなんだよ。」と拒み、組織に見捨てられたマイを引き取る。
第四話。車中でマイに、肉親を殺しの請負組織ゼニスに皆殺しにされ、その依頼人と実行犯を追っていると明かす。深雪の心が写真の男(元ボス)にあることを推理で突いて平手打ちされ、互いに謝ったあと二度目の関係を持つが、その後で自分を恥じる。紅の館では、晩餐の「男爵」の弾痕を調べなかったことを悔やみ、変身した水陰に先を越されて「この女に遅れを取るなんて‥‥!」と歯噛みする。絵画と童歌の謎を解いて地下迷宮に入り、本物のミランダの白骨とメモ、最深部の『貴婦人の涙』と由真の遺体を見つける。宝は「由那に法の裁きがあるまで」自分が預かると全館放送で告げる。迷宮に現れた怪盗サファイアには、マイとの勝負のあとにニセ物を渡し、本物は上着のポケットに持ち続ける。
終幕。ロンドンに戻ればアイドラーの争いに巻き込まれると予感し、深雪とマイの同行を「その代わり、オレのアシだぜ」と受け入れる。一方、黒幕側の会合では、コナー局長がかおるを「惜しい人材」と呼び、かつての師ジャスティスは「あいつは不完全なディテクティブだ。」「私の唯一の汚点だよ。」と言い捨てる。七尾芹奈の手記には、名を書かない「彼」への想いが残される。予定されていた続編は開発中止となり、物語はここで閉じたまま完結していない。
「事件は勝ち負けじゃない。真実を解き明かすか否かだ。」紅の館で、ミランダに
「知力を尽くした闘いだった。平等のね。その闘いにオレが勝った。だからこの宝はオレのものだ。」迷宮の最深部で、怪盗サファイアに
「オレと一緒にロンドンへ帰ろう。」第二話、ホテルで七尾に
「七尾は敵だ。救わなくてはいけない敵だ。」第二話、深雪に叱られて
「伊達メガネじゃないとこが辛いな‥‥少し近視が入ってるんだオレ。」眼鏡について
七尾芹奈
| 読み | ななお せりな |
|---|---|
| 役割 | かおるの元アシスタント。ロンドンのかおるの事務所に住み込みで働き、導入で日本の《しあわせ探偵事務所》へ移る。アイドラーのクラスD |
| 年齢 | 18歳(第二話・第三話の時点) |
| 外見 | 金色の葉をかたどった髪飾り(かおるの贈り物)をいつも着けている。導入では制服姿で大きなノートを抱え、第二話の再会時は濃いめの化粧に派手なワンピース |
父は日本の国際線パイロットで、本人はロンドンに留学していた。家族を殺されて自殺を望んだところをかおるに支えられ、住み込みのアシスタントとして雇われて、学費まで出してもらった。かおるを「かおる様」と呼ぶ生真面目な才媛で、軽口を「不謹慎ですわ」とたしなめ、依頼人との会話を一字一句書き留める。菜食主義で、酒は飲めない。
導入の客船で、日本の《しあわせ探偵事務所》からの2年契約の話を受けるよう勧められ、「私はもう、かおる様に必要ないんですね‥‥」と泣いて部屋を飛び出すが、夜のデッキで「お前には才能がある」と諭されて日本へ旅立つ。来日後は単独で3件の事件を解決したが、約一年前に突然《しあわせ》から姿を消した。
過去。一年半以上前、ロンドン郊外の屋敷で家族を殺され、本人も家族の遺体のそばで一晩中、犯人の暴行を受けて生き残った。殺された家族の続柄は、かおるの回想(両親と弟)と芹奈自身の手記(父・母・妹)で食い違う。家族を殺した者は捕まっていなかった。
失踪の記録。深雪が《しあわせ》時代にまとめた調査報告書は、身辺整理や、かおるに宛てた「離別ともとれる書面」を理由に、七尾が自分から消息を絶った可能性が高いとし、元所長・悪行双麻の行方を密かに調べていた可能性にも触れていたが、途中で途切れていた。かおるはその書面を受け取っていない。
第二話。廃墟の車中で、星野恵を名乗る人物(のちに殺し屋マイと分かる)にかおるの写真を見せられ、「変装です。彼の名は八十神かおる。」「もっとも相手にしてはいけない人物です。」と教える。バー「ジプレ」で老紳士・綾小路といるところをかおるに見つかり、何を訊かれても「言えません」と答えず、「ゆりはら教会の案件からは、手を引いて下さい。」「かおる様はご存じ無いのです。百合原玲は‥‥。」と言いかけて遮られる。杖で打ち倒されたかおるをホテルへ運んで介抱し、ロンドンへ帰ろうという言葉を「すみません。本当に、すみません。」と拒む。話せば「かおる様は、きっと何もかも投げ出してしまう」から話さないと言い、「私は、もしかしたら、かおる様が怒られることを、しているのかもしれません。」とほのめかす。「最後のわがまま」としてかおると結ばれ、「絶対に、忘れない」と泣いて去る。終演では蘭子(フィーナ)が「七尾も私も、楽しみに待っています。」と言い、七尾がフィーナの側にいることが示される。
第三話・第四話。本人は登場しない。深雪の調べで、毎晩の公衆電話での定時連絡、封筒の二重投函、怪盗サファイアの記事のスクラップが分かる。綾小路は「七尾は変わったよ。」「彼女は君との接点を模索した。だが君からその扉を閉ざした。」と言い、真道マイカは七尾の居場所を「おまけ」に付けてかおるを雇おうとする。
終幕。黒幕側の会合の場にいて、かおるの話題になるとフィーナに「七尾。下がって良いのですよ。」と気遣われ、「いえ‥‥大丈夫です。」と答える。続く芹奈の手記で、家族を殺した女性を芹奈自身が殺めたこと、その遺体を「エミリィ先生」が芹奈の目の前で解剖して見せ、「応報」を説いて「私たちに従属する人間です」「あなたの行為は合法です」と告げたことが明かされる。芹奈は余命一年を宣告されており、二日泣いたあと、自分にできることを五つの願いに書き出す。家族を奪った者への報いと、「彼」と愛し合うことの二つは両立しないと知って「そして私は選びました」と書くが、どちらを選んだかは書かれない。手記は「あのとき彼に助けられた恩は忘れないでしょう。」「それまで待ってくれますか?」で終わる。「彼」の名は書かれないが、家族を殺した者への報いを追うかおると重なる。
「はい。毎日書きます。」導入、日本へ発つ前に「手紙、くれよな」と言われて
「私は、自分で決めて、ここにいるんです。」第二話、かおるに
「あのとき彼に助けられた恩は忘れないでしょう。」終幕、芹奈の手記
南条深雪
| 役割 | 南条探偵事務所の所長で、アイドラーのクラスC。元《しあわせ探偵事務所》の所員で、元所長・悪行双麻の部下 |
|---|---|
| 年齢 | 22歳 |
| 外見 | ポニーテール。前髪の一部が昆虫の触角のように跳ねる。ミニスカートに太いベルト |
独立してから古巣《しあわせ》の案件を十回以上横取りしてきた女探偵。事務所はマンションの一室で自宅を兼ね、開業当初は所員が自分一人だった。明るく押しが強く、「オッケ」「ウフフ」と軽い口調で話すが、観察は鋭く、尾行も得意。堂島邸でかおるとぶつかり、ファンサイトの写真でかおるが世界最年少のクラスAだと確かめると、「情報は共有。推理は非共有。」の協定を結ぶ。
元ボスの悪行双麻を「絶対に逃げない人」「愛する人を、自ら犠牲になって守り抜く人」と慕い、事務所のピアノに二人で並んだ写真を飾り、生存を信じて待っている。
第一話。地下室で、堂島香苗が証拠を否定すると「私が証人。法廷でも、どこででも証言します。」と申し出る。事件後、毒島と組んだ形にして手柄を《しあわせ》に渡し、サファイアが女性だという情報も渡す代わりに、「そこの、眼鏡の坊やを、私に下さい。」とかおると沢田を引き取る。
第二話。毒島の告げ口で事務所が活動停止処分の危機に立つと、アイドラーに「全責任は私にあります」と言い、かおるには黙っていた。七尾に拒まれて閉じこもったかおるから、ドア越しのカマかけで一夜のことまで聞き出し、「芹奈ちゃんは、アナタに止めて欲しかったんじゃないの!」「最っっっっっ低のオトコね。」と責めて立ち直らせる。轟木警部の制止を「ボスなら「やれ」と言うと思います。」と振り切って単身教会へ向かい、遺言の暗号の「別解」で仕掛けを動かして、かおる・マルタと地下坑道から旧軍の石油施設にたどり着く。
第三話。かおるにポイントを分けてもらい、南条探偵事務所は最優秀オフィス賞を受ける。七尾の行動(毎晩の定時連絡、封筒の二重投函、サファイアの記事のスクラップ)を調べてかおるに伝える。研究所へ向かう前夜、かおるの部屋を訪ねて話を重ね、「私たち、付き合おうっか。」と交際を申し込んで結ばれる。翌朝は「深雪って呼んで。」と上機嫌だが、かおるは最後まで「南条さん」と呼び続ける。
第四話。招待状の参加者名簿に「悪行双麻」の名を見つけ、「ボスは生きてる。」と同行を懇願する。写真の男を待っていることをかおるに推理で突かれて平手打ちし、「ラヴじゃないわ。ライクよ。」と認めたうえで互いに謝り、二度目の関係を持つ。館では闇塚弥平と組んで探索し、落ちてきたシャンデリアから救われる。闇塚には、かおるについて「彼、私のことを支えてくれたんです。だから、私も彼を支えられたらなって。」「でも、彼はいずれ私の元から去っていきます。」と打ち明ける。その闇塚が悪行の変装だったことには、最後まで気付かない。迷宮でサファイアが仮面を取ると「麻生ちゃん‥‥うそっ!」。
終幕。かおるのロンドン行きに「手伝いくらいなら、行ってあげよっか。」と申し出るが、「でも、私の心はボスのものよ。」。悪行が来なかったのに機嫌がいい理由を「訃報も来なかったから。」と言う。
前作から。『不確定世界の探偵紳士』では《しあわせ探偵事務所》の所員で、双麻の部下。前作の終わり(本編の1週間後)には、アイドラーの裁定で毒島が所長になり、深雪は七尾の件から外されて「あと数日の辛抱」と言っている。本作で深雪が《しあわせ》を辞めた理由は、本人(ボスのいない事務所を認めたくない、自分の実力で事件を解決したい)、麻生優希(七尾の失踪が原因)、コナー局長(所長の後任をめぐるゴタゴタ)で言い方が違う。
「情報は共有。推理は非共有。」第一話、かおると協定を結んで
「アナタ、最っっっっっ低のオトコね。」第二話、閉じこもったかおるに
「訃報も来なかったから。」終幕、ボスが来なかったのに機嫌がいい理由を訊かれて
氷川マイ
| 役割 | フィーナに仕える殺し屋。第三話の後はかおるに引き取られ、護衛兼アシスタントになる |
|---|---|
| 外見 | ツンツンした癖っ毛にリボン。第二話では顔に赤いタトゥー、目に赤いカラーリング。指輪から細いワイヤーを出す |
東西統合後の国の「東側」に生まれた孤児で、ドイツ語の混じる短い言葉(「そう。」「問題無い。」「以上。」)で話す寡黙な殺し屋。「私にとってルールは一つ、フィーナ様の命令のみ。」と言い、自らに課した掟とプロの誇りを何より重んじる。導入の客船では警備主任チェンになりすましてかおるに近づき、見破られると「‥‥マイよ。」と名乗って海へ飛び込んだ。料理が得意で、天ぷらと風呂が好き。
導入。乗客ジェイムズ・スミスを背後から果物ナイフで刺殺した殺し屋。かおるの推理では、第一発見者のウェイトレスもマイの変装。自決用の爆弾だと脅したライターは、はったりだった。
第二話。星野恵になりすましてゆりはら教会に入り込み、マルタ・アルゲリーチを雇う。電話で「いつ殺すの?」と話すのを玲に立ち聞きされる。図書室で気絶したかおるから拳銃を抜き取り、「命が残っていたことを神に感謝して。」と脅すが、マルタが割って入る。開かずの扉で救出された「恵」は、礼拝堂への案内を申し出た先で、名乗っていないかおるを「探偵さん」と呼んだことを突かれ、「貴方には、いつも正体を見破られるわね。」と応じる。救出された恵が偽者だったと言い切る場面は無いが、流れからはマイと読める。礼拝堂では本物の恵をワイヤーで絞めてかおるに銃を捨てさせ、現れた玲の首も「気が変わった。この娘には死んでもらう。」と絞める。マルタに「その娘を殺したら、アンタは単なる殺戮者や。」と言われ、主の蘭子(フィーナ)も「無罪」とするため、抗った末に陪審員として「無罪」を認める。かおるには「だけどいつか貴様を殺す。」と言い残す。話末では、負ければ命を絶つ覚悟で、フィーナにかおるとの再戦を願い出て許される。
第三話。《8人目の監視者》として研究所の地下に潜み、時限ウィルスで施設を閉鎖する。本物の轟木警部を殴って監禁し、かおると東が仮眠室で話していたときから警部になりすまして、水陰の護衛までしていた。かおるの休戦の申し出には「幕が引かれるまで」のメモで応じる。犯人と指摘されて逃げた加茂が懐のナイフで向かってくると返り討ちにし、あとで「正当防衛と言って欲しい。」と言う。静の首を絞めたのも《8人目》だとかおるは推理するが、本人は認めていない。工事現場でかおると一対一で闘い、ワイヤーで首を締め上げるが、一本背負いでエレベータシャフトの穴へ投げられ、落ちる寸前に手首をつかまれて救われる。「憐憫か‥‥死にも勝る屈辱だ。」と言いながら、「オレのモノになるか?」に「‥‥Ja(ヤー)。」と答える。綾小路に「失敗した殺し屋」として見捨てられ、かおるに引き取られる。
第四話。南条探偵事務所で深雪と同じ部屋に寝起きし、「料理係」になる。独白で過去が語られる。13歳のとき、ヨーロッパの街で身体を売って暮らすセルシアという女性に引き取られた。手伝うと言い出したマイをセルシアは泣きながら何度も平手打ちし、二度と言わないと誓わせたが、翌日、もともとマイに目を付けていた「特殊な嗜好」の客に自分を差し出して姿を消す。「あの女」にそそのかされたマイは、その客の老人をナイフで刺し殺した。これが最初の殺人である。三日後に戻ったセルシアは意識も無い状態で、唇の動きで死なせてほしいと伝え、マイはその胸にナイフを刺した。その後、「あの女」に一年間、殺し方を叩き込まれた。第二話で玲を見逃した理由をかおるに問われて「フィーナ様が見逃せと。」と答え、「自らの意志に従え」と言われたのだろうと返されると「私にも分からない」と言う。館では、かおるの「可能な限り相手を傷つけるな」という命令を守って、怪盗サファイアとの素手の勝負で手刀を寸前で止め、その隙に投げられて負ける。
終幕。腰を痛めてかおるに背負われ、「すまない‥‥大切なモノを、相手に奪われてしまった。」と詫びる。かおるは「お前は勝ってた」「おまえ、変わったぜ」と返す。ロンドン行きには「私も。」と同行を望む。
「私のプロとしての誇りを傷つけた貴様を‥‥許しはしない。」第二話の終演で
「‥‥Ja(ヤー)。」第三話、工事現場で「オレのモノになるか?」と問われて
「深雪、嘘ついてる。」「まだ、嘘ついてる。」紅の館で
舞ノ小路水陰
| 読み | まいのこうじ みかげ |
|---|---|
| 役割 | 日本に二人しかいないアイドラー・クラスAの一人(もう一人は悪行双麻)。警察庁と顧問契約を結ぶ相談役 |
| 外見 | 小柄な着物姿で、赤いリボンに紅い玉、足まで届く長い髪。変身すると大人の女性の体つきになる |
古風な武家言葉で話し、かおるを「かおるどの」と呼ぶ名探偵。アイドラー日本支部の最優秀ディテクティブを設立以来受け続け、轟木警部と組んで事件を解いてきた。法と証拠を重んじ、「かおるどのは、腕力に頼りすぎだな。私の武器はこの頭の中に詰まっている。」と言う。見た目は幼い少女で、体型のことを言われると怒るが、「かおるどのより年上だ」と言い張る。
苦しみながら大人の姿に変わるあいだは推理が必ず当たる、という体質を持つ(「推論絶対化時間」。本人は「統計的にみて、推理推論の的中率が100%を下回らないだけだ」と言い、自分の意志では起こせない)。
第二話の公園の女性。玲の側から語られる場面で、玲に電話をかけて夜の海の見える丘公園へ呼び出し、「八十神かおるを敵だと思いなさい。」「危険、逃げろ。かおるには注意をしろ‥‥こう録音なさい。」と告げる黒髪の女性が出る。名乗りは「私は‥‥‥‥。」で途切れるが、その場面に出る姿から、大人の姿の水陰と分かる。以前にも玲と会って事情を聞いていたと言うが、その場面は描かれない。玲はかおるとこの女性の正体を聞かされたうえで、かおるを信じ、あえて警告を録音する。
第三話。シンポジウムの受付でポイントの移譲をためらう係に「ポイントを移しなさい。」と後押しし、その量と南条探偵事務所の所員構成から「初めまして、かな。八十神かおるどの。」と正体を言い当てる。第二話でかおるが玲を放免した処理は「遵法精神に反する。」と批判する。研究所では、加茂に首を絞められたかおるに人工呼吸をする。のちに何者かに一服盛られて高熱で倒れ、看病するかおるに「8人目が‥‥私たちを監視している。」と告げる。《8人目》が轟木警部に化けて自分の護衛についていたことも承知しており(「少しドキドキした。」)、「《復讐者》は必ず止めよ。」「そして《8人目》に勝て。」と託す。かおるの推理を「見事な幕引きであった」と見届け、マイとの決闘に向かうかおるを「悪党との約束など無効だ。」と止める。
第四話。アイドラー本部の依頼で紅の館に来て、「アイドラーを二分する争いが起きようとしている。」と言う。ミランダが三年前にこの館の謎を解けなかったことを皆の前で明かす。変身したあと、晩餐の弾痕は事前に作られ弾は後から抜き出されたこと、由那の心臓停止は確かでも凶器は銃弾ではなかったこと、ミランダの検死は「偽りだ。」ということを明かす。闇塚と組んで、厨房の隠し通路の先に潜む由那を「三代目・風祭男爵。」「それとも、天草由那と呼んだ方が、いいかもしれぬがな。」と追い詰め、三年前に本物のミランダを殺した罪を問い、妹の由真を殺したことを認めさせる。
終幕。自分の役目はアイドラーの内紛を確かめることで、「誰が敵で、誰が敵でないのか、今回の件でハッキリした。」と言う。館では怪盗サファイアからアイドラーの派閥への誘いを受けていた。闇塚に「その暑苦しい着ぐるみを、脱いだらどうだ?」と言い、正体の悪行双麻に「戻ってこい。」「お主がいないと正直しんどい。私、一人ではな‥‥。」と頼むが断られる。黒幕側の会合では、かおると水陰が「あっち側」と見なされる。
「初めまして、かな。八十神かおるどの。」第三話、シンポジウムで
「探偵の本分は推理と証拠。」紅の館で
「幼児体型とは、私のことか?」紅の館で
麻生優希(怪盗サファイア)
| 読み | あざぶ ゆうき(本人は「あ・ざ・ぶ、ゆーき!」と名乗る) |
|---|---|
| 役割 | ルポライター(本人は「ジャーナリスト」と呼ばれたがる)。正体は手配番号9900号の怪盗サファイア。第一話では「如月俊郎」に化けている |
| 外見 | 赤いベレー帽にネクタイ、ショートヘア、商売道具でふくらんだバッグ。サファイアとしては仮面を着ける |
一人称「ボク」の明るく押しの強い記者。自称「ヨーロッパ帰りの才媛」で、ここ数か月で売れっ子になり、沢田から聞いた《しあわせ》の内部の話を週刊誌に書いた。第一話で事務所の前でかおるを待ち伏せ、BBCの報道から「クラスAディテクティブ、八十神かおる君。」と見抜き、七尾の情報と引き換えの取引を持ちかける。第二話では香水選びに付き合わせ、選んだ香水をかおるに贈り、教会の過去を調べるよう、七尾をあまり追わないよう助言する。第三話ではシンポジウムでかおるの女装を眼鏡の跡から見破り、その夜ジプレで一緒に飲み明かす。かおるを「オレ様王子」とからかう。
第一話の如月俊郎。堂島哲夫の研究の出資企業から来た社員「如月俊郎」は、優希の変装だった(本物の如月は長期休暇中)。身長を上げるブーツ、肩パッド、喉に何か巻いた話し方で長身の男を装い、盗聴器を仕掛け、今回の二通より前の「最初の一通」の脅迫状を出していた。狙いは香苗がヨーロッパから持ち帰った宝石『貴婦人の口元』だったが、すでに処分されていた。地下室でかおるに正体を暴かれて女性だと認め(「やりにくい探偵が来日したものね。」)、香苗が犯人と指摘されたあと、サファイアへの嫌疑を晴らした礼を言って去る。かおるは逮捕せずに見送る。
第三話の夜。酔ったかおるを南条探偵事務所へ送り、朝まで同じベッドで過ごす。深雪の見立てでは「添い寝」だけで、それ以上のことがあったかは語られない。翌朝、深雪に見つかってベランダから逃げようとする。
第四話。ヨーロッパで『貴婦人の首飾り』をベルギーの富豪から奪い、『貴婦人の眼』も手に入れている。紅の館の食堂でマイの隙を突いてかおるに拳銃を突きつけ、「『貴婦人の涙』は、私が戴く。」。丸腰で背後からはったりをかけた真道マイカが足にかすり傷を負う(その場で銃を持っていたのはサファイアだけ)。屋根の上ではかおるに撃たれるが逃げのびる(水陰「防弾かもしれん。」)。迷宮の最深部に現れ、宝は「もともと私のもの」と言うが立証は拒む。仮面を取ると麻生優希の顔で、マイとの素手の勝負に勝つ。かおるから青い宝石を受け取り、「また飲みに行きたいね。」「香水付けてくれてたんだ。ありがと。」と言って消える。宝石はニセ物で、かおるは「ニセ物だと分かって、納得して、去っていった」と見る。
終幕。黒幕側の会合にサファイアとして出席し、マイの件の詫びとして、フィーナから『貴婦人の花』を受け取ったと分かる。邪魔をする真道マイカを「目障りなハンター」と呼び、かおるの師ジャスティスに「弟子に対して、本気になれるのかしらね。」と問う。
前作から。前作『不確定世界の探偵紳士』(PS2版)の追加シナリオにも、麻生優希を名乗る怪盗サファイアとして登場し、「イギリスのクラスAというのと、知恵比べしたことある」と言う。
「BBCで放送されたの、一度や二度じゃないでしょ。クラスAディテクティブ、八十神かおる君。」第一話、事務所の前で
「知力を尽くした闘いは終わった。次は死力を尽くした闘いのゴングが鳴るわよ。」迷宮の最深部で
「もう、会えないかもしれないけど。楽しかったよ‥‥。」ニセの宝石を受け取って
堂島蘭子(フィーナ)
| 読み | 蘭子=らんこ(「堂島」の読みは作中に示されない) |
|---|---|
| 役割 | 第一話では堂島家にいる少女。正体は殺し屋マイや老紳士・綾小路を従える「フィーナ様」 |
| 外見 | 耳の上で髪を巻いたお団子に、ゴシックな服と胸のリボン。かおるの目には「フランス人形みたい」な少女 |
堂島邸のリビングでリストを弾きこなす無口な少女。堂島哲夫を「お父様」と呼び、「この家の娘」と名乗るが、「少なくとも‥‥堂島香苗さんの中では。」と付け足す。香苗は「ホームステイ」「気持ち悪い子」と言い、かおるは二階の肖像画の亡き娘とは似ても似つかないと見る。かおるを「お兄ちゃん」「探偵さん」と呼び、如月(自称)を「嘘を吐いてるから」嫌い、「嘘と見抜けない探偵さんも、さようなら。」と言い放つ。偽の解決のあとに「偽りのカーテンコールは、真実を導き出すかもしれませんね。」と言い残す。
正体。第二話の終演で、かおるに「いるんだろう、堂島蘭子。」と呼ばれて現れ、マイに「フィーナ様」と呼ばれて「かりそめの名でお呼び下さい。」と答える。導入の客船の会合にも「フィーナ」が同席しており、裏切り者のミスターJに「その者には、神罰が下されましょう。」と言った直後に悲鳴が上がる。終幕の芹奈の手記では、芹奈の前で遺体を解剖して見せた「世界的な外科医」エミリィ先生として現れ、「エミリィ・クワトロ・フィーナ」と名乗る。第一話の幼い少女とこの外科医が同じ人物だと明言する一文は無く、名前でつながっている。
第一話の後。鈴木によれば「元の場所へお帰りになった」。話末では詩『山の梺』を暗唱し、「ここも失敗‥‥。」「目的が成就されるのは、いつの日か‥‥。」と言って去る。
第二話。父を焼き殺した偽者を刺した直後の玲の前に現れ、「よく出来ました。百合原玲。」「行政に代わって刑を執行したに過ぎない」と肯定する。人が来ると「邪魔をする人間は、排除すればいいのですから。」と言い、玲はかおるを本で殴り倒す。玲を「貴女を理解できるのは、この世で私だけです。」と誘い、「貴女は必ず私の元へ来るのだから。」と去る。終演では、かおるの即席の陪審にマイを加えさせ、自らも「無罪(ノット ギルティ)。」と言う。「石油はくれてやる」と言うかおるに「油田は枯渇しています。」と返し、「七尾も私も、楽しみに待っています。」と言い残す。話末では、再戦を願い出たマイを「その者にも尊厳があろう」と許す。
思想。「刑罰の目的は、犯罪加害者に対する応報感情(仕返し)を満たすためのものに過ぎない。」と「応報」を説き、マイの言葉では「世の浄化」のために動く。かおるはそれを「正論をもって非道を隠ぺいするか。」と評し、「フィーナってゴスロリのガキ」と呼んで敵視する。マイによれば、以前ゼニスの幹部を殺してヨーロッパの一部から撤退させられ、以来「ゼニスには関わるな」と言っている。
終幕。黒幕側の会合で、コナー局長・ジャスティス・サファイア・綾小路・七尾らと同席し、「奇妙な連携が生まれたものですね‥‥。」。「例の実験」が済むまでアジアに滞在すると言い、日本の組織を「ある男」に潰されたと明かす。マイの件の埋め合わせに『貴婦人の花』をサファイアに渡し、真道マイカについては「彼女には一人息子がいます。それを利用します。」と手を打っている。芹奈の手記の終わりの問答では、「百合原玲は来るでしょうか。」に「必ず来ますよ。ウフフ。」と答える声があり、問答の順からフィーナと読める。
「偽りのカーテンコールは、真実を導き出すかもしれませんね。」第一話、偽の解決のあと
「七尾も私も、楽しみに待っています。」第二話の終演で、かおるに
「貴女を理解できるのは、この世で私だけです。」第二話、玲に
沢田軽太郎
| 読み | さわだ けいたろう |
|---|---|
| 役割 | 《しあわせ探偵事務所》のクラスE所員。第一話ではかおるの部下役、のち南条探偵事務所の助手 |
| 年齢 | 22歳 |
| 外見 | 長い髪を束ねた「ひょろ長の男」。カーキ色のパーカーにスニーカーとデニム |
お人好しでおしゃべりな大食い。元所長の悪行双麻にあこがれて《しあわせ》に入ったが、クラスDの筆記試験で受験番号を書き忘れて落ち、経理と雑用に回されていた。コンピュータと経理が得意で、英語は話せない。来日当日、事務所の前で立ったまま寝ていたかおるを起こし、変装を手伝い、部下役として堂島邸に同行する。深雪に憧れていて、張り込まれて質問攻めにされると、かおる子の正体を話してしまう。
深雪がかおるの正体を明かすと「さ、さ、さ、サイン下さい! ふぁ、ふぁ、ファンでした!」。第一話の後はかおると一緒に南条探偵事務所へ移り、深雪を「所長」と呼ぶ。給料は減ったが待遇は良くなったと言い、「いつか僕も、クラスCぐらいにはなって、南条さんのお手伝いが出来たらいいな‥‥。」と願う。
第二話では、事務所の活動停止処分の危機と、深雪が責任を一人で負ったことをかおるに打ち明ける。ゆりはら教会の過去の焼死事件を新聞検索で調べるが、教会で待機中に連絡が途絶え、東とともに倉庫に捕らえられる。マルタにも見つけられず、終演の時点でも行方は分からないまま。見つかった場面は描かれない。
第三話では、拾った赤いパスケース(副所長・藤道亜紀のIDカード入り)と、かおるに頼まれた亜紀の尾行が、研究所の件の入り口になる。東に唇を奪われたかおるを「かおる君には、純潔を守って欲しいんだよう。」と心配する。第四話の冒頭では、マイも加わった共同生活で掃除係を務め、紅の館には行かずに留守番をする。
「路上で立って寝てる人って、初めて見たよ。凄い特技だね。ロンドンで流行ってるの?」第一話、かおると初めて会って
東西
| 読み | あずま にし(かおるは麻雀牌の読みで「トン」と呼ぶ) |
|---|---|
| 役割 | 《しあわせ探偵事務所》のクラスCで、来日したかおるの教育係。怪盗サファイアの担当。深雪の元恋人 |
| 外見 | スリーピースのスーツにロン毛、垂れ目。同じ柄の変なブランド品のネクタイを20本持ち、毎日着け替える |
「フッ、甘いマスクに、素敵な笑顔‥‥全女性の味方とは、僕のことさ。」と言う自信家の女好きで、女性には甘く男には厳しい。第一話ではかおるを「メガネザル」と呼び、堂島家の件を丸投げして、長年追ってきたサファイアの案件へ向かう。口は悪いが面倒見がよく、元所長の才能を悔しがりながら認め、深雪のことを気にかけている。水陰は「素直で物わかりの良い好青年だ。あの者は伸びるな。」と評する。
第一話。かおる子に誘導されて釣り糸の密室トリックの推理ショーを披露し、鈴木の偽りの自白に「見たか深雪、見たかメガネザル。」と得意になる。真犯人の逮捕後も、自分が犯人を違う方向へ導いたおかげだと言い張る。
第二話。毒島に押し付けられてプリューレ商会と組み、ゆりはら教会の件を追う。堂島邸の解決は深雪の力を超えているとして、背後にクラスA級の助言者がいると疑う。再開発地区で、元所長が「奥さん」と実弾で決闘した「伝説」をかおるに語り、「自分の妻を本気で撃つ奴がいるか。」「意図的に外したに決まってる。」と言う。教会では沢田とともに倉庫に捕らえられ、終演の時点でも行方が分からない。
第三話。ジプレで泥酔し、パンクルックのかおるを女性と思い込んで無理やりキスする。正体を明かされると吐き気を催すが、実は以前から「クラスAの八十神かおる」だと知っていた(堂島邸・ゆりはら教会・最優秀オフィスの三件と、BBCのニュース録画から)。深雪とは半年ほど付き合ったが「悪行さんの代わりだってのは、十分わかってた」と言い、「強がってるが寂しがり屋でね」「大事にしてやってくれ。」とかおるに頼む。研究所では共同捜査の相棒になり、首を絞められたかおるを叱りつけて励ます。
第四話。毒島と南条探偵事務所を訪れ、元所長が戻る可能性を理由に事務所の合併を持ちかけ、かおるに「深雪のことは、もう少しだけよろしく頼む。」と言う。
前作から。東の語る元所長の決闘は、前作『不確定世界の探偵紳士』の事件にあたる。前作では双麻の弾は元妻・神あやめの胸に当たっており、「意図的に外した」は東の推測である。
「で、いったい何の真似だ、クラスAの八十神かおる。」第三話、ジプレで
「深雪のことは、もう少しだけよろしく頼む。」第四話、かおるに
毒島武雄
| 読み | ぶすじま たけお |
|---|---|
| 役割 | 《しあわせ探偵事務所》の現所長で、アイドラーのクラスB。警察庁の給与厚生課に10年以上勤めた天下り |
| 外見 | 蝶ネクタイにバラ、モジャモジャの手の毛、深雪いわく「ビッゲストな顔面」 |
オネエ言葉で話す見栄っ張り。「うちは探偵事務所よ。それも日本一のねぇ。」と事務所の名声にこだわり、損得に敏い。案件を十回以上奪ってきた深雪を嫌う。アイドラーの推薦で来た「クラスDの九十九かおる」をしぶしぶ受け入れて冷遇し、東に預ける。かおるからは「ベム」と呼ばれる。元所長のことだけは「認めてるわっ」と言う。
第一話の後。南条探偵事務所をアイドラーに提訴すると息巻くが、深雪の提案(手柄をすべて《しあわせ》に渡し、二つの事務所が協力した逮捕劇とする)と、サファイアが女性だという情報を受けて引っ込め、代わりにかおると沢田を南条探偵事務所へ出向させる。
第二話。七尾の「ハトコ」を名乗る女子高生姿のかおるに七尾の調査報告書を見せたあと、そのことをアイドラーに告げ口し、南条探偵事務所を活動停止処分の危機に追い込む。
第三話。5年連続で受けてきた最優秀オフィス賞を南条探偵事務所に取られ、女装のかおるの首をつかんで水陰に止められる。かおるの正体を知ると「まさか、アナタが史上最年少のクラスAだったなんて。」と態度を一変させ、東にかおるへの「絶対服従」を誓わせて「専属秘書」にする。出発前には秘書姿のかおるに迫って殴り倒される。
第四話。すでに副所長に退いており、元所長あての招待状が来たことを告げ、かおるがロンドンへ帰った後に残った者どうしが対立していては共倒れになるとして、事務所の合併を持ちかける(「なんなら、ここの事務所を《しあわせ探偵事務所》にしてもいいわ。」)。
前作から。『不確定世界の探偵紳士』では《しあわせ》の副所長で、双麻が消えたあと所長になる。前作の追加シナリオで双麻から「死んだことにしとけよ」と口止めされており、本作第四話の「死んだとか、地獄へ行ったとか、さんざん言われてきたウチの所長」はその後の言葉になる。
「あの女はね、悪魔よ。使徒よ。デビルマンよっ!」第一話、深雪について
轟木警部
| 読み | とどろき(名は作中に出ない) |
|---|---|
| 役割 | 警察の捜査一課の警部。堂島邸の事件で陣頭指揮をとり、以後の事件でも探偵たちと関わる |
素人の口出しを嫌うが、探偵には理解のある警察官。かおるの評では「良くも悪くも、日本の官僚組織に染まってる人間」。法の順守を説く一方、逮捕の前に権利を告げ忘れて深雪に促されるうっかりもある。水陰を「街の開業探偵では歯が立たんよ」と信頼し、その助言で第二話の焼死事件の記録を洗い直す。かおるの呼び方は第二話の「坊や」から、第三話では「かおる君」に変わる。
第一話。東の推理ショーのあと、自白した鈴木を緊急逮捕する。鈴木はのちに解放され、真犯人の香苗が逮捕される。
第二話。焼死事件の記録(午後9時頃の炎の目撃と、9時28分の通報)をかおるに教え、水陰がその28分の差を気にしていると伝える。単身教会へ向かおうとする深雪を「明日まで待ちたまえ」と止めるが、振り切られる。
第三話。研究所で、かおると東が仮眠室で話していたときに背後から殴られて拘束され、倉庫に監禁される。それ以降にかおるたちが会っていた「轟木警部」は殺し屋マイの変装だった。かおるは、変装を解いた自分を警部が一目で見抜いたこと(本物は変装を解いた姿を一度も見ていない)から入れ替わりを見破る。本物は、逃げた加茂の遺体のそばで、頭を打って意識朦朧の状態で見つかる。会議でかおるを「君はまだ経験が浅い」と退けた「轟木」が入れ替わりの前か後かは分からない。事件後、深雪の報告では「轟木警部は絶賛」。第四話には登場しない。
「脱法行為は御法度だ。どのような理由があるにせよ、法を踏み越えてはいかん。」第二話、深雪に
コナー局長
| 役割 | 元インターポールの犯罪情報局長で、アイドラーの顧問。かおるに警察の情報を流す代わりに事件を持ち込む |
|---|---|
| 外見 | あごひげに帽子、葉巻 |
軽口と女好きを隠さない政治的な顧問で、自分を「ぼかぁ」と言い、ゆくゆくは政治家を目指している。導入では客船のロイヤルスイートを手配してかおるのクラスA昇格を祝い、芹奈をおとり捜査に使いたがって、かおるに断られる。第一話の前には、かおるのかつての師サー・ジャスティスに断られた依頼(《しあわせ探偵事務所》の元所長・悪行双麻の失踪)を、ジャスティスの推薦を盾にかおるに引き受けさせ、偽名「九十九かおる」とクラスDのライセンスを用意する。アイドラーの派閥では少数派の「顧問派」で、かおるは「このタヌキ親爺め」と言う。
第一話の前。七尾の失踪の時期との一致を指摘されると「これから君に頼む事件は、彼女も無関係ではないのだがね。」と言い、「ゼニスを追うのはやめたまえ。君のためにならない。」と忠告する。
第四話。電話で、水陰には関わるな(「彼女は副会長派の人間だ。僕と非常に仲が悪い。」)、紅の館の招待は受けるなと忠告する。
終幕。黒幕側の会合で、フィーナを「フィーナ様」と呼び、フィーナの日本組織を潰した男がベルギーにいると報告する。かおると水陰を「あっち側」と見なし、かおるについて「惜しい人材だ。できればこちら側に来てもらいたい。」と言い、「私からの依頼を達成するために、いましばらく日本へ滞在すると。」と電話で聞いたことを明かす。かおるに日本での調査を頼んだ顧問が、フィーナの側にいたことが最後に分かる。この会合では、老紳士の綾小路が変装を解いた直後からコナーが話し始める。並びからは綾小路がコナーの変装だったと読めるが、同じ人物だと明言する一文は無い。
「君の推理力は超一流だが、男女のことにかけてはとんと才能が無いね。」第一話の前、ロンドンで
綾小路
| 役割 | フィーナに仕える側の人物で、殺し屋マイの雇い主側。名は作中に出ない |
|---|---|
| 外見 | 杖を持つスーツ姿の老紳士。杖は武器にもなる |
落ち着いた口調で、法より組織の論理を優先する老紳士。第二話、中華街で星野恵と会っており、恵は「教会のスポンサーをしてくれている方」と説明する。夜のバー「ジプレ」では七尾芹奈を連れている。第一話に出る堂島哲夫の出資企業「綾小路重工」と同じ名だが、関係は語られない。
導入。客船の会合にフィーナとともに同席し、ドクター・ドウジマに「綾小路どの」と呼ばれる。
第二話。七尾に詰め寄るかおるに「彼女は私の連れだ。」と言い、5分だけ話す時間を与える。七尾が「百合原玲は‥‥」と言いかけたところで「約束の時間だよ。」と遮り、「世界的な名探偵が、証拠も論拠も無く、自らの感情論を事実だとわめいているとはな。」とあざけって、連れ出そうとしたかおるを「やめたまえ!」と杖で打ち倒す。かおるは「あの男、見た目ほど年をとってないだろう」と言う。
第三話。工事現場でかおるとマイの決闘を見物していて現れ、「七尾との一晩は、どうだったかね?」と揺さぶる。負けたマイを「失敗した殺し屋を、おめおめと生き延びさせるほど、うちは裕福では無いのでね。」と見捨て、かおるを「フィーナ様がやろうとしていることを聞けば、考えが変わる。」「七尾は変わったよ。」と誘う。富と地位の約束も拒まれ、「マイを不良品にしてくれた借りは、いずれ返す。」と去る。
終幕。黒幕側の会合に出席し、ジャスティスに「もう日本ではない。君もその姿をやめたらどうかね。」と促されて変装を解く。その直後からコナー局長が話し始め、以後の会合に綾小路は出てこない。並びからは綾小路=コナー局長と読めるが、明言する一文は無い。
「君は戦争に法令を適用するのかね。人を殺したからといって兵士を殺人罪で起訴するのかね。」第三話、かおるに
ジャスティス
| 役割 | 英国の名探偵。女王からナイトの称号を得た「イギリス最高の探偵」で、かおるのかつての師。フルネームはサー・ジャスティス・ジョージ・スペンサー |
|---|---|
| 外見 | 銀髪の男 |
十年近く前、歳が一桁だったかおるが居合わせた貴族の別荘の事件を、一時間で解いた「キザな英国紳士」。かおるはその姿に憧れて気に入られ、探偵の哲学を教わったが、「ある事件をきっかけに、袂を分かった」と言い、その中身は語らない。以後は「『師匠だった』と過去形で言ってくれ。」「奴は英国紳士の風上にもおけない奴だ。」と突き放す。コナーの日本行きの依頼を断り、代わりにかおるを推薦した人物でもある。
終幕。黒幕側の会合に「銀髪の男」として現れ、コナーから「史上初のダブルAクラスに昇格したジャスティス殿」と呼ばれる(導入でコナーは、初のダブルAはかおるかもしれないと言っていた)。綾小路に変装を解くよう促し、かおると水陰が「あっち側」に付くと聞いて「あの程度の連中がどちらに付こうが、何の問題も無い。」と言う。弟子に本気になれるのかと問うサファイアに「一片の情もない。」と答え、かおるを引き入れたいコナーには「やめた方がいい。あいつは不完全なディテクティブだ。」「洞察ができぬ男だ。私の唯一の汚点だよ。」と言う。
かおるがバイオリンで弾く作曲者不明の曲は、幼いころ「探偵学を教わったヤツ」から聴かされたもので、マイは、セルシアの恋人の「ディテクティブ」が同じ曲を弾いていたと言う。二人が同じ人物かは示されない。
「一片の情もない。」終幕、サファイアに問われて
「洞察ができぬ男だ。私の唯一の汚点だよ。」終幕、かおるについて
堂島香苗
| 役割 | 堂島哲夫の妻。屋敷に届いた脅迫状の件を《しあわせ探偵事務所》に依頼する依頼人 |
|---|---|
| 外見 | 上品な女性。職人に特注で作らせた金の花のブローチと結婚指輪 |
丁寧なお嬢様言葉で、教養を話題に相手を試す夫人。英語で話しかけてかおるのクィーンズ・イングリッシュを褒め、「ヤング・ディテクティブ」と呼んで気に入る。女装のかおる子とは別人として接する。娘を亡くしており、夫との仲は冷え切っていた。家にいる少女・蘭子を「気持ち悪い子ですわ」と言う。怪盗サファイアの名の脅迫状を受けて依頼し、二通目の脅迫状のあとで轟木警部に通報する。夫の遺体の発見では、真っ先に駆け寄って抱き起こす。
犯行。夫・堂島哲夫を殺した第一話の犯人。かおるの推理では、執事が書斎へ運ぶ茶か菓子に睡眠薬を入れ、夫がまだ生きているうちに釣り糸と酒瓶と鍵で密室を作り、発見の瞬間に真っ先に抱き起こして、結婚指輪に仕込んだ細い針で頸髄を刺した。警部との電話と沢田との会話をアリバイにし、夫の呻き声を消すために外で電話工事をさせていた。二通の脅迫状はサファイアの名を騙った自作で、密室を解かせてサファイアに罪を着せるつもりだったが、鈴木がスペアキーを肌身離さず持っていたために計画が崩れた。かおるが疑ったきっかけは、二通が同じ時刻に投函されていたこと。犯行の最中に夫の言葉を思い出し、写真立てを払い落としたのが「敗因」だったと本人も認める。
動機。香苗は夫を「私の最愛の娘を、殺したヤツ」と呼ぶ。香苗の告白では、夫は大企業からの融資に気をよくして人間生体工学の研究にあけくれ、娘を「おぞましい実験」に使って犠牲にし、そのうえ香苗に「また作ればいいだろう」と言った。
決着。地下室で、かおるが見逃そうとした如月(サファイア)にクロスボウを向けて現れ、サファイアを殺して罪をなすりつけるつもりだったと自ら言う。かおるは自首を勧め、「偶然、発射された矢は幸いにも当たらなかった。それだけのこと。」という形を示す。香苗は身代わりになった鈴木を「今頃は刑務所?」と気にかける。連行の場面は描かれないが、のちの会話から逮捕されたと分かる。本物のサファイアの「最初の一通」が狙った宝石『貴婦人の口元』は、香苗がヨーロッパから持ち帰り、宝石商を通じてすでに処分していた。第四話では、真道マイカがそれを香苗から買っていたと語られる。
「フフ‥‥おかしなものね。ヤング・ディテクティブ、私は貴方のことが気に入っていたの。」地下室で、かおるに
堂島哲夫
| 役割 | 堂島家の当主で、科学者・外科医。第一話の被害者 |
|---|---|
| 年齢 | 48歳(死亡時) |
| 外見 | 厳格そうな男 |
医学と生体工学に通じ、あだ名は「リッパー哲夫」。綾小路重工と研究委託契約を結び、一年前にこの屋敷を買い取った。尊大で探偵を相手にせず、九十九かおるを「何だ子供か」と追い返すが、オックスフォードで学んだと聞くと「見かけによらず」と少し見直す。女装の神代かおる子には「この屋敷は、盗聴されている」と書いたメモを密かに渡す。二通目の脅迫状のあと、「誰も入れるな。ノックも禁じる。」と書斎にこもる。
書斎で、妻の香苗に睡眠薬で眠らされたまま密室を作られ、発見の瞬間に指輪の針で頸髄を刺されて死ぬ。数年前に亡くなった娘も頸髄の損傷が死因で、かおるは「親子で、似たような死に方だな」と気づく。香苗の告白では、夫は人間生体工学の研究のために娘を「おぞましい実験」に使って犠牲にした。書斎の本棚の裏から下りる地下室には、手術台のような作業台と、血のようなものが付いたロボットアームが残っていた。実験の中身と、娘が死に至った経緯は語られない。屋敷の盗聴器を仕掛けていたのは如月(サファイア)だった。
地下室のパソコンには「客船のJには、内通者あり。」で始まる「グランマ」署名のメールが残る。導入の客船の会合には「ドクター・ドウジマ」「ミセス・グランマ」がいたが、同じ人物だとする一文は無い。
「はっ、驚きだ。学校もろくに出ていない若者が、社会に出て探偵の真似事とは。」九十九かおるに
鈴木重光
| 役割 | 堂島家の執事。書斎のスペアキーを肌身離さず持っている |
|---|---|
| 外見 | 白髪の老人 |
物忘れの激しい老人としてふるまい、男のかおるを「お嬢様」と呼ぶなど、とぼけた応対でかおるをけむに巻く。娘の存命中は堂島家に仕えておらず、娘の死因を訊かれても初めは「存じません」と答える。夫婦は一時は夕食を共にするのもまれだったが、最近は香苗が夫の肩をたたくほど仲が良くなった、とかおる子に話す。
香苗が肖像画の前で倒れたあと、かおる子の問いに、娘の死が地下室の研究に関係していること、今回の二通より前にも脅迫状があったことを認め、電話の修理を頼んだかという問いには黙る。東の推理ショーで疑いが向くと「はい、奥様。私が殺めましたにございます。」と自白して逮捕されるが、それは香苗の犯行に気づいたうえでの身代わりだった(香苗の言では「彼は老い先が短い。公判中に老衰してもおかしくないから」)。かおるは鈴木が犯人でないと知りつつ、この自白を引き出して容疑者から外した。真犯人の逮捕で解放され、第二話では堂島邸で香苗の帰りを待ち、「慈悲深い法の裁きがあると考えております。」と言う。
「私の罪は、少ないこの余生で、償わせて戴きます。本当に申し訳ございませんでした。」第一話、偽りの自白で
「はい。奥様をいつまでもお待ちする所存でございます。」第二話、女子高生姿のかおるに
百合原玲
| 読み | ゆりはら れい |
|---|---|
| 役割 | ゆりはら教会の牧師の娘。教会の焼死事件をかおるに相談する依頼人。担当医は藤道亜紀 |
| 外見 | 学校の制服に短いスカート |
事故に遭って以来、新しい記憶を40分ほどしか保てない前向性健忘を抱える。記憶が途切れる時点を<境界時間>と呼び、人の特徴はICレコーダーに録音し、今していることはメモに書いて手に握り込む。笑っても境界時間を過ぎれば笑った理由を忘れるため、しだいに感情を表に出さなくなった。血文字のメモ『神 ロウソク さいだん 地 殺した』を持って南条探偵事務所を訪れ、「昨日の夜、ある場所で、人が死にました。」とかおるに相談する。録音に残る自分の声からかおるへの好意を積み重ね、「会いたいな‥‥。」とつぶやく。
目撃したこと。前夜、礼拝堂で父・百合原修が、父になりすます男にガソリンをかけられ焼き殺されるのを見た。レコーダーを奪われていたため、指を切った血でメモを書き、礼拝堂の絨毯の下の床に「偽者が、私の父を、目の前で殺した。」と書き残した。父は昔の事故で顔を整形しており、玲は整形後の顔を覚えられないので、偽者を見分けられなかった。
犯行。自分の書き置きを見つけた玲は、刃物を隠し持って図書室で偽の父に「記憶が戻り掛けているの。」と鎌をかける。喜ぶより宝のことを問い詰める相手に父ではないと悟り、正体を現した男が本物を焼き殺したと語ると、その胸を刺した。現れた蘭子(フィーナ)に肯定され、来たかおるを本で殴り倒し、「私と一緒に来なさい。」という誘いには「考えさせて‥‥下さい。」と答える。境界時間が迫るなか、自分宛てに「事故を目撃した件を、追求しては駄目。」「玲、自分自身を信じて‥‥。」と録音し、泣きながら遺体を倉庫へ運んだところで、すべてを忘れる。
忘れたあと。偽の父を殺したのは恵だと思い込む。公園の女性(水陰)に「八十神かおるを敵だと思いなさい。」と言われるが、かおるを信じて、あえて警告を録音する(「きっとあの人なら、気付いてくれる。」)。終盤、礼拝堂でマイに首を絞められ、かおるの即席の陪審でマルタ・マイ・蘭子が「無罪」とし、「民の声は、神の声。百合原玲、君は釈放だ。」と放免される。偽者の死は公には「百合原修の事故死」として処理され、水陰は「ベストな結末では無かったな」と言う。話末では本物の星野恵が、玲は元気で、かおるのことをときどき思い出していると伝え、二人は数日後に街を出る。
終幕の芹奈の手記の後の問答には「百合原玲は来るでしょうか。」「必ず来ますよ。」とあり、玲の名がフィーナの側で挙がる。父との続柄は、作中で「育ての親で義理の父」「世界でたった一人の。お父さん」などの言い方が並び、実の父か養父かは決まらない。
「私から父を奪ったアイツを許さない。絶対に許さない。」礼拝堂の床に残した書き置き
「どうして‥‥どうしてお父さんを殺したの!?」図書室で、偽の父に
「百合原修」を名乗る男
| 役割 | ゆりはら教会の牧師・百合原修になりすました男。本名は明かされない。深雪への依頼人 |
|---|---|
| 外見 | 牧師の服にロザリオ、丸眼鏡、金色の十字架、白手袋、ポマードで固めた髪。いつもニコニコしている |
柔和な牧師口調の男。南条探偵事務所・《しあわせ探偵事務所》・プリューレ商会の三者に、先代牧師の遺言の暗号の解読を並行して頼み、「本日中に解決して戴ければ、提示額の3倍」と急がせる。女子高生姿のかおるを「可愛らしい探偵さん」と呼び、牧師か神父かのテストをする。娘の玲の件を相談されても「捜査を優先して戴きたい」と取り合わず、玲が何か話していないかを気にする。
前夜、礼拝堂で本物の百合原修にガソリンをかけて焼き殺し、翌日から牧師になりすましていた。目撃した玲が忘れるまで通報を遅らせ、「今日と、明日くらいまでなら、周りを誤魔化せると思ってね」。狙いは教会の地下にある旧軍の石油採掘施設で、玲に「教会の宝」を知らないかと探りを入れる。
図書室で玲に鎌をかけられて正体を現し、「君の父上は、かつて私たちの仲間でね。」「非協力的だったのでね。」と、玲の祖父に力を貸した「我々」の施設を本物が渡さなかったので焼き殺したと語る。その直後に玲に胸を刺されて死ぬ。かおるは、遺言の暗号の二枚目が「私、百合原修は、殺される」と読めることから、依頼人の牧師が偽者だと見抜いていた。死は公には「百合原修の事故死」とされた。
「それもここまでだね。神に仕える人間を演じるのは、ホネが折れたよ。」図書室で、玲に
星野恵
| 読み | ほしの めぐみ |
|---|---|
| 役割 | ゆりはら教会の牧師見習い。百合原修の婚約者で、玲にとっては「姉のような女性」 |
| 外見 | ロザリオにロングヘア。修道服姿もある |
一年ほど前から教会に住み込みで運営を手伝う。玲の録音では「父の婚約者で私の姉のような女性です。だけど、私と余り仲は良くないみたいです。」。玲は恵が電話で「いつ殺すの?」と話すのを立ち聞きし、自分が狙われていると恐れる。
第二話で教会にいた「恵」の多くは、恵になりすました殺し屋マイだった。本物の恵は、百合原修が焼き殺された夜に捕らえられて監禁されていた。終盤、礼拝堂でマイがワイヤーで絞めていたのが本物の恵で、かおるはその命と引き換えに拳銃を捨てる。
話末では、かおると深雪に礼を言いに来て、「女装してない時の方が、ずっと素敵ですね。」「裁判官の温情には感謝致します。」と言い、玲の心に変化が現れたこと、数日後に玲と街を出ることを伝え、「百合原修に代わって、お礼申しあげます。」と去る。
開かずの扉の奥で縛られていて救出された「恵」や、公園・ホテル前・中華街で見かける「恵」が本物か偽者かは明言されない。救出された「恵」は、その後の流れからマイと読める。
「女装してない時の方が、ずっと素敵ですね。」話末、かおるに
マルタ・アルゲリーチ
| 役割 | パリのプリューレ商会に属する宝探し屋(トレジャー・ハンター)。教会から遺言の解読を頼まれた三者の一つ |
|---|---|
| 年齢 | 22歳 |
| 外見 | ブロンドに青い目、触角のように跳ねた髪。デニムにタンクトップ、ヘソ出し。昔好きだった男の名が彫られたネックレス |
関西弁を「日本の標準語」だと思って話すフランス人。「銭を払ってくれる限りは、いいクライアントや。」と割り切る一方、「プロの名にかけて、依頼を二重で受けるなんてせーへんで。」と筋は通す。美術商をしていたころに鍛えた「真贋を見抜く目」で、女子高生姿のかおるを一目で男と見抜き、「変装しとる奴が、あともう一人おる。」とほのめかす。他人の手は握らない。
第二話で偽の恵(マイ)に雇われていたが、それは本当のクライアントの依頼に含まれていたと言い、自分の目的は「《紅の館》の情報や」。図書室でマイがかおるを殺しかけると「かおるはお宝の場所を知ってる唯一の人間」と割って入り、奪われていたかおるの拳銃も「くすねて来た。」と取り返して返す。沢田と東の居場所を「倉庫におるよ」「安心しい。ミネ打ちや」と教え、財宝の場所と引き換えに解放を頼まれるが、二人は見つからなかった。
深雪・かおると礼拝堂の仕掛けで地下坑道に落ち、坑道で深雪と張り合ったあと「急に仲良く」なる。石油施設にたどり着いて、本当のクライアントに場所を知らせる。終演では、玲を殺そうとするマイに「その娘を殺したら、アンタは単なる殺戮者や。」と言い、陪審員として「無罪や」。かおるの判決に「なかなか見事な判事ぶり。少し惚れたで。」と言い、図書室の本《紅の館》を持ち去る。第四話で、本当のクライアントが真道マイカだったと分かる。
アルゲリーチと真道マイカは、同じ菅野ひろゆきの『エクソダスギルティー』(1998年。当サイトではドリームキャスト版『ネオス』で紹介)の現代編にも同じ名前で出てくる。あちらでもアルゲリーチは関西弁を話すトレジャーハンター、マイカは主人公カスミの母で伝説のハンターとして描かれる。
「けどな、死んだ後の予定なんて無いんやから、死ななかったときの予定を考えた方が合理的やろ?」地下坑道で
「その娘を殺したら、アンタは単なる殺戮者や。ポリシーに従うプロの殺し屋やないで。」第二話の終演で、マイに
加茂海老蔵
| 読み | かも えびぞう |
|---|---|
| 役割 | 実験心理学研究所の主任システム・エンジニアで、地下施設の管理運営を担う。専門は催眠療法 |
| 外見 | 白衣の男 |
軽い口説き屋で、秘書に女装したかおる子に「今晩、飲みに行こう! 約束だからな!」と迫る。閉じ込めのあとは後催眠の仕組みを皆に説明し、復旧作業にあたる。制御室でかおる子を殴り倒して首を絞め、止められると「僕自身、何をやったのか、まるで覚えていないんだ‥‥。」「典型的な後催眠の症状だよ‥‥。」と謝る。高熱で倒れた水陰の服をゆるめていたところを、かおるに見とがめられる(加茂は手当てだと言う)。
《復讐者》。かおるが指摘した第三話の犯人。所長・藤道稔に自分の論文を盗用された復讐として、所長を脅して脅迫状と「復讐者からの手紙」を書かせ、催眠状態で自分に向けた拳銃の引き金を引かせた。遺体は冷凍庫に保管し、閉じ込めのあとロッカーから偶然を装って出した。「後催眠」という語を皆に広めたのも、かおるを襲ったのも演出で、全員に後催眠をかけるなど実際には不可能だった。盗用に手を貸した形になった副所長・亜紀には、カウンセリングを装って強い催眠をかけ、ドアを開けて人が入ってきたら自分の喉を切るよう仕込んだ。さらに恋人の山岡静に自分を襲わせて返り討ちにし、静を一連の犯人に仕立てる筋書きだった、とかおるは推理する。閉じ込めそのものは加茂ではなく《8人目》の仕業で、加茂にとっては誤算だった。
決め手。身に隠した刃物を「自衛のためさ」と言うが、自分で言った「そんなものは意味が無いよ」と食い違う。静は、加茂が亜紀に「後催眠を解除するため」の催眠をかけるのを見たと証言し、これも「暗示を解除するキーワードが必要だ」という加茂自身の説明と合わない。亜紀が死んだナイフには、かおるの指紋の上に加茂の指紋が残る。
最期。逮捕を告げられて逃げ、立ちふさがった「轟木警部」(に化けたマイ)に懐のナイフで向かって返り討ちにされ、胸を刺された状態で見つかる。
「いつ、どんなときに発動するか分からないからね。そんなものは意味が無いよ。」閉じ込めのあと、武器を持とうかと言うかおる子に
藤道亜紀
| 読み | ふじどう あき |
|---|---|
| 役割 | 実験心理学研究所の副所長で、所長・藤道稔の一人娘。第二話では百合原玲の担当 |
| 外見 | 白衣に青い大きなリボン(「少しは女らしくしろと良く言われるもので」) |
理知的で、研究者の目で人を見る。玲を「どちらかというと研究対象ね」と言い切る一方、「同じ年頃の友達が、彼女には全くいないの。」とかおるに頼む。父を「家族をないがしろにし、利己的で高飛車」と嫌い、所長誘拐の脅迫状を筆跡から父の狂言と判断する。落としたパスケースを届けてもらった礼に探偵たちへ研究所の見学を許し、それが閉じ込めにつながる。
父の遺体がロッカーから出ると取り乱し、かおるに「本当のことを言えば、復讐はしたいわ。」と漏らす。父の論文から後催眠による人の操作を読み解き、「あの脅迫状を送っていたのは、加茂君なのよ。」「彼の催眠に気を付けて。」とかおるに告げる。加茂と付き合っていて、加茂の論文の進み具合を父に伝えていたことが盗用につながったと静は証言するが、亜紀がそれを盗用のためと知っていたかどうかについて、静の証言は二通りあって食い違う。
やがて、目に光の無い状態で父のコレクションのナイフを自分の喉に当ててかおるの前に立ち、「推理しなさい。私は催眠状態にあるのか、それとも正気なのか。」と迫る。かおるの「催眠状態だ」に「はずれ。」と答え、笑いながら、目に涙を浮かべて喉を切る。かおるの推理では、加茂が「誰かがドアを開けて入ってきたら、自分の喉元に手を当てて横に引け」と催眠で仕込んでいた。
「推理しなさい。私は催眠状態にあるのか、それとも正気なのか。」作業場で、かおるに
山岡静
| 役割 | 実験心理学研究所の所長秘書。加茂の恋人 |
|---|
丁寧で事務的な秘書で、「勝手に歩かれては困ります。」と規則を重んじる。探偵たちを出迎えてゲストIDを渡し、外部との情報を断つ地下の実験施設を案内する。副所長の亜紀は父を憎んでいる、とかおるに漏らし、すぐに「忘れて下さい。」と打ち消す。
会議室で背後から細いヒモで首を絞められる。かおるの推理では《8人目》の仕業だが、確かめられてはいない。所長の愛人だという噂を否定せず、「この件にはまるで関係ないことだわ。」と言う。推理の場で、加茂が亜紀に催眠をかけるのを見たと証言し、加茂を追い詰める決め手になる。加茂が逃げたあと、所長の秘書になり愛人にまでなって盗用の秘密を探ったと明かし、「藤道所長は、死んで当然の人間なのよっ!」と叫ぶ。かおるは「貴女は、その事実を知ったとき、加茂を止めるべきだった。」「貴女は、良きパートナーではなかった。」と言う。かおるの推理では、加茂は静に自分を襲わせて返り討ちにし、静を一連の犯人に仕立てるつもりだった。静のその後は描かれない。
「違う。貴方は違う。貴方が犯人じゃない。」推理の直前、会議室で加茂に
天草由那(風祭由那)
| 役割 | 紅の館のメイド(ハウスメイド人材派遣会社の契約社員を名乗る)。正体は風祭家の末裔で、晩餐で「三代目・風祭男爵」を名乗った人物 |
|---|---|
| 外見 | かおるの見立てで身長150cmほど。男爵に扮したときは、かつらにつけヒゲ、帽子、妙に甲高い声 |
招待された名探偵たちを迎えるメイド。質問には「存じません。」を繰り返し、主人とは面識が無く、指示はすべて屋敷に残された詳細なメモに従っていると言う。寝室が四部屋しか無いとして客に相部屋を頼む。深雪とは館内で話し込み、「由那ちゃん」と呼ばれる。
晩餐の「死」。かつらとつけヒゲで「三代目、風祭男爵」を名乗り、父が三十年前に妻たちと貴婦人の宝を持って消えたこと、館に隠された『貴婦人の涙』のこと、これから殺人事件が起きることを告げ、橋を収納して客を館に閉じ込める。暗転と銃声のあとに倒れ、ミランダが死亡を確認するが、かおるが変装を取ると由那の顔が現れる。遺体はその後、厨房から消える。実際は薬による仮死の演出で、弾痕は事前に作られ、ミランダの検死も偽りだった。由那は厨房の隠し通路の先に潜み、監視カメラで館内と迷宮を見ていた。
追及と自白。水陰と闇塚に隠れ場所を突き止められ、三年前に本物のミランダを姉妹で殺した罪を問われる。「私は由那、風祭由那。妹は由真、風祭由真よ。」と名乗り、妹を殺したかと問われて「殺したわ。それがなに。」と認める。三年前のミランダ殺しは由真一人の犯行だと主張し、「私は二十年間をずっとこの屋敷で暮らした。」「私は、ただ‥‥父の遺産を見てみたかっただけなのよ。」と訴える。かおるは全館放送で、『貴婦人の涙』を「由那に法の裁きがあるまで」預かると告げ、「罪をつぐなってきて、父親の遺産に対面するんだね。」と言う。由那は「父の遺産は‥‥本当にあったのね。」とつぶやく。
風祭家の系譜(由那の父が誰か、妻が四人か五人か、館で暮らした年数)は作中の言葉どうしが食い違っており、由那と由真は「風祭家の末裔の姉妹」とまでしか分からない。
「殺したわ。それがなに。」妹の由真について問われて
「父の遺産は‥‥本当にあったのね。」かおるの全館放送を聞いて
ミランダ・エル・チャイルド/風祭由真
| 読み | 由真=ゆま |
|---|---|
| 役割 | アメリカの探偵組織《ファウスト》の「ワンナイト・ディテクティブ」(二日以上かけて事件を解いたことが無い、の意)を名乗る探偵。館にいたのは、整形で本物になりすました由那の妹・風祭由真 |
| 外見 | ブロンドの女性 |
高飛車で勝ち負けにこだわり、「勝者と敗者の二種類しかいないのよ。」と言う。「元FBI」と聞いていたかおるには「連邦捜査官じゃないわ。検死官をやっていた。」と正す。マイを殺し屋と疑って「殺し屋と相部屋なんて、まっぴらゴメンよ。」と拒む。水陰に、三年前に紅の館の謎に挑んで解けなかったことを暴かれ、「私が苦汁をなめた案件は、この《紅の館》だけだわ!」と認める。かおるに風祭家の童歌を「一度しか言わないわよ。」と教える。
本物のミランダ。迷宮で、かおるたちが数年たった白骨を見つける。手のメモには「私はこの迷宮の謎を解いた。」「この事実を風祭家の人間に知らせる訳にはいかぬ。」「私の無念を晴らして欲しい。」とあり、署名は「ミランダ・エル・チャイ‥‥」で途切れる。かおるはこのメモと童歌で迷宮を抜ける。由那の証言では、三年前に姉妹が『貴婦人の涙』の探索を依頼したところ、ミランダが報酬を大幅につり上げたため、由真が不意を突いて殺した。水陰と闇塚は、姉妹の罪として断じる。
館の「ミランダ」=風祭由真。本物の死を隠すため整形してミランダになり、三年間アメリカで探偵として暮らし、結婚と出産も経ていた。館では晩餐で倒れた姉の死亡を確認し、偽の検死で仮死の偽装に手を貸す。闇塚(悪行)には、アイドラーの某派閥への帰属を勧めていた。迷宮に一人で入って謎を解けずに焦り、「あいつが‥‥殺しに来た!」「私は、アメリカへ帰る。子供の待っている祖国へ帰る!」と叫んで悲鳴を上げ、行方が分からなくなる。迷宮の最深部の『貴婦人の涙』の2ブロック先で遺体が見つかり、姉の由那が殺したと認める。殺害の手段は語られない。
「理想論ね。勝者と敗者の二種類しかいないのよ。」紅の館で、かおるに
「私は、アメリカへ帰る。子供の待っている祖国へ帰る!」迷宮で
闇塚弥平(悪行双麻)
| 読み | 悪行双麻=あぎょう そうま(闇塚弥平の読みは作中に示されない) |
|---|---|
| 役割 | ここ一年、ベルギーから東欧で名を上げた探偵で、アイドラーにもファウストにも属さない。正体は《しあわせ探偵事務所》の元所長でクラスAの悪行双麻 |
| 外見 | 深雪いわく「しぶーいオジサマ」「いかにも怪しい風体」。悪行としては、深雪の写真の「帽子を目深にかぶった男」 |
一年ほど前、署名入りの引退の文書を残して消息を絶った《しあわせ探偵事務所》の元所長・悪行双麻は、第一話から名前だけが語られる。戦歴は案件820件・解決811件で、沢田のあこがれ。妻帯者で、深雪は「ボス」と呼んで生存を信じて待つ。第四話の紅の館には、ベルギーの小さな依頼人から『貴婦人の首飾り』を取り返してほしいと頼まれたという探偵・闇塚弥平が来る。紳士的でとぼけた口調で、ホールの弾痕に最初に気づき、深雪と館内を探って落ちてきたシャンデリアから救い、屋根の上ではかおるに「君のだ。受け取れ!」と拳銃を投げ渡す。
由那の追及。監視カメラの前では「疲れ果てたオヤジ」を演じ、由那の目がかおるに向いているあいだに、水陰と厨房の隠し通路の先で由那を見つける。水陰と交互に三年前の殺人と姉妹の入れ替わりを推理し、由那に名を問うて「私の調査結果と一致する。真実をありがとう。」と言い、妹殺しを認めさせる。
正体。水陰に「その暑苦しい着ぐるみを、脱いだらどうだ?」と言われ、悪行双麻として話す。この一年の闇塚の活躍は悪行によるものだった。水陰の「戻ってこい。」を断ってベルギーに残ると言い、深雪にもかおるにも会わずに帰る。事件については、真道マイカとサファイアの代理戦争、風祭家の資産問題、アイドラーの内紛が交錯した案件で、「結局、オレたちは踏み絵を踏まされたって訳か。」と言う。『貴婦人の首飾り』は「坊やの顔を立てて見逃すさ。だが、きっと取り返す。」。かおるについては「ロンドンまで、ウチから数時間。たまに顔を見に行ってやろうか。」。終幕の黒幕側の会合では、フィーナの日本組織を潰し、紅の館の一件でベルギーにいると分かった「ある男」が話題になる。悪行を指すと読めるが、名は出ない。
前作から。悪行双麻は前作『不確定世界の探偵紳士』の主人公。前作では国際犯罪組織アウトフィットの極東支部を潰し、その後ミントとベルギーで暮らしている。前作の追加シナリオは本作第三話と同じころの出来事で、その終わりに『風祭男爵』の招待状が届き、本作第四話につながる。東が語る「奥さん」との決闘も前作の出来事である。会合で語られる「ある男」と「例の実験体」は双麻とミントの境遇と合うが、本作に名は出ない。
「そんなことしたら、ガムテープのように、ベルギーまでくっついてくるぜ。」終幕、「深雪どのには、会っていかないのか。」と問う水陰に
「おいおい、勘弁してくれ。私は成熟した女性にしかときめかない。」紅の館で
真道マイカ
| 読み | しんどう マイカ |
|---|---|
| 役割 | 古美術商を名乗る資産家。ミランダやマイからは「盗掘業者」「盗掘屋」と呼ばれる。マルタ・アルゲリーチの依頼主 |
| 外見 | 胸元にアホウドリの羽根の飾り |
優雅で挑発的な、好奇心の強い資産家。「私は面白そうなことが大好きなの。」と言い、かおると同じ年頃の息子がいる。紅の館の登記まで調べて来ており、皆の前でマイを「フィーナちゃんの部下でしょ」「殺しを本業とする娘」と暴露する。マイの話では、かつてフィーナの組織と敵対し、マイの標的になりながら、ただ一人逃げおおせた相手でもある。
食堂でかおるがサファイアに拳銃を突きつけられると、丸腰で背後から「はい、動かないで。」とはったりをかけ、足にかすり傷を負う。「噂通りの義賊のようね。」と言い、かおるに迷宮では「目に頼っては駄目。」「正解図を頭に思い浮かべ、その通りに進むの。」と助言する。かおるはこの言葉どおりに迷宮を進む。『貴婦人の口元』はすでに堂島香苗から買っており、館に眠る「ある石」を探しているとして、七尾芹奈の居場所を「おまけ」に付けてかおるを雇おうとするが、「信念のために」探偵をやっていると断られる。第二話のマルタの本当のクライアントだったことも「さすがはクラスAですこと。」と認める。
終幕では『貴婦人の涙』のありかが分かって上機嫌で、悪行は「どちらの勢力にも属さず、我が道をゆき、力がある。」と見る。黒幕側の会合では、フィーナがマイカの一人息子を利用する手を打っていると言い、サファイアは「息子も母親と同じ穴のムジナだわ。」と返す。
「それは宗教と言うのよ坊や。」「信念のために」探偵をやると言うかおるに
その他の登場人物
玲の父で、星野恵の婚約者。生きて登場する場面は無い。第二話の前夜、礼拝堂で、のちに彼になりすます男にガソリンをかけられて焼き殺された。偽者の言では、「我々」から仲間と見なされていたが、本人は「技術屋」だとしてそれを否定し、教会の地下の石油施設を渡さなかった。焼死体は身元不明の男性として報じられ、事故として扱われた。先代の牧師も教会で焼死している。玲の書き置きによれば、目が大きくまつ毛が長い。話末で本物の恵が「百合原修に代わって」かおるたちに礼を言う。
後催眠の権威で、ナイフの収集家。叔父がアイドラー日本支部の政調会長で、水陰が研究所に派遣されたのはそのため。第三話の一週間前から行方不明で、「藤道稔は誘拐した」という手書きの脅迫状が届いていた。実際には、論文を盗用された加茂に脅されて脅迫状と「復讐者からの手紙」を書かされ、催眠状態で自分に向けた拳銃の引き金を引かされて死んでいた。遺体は冷凍庫に保管されたあと、ロッカーから見つかる。第三話の冒頭には、正体不明の声に催眠をかけられ「気付いてくれ‥‥娘よ‥‥。」と苦しむ場面がある。声の主は明かされない。
名前は作中に出ない。数年前に頸髄の損傷で亡くなり、二階の廊下に香苗の署名入りの家族三人の肖像画と、子供用ベッドやぬいぐるみの残る部屋がある。香苗の告白では、父の哲夫が研究のために「おぞましい実験」に使って犠牲にした。実験の中身と死に至った経緯は語られない。蘭子はこの家の娘を名乗るが、肖像画の少女とは似ても似つかない。
若いころは名の知れた探偵だったといい、かおるのクラスA昇格に最後まで反対した。第一話の前、ロンドンのアイドラー本部で護衛を連れてかおると会い、「過分な地位と名誉を、精一杯守るよう精進してくれたまえ。」「顧問のコナーと仲良くするのも、考え物だ。」と釘を刺す。かおるはこの人物が「大の苦手」。アイドラーの派閥は会長派・副会長派・顧問派に分かれ、コナーは水陰を「副会長派の人間」と言う。
マイの過去の独白にだけ出る女性。ヨーロッパのとある街で13歳のマイを引き取り、「マイ」と呼んで、道徳や語学を教えた。カレッジを出た教養のある人だったが、身体を売って暮らしていた。手伝うと言うマイを泣きながら平手打ちし、翌日、マイに目を付けていた老人に自分を差し出して姿を消す。三日後、意識の無い状態で戻り、唇の動きで「アイシテル ダカラ シナセテ」と伝えて、マイの手で死ぬ。セルシアの恋人は「ディテクティブ」で、かおるが弾く作曲者不明の曲を弾いていた。
名は出ない。セルシアを失って泣き暮らすマイのもとに来て「セルシアはまだ生きている。取り戻したくはないか?」とそそのかし、セルシアを買った老人をマイに殺させる。セルシアの死後にまた現れ、「世界では、同じ悲劇が繰り返されている。」「フィーナ様は、それらを浄化するために、行動している。」「私が教えてやる。殺し方を。」と言って、一年間マイに殺しを仕込む。
「風祭八右衛門」は代々襲名される当主名。図書室の資料では、三代目の八右衛門には五人の妻がいて、子は二人(晩餐の男爵の口上では「四人の妻」と語られ、食い違う)。貴婦人の宝(『口元』『首飾り』『涙』『花』『眼』の五点)は初代が造った装飾品で、妻たちに分け与えられ、館に残った五人目の妻が八右衛門を殺して『涙』を隠したと伝わる。五点が一つに集まると「巨大な災いをもたらす」とされる。第二話から「風祭男爵」の名で招待のメールがかおるに届き、第四話の招待状には、かおる宛てに一文字おきに読むと「是ニスの秘密語れ」(ゼニスの秘密)となる一文が添えられていた。
殺された乗客ジェイムズ・スミスは、エーワイエイ技研重工の社員で、会社から「超小型核反応炉」を盗んだとして国際手配されていた。船の一室では、パリ警察の元警部の髭の男、名門貴族出身のミス・ケイト、ドクター・ドウジマ、闇の世界で知られるミセス・グランマが、警察に保護を求めた「裏切り者」ミスターJの帰りを待ち、そこにフィーナと綾小路も加わる。連絡が不通となり、フィーナが「神罰が下されましょう」と言った直後に悲鳴が上がる。ミスターJとスミスが同じ人物か、ドウジマが堂島哲夫かは明言されない。本物の警備主任チェンは、乗船初日にかおるに平手打ちを見舞っている。
第二話のホテルの夜、かおるが七尾に語る女性。アイドラーのクラスBの探偵で、高級検事と婚約したばかりだったが、大規模な犯罪組織への潜入捜査に志願した。組織の中で犯罪に手を染め、一般人を大勢死なせ、止めに来たかおるの目の前で自ら銃で命を絶った。七尾は「自らの罪を償ったんですね」と言い、かおるは「償うチャンスを放棄したって思えた」と答える。
セントラル街のショットバー「ジプレ」の強面のマスター。サングラス姿で、かおるには「特殊部隊の隊長って感じ」。決まったカクテルを注文した客に、預かっている暗号の手紙を渡す。差出人は明かされない。客の話では、以前いたバーテンダーはいなくなった。かおるが綾小路と七尾を見つけ、優希と飲み明かし、東に絡まれる店でもある。
街の各所とジプレで、変装したかおるに声をかける女性たち。「私はね、実は全日本変装協会のメンバーなの。」と名乗り、スーツケースの五桁の番号合わせの手がかりや暗号を出す。スーツケースは、ミレニアムホテルのフロントが「とある女性」から預かった物をかおるに渡すためのもので、預けた女性が誰かは明かされない。
中華街の犯罪組織の元締めだった孔龍は故人で、その組織は元所長時代の《しあわせ探偵事務所》が壊滅させたと街でうわさされる。堂島邸の前の所有者として「御剣(みつるぎ)」の名が出るが、かおるは「関係は薄そうだな」と流す。いずれも前作『不確定世界の探偵紳士』の人物で、本作はそのつながりに触れない。
第二話の話末で、マイの再戦の願いを聞く場にいてフィーナを「フィーナ様」と呼び、「負ければ、厳罰だよ。それでもかね。」と問う男。終幕の会合の冒頭で「誰が敵で、誰がそうでないのか、判明はした。」と話す男と、「私は大切な手駒まで使っていますから、それなりのリターンは期待させてもらいますよ。」と言う女。第一話の話末で、蘭子に行き先を問い「すぐに手配を」と答える女。いずれも名は出ず、誰なのかは示されない。