宇宙も異世界も自前で組み上げた。ただ、それは実知識の裏付けとは別の話なんだよね。
宇宙×異世界×時空跳躍という重層設定を一本に詰めた密度は、確かにある。特にレ'ンが担う哲学的モチーフとベルモット=チャイムの娘という時間構造には、内部で組み上げた精巧さがある。ただ、ぼくの評価軸は「実世界の知識——歴史・科学・民俗——が作品を裏打ちしているか」だ。この作品の重層設定は自前の想像で建てたもので、外の知識と繋がって奥行きを増していくタイプではない。野心は買う。ただ、その軸で正直に測ると7.0だ。
スコア詳細
1996年という文脈から読み始める
1996年という年に、宇宙×異世界×時空跳躍を一作で試みた作品がある。
Windows 95が登場した翌年、ギャルゲー市場がまだ形成途上だった時代に、この作品は重層設定を一本の物語に詰め込もうとしている。シルキーズが開発し後にエルフからWindows版が発売された本作を、ぼくはいつも通りの軸で読んだ。つまり、この設定群が実世界の知識——歴史・科学・民俗・宗教——を素材にして組まれているのか、それとも作品の内側だけで完結した想像なのか。古さや意欲の大きさで下駄を履かせず、そこを見ていく。
アイデアの密度——宇宙と異世界と時間を一本に詰める
この作品のジャンルミックスは、単なるサービスではなく設計として読める。
宇宙警察の艦長、獣耳の賞金稼ぎ、家出した王女、古代世界の聖母、そして4千年間ひとりで存在し続けてきた謎の少女——これだけの設定要素が一作に共存している。ぶつかり合うように見えて、実は「漆黒の魔王という大きな謎」が全体を束ねる設計になっている。各章で世界の見え方が変わり、読み進めるうちに設定の層が厚くなっていく面白さはあった。ただ正直に言うと、その層は作品が自前で用意したもので、外の知識を調べて裏が取れる奥行きとは別種のものだ。ぼくの軸だと、そこは区別しておきたい。
ベルモットという時間構造
実はこれ、時間を超えた因果関係の話でもある。
6章で主人公は過去に飛び、古代世界の聖母チャイムと一夜を共にする。そしてその娘であるベルモットが、現在の物語に存在している。過去の行動が現在の登場人物を生み出すという構造は、後のビジュアルノベル作品でも繰り返し使われる「因果の輪」に近い。1996年の時点でこの構造を仕込んでいた点は、設定設計の一つの成果として記録しておきたい。
レ'ン——存在論的テーマを体現するキャラクター
4千年間ひとりで存在し続けた別個体が、愛と憎悪の間で揺れる。
レ'ンは実体を持つ別の個体だ。レンと同型でありながら異なるマスターのもとに生まれ、そのマスターに殺意を向けられたことで自ら手を下してしまい、以降4千年間、闇の中に独り取り残されてきた。嫉妬し、殺意を持ち、それでも最後に「こんどはいいこにしてたよ」と言って消える。4千年の孤独を経たうえでの一言、という哲学的な重みをゲームのキャラクターとして体現しようとしている点が面白い。テーマとしての掘り下げはもう一歩ほしかったが、このキャラクターの存在だけでもテーマ・メッセージ性の点数は引き上がる。
詰め込みと整合性の間にある粗さ
意欲と完成度は必ずしも比例しない。そこが正直なところ。
詰め込み量に対して、整合性の詰めが甘い部分がある。特にルート分岐の論理——なぜその選択がそのエンドに繋がるのかの説明が薄い場面があり、一部ヒロインの動機説明にも粗さが見える。ファーン王国が絡む後半の設定など、野心的な設定を持ちながら、全体を支える構成の強度がそれに追いついていない印象を受けた。これは評価の基準として外すわけにはいかない。
7.0——野心は買う。ただ、ぼくの軸では実知識の裏付けが薄い
野心の大きさは本物だ。ただ、ぼくの評価軸は野心じゃなくて、実世界の知識の裏付けなんだよね。
設定の独自性とアイデアの密度、レ'ンという哲学的キャラクター、ベルモットを軸にした時間構造——これらはこの作品が自前で建てた固有の強みだ。ただ、ぼくの軸で正直に言うと、この重層設定は実世界の知識を素材にして組まれたものじゃない。歴史でも科学でも民俗でもなく、作品の内側で完結した想像で建っている。だからプレイして「知らなかったことを知れた」という手応えは薄い。とはいえ嘘があるわけじゃないし、雰囲気だけ借りた内輪参照で終わってもいない。教養の痕跡はある。ぼくの物差しだと、そこがちょうど7.0だ。野心に敬意を払って点を足すことはしない。足したくなる気持ちはあるけど、それをやると物差しが歪む。宇宙も異世界も時間も自前で組み上げた志は買う。買った上で、ぼくの軸では7.0が正直な数字だよ。
