ストーリー詳細 — ミステリート〜不可逆世界の探偵紳士〜
本作にヒロインごとの分岐は無い。導入と全4話の事件を順に解いていく一本道の探偵推理アドベンチャーで、街のマップを歩いて手掛かりを集め、チャージ・ポイントが満ちると犯人を指摘する。以下は各話の真相と決着、そして終幕までをまとめたもの。記述はPC DVD-ROM版『ミステリート〜不可逆世界の探偵紳士〜』(2004年・18禁)の内容に基づく。PS2版(2006年)以降の移植版では、キャラクターの変更や音声の追加などが行われている。 ▼詳細を読む はネタバレを含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。
導入 — 客船マリア=テレジーア号
ロンドンに事務所を構える八十神かおるは、アイドラーのクラスAに昇格したその日、顧問のコナー局長に招かれて豪華客船マリア=テレジーア号に乗っていた。住み込みのアシスタント七尾芹奈を相手に「何か事件でも起きれば、楽しいんだけどね」とこぼすかおるの前で、乗客の一人が殺される。後年の版の紹介では、この導入は「第零話」として扱われている。
同じ船の一室では、髭の男、ミス・ケイト、ドクター・ドウジマ、ミセス・グランマらの会合が開かれ、綾小路と、様付けで呼ばれるフィーナも加わっている。一同は、警察に保護を求めた「裏切り者」ミスターJの帰りを待っていた。連絡が不通になると、フィーナは「その者には、神罰が下されましょう。」と言い、直後に女性の悲鳴が上がる。
殺されたのは、エーワイエイ技研重工の社員ジェイムズ・スミス。自室で受話器を握ったまま、背後から果物ナイフで心臓を一突きにされていた。同時に無線機と操舵機能が故障し、船は遭難する。かおるは現場を見ないまま、犯人はプロの殺し屋で、第一発見者のウェイトレスも、目の前にいる「チェン警備主任」もその変装だと指摘する。見抜けたのは、乗船初日に本物のチェン主任に平手打ちされて顔を知っており、本物のほうが胸が大きかったからだった。女はライターを爆弾だと偽って「痛み分け」を持ちかけ、「‥‥マイよ。」とだけ名乗って海へ飛び込む。
コナー局長は、スミスが窃盗で国際指名手配されており、盗まれたのが超小型核反応炉だったと明かす。炉の行方は語られない。かおるは殺し屋を逃がした「名誉挽回」として、コナーの依頼の話を聞くことにする。
デッキでかおるは、芹奈を日本の《しあわせ探偵事務所》へ送り出す。芹奈は「もちろんですっ。戻ってきます!」と答え、「手紙、くれよな」に「はい。毎日書きます。」と約束する。かおるの回想では、芹奈は家族を殺されており、かおるはその事件を「オレの探偵としての経歴の、唯一の汚点」と呼ぶ。
会合で「裏切り者」とされたミスターJと、殺されたスミスが同じ人物なのかは、作中で明言されない。
第一話「からくり屋敷の密室殺人事件」 話末
それから一年近く、芹奈からの手紙も電話も途絶えた。来日したかおるは、偽名「九十九かおる」でクラスDの新入りとして《しあわせ探偵事務所》に入る。有名人のかおるは、「神代かおる子」の名で女装して捜査することが多い。最初の案件は、怪盗サファイアの脅迫状が届いた科学者・堂島哲夫の屋敷だった。
コナー局長の依頼は、一年ほど前から消息を絶っている《しあわせ探偵事務所》の元所長、クラスAの悪行双麻を捜すことだった。コナーはもともとかおるの師匠サー・ジャスティスに頼んだが、ジャスティスは断って、かつての弟子のかおるを推した。コナーはクラスDのライセンスを仮に支給し、「八十の次だから」と九十九かおるの名で登録する。事務所では所長の毒島に冷遇され、先輩所員の東と張り合う形で堂島邸へ向かう。
堂島家には「ダーク・サファイア」の名で脅迫状が届いていた。やがて当主の哲夫が書斎で死んでいるのが見つかる。鍵は室内の机の下にあり、スペアキーは執事の鈴木が肌身離さず持っていたため、現場は密室だった。かおるは鈴木が犯人ではないと分かっていながら、犯人に逃げられるのを避けるために、東に釣り糸の密室トリックの推理を披露させる。鈴木は「はい、奥様。私が殺めましたにございます。」と自白し、逮捕される。ほどなく正体を見抜いた南条深雪と所員の沢田に、かおるは「犯人は、密・室・を・作・っ・て・か・ら殺した。」と明かす。
犯人は妻の堂島香苗だった。執事が書斎へ運ぶ茶か菓子に即効性の睡眠薬を入れて夫を眠らせ、夫がまだ生きているうちに釣り糸と酒瓶と鍵で密室を作った。そして発見のとき、一同の前で真っ先に夫を抱き起こし、結婚指輪に仕込んだ細い針で頸髄を刺して殺した。「30分以内」とされる死亡推定を逆手に取り、警部との電話と沢田との会話をアリバイにしている。確実に仕留めるために、日頃から夫の肩や首をマッサージして刺す場所を確かめ、うめき声を消すために外で電話工事をさせて、開けた窓から雑音を入れるという「二つの保険」もかけていた。
二通の脅迫状は、香苗がサファイアの名を騙って自分で作ったものだった。密室トリックは解かれる前提で、サファイアに罪を着せるはずだったが、スペアキーを鈴木が持ち歩いていたことを香苗は知らず、内部の者が疑われる形になった。本物のサファイアの脅迫状は、二通より前に届いた最初の一通で、香苗がヨーロッパから持ち帰った宝石『貴婦人の口元』に関わるものだった。香苗はすでにそれを宝石商を通じて処分していた。かおるが香苗を疑ったきっかけは、二通の脅迫状が同じ時刻に投函されたことだった。
夜の地下室で、かおるはまず、出資元の社員を名乗っていた如月俊郎が怪盗サファイアの変装で、しかも女性であることを暴く。しかし「オレの仕事は、この殺人事件を解決することさ。」と逮捕はしない。そこへ香苗がクロスボウを構えて現れ、かおるは「堂島香苗さん、貴女だ!」と指摘する。香苗の告白では、夫は人間生体工学の研究のために娘を「おぞましい実験」に使って死なせ、そのうえ香苗に「また作ればいいだろう。おまえの年ではもう無理かな?」と言った。鈴木はこれを知っていて、香苗の犯行に気付き、老い先の短い自分が罪をかぶったのだった。
「かなわないわね、ヤング・ディテクティブ‥‥ええ、そう。堂島哲夫は、私の最愛の娘を、殺したヤツなのよ。」(堂島香苗)
かおるは自首を勧め、クロスボウの件は「不審者を見つけて威嚇した」ことにすればいいと示す。香苗は、クロスボウでサファイアを殺して罪をなすりつけるつもりだったと認める。サファイアは「クラスAディテクティブへの、ささやかな敬意。」と言い残して去る。逮捕の場面は描かれないが、のちの会話から香苗が逮捕されたことが分かる。手柄は《しあわせ探偵事務所》のものになり、深雪はそれと引き換えに、かおると沢田を自分の南条探偵事務所に引き取る。
話の終わりには、堂島家に「ホームステイ」していた少女・蘭子が詩を暗唱し、迎えの女に「次の場所へ‥‥」「ここも失敗‥‥。」と言って去る。
第二話「人間焼失殺人事件」 話末
毒島の告げ口で、南条探偵事務所は活動停止処分の危機に立たされる。ゆりはら教会の礼拝堂では前夜、身元の分からない人物が炎に包まれて死んでいた。相談に来たのは、記憶を約40分しか保てない牧師の娘・百合原玲。牧師の百合原修は、先代牧師の遺言の暗号の解読を依頼してくる。そしてこの話で、かおるはついに芹奈と再会する。
星野恵を追った先のバー「ジプレ」で、かおるは老紳士・綾小路と一緒にいる芹奈を見つける。「捜したぜ‥‥おまえから連絡が跡絶えて、もう一年近くになる。」芹奈は何も答えず、「ゆりはら教会の案件からは、手を引いて下さい。」「かおる様はご存じ無いのです。百合原玲は‥‥。」と言いかけたところで老紳士に遮られる。芹奈を連れて行こうとしたかおるは、老紳士の杖で打ち倒されて気を失う。
目を覚ますと、ミレニアムホテルの一室で芹奈の膝の上にいた。かおるはロンドン時代の友人エマが、潜入先の組織で犯罪に加担し、かおるの目の前で拳銃で自ら命を絶った話をし、「オレと一緒にロンドンへ帰ろう。」と言う。芹奈は「‥‥すみません。本当に、すみません。」と拒み、理由は話さず、「私は、もしかしたら、かおる様が怒られることを、しているのかもしれません。」とだけ言う。芹奈は「最後のわがまま」として抱いてほしいと求め、二人は一夜を共にする。それは芹奈にとっての別れで、彼女は「忘れない」と泣いて去る。
部屋に閉じこもったかおるは、深雪にカマをかけられて一夜のことまで聞き出され、「芹奈ちゃんは、アナタに止めて欲しかったんじゃないの!」と責められる。深雪が活動停止の責任をかおるに黙って一人で負っていたことも知り、かおるは「七尾は敵だ。救わなくてはいけない敵だ。」と立ち直る。
かおるは遺言の暗号の二枚目を解き、「私、百合原修は、殺される。いち、さん、ご、に、よん」という文から、依頼人の牧師が偽者だと推理する。玲の父は昔の事故のあと顔を整形しており、音声でしか人を覚えられない玲には、今の父の顔が分からなかった。
前夜、礼拝堂で焼け死んだのは本物の百合原修だった。牧師になりすましていた男が修にガソリンをかけて火を点け、翌日から牧師を演じていた。男はのちに、教会の地下には旧軍の重油の採掘施設があり、自分たち「我々」がその投資者だったこと、修は「かつて私たちの仲間」だったが「技術屋だ」と否定し、協力しなかったので殺したことを自白する。修の婚約者・星野恵は捕らえられており、恵に化けて教会に入り込んでいたのは殺し屋マイだった。
玲は父が焼かれるのを目撃していた。記憶を失う前に指を切り、血で「たったいま私の父は殺された。焼かれて殺された。」と礼拝堂の絨毯の下に書き残していた。自分の書き置きでそれを知った玲は、出刃包丁を隠し持って図書室で偽の父に「記憶が戻り掛けているの。」と鎌をかけ、自白を引き出して、男の胸を刺した。男は息絶える。そこへ現れた堂島蘭子が「よく出来ました。百合原玲。」と玲を肯定し、駆けつけたかおるは死体と蘭子を目にした直後、背後から玲に本で殴られて気絶する。蘭子は玲に「私と一緒に来なさい。」と誘い、玲は「考えさせて‥‥下さい。」と答える。玲は死体を礼拝堂の倉庫まで引きずったところで、また記憶を失う。
「――たったいま私の父は殺された。焼かれて殺された。」(百合原玲の書き置き)
教会では、過去にも8人が焼け死んでいた。教会の電気代は異様に高く、礼拝堂の周りには電線が張り巡らされていた。電線が地下の施設を動かし、強い磁界と電磁波が礼拝堂に渦巻いて貴金属が放電する。かおるはこれを「ちょうど馬鹿でかい電子レンジを考えればいい。」と説明し、過去の焼死に教会の地下の遺産が関わっていたことを示す。教会の財宝とは石油のことだった。
深雪とトレジャー・ハンターのマルタとともに地下坑道を抜けて施設を突き止めたかおるは、礼拝堂で、本物の恵を人質にしたマイと交渉する。そこへ玲が現れ、マイは「気が変わった。この娘には死んでもらう。」と玲の首を絞める。ここで犯人選択に入り、玲自身の視点で、この一日の真相が語られる。かおるは玲を殺させないために、マルタ・マイ・蘭子を陪審員にした即席の裁判を開き、全員が「無罪」とする。
「民の声は、神の声。百合原玲、君は釈放だ。」(かおる)
マイが「フィーナ様」と呼んで仕える主が、蘭子だとここで分かる。蘭子は「油田は枯渇しています。採掘は不可能。」と言い、去り際に「七尾も私も、楽しみに待っています。」と告げる。マルタは、本当の目的が《紅の館》の情報だと明かしている。のちに水陰はこの裁きを「遵法精神に反する」と評し、事件は「百合原修の事故死」として処理される。話の終わりに恵は礼を言い、玲とともに数日後に街を出る。一方、フィーナの前ではマイが、誇りの問題としてかおるとの再戦を願い出る。負ければ命を絶つと言うマイに、フィーナは許しを与える。
第三話「催眠殺人事件」 話末
シンポジウムの朝、深雪に頼まれたかおるは、本物のライセンスで過去半年分の解決ポイントを南条探偵事務所へ移し、事務所に最優秀オフィス賞を取らせる。その量から正体を言い当てたのが、日本のクラスA・舞ノ小路水陰だった。次の案件は、所長誘拐の脅迫状が届いた実験心理学研究所。地下の実験施設に入った探偵たちは、そのまま閉じ込められる。
研究所へ向かう前夜、深雪はかおるの部屋を訪ねて「私たち、付き合おうっか。」と言い、二人は結ばれる。翌朝の深雪は上機嫌で「深雪って呼んで。」と言う。
地下施設にいたのは、副所長の藤道亜紀、主任システム・エンジニアの加茂海老蔵、所長秘書の山岡静、社長秘書に化けたかおる、東、水陰、轟木警部の7人。施設は24時間閉ざされ、所長・藤道稔の遺体がロッカーから見つかる。その手には「復讐者からの手紙」が握られていた。「後催眠」で誰かが操られているのではという恐れが広がるなか、女装したかおるは加茂に襲われて首を絞められ、水陰に救われる。静も何者かに首を絞められ、水陰は何者かに一服盛られて倒れる。
かおるは出来事を二つに分ける。閉じ込めと二通目のメールは《8人目の監視者》、所長殺しは《復讐者》の仕業だった。「一通目と三通目が《復讐者》によるもの、そして二通目が《8人目の監視者》によるものだからだ。」かおるは《8人目》と「幕が引かれるまで」の休戦を結ぶが、副所長の亜紀は、かおるの目の前で自分の喉を切って死ぬ。その直前、亜紀は「推理しなさい。私は催眠状態にあるのか、それとも正気なのか。」と問い、「催眠状態だ」と答えたかおるに「はずれ。」と返していた。
《復讐者》は主任エンジニアの加茂海老蔵だった。動機は、自分の論文を所長に盗まれたことへの復讐。盗用には加茂の恋人だった亜紀が関わっていた(亜紀の意図については、静の証言が二通りある)。加茂の恋人の静は、盗用の証拠をつかむために所長の愛人になっていた。加茂は所長を拳銃で脅して脅迫状と犯行予告を書かせ、催眠状態にして拳銃を自分に向けさせ、引き金を引かせた。亜紀には、カウンセリングを装って強い催眠をかけ、誰かがドアを開けて入ってきたら喉元に手を当てて横に引け、と命じていた。全員が後催眠で操られるという恐れは加茂自身が広めた目くらましで、かおるへの襲撃も正気のまま演じたものだった。かおるは、加茂が静を一連の犯人に仕立てて殺す筋書きまで用意していたと推理する。
全員を会議室に集めたかおるは、犯人選択の後「加茂 海老蔵さん、藤道稔、並びに藤道亜紀殺害の容疑で逮捕する。」と告げ、隠し持った刃物、静の証言、ナイフの指紋で加茂を追い詰める。加茂は逃げ出し、静は「あの男は‥‥藤道所長は、死んで当然の人間なのよっ!」と打ち明ける。加茂はやがて、胸を刺された遺体で見つかる。逃げる加茂の前に立ちふさがったのは、轟木警部に化けたマイだった。加茂は懐のナイフを抜いて向かい、返り討ちにされた。マイは「正当防衛と言って欲しい。」と言う。
《8人目の監視者》はマイだった。かおると東が仮眠室で話していた時から、本物の轟木を殴って縛り、倉庫に閉じ込めて、轟木になりすましていた。かおるは、変装を解いた自分の顔を見たことのない轟木が一目でかおるだと見抜いたことから、入れ替わりに気付く。轟木の姿のマイは、水陰の護衛にも付いていた。
休戦が終わり、工事現場でかおるとマイの一騎打ちになる。「プロとしての、誇りのために、来たわ。」マイはワイヤーでかおるの喉を締め上げるが、一本背負いでエレベータシャフトの穴へ投げられる。落ちかけたマイの手首をかおるがつかんで引き上げる。
「オレのモノになるか? 拒否なら手を振り払え。肯定なら相応の返事を。」(かおる)
「‥‥Ja。」(マイ)
現れた綾小路は、フィーナのもとへ来るようかおるを誘うが、かおるは「フィーナってゴスロリのガキに伝えておきな。必ず潰してやる。」と拒む。綾小路は失敗したマイを見捨て、かおるは「こいつはオレがもらう。」と引き取る。話の終わり、かおるは事務所の深雪に「氷川マイちゃんだ。今晩からここで暮らす。」と紹介する。
第四話「名探偵集合」 — 紅の館
《紅の館》の当主・風祭男爵から、名探偵たちへの招待状が届く。参加者の名簿の最後に、消息を絶った元所長・悪行双麻の名を見つけた深雪は「ボスは生きてる。」と同行を望み、かおる・深雪・マイは山奥の館へ向かう。
出発の前、マイは13歳のときの過去を語る。引き取ってくれた女性セルシアを取り戻すために、彼女を買った老人をナイフで殺したこと。変わり果てた姿で再会したセルシアの願いで、その胸にナイフを刺したこと。その後、フィーナに仕える女に殺しを教え込まれたこと。かおるは、自分の肉親がゼニスという殺しの組織に皆殺しにされ、その依頼人と実行犯を追っていると明かす。深雪とは二度目の関係を持つが、その場面は描かれず、あとのかおるの独白で分かる。
館に集まったのは、かおるたちのほか、「ワンナイト・ディテクティブ」と呼ばれる元検死官のミランダ・エル・チャイルド、古美術商を名乗るトレジャー・ハンターの真道マイカ、ベルギーの探偵・闇塚弥平、アイドラー本部の依頼で来た水陰。悪行の席は「欠席」だった。晩餐で男爵は、館に隠された『貴婦人の涙』を見つけたときに諸君は解放されると告げ、殺人を予告した直後、銃声とともに倒れる。ミランダが死亡を確認し、変装を取ると、男爵はメイドの天草由那だった。橋が収納されて館は外から切り離され、検死の最中に死体が消える。
食堂では怪盗サファイアが現れ、マイの隙を突いてかおるに拳銃を突きつける。はったりで割って入ったマイカは足を撃たれる。屋根の上でかおるは逃げるサファイアを撃つが、取り逃がす。大人の姿に変わった水陰(闇塚の言う「推論絶対化時間」)は、晩餐の弾痕は事前に作られ、弾は後から抜き出されたこと、ミランダの検死が「偽りだ」ということを言い当てる。
かおるは絵画と童歌の謎を解いて地下の迷宮に入り、本物のミランダ・エル・チャイルドの白骨とメモを見つける。深雪は叫ぶ。「じゃあ、私たちと一緒にいたミランダって誰よ!?」最深部でかおるは『貴婦人の涙』と、その2ブロック先に倒れた由真の死体を見つける。
犯人選択の後、水陰と闇塚が厨房の隠し通路の先で由那を追い詰める。晩餐の死は、薬による仮死の演出だった。二人が断罪したのは三年前の殺人である。三年前、風祭家の末裔の姉妹、姉の由那と妹の由真は、ミランダに『貴婦人の涙』の探索を依頼したが、宝の価値を知って方針を変え、ミランダは殺された。ミランダの死を隠すため、由真が整形してミランダになりすまし、三年間アメリカで探偵として暮らしていた。館にいた「ミランダ」は由真だった。姉妹はミランダの名声を使って探偵を選び、館に招いていた。由那は「私は由那、風祭由那。妹は由真、風祭由真よ。」と名乗る。
宝を売ってアメリカへ戻るつもりだった由真を、由那は許さなかった。水陰の「彼女を、殺したな!」に、由那は「殺したわ。それがなに。」と答える。殺した手段は語られない。由那は「ミランダ・チャイルドを殺したのは由真よ!」と叫び、自分は「父の遺産を、この目で見たかっただけ」だと言う。迷宮の最深部から全館放送で、かおるは由真の死体を確かめたことを告げ、宝は「由那に法の裁きがあるまで、オレが預かっている」と伝える。
迷宮にはサファイアが現れ、宝は「もともと私のもの」だと言うが、その理由は明かさない。かおるは、素顔をさらしてマイに勝てば宝をやると約束する。仮面の下は、《しあわせ探偵事務所》によく顔を出していた麻生優希だった。マイは素手で優勢に闘うが、かおるの「可能な限り相手を傷つけるな」という命令を守って手刀を寸前で止め、その隙に投げられて敗れる。かおるは青い宝石を渡すが、それはニセ物で、本物は手元に残した。優希は「今はこれでいい。約束だしね。」と言って去る。かおるによれば、彼女はニセ物だと分かって納得して去ったのだった。
闇塚弥平の正体は悪行双麻だった。水陰に「その暑苦しい着ぐるみを、脱いだらどうだ?」と言われて素顔で話し、この一年の闇塚の活躍も悪行によるものだったと分かる。水陰の「戻ってこい。」を断ってベルギーに残ると言い、深雪には「そんなことしたら、ガムテープのように、ベルギーまでくっついてくるぜ。」と会わずに去る。深雪は最後まで、闇塚が悪行だったことを知らない。悪行と水陰は、今回の招待が名探偵を一人一人吟味する「踏み絵」だったと話し合う。館では、悪行は「ミランダ」からアイドラーの某派閥へ入るよう勧められ、水陰はサファイアから同じ誘いを受けていた。
「結局、オレたちは踏み絵を踏まされたって訳か。」(悪行双麻)
ロンドンへ戻ると決めたかおるに、深雪とマイが同行を申し出る。深雪は「でも、私の心はボスのものよ。」と言い、悪行が来なかったのに機嫌がいい理由を「訃報も来なかったから。」と答える。
終幕 — 黒幕側の会合と七尾芹奈の手記 最終エンド
第四話の事件のあと、物語は舞台を移す。かおるの敵となる側の人々の会合と、七尾芹奈が書いた手記で、本作は幕を閉じる。
会合にいるのは、フィーナ、コナー局長、かおるの師匠サー・ジャスティス、サファイア、綾小路、そして芹奈。綾小路はジャスティスに促されて変装を解き、その直後に話し出すのがコナー局長である。並びからは綾小路がコナーの変装だと読めるが、同じ人物だと言う一文は無い。コナーは「日本のクラスA二人は、どうやらあっち側に付くようですな。」と、かおると水陰を敵側と見なす。
フィーナは「日本組織が、ある男に潰されました。」と言い、コナーはその男が「例の館の一件で、ベルギーに滞在している」と言う。フィーナは「例の実験」が終わるまでアジアに留まるという。サファイアは、マイの件の詫びとして、フィーナから『貴婦人の花』を受け取っていた。フィーナは、邪魔なトレジャー・ハンターのマイカについて「彼女には一人息子がいます。それを利用します。」と言う。「史上初のダブルAクラス」に昇格したジャスティスは、サファイアの「弟子に対して、本気になれるのかしらね。」に「一片の情もない。」と答え、かおるを「洞察ができぬ男だ。私の唯一の汚点だよ。」と評する。
芹奈の手記では、芹奈は家族を殺した女性を自ら殺めている。殺めた手段は書かれない。「エミリィ先生」と呼ばれる世界的な外科医、エミリィ・クワトロ・フィーナは、その遺体を芹奈の前で解剖して見せ、「応報」を説く。先生は芹奈に「あなたの行為は合法です。」「私たちに従属する人間です。」と言い、同時に「合法というのは正義ではないということです。」とも言う。
芹奈は余命一年を宣告されていた。「申し遅れましたが、あと一年で、私は他界するそうです。」二日泣いたあと、自分にできることを五つ書き出す。「一.私から家族を奪った人間に報いを。」「五.彼と愛し合いたい。」二から四は「彼」と一緒にしたいことだったので削り、残った一と五は両立しない。「そして私は選びました。頬を涙が流れました。」どちらを選んだかは書かれていない。「彼」の名も書かれないが、先生は「彼」について「あなたと同じ事をしようとしています。」と言い、家族の仇を追うかおると重なる。
手記の中では、話者の示されない問答で「百合原玲は来るでしょうか。」「必ず来ますよ。ウフフ。」とも交わされる。手記は「あと一度だけ、会えるかもしれません。」「あのとき彼に助けられた恩は忘れないでしょう。」「私の命がつきるまで。」「それまで待ってくれますか?」と結ばれ、画面には一字ずつ問いが表示される。
「しあわせ・・・ってなに?」
そしてゲームはタイトル画面に戻る。
物語は完結していない
導入と全4話の事件はそれぞれ解決するが、フィーナの組織、かおるが追うゼニス、アイドラーの派閥争い、そして七尾芹奈の行く末は、決着しないまま終わる。
直接の続編『ミステリート2〜フェアウェル・エンカウンター〜』は告知されたものの発売されず、開発中止となった。企画・脚本の菅野ひろゆきは2011年に亡くなっている。2014年には、本作のリメイクと続編を一つにまとめた完結編『ミステリートF〜探偵たちのカーテンコール〜』がMAGES.から発表されたが、2021年に開発の一旦中止が発表され、代わって本作単体のリマスター版が2025年に発売された。
『不確定世界の探偵紳士』とのつながり 探偵紳士シリーズ
本作は『不確定世界の探偵紳士』(2000年)と同じ世界の物語で、そのおよそ1年後を描く。以下は『不確定世界の探偵紳士』の内容にも触れる。
『不確定世界の探偵紳士』の本編のおよそ1年後が本作である。同作のPS2版で加わった事件007は、本作の第三話と同じ時期(かおるが実験心理学研究所に閉じ込められていた頃)に置かれている。その最後に悪行双麻のもとへ風祭男爵の招待状が届き、本作の第四話につながる。そして第四話の闇塚弥平が、前作の主人公・悪行双麻である。
- 《しあわせ探偵事務所》と毒島:前作で双麻が作った事務所。本作では、双麻は一年ほど前から消息を絶った元所長として語られる。前作の事件007で、双麻は毒島に「死んだことにしとけよ」と口止めしており、本作の毒島は第四話で副所長に退く。
- 南条深雪:双麻を「ボス」と呼ぶ元部下で、本作では双麻の帰りを待ち続けている。深雪が《しあわせ》を辞めた事情は、本作では語る人物によって説明が異なる。
- 怪盗サファイア(麻生優希):前作の事件007にも現れ、《貴婦人の宝石》を追っている。本作第四話では『貴婦人の涙』を狙う。
- 七尾芹奈の報告書:前作の麻衣子シナリオで読める「調査報告書 その2」は、本作でかおるが読む報告書と同じ文である。
- 本作で名前だけ出る出来事:元所長が「奥さん」と実弾で決闘したという伝説(前作の事件005。妻は神あやめ)、海の見える丘公園の幽霊騒ぎ(前作の事件003)、中華街の孔龍の死と組織の壊滅(前作の事件006)、堂島邸の前の所有者「御剣」(前作の御剣修一)、バー「ジプレ」の前のバーテンダー(前作のアッシュ)、蘭子が暗唱する草薙守の詩『山の梺』(前作では同じ屋敷でミントが暗唱する)。本作の中では、これらは前作と結び付けて語られない。
- 終幕の「ある男」:黒幕側の会合で「日本組織が、ある男に潰されました」「ベルギーに滞在」「例の実験体も一緒」と語られる。前作で双麻がアウトフィットの極東支部を潰し、ミントとベルギーで暮らしていることと合うが、本作の中で名前は出ない。
- ゼニス:本作でかおるが追う殺しの組織。前作の事件007の犯人、殺し屋シンもゼニスの人間である。
事件の決着一覧
| 話 | 真相・犯人 | 決着 |
|---|---|---|
| 導入 客船マリア=テレジーア号 | スミスを殺したのは殺し屋マイ。偽のチェン警備主任と第一発見者のウェイトレスはその変装 | マイは海へ逃走。盗まれた超小型核反応炉の行方は語られない |
| 第一話 からくり屋敷の密室殺人事件 | 犯人は妻の堂島香苗。脅迫状二通は自作。執事・鈴木の自白は身代わり。如月俊郎は怪盗サファイアの変装 | 香苗は自首を勧められ、のちに逮捕。サファイアは見逃される。手柄は《しあわせ探偵事務所》へ |
| 第二話 人間焼失殺人事件 | 本物の牧師を焼き殺したのは偽の牧師。偽の牧師を刺したのは百合原玲。星野恵に化けていたのは殺し屋マイ | 即席の陪審で玲は無罪・釈放。公には「百合原修の事故死」。蘭子がフィーナだと分かる |
| 第三話 催眠殺人事件 | 《復讐者》は加茂海老蔵。閉じ込めの《8人目の監視者》は轟木警部に化けたマイ | 加茂は逃走中にマイに返り討ちにされて死亡。マイはかおるに敗れて引き取られる |
| 第四話 名探偵集合 | 男爵の死は天草由那(風祭由那)の仮死の演出。館のミランダは整形した妹・由真。由那は由真を殺した | 由那は自白。宝はかおるが預かり、サファイア(麻生優希)にはニセ物を渡す。闇塚弥平は悪行双麻 |
エンディング一覧
エンディングは最後の1つだけで、選択肢による分岐もバッドエンドも無い。各話の終わりには「ディテクティブクラス」の評価が表示され、評価が高いと、おまけの謎(案件)や写真が加わる。作品紹介(Wikipediaや2025年版の公式サイト)の説明によれば、犯人の指摘を誤っても物語はそのまま進む。
| 種別 | 場面 | 到達のしかた | 結末の概要 |
|---|---|---|---|
| 話末 | 第一話の終わり | 香苗に自首を勧めたあと | 評価の表示(高評価なら『コナー局長のFAX』案件が加わる)。蘭子が詩を暗唱し、「ここも失敗‥‥。」と去る |
| 話末 | 第二話の終わり | 陪審の評決のあと | 高評価なら『スーツケース』案件。恵が礼を言い、玲とともに街を出る。報酬は4倍で振り込まれる。マイがフィーナに再戦を願い出て許される |
| 話末 | 第三話の終わり | マイとの決闘のあと | 高評価なら水陰から「3人娘のグラビア写真」。かおるがマイを事務所に連れ帰る |
| 最終 | 第四話・終幕 | 迷宮の最深部に着き、犯人を指摘したあと | 由那の自白、サファイアとの決着、悪行の帰還の拒否。評価の表示と壁紙の追加、水陰の案内のあと、黒幕側の会合と七尾芹奈の手記で終わり、タイトル画面に戻る |
作中で明かされないこと
以下は作中で明確な答えは示されていない。
- 七尾芹奈はどちらを選んだのか。家族を奪った者への報い(一)と、彼と愛し合うこと(五)のどちらかを泣きながら選ぶが、どちらかは書かれない
- 芹奈の家族。導入の回想では「両親と弟」、手記では「父親」「母親」「妹」と書かれ、食い違う
- 綾小路はコナー局長なのか。会合での並びからはそう読めるが、明言は無い
- 導入の会合の人々。ミスターJとスミスが同じ人物か、ドクター・ドウジマら出席者の正体、会合の直後の悲鳴の主は明かされない
- 終幕の「ある男」と「例の実験体」。名前は出ない。フィーナの言う「例の実験」の中身も語られない
- 第二話の倉庫の三人。玲が礼拝堂の倉庫で見た三人(倒れた一人と縛られた二人)を移したのは誰か、書斎の「倉庫の人間は処理――」というメモを書いたのは誰か
- 開かずの扉から救出した「恵」。その後に見破られた偽者と一続きに読めるが、はっきり言う一文は無い
- 玲と百合原修の続柄。「育ての親で義理の父」とも「世界でたった一人の。お父さん」とも書かれ、実の父かどうかは決まらない
- 第三話の残りの謎。水陰に一服盛ったのは誰か。静の首を絞めたのは、かおるの推理では《8人目》だが、本人の確認は無い。亜紀が盗用をどう考えていたかも、静の証言が二通りある
- 第四話の残りの謎。由真を殺した手段、シャンデリアを落とした者、橋での尾行者、「偽りの貴婦人」がどの肖像画か、迷宮の正解の道筋。風祭家の系譜も「四人の妻」「五人の妻」などの食い違いがある
- 暗号の答え。コナー局長の文字化けしたFAX、スーツケースの番号など、作中で答えが示されない謎がある
- 百合原玲はフィーナのもとへ行くのか。終幕の問答は「必ず来ますよ。」で終わる
- マイカの一人息子。フィーナが「利用します」と言う手の中身は語られない