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ストーリー詳細 — Canvas 〜セピア色のモチーフ〜

Canvas 〜セピア色のモチーフ〜は、絵筆を折った美術特待生・麻生大輔が、五人の少女との出会いを通してもう一度キャンバスの前に立つまでを描く恋愛アドベンチャーです。このページでは各ヒロインルートの結末と全エンディングまで踏み込んで解説します。

ネタバレ全開のページです。本作は共通の導入から天音・悠・柚子・百合奈・恋の各ルートへ分岐します。各ヒロインルートの結末、および全ルートに通底する「大輔が絵を描けなくなった本当の理由」を結末まで明かしています。

本作は日常の共通パートからヒロイン別ルートへ分岐します。 各章の ネタバレ詳細 ボタンはルートの核心と結末を含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。

導入(共通)— 寝坊と再会の十月

地方都市の高校に通う麻生大輔の、ささやかな日常から物語は始まる。かつて絵の才能を認められながら今は筆を折った彼のもとに、十月のひと月で五人の少女が次々と現れる。

主人公・麻生大輔撫子学園に通う高校2年生。美術の特待生でありながら、ある出来事をきっかけに絵を描けなくなっている。毎朝、隣家に住む寝坊癖の抜けない幼馴染・橘天音あんパンを切り札に起こしに行くのが彼の日課だ。天音の母からは「お嫁にもらって」と冗談半分に言われる、温かな朝が続いている。

ある日の夕暮れ、大量の荷物を抱えた女性と街角でぶつかる。それは10年前に引っ越していった「お姉ちゃん」――篠宮悠だった。悠は教育実習のため大輔の学園に着任し、学園内では「篠宮先生」「麻生君」と呼び合うことになる。

同じ週、父からの一方的な再婚通告とともに、義妹となった一年生アイドル・桜塚恋が「私たち他人だから」と接触してくる。校庭では小学校時代の友人・七城柚子と再会する。彼女は今もハイジャンプ部で「天使になりたい」と跳び続けていた。放課後の教室では、不思議な雰囲気の先輩・君影百合奈が「あなたを描いてほしい」「あなたも呪われています」と告げる。

寝坊と再婚とアイスと、ささやかな日常の積み重ねの裏で、大輔は自分が絵筆を置いた本当の理由と向き合うことを迫られていく。ここから物語は各ヒロインのルートへと分かれていく。

「ただいま、大輔ちゃん」(悠/10年ぶりの再会)

天音ルート — 祈りと子犬の「8」 ルートA

隣家の幼馴染・橘天音。獣医を夢見る彼女との、何気ない朝の延長線上にある恋。川の中州に取り残された子犬の救出が、二人の関係を一歩進める。

天音は学校で飼育ウサギのぴょん吉の世話を続け、放課後はその餌やりに通う動物好きの少女。大輔とは幼い頃、彼女の故猫にゃん太の墓を一緒に作った仲でもある。大輔が天音に初めて絵を描いて渡した相手がこのにゃん太であり、彼が「絵を描いていた」過去を示す最初の証だった。

ある日、増水した川の中州に子犬が取り残される。大輔は岩を伝って川を渡り、一度は落水しながらも子犬を抱えて帰還する。天音は「うぅっ、私のせいだ……」と泣きながら大輔を案じ、助けられた子犬には大輔の名にちなんで「8」と名付ける。

後日、二人は御薗神社に並んで参拝する。そこで天音が捧げた祈りは、自分の獣医の夢ではなかった。

「8ちゃんが元気になって、また、絵を描けるようになりますように」(天音/神社の祈り)

自分のためでなく大輔のためだけに祈る天音の純粋さに、大輔は深く揺さぶられる。クライマックスでは、天音が大きな段ボールを抱えたまま階段から足を踏み外す事故が起こり、とっさに彼女を抱き留めた大輔の腕の中で、二人の距離が決定的に縮まる。

悠ルート — 果たせなかった約束 ルートB

10歳年上の「お姉ちゃん」篠宮悠。教育実習生「篠宮先生」と私的な「お姉ちゃん」のあいだで揺れる関係の先に、大輔が絵を描けなくなった根源の記憶が眠っている。このルートは天音ルートをクリアすると解放される。

攻略順として、ルートは天音ルートをクリアした後に解放される。学園内では「篠宮先生」と「麻生君」、二人きりのときは「お姉ちゃん」と「8ちゃん」。悠は大輔の家でココアを飲みながら絵の相談に乗り、亡き母の部屋を借りるなど、姉と弟以上のあわい距離で寄り添っていく。

台風の夜、悠は大輔の家に泊まることになる。停電した暗闇の中で二人は手を繋ぎ、悠がマカロニグラタンを作る。穏やかな時間の裏で、大輔の中の古い記憶が少しずつ輪郭を取り戻していく。

クライマックスで、幼少期の回想が明かされる。母を亡くした幼い大輔を、隣家の悠お姉ちゃんが「私が大輔ちゃんのお母さんになってあげる」と慰めていた。そして児童絵画コンクールを前に、悠は一つの約束を交わす。

「その絵が何か賞を取ることが出来たら、私は8ちゃんの前からいなくならないよ」(悠/幼少期の約束)

だが大輔の絵は入選せず、約束は果たされないまま悠は引っ越していった。幼い大輔は「お姉ちゃんなんか……大嫌いだよ」と叫びながら、本心では「嫌いなんかじゃないから……大好きだから」と泣いた。この別れこそが、大輔が絵を描けなくなった出発点だった。

現在の大輔は、再会した悠に対し一度は「もう、優しくしないでくれよ」と冷たく突き放してしまう。悠が泣き崩れたあと、大輔は自分が一番許せなかったのは悠ではなく自分自身だと気づく。「姉さんは……オレだけの姉さんじゃないんだから」と、悠を「篠宮先生」と「お姉ちゃん」の両方ごと受け入れ、二人は和解する。

柚子ルート — 天使の翼 ルートC

「天使になりたい」と跳び続ける小柄なハイジャンプ選手・七城柚子。幼い日に大輔が贈ったあだ名が、彼女の届かない夢の原動力になっている。

柚子は一人称「ボク」の小柄な少女。幼少期、跳び箱の上に座る彼女の姿が天使のように見えたことから、大輔は彼女を「天使さん」と呼んだ。柚子はその言葉を支えに、今もハイジャンプ部で「天使になりたい」と跳び続けている。柚子にとって大輔は「お絵かきの天才・8くん」のままだった。

だが現実は厳しく、柚子は大会で結果を残せない。ついに大会に一度も出られないまま、柚子は大輔の胸の中で泣き崩れる。

「ボク……天使さんになれない」(柚子/クライマックス)

跳んでも跳んでも届かない夢に折れかけた柚子に、大輔が差し出したのは言葉ではなく絵だった。体育大会のラスト、長く筆を折っていた大輔は柚子のために一枚を描き上げる。

「大空を舞う、天使の翼が」(大輔/柚子のために描いた絵)

跳べなくても、柚子はもう翼を持っている。大輔自身が「絵を描く意味」を取り戻す瞬間でもあり、彼女の夢に別のかたちで応える結末となる。

百合奈ルート — 呪いと花言葉 ルートD

自分を「呪われている」「不浄」と呼ぶ3年の先輩・君影百合奈。神社にさえ入れない彼女との交流は、花言葉を介してゆっくりと深まっていく。

百合奈は身体が弱く体育を見学している、花言葉に詳しい不思議な先輩。彼女は自分を「呪われている」存在と語り、自らの名「影の百合」を花言葉「呪い」を持つ黒百合に重ねて、自分を「不浄のもの」と規定している。

百合奈は御薗神社に入ることができない。神社の跡取り娘である先輩・御薗瑠璃子が、百合奈を「君影さん」と呼んで頑なに追い返すためだ。二人のあいだには家系をめぐる因縁がある。

大輔は花屋で百合奈に贈る花を選ぶ。花言葉「可憐」のクジャクソウ、「不幸な愛情」のスカビオサ、「誠実」の桔梗。大輔が桔梗を選ぶと、百合奈は「私は誠実とは違う」と謙遜するが、大輔は「自分の信じるものを曲げない誠実さがある」と肯定する。百合奈が愛するパウダーピンクの撫子を、彼女は「繊細で美しい、まるで貴方の絵を見ているよう」と大輔の絵に重ねる。

自分も「呪われている」(=絵を描けない)大輔と、呪いを背負う百合奈は共鳴していく。彼女が自分を肯定し始める転機が訪れる。

「呪われていますけれど貴方の先輩だと思いますよ」(百合奈/自己受容)

結末で大輔が選ぶのは、百合奈を描くこと。彼女を絵に写し取ることが「呪い」を祓う契機となり、百合奈の笑顔へと至る。なお瑠璃子は攻略対象ではなく、百合奈ルートに関わる役回りとして描かれる。

恋ルート — 義妹と「世界に一人の好き」 ルートE

「お兄ちゃんなんて呼ばない」と突っぱねる義妹・桜塚恋。ツンの裏に隠した素直な気持ちと、親友・藍の存在が、終盤で「本当の好き」を問いに変える。

は父の再婚で大輔の義妹となった一年生のアイドル。「私たち他人だから」「お兄ちゃんなんて呼ばない」と強気に振る舞うが、その態度はツンデレの裏返しだ。商店街のアイス屋ハーゲンダックでバイトする恋とは、店先で兄妹漫才のような掛け合いが繰り広げられる。

恋の本音は、親友の鷺ノ宮藍を通して少しずつ漏れ出る。鷺ノ宮財閥の令嬢でヴァイオリン奏者の藍は、大輔を「お兄様」と慕い、恋がいかに大輔の話ばかりしているか、密かに大輔のために弁当を作っていたことなどを次々に明かしていく。台風の夜には大輔の傘で送られた恋が、家でコーヒーを振る舞いながら本音をこぼす。

恋には過去に「告白した相手が女子だった」という藍との関係があり、「私って男女問わずモテるのよね」と語る。終盤、恋にとっての「世界に一人の好き」が誰だったのかが問われる。義妹と兄という関係ではなく、ひとりの男女として向き合えるかどうかが結末の焦点となる。

「お兄様、お疲れさまです」(藍/恋の本音の代弁者)

全ルート共通の核心 — なぜ絵を描けなくなったのか 共通の真相

どのヒロインを選んでも、その奥にあるのは同じ一つの問いだ。麻生大輔は、なぜ絵を描けなくなったのか。

本作の全ルートに通底する核心は、大輔が絵を描けなくなった本当の理由にある。

幼少期、母を亡くした大輔を隣家のお姉ちゃんが支えていた。悠は児童絵画コンクールを前に「絵で賞を取れたら、私はあなたの前からいなくならない」と約束した。だが大輔の絵は入選せず、約束は果たされないまま悠は引っ越していった。

この別れを境に、大輔は「祈ること」「絵を描くこと」「人と離れないでいること」を同時に諦めてしまう。賞を取れなかったから大切な人が去った。その記憶が、彼の筆を折らせた呪縛だった。

「祈ったところで叶わないものは叶わないんだ。そう思ったから」(大輔/独白)

各ヒロインは、それぞれ違うアプローチで大輔に「もう一度絵筆を握る」契機を与える。天音は自分の夢より大輔の回復を祈り、柚子のためには大輔自身が翼を描き、百合奈は描かれることで救われ、悠との和解は呪縛の根そのものを解く。誰のルートを通っても、大輔は「自分が絵を描いてきた意味」と向き合い直すことになる。

「もう一度考え直してみたほうがいいのかもしれない。自分が絵を描いてきた意味ってやつを」(大輔/独白)

祈ることをやめたはずの大輔が、誰かの祈りや想いによって救われていく。タイトルの「セピア色のモチーフ」が示すのは、色を失った大輔の世界が、少女たちとの出会いを通じて再び絵筆の前に立つまでの軌跡である。

エンディング一覧

ルート 到達ヒロイン 到達条件 結末概要
A 橘天音 共通パートで天音と過ごす選択を重ねる 子犬「8」の救出と神社での祈りを経て結ばれる。天音の祈りが届き、大輔は再び絵を描けるようになる。
B 篠宮悠 天音ルートをクリア後に解放。悠との選択を重ねる 幼少期の約束をめぐる記憶と和解。「篠宮先生」と「お姉ちゃん」の両方ごと悠を受け入れる。
C 七城柚子 柚子との選択を重ねる 大会に届かなかった柚子のため、大輔が体育大会で「天使の翼」を描き上げる。
D 君影百合奈 百合奈との選択・花贈りを重ねる 大輔が百合奈を描くことが「呪い」を祓う契機となり、彼女の笑顔へ至る。
E 桜塚恋 恋との選択を重ねる 義妹と兄ではなく、ひとりの男女として向き合う結末。親友・藍が二人を後押しする。

鷺ノ宮藍はPC版にシナリオが存在するが、イベントCGは未収録。独立したエンディングがあるかは確証がなく、恋ルートの中で分岐する形と考えられる。御薗瑠璃子は攻略対象ではなく百合奈ルートに関わる役回り。後年の家庭用移植版で追加された美咲彩はオリジナル版の本筋には含まれない。

ネタバレFAQ

大輔が絵を描けなくなった本当の理由は?

幼少期、母を亡くした大輔を支えてくれた悠お姉ちゃんが「児童絵画コンクールで賞を取れたら、あなたの前からいなくならない」と約束しました。しかし大輔の絵は入選せず、約束は果たされないまま悠は引っ越してしまいます。「賞を取れなかったから大切な人が去った」という記憶が大輔の筆を折らせました。これがすべてのルートに通底する核心です。

悠ルートはどうすれば遊べる?

悠ルートは天音ルートをクリアすると解放される攻略順になっています。最初から悠を選ぶことはできず、まず幼馴染・天音の物語を見終えることが条件です。10歳年上の教育実習生という関係上、ルート解放に段階を設けた構成と読めます。

柚子は最後に大会で勝てるの?

柚子は結局、大会で結果を残せず「ボク……天使さんになれない」と泣き崩れます。本作は彼女を勝たせて夢を叶える形ではなく、大輔が体育大会で「天使の翼」の絵を描き上げることで、跳べなくても柚子はもう翼を持っているのだと示す結末です。大輔自身が絵を描く意味を取り戻す場面にもなっています。

百合奈の「呪い」とは何なのか?

百合奈は自分を「呪われている」「不浄」と語り、御薗神社に入ることもできません。この「呪い」には、御薗瑠璃子との家系をめぐる事情に加えて、大輔自身の「絵が描けない症状」と重なる比喩としての意味があります。自分も「呪われている」大輔と共鳴し、最後は大輔が百合奈を描くことが呪いを祓う契機になります。黒百合(花言葉「呪い」)に自分の名を重ねる自己規定が、ルートの軸です。

恋ルートで重要になる「藍」とはどんなキャラ?

鷺ノ宮藍は恋の幼稚園からの大親友で、鷺ノ宮財閥の令嬢かつヴァイオリン奏者です。大輔を「お兄様」と慕い、ツンデレな恋の本音(大輔の話ばかりしている、密かに弁当を作っていた等)を代弁する役回りを担います。恋が過去に告白した相手が藍だったという関係もあり、終盤の「世界に一人の好き」という問いに深く関わります。PC版にはシナリオが存在するもののイベントCGは未収録で、独立エンドの有無は確証がありません。

タイトル「セピア色のモチーフ」の意味は?

セピア色は、色を失い褪せてしまった大輔の世界を象徴します。絵筆を折り、祈ることも人と離れないことも諦めた大輔の日常が、五人の少女との出会いによって少しずつ色を取り戻し、もう一度キャンバスの前に立つまでの軌跡がタイトルに込められています。各ヒロインがそれぞれの「モチーフ(描く対象・主題)」となり、大輔が再び絵を描く動機を与える構造です。