「こんどはいいこにしてたよ」——前半のコメディ全部が、この一言への準備だった。
レ'ンが「ますたぁ……こんどは……いいこに……してたよ……ほめてくれるよね」と言いながら、影と道連れに消えていく場面で、あたしの中で何かが崩れた。8章まで笑ってたんだよ。エバの空回りを笑って、フェイのタコ踊りを笑って、主人公の「ぬぅ?」に笑ってた。その全部が、この一言への助走だったなんて、最初は思いもしなかった。4千年間ひとりで闇の中にいた子が、最後に「いい子にしてた」って言いながら消える。あたし、ぼろぼろだった。
スコア詳細
レ'ンという存在——「4千年ひとりだった子」の終わり方
この作品で一番刺さったのは、レ'ンだった。
「みつけた……みつけたよ……あたしの……マスター……」という8章末の台詞で、あたしはすでに怪しいと思っていた。でも9章での全告白「4千年間、ずっと独りぼっちだった……闇の中で……ずっと震えてた」が来た時、前半8章のコメディが全部別の色に見えた。同じ時代、どこかで4千年ひとりで震え続けている子がいたまま、主人公はエバやフェイやアメジストとわちゃわちゃしていたんだ。
「マスターになら殺されてもいい……でも嫌われるのは……憎まれるのはイヤ」という本心が、レ'ンというキャラクターの核だ。自分のマスターに殺意を向けられて、自らそのマスターを殺してしまった子。その後4千年間、誰も来なかった。そういう子が「あたし」一人称で現れて、最後に「いい子にしてた」と言いながら消えていく。あたしはもうどこに感情を向ければいいか分からなかった。
感動・カタルシス9点は、このレ'ンのシーンだけで成立している。他の何点かは保留でも、ここだけで9が確定した。
チャイムとの時空越え——「私……今日のこと忘れません……ずっと……ずっと……」
6章のチャイムについて話す。
主人公が過去のウィランディ(古都ウィネリア)に降臨し、神殿で待つ少女チャイムと出会う6章は、この作品の感情的な中心の一つだ。「私を抱いて下さいませ」という台詞から一夜を共にし、チャイムは「私……今日のこと忘れません……ずっと……ずっと……」と言う。
8章で再訪した時、チャイムは20年が経ち女王になっていた。主人公だけが若いまま。6章で一夜を共にした「黒い天使」が、自分の父だとベルモットは知っている。「私はあなた様を……信じていますから……」という8章のチャイムの台詞が、6章の「ずっと……ずっと……」からどれだけの年月を経た言葉であるかを考えると、喉が痛くなる。
チャイムは主人公の時間と別の時間を生きて、女王になって、娘を育てた。主人公には「一夜」でも、チャイムには「20年の根拠」だった。別れた後の時間が全然違うのに、チャイムが変わらず「信じる」と言える。この非対称な時間の哀しさは、6章を読んでいないと来ない。
ベルモットの「父上……おいてかないで……」——END2の哀しさ
ベルモットというキャラクターについて。
「父上……行かないで……おいてかないで……」というEND2のベルモットの台詞は、短い。でもこの短さが辛い。8章で20年後の父と出会い、父が誰なのかを知って、でも父は連れ去られていく。20年後にベルモットが「父上」の伝説を語るという結末は、再会と別れが同時に来るような切なさだ。
ベルモットは主人公とチャイムの娘で、「父上」として主人公を慕う気高い令嬢として描かれている。彼女は父と会ったことがなかった。8章で初めて父と対面して、でもその父は普通の「父」ではなく不死の漆黒の魔王だ。親子として一緒に過ごせる時間がないことを、ベルモットは感情的に理解していた。だから「おいてかないで」という言葉が切ない。
END2で20年後のベルモットが父の伝説を語るという締め方は、「残された者が記憶を守る」という形のエンドで、あたしには合っていた。父がいなくても、ベルモットは父の娘として生きた。それで十分、という強さが伝わってくる。この結末は8点の中の大事な一点。
8.0——前半コメディへの敬意と、後半感動への感謝
最後に全体の話。
8.0は前半コメディへの評価も含んでいる。前半のエバ・フェイ・アメジストが面白かったから、後半のレ'ン・チャイム・ベルモットが効いた。笑いと涙が同じ作品に入っているのは当然のことのようだけど、前半が本当に面白くないと後半は動かない。この作品の前半コメディは本物だった。それがあたしの最終的な評価。
惜しいのは、ヒロイン別エンドの質にバラツキがあること。レン関連のEND8は良かった。チャイムのEND7(夢オチ)は、後半の重さに対して軽すぎると感じた。アメジストのEND6は整合はしているけれど、感動としては薄い。コメディ→シリアスの転換が全ヒロインで同じ品質に達していない部分がある。
レ'ンの「こんどはいいこにしてたよ」という一言があったことへの感謝を込めて、8.0。
