田中穂乃火のレビュー — ビ・ヨンド〜黒大将に見られてる〜

田中穂乃火
田中穂乃火
感情全力派
8.0/10
8.0 / 10

レ'ンのこと、一生引きずる。

宇宙×異世界×コメディの欲張り構成で、序盤はわちゃわちゃ楽しんでたのに、後半でレ'ンという存在がずっしり来た。4千年間ひとりで待ってた子が、最後に「こんどはいいこにしてたよ」って消えていく。あの台詞だけで全部持っていかれた。主人公もぐずぐずしないし、エバのくだりもよかった。8点を出せるだけの何かがあった作品。

スコア詳細

ヒロインの魅力 9
キャラ間の関係性 8
燃え・熱量 8
感動・カタルシス 8
エンディングの満足度 8
序盤の掴み 7

宇宙×異世界×コメディ、全部入りの欲張り作品

これ、宇宙と異世界とコメディ全部入りの欲張り作品なんだよ。

記憶を失った「漆黒の魔王」と呼ばれる主人公が宇宙を旅する話。宇宙警察の艦長、獣耳の賞金稼ぎ、家出した王女、古代世界の聖母——これだけのヒロインが一作に詰め込まれてて、コメディ多めで展開が転がっていく。最初は「えっ全部入れるの?」ってなったけど、読んでいくうちにその欲張りさに引き込まれた。

この主人公、ぐずぐずしない

あたし、動かない主人公が苦手なんだよ。だからここが最初の関門だった。

「ぬぅ?」しか言わない主人公って聞くと、ウジウジしてそうじゃん。でも全然違った。この主人公、成り行きで動くんだけど、なんか正しい方向にちゃんと動く。ヒロインに何かあれば向き合うし、逃げない。口数が少ないだけで、ぜんぜんぐずぐずしてない。それがわかってからは、すごく読みやすくなった。主人公を信頼できると、物語が全然違う。

エバが「目に‥‥ゴミが入っただけよっ」ってなるとこ

エバのこと、最初は暴走艦長としか思ってなかった。

「ふざけるなーーッ!」が口癖で、主人公に全部奪われたから「キサマを殺す」ってずっと言ってる。でも仲間たちが再び集まったシーンで、「目に‥‥ゴミが入っただけよっ」って言うんだよ。ずっと強がってた子が、ぽろって。あたしこれに弱い。強い子が崩れる瞬間、全力で刺さる。エバだけで1点分くらい価値があった。

レ'ンのことを話させてほしい

このレビューで一番言いたいことが、ここ。

レ'ンは、主人公の身体から生まれた影のような存在で、4千年間ずっとひとりでいた。ずっと嫉妬してた。殺意を抱いてた。それでも最後に「こんどはいいこにしてたよ」って言って消えていく。たった一言なんだよ。でも4千年分の重さが全部乗ってくる。ずっとひとりで、ずっと悪い子だと自覚しながら、最後の最後にそう言って消える。ダメだった。全部持っていかれた。レ'ンのことは一生引きずる。

8——レ'ンひとりで8点分の重さがある

序盤はコメディで楽しんで、後半でレ'ンに全部持っていかれた。

ヒロイン全員が好きだけど、レ'ンだけ桁違いに刺さった。エバも、フェイも、アメジストも、それぞれ好きになれたし、エンディングも複数あってちゃんと着地してくれた。序盤が少しとっつきにくかったのと、ヒロインの掘り下げが後半に偏ってるのが気になったけど、それでも8点は出せる。レ'ンがいるから。8点。以上。