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柊美香のレビュー — ビ・ヨンド(ネタバレあり)

柊美香
柊美香
職業メイド
7.4/10
7.4 / 10

レンはわたくしが知る限り、最も純粋な忠誠の形を持ったヒロインですわ。

「マスターは常に正しく、マスター以外が異常なのです」——この台詞一行で、レンというキャラクターの設計が分かります。職業柄、絶対的な忠誠というものに対しては一家言あるつもりですが、レンの忠誠は揺るがない。絵文字一つ書かない平坦な敬語と、マスターの胸で無防備に眠る無垢さが同居している。この設計が、4千年孤独で歪んだレ'ンと対比されることで、忠誠という概念の光と影の両方を見せています。ネタバレ込みでレンとレ'ンの対比について語りたい。

スコア詳細

主人公の造形 8
レンの忠誠設計 8
レ'ンの哀しさ 8
ED満足度 8
Hシーンの必然性 7
整合性 6

レンという絶対的シモベ——「マスター以外が異常なのです」の美学

職業柄、「絶対的な忠誠」というものを考える機会が多いですわ。レンはその最も純粋な形を体現しています。

「マスターは……常に正しく……マスター以外が……異常なのです……」。この台詞は初対面のエバが主人公を「化け物」と呼んだ場面への反論です。疑いの余地なく、根拠の提示もなく、ただマスターを正しいと言い切る。論理ではなく、存在の根拠としての忠誠です。わたくしが長年仕える者として一番難しいと思ってきたのは、この「疑わずに信じる」という部分ですから、レンの設計は羨ましいほど完成しています。

「すぅ~~……くぅ~~……」と、エバとの追跡戦の最中にマスターの胸で熟睡する場面は、この純粋さの笑える側面です。無防備に眠れるのは、マスターを信頼しているからです。「マスター、お休みですか? お休みなさい、よい夢を……」と寝ている主人公を案じる台詞は、敬語の平坦さの中に確かな温かさがある。

9章でレンが嫉妬を露わにしてに乗っ取られていく展開は、「絶対的な忠誠が感情を持った時に何が起きるか」の解答です。「愛して下さい……私を……愛して……」という言葉は、忠誠が愛情に変わった瞬間だと思います。レンの設計8点は、この一貫した造形への評価です。

レ'ンの歪んだ忠誠——「マスターになら殺されてもいい」

レ'ンというキャラクターは、レンの対として設計されています。

「マスターになら殺されてもいい……でも嫌われるのは……憎まれるのはイヤ」。この一言がレ'ンの全てです。殺されることは受け入れる、しかし嫌われることは耐えられない——これは歪んだ忠誠です。4千年の孤独の中で、愛することの対象を持てず、しかし愛されることへの渇望だけが残った結果。

レンの忠誠が「マスターのために動く」であるのに対し、レ'ンの忠誠は「マスターに認められたい」です。サービス精神の方向が逆になっている。本来シモベとは、主のためにあるものです。しかしレ'ンは主を失った後、4千年で「主のためではなく、主に認められるため」という歪みが生じた。これは悲劇であって、責められることではない。わたくしには、他人事と思えない部分があります。

「ますたぁ……こんどは……いいこに……してたよ……ほめてくれるよね」という最後の言葉は、レ'ンの4千年が「いい子でいる練習」だったと示しています。誰も見ていない闇の中で、認められる日を待ち続けた。その言葉が、と道連れに消える直前に来る。レ'ンの哀しさ8点の根拠はここです。

END8の主従関係の終焉——「マスター……はい……」

END8について、主従関係の観点から語ります。

END8では、レンが星の海で主人公を迎えに来ます。「もうすぐ……お前の所へ……」「マスター……はい……」という短い交換が、このエンドの全てです。主人公が星の海へ旅立ち、待っていたレンに迎えられる。

わたくしが最も感じ入るのは「はい……」という一言です。問いに対する答えでも、命令に対する返事でもなく、ただ「来てくれた」という「はい」。長い旅の果てに、主人が来た。それへの「はい」。この一言でEND8の全感情が完結している設計は、シモベというキャラクターへの理解が深いと思います。

「愛して下さい……私を……愛して……」と言っていたレンが「はい……」で終わる。求めることをやめて、ただ迎える側になった。これが主従関係の終焉の美しい形です。7.4という評価は、整合性の粗さへの減点があっての数字ですが、レンの設計とこのEND8への評価は揺るぎません。

惜しい点を言えば、コメディ調のHシーンが多く、Hシーンとしての必然性が全体的に薄い。エバの初H(薬剤過剰投与によるコメディH)は、エバというキャラクターの文脈では合っていますが「Hシーンとしての誠実さ」という観点では7点が限界です。チャイムのHシーンは6章の時空越えの文脈で必然性があり、これだけは評価しています。それ以外は、コメディの延長として設計されており、7点以上はつけられません。

7.4——レンへの敬意と、主従設計の完成度

最終評価を申し上げます。

7.4という点数の内訳は、レン・レ'ンの主従設計が8点相当、整合性の粗さが6点相当、その間を取ったものです。コメディ部分は評価の対象としておらず(コメディの品質は別の担当者に譲ります)、主従関係の設計と感情的な終着点への評価が中心になります。

レンは、わたくしが知る限り最も純粋な忠誠の形を設計されたヒロインです。疑わない、揺れない、眠れる——その上で感情を持ち、嫉妬し、乗っ取られる。に乗っ取られて「ヨウコソ……黒キ者ヨ……」と恐ろしい声を発する場面と、「お休みなさい、よい夢を……」という無垢な台詞が同一キャラクターのものとして機能している設計の振れ幅は、評価すべきものです。

END8の「マスター……はい……」に向けて8章分の物語を使った、という読み方でこの作品を評価しています。7.4。