用語集 — GAOGAO! 2nd. パンドラの森
『GAOGAO! 2nd. パンドラの森』に登場する固有名詞と設定語をまとめた。「ネタバレ詳細」を開くと、その語が最終的に何を意味していたかまで踏み込む。
世界観・概念
遠い昔に世界中で猛威を振るったとされるウィルス。感染すると遺伝情報が狂い、身体が変異し、やがて死に至るという。人類はこれから逃れるために自然を捨て、ドーム都市に閉じこもった。作中では「恐怖の時代」を生んだ元凶として、また今も外界に潜む脅威として恐れられている。
ジョセフが遺したメッセージにより、クラブHT1はとうの昔に絶滅していることが判明する。樹海の動物たちはやがて免疫を獲得して生き延び、ウィルスはもはや存在しない。外はとっくに安全であり、「外は危険」という前提そのものが虚構だった。
さらにこのウィルスは自然発生ですらなく、研究施設からの事故流出——人災だったことも明かされる。
この一語が崩れることで、ドーム都市という社会の存立根拠そのものが崩れる。本作の骨格を支える最重要語である。
ウィルス禍から逃れた人類が暮らす密閉都市。外界と完全に遮断され、「全ては完璧」という標語のもとで管理されている。人々はこの中でしか生きられないと教えられて育つ。
外が既に安全であることを知りながら、支配する側が人々を内側に留めておくために「外は危険」という嘘を維持し続けている——それがドーム都市の実体である。完璧さを謳う標語は、閉じ込めるための言葉だった。
ルシアが樹海の闇の中で漏らす「なにが『全ては完璧』よ。ばかみたい。」という一言が、傷ついた者だけが感じ取っていた違和感を先取りしている。
ウィルスの影響や人工的な操作によって生まれた、通常の人間とは異なる特質を持つ者たちの呼び名。獣の耳や尻尾を持つ者もいる。研究の対象として扱われている。
ジョセフの言葉によれば、変異体は新しい人類である。人間より遥かに長命であり、ドーム内でも変異体の出生が増えつつあることが結末で示される。
作中の主要人物のほとんどが変異体にあたる。ジャッキーとルシアはジョセフがソフィの変異遺伝子を用いて人工的に生んだ子であり、リアは人工子宮生まれ、ナギとライラは奪われた卵子から作られた個体である。外見からそうと分かるかどうかの違いはあれ、全員が同じ源から来ていた。
物語終盤で明かされる、ジャッキーが持つ稀少な能力。
他の変異体と心身で共鳴することで、相手の眠った力を増幅・覚醒させる能力である。イリューヌはこれを「力の増幅器」と説明する。
ジャッキー自身は戦う力を持たないが、この能力によってナギの水の力を目覚めさせ、終盤には5人での共振で新たな力を発現させてネバールの群れを一掃し、囚われたルシアを救い出す。ガーディナルが自らに銃口を向けた場面でその手を制したのも、この力だった。
臆病で何もできない少年が、仲間の力を引き出す存在として物語の中心に立つ——本作の構造を決めている設定である。
樹海を通ると記憶を失うという、街に流れる噂。ヒヨコを連れた男などが面白おかしく語る与太話として扱われている。
実態は、樹海から戻った者に記憶消去剤が投与されているというだけのことである。噂という形で流布していること自体が、都市の側による隠蔽の一部として機能している。
記憶を消されたジャッキーとルシアも、危うく自分たちの体験をこの噂で片づけそうになる。リアが残したペンダントに触れなければ、そのまま忘れて終わっていた。
研究所で暮らす銀髪の少女ナギに与えられた異名。長い銀髪と紫の瞳を持つその姿から、そう呼ばれている。
「宝石」という呼び名がそのまま彼女の扱いを表している。ガーディナルが「愛娘」と称して手元に置いていたのは、慈しみではなく所有だった。追い詰められた所長がナギに銃口を向ける場面で、その本質が露わになる。
場所・施設
ドームの外に広がる広大な森。人類が地上を捨てたのち、自然が都市を呑み込んで生まれた。立ち入りは禁じられており、ウィルスの潜む死の世界だと教えられている。
ウィルスは既に絶滅しており、樹海は危険な場所ではない。ジョセフとソフィがかつて研究施設を築いて暮らしていたのもここで、リアが生まれ育った場所でもある。
結末では、ジャッキーたち5人が新しい生活の場として選び取る土地になる。恐怖の対象として置かれていた森が、最後には約束の地へと反転する構成になっている。
物語の主舞台となるドーム都市。ルシアが一人で暮らしており、ジャッキーが10年ぶりの再会のために訪れる。展望台・図書館・スナックパークなどがあり、研究所もこの都市に置かれている。
ジャッキーが養母のもとで育ったドーム都市。物語はここを発つところから始まる。都市と都市はモービルで結ばれており、人々はドームの中を移動して一生を終える。
幼いルシアが引き取られた先のドーム都市。6歳のジャッキーと引き離され、10年の空白が生まれる原因になった場所である。この移送には記憶の抑制が絡んでいたことが、のちに養母の口から語られる。
作中で名前が言及されるドーム都市のひとつ。物語には直接関わらないが、シリーズを通して見ると重い意味を帯びる名である。
シリーズ第4作のプロローグによれば、これは人類最初のドーム都市である。日本の伊集院財団が建設を主導したことにちなんで名付けられ、その完成日がドーム紀元の起点となった。
第1作に登場する伊集院家がこの財団の源流にあたり、数百年を隔てて名前だけが残っている形になる。何気ない地名のひとつが、シリーズ全体を貫く年表の結び目になっている。
作中で言及されるドーム都市のひとつ。コミックマーケットが開かれる街とされており、獣耳の少女を見たという話に対して「コミケに行けばいっぱいいる」と返される場面で名前が出る。世界が滅びてなお同人誌即売会は続いているという、作り手の遊びが覗く一語である。
ドームの出入口に設けられた除染設備。外から戻る者はここを通らねばならない。樹海から帰還したジャッキーとルシアもここを通り、同行していたリアが警備ロボットに捕らえられる。
ウィルスが既に絶滅している以上、除染という機能そのものが形骸である。実際にここで行われているのは、外を見てきた者の身柄と記憶を押さえることだった。ジャッキーは昏倒させられ、二人は記憶消去剤で樹海の一週間を奪われる。
結末では、この同じゲートを5人が反対向きに抜けていく。閉じ込めるための関門が、最後は外へ出るための扉になる。
組織
ヴォルフガング・ガーディナルが率いる研究施設。物語中盤以降の主舞台となる。Fセクションには居住区があり、実験室や標本室、地下深部まで広がる巨大な構造を持つ。
変異体研究の本拠である。かつてはジョセフ・ミズハラとイリューヌが在籍していた場所でもあり、ジョセフの死後、ガーディナルが彼の研究を簒奪してナギとライラを作り出した。ナギが「体が弱い」という名目で囲われて暮らしていたのも、捕らえられたリアが標本として扱われたのもここである。
研究所そのものが、ドーム社会の縮図として置かれている。完璧を謳う建物の内側で、実際には人が所有物として扱われていた。
アイテム・技術
ドーム都市どうしを結ぶ公共の交通機関。ジャッキーはこれに乗ってテレスシティからアリストシティへやってくる。向かいの席に座った世話好きなおばさんとのやりとりが、物語の最初の場面になる。
樹海から戻った者に投与され、外で見聞きしたものを記憶ごと奪う薬剤。ジャッキーとルシアは滅菌ゲートでこれを打たれ、森で過ごした一週間をまるごと失う。
街に流れる「樹海トリップ」の噂の正体がこれである。記憶を消すという行為そのものが、消したい何かの存在を証明していた。
10年前、幼いジャッキーとルシアが引き離された際にも記憶の抑制が使われていたことが、養母の口から語られる。この社会は都合の悪い記憶を繰り返し消してきたことになる。
だがリアが残したペンダントに触れた瞬間、封じられていた記憶はすべて戻ってくる。薬で消せなかったものが物語を動かす。
リアの首輪に刻まれた文字。彼女が何者なのかを示す唯一の手がかりとして、早い段階から画面に現れる。本作の副題「パンドラの森」もこの語に由来する。
ジョセフが遺した暗号化ディスクを解く合言葉のひとつである。もうひとつの合言葉である妻の名 SOFIE と揃うことで、世界の真相が開く。
リアは自分の首にかかっているものの意味を知らないまま森を歩いていた。開けてはならない箱の鍵を、何も知らない少女が身につけていたことになる。ジョセフ自身が制御できない怪物を生んでしまった経緯を思えば、この命名は自嘲でもある。
ジョセフが遺したメッセージを解く、もうひとつの合言葉。
ジョセフの妻であり、ルシアの母であるソフィの名である。彼女は生まれつき変異遺伝子の保因者で、その卵子が本作に登場するほとんどの変異体の源になっている。
世界の真実を封じた鍵に妻の名を選んだという事実に、この研究者の人となりが表れている。最後に残した言葉も、研究の成果についてではなく子らの幸福についてだった。
樹海の研究施設に置かれていた装置。物語終盤で語られる真相の中核にあたる。
ジョセフがこの装置で生み出したのがリアである。母の胎を経ず、完全に人工的に生まれた変異体だった。
森の奥で三人が見つけた焼け落ちた建物こそがその施設であり、地下の巨大な檻は、そこで生まれた失敗作を収めるためのものだったと考えられる。リアが森に一人で暮らしていた理由も、彼女がそこで生まれたという一点に行き着く。
研究所が防衛用に開発した粘液状の軟体生物。地下深部に群れをなして待ち構えている。
脱出行の最大の障害であり、ガーディナルはこの群れの只中にルシアを囮として置く罠を仕掛ける。
これを打ち破るのが5人の共振である。ジャッキー・ルシア・ナギ・ライラ・リアが力を合わせて新たな力を発現させ、ネバールを一掃してルシアを救い出す。研究所が生んだ守りを、研究所が生んだ者たちが破るという構図になっている。
研究所や滅菌ゲートに配された警備用ロボット。樹海から戻ったリアを捕らえたのもこれである。人の手を介さずに管理が働いていることを示す、この世界の手触りを伝える道具でもある。
研究所を統括する中央コンピュータ。施錠・監視・記録のすべてを握っており、潜入にはこれを迂回する必要がある。
メグが腕を振るう相手がこれである。閉鎖ネットワークへの侵入、偽造IDカードの発行に加え、彼女はここに時限式のサイバーウィルスを仕込む。腕力でも超常の力でもなく、技術で戦う人物が一行にいることが、脱出行を成り立たせている。
変異体ではないメグが最後にドームへ残る選択をするのも、この場所で戦えるのが彼女だけだからである。
展望台のスナックパークで売子が語る「先祖代々伝わる幻のメニュー」。ジャッキーの興味を大いに引くが、中身は「秘密」とはぐらかされて最後まで明かされない。緊張の続く物語のなかで、序盤ののどかさを担う小ネタである。
その他・小ネタ
タイトル画面などに現れる、本作のサブタイトル的な呼称。ブランド名のフォア・ナインをそのまま冠したもので、重い題材を扱う本編とは対照的な、軽やかな響きを持っている。
ルシアがジャッキーを叩く、作中で繰り返される定番の演出。見とれたり気の抜けたことを言ったりするたびに飛んでくる。のちに登場するライラの一撃は「ルシアパンチより破壊力が強い」とジャッキーに評され、この言い回しが比較の物差しとして使われる。刺々しいやりとりの中にある気安さを示す、二人の距離感の記号でもある。