キャラクター詳細 — GAOGAO! 4th. カナン ~約束の地~
『カナン ~約束の地~』の登場人物を、正体・立場・結末まで含めて解説する。「ネタバレ詳細」を開くと、その人物の真相と最後がどうなるかまで踏み込む。
カイト
| 読み | かいと |
|---|---|
| 立場 | ネオアリストシェルターの住人。人間の少年 |
| 境遇 | 謎の流行病でシェルターの住人が全滅し、ただ一人生き残る |
| 目的 | 両親から聞かされた人間の理想郷「カナン」を目指す |
空を見たことのない地下で育った少年。住人全員を一度に失い、たった一人で地上へ出る。手がかりは両親から聞いた約束の地の話だけという、あまりに心細い出発である。
変異体は彼にとって知識の上の存在であり、旅の中で初めて実際に出会っていく。人類の側から世界を見る視点を担う人物にあたる。
シェルターを全滅させた「謎の流行病」の正体は、イジュウインシティが開発したREVシリーズ——変異体因子を持つ者だけを殺すウィルスだった。カイトが一人だけ助かったのは、彼がその因子をまったく持たない純粋な人間だったからである。
旅立ちの理由も、生き残った理由も、どちらも敵の設計の内側にあった。人類を守るために造られたはずの兵器が、地下に隠れて生き延びていた人類の居住区を丸ごと消していたことになる。
終盤、彼の旅はウルフィの旅と合流し、二人はイジュウインシティへ乗り込む。そしてウルフィと二人でマザーコンピュータのスザクを貫いて破壊する。人間と変異体が並んで同じものに刃を突き立てるこの場面が、シリーズ全体の主題をそのまま形にしている。
後日談では、各地のシェルターに残る生存者を地上へ導く旅をウルフィと共に計画しはじめる。求めていたカナンは見つからなかったが、代わりに作る側へ回った。
ウルフィ
| 読み | うるふぃ |
|---|---|
| 立場 | 狼族の変異体。前作でアンダーグラウンドの世界を救った英雄 |
| 同行者 | ラビィ、イリア、ニース |
| 目的 | 伝説に聞く「ニンゲン」を探して地上を旅する |
前作『ワイルドフォース』の主人公がそのまま登場する。変異体にとって人間はもはやおとぎ話の存在で、実在を疑う者すらいる。その伝説を確かめに行くのが彼の旅の目的である。
楽天的で情に厚く、敵にも手を伸ばそうとする性分は前作から変わらない。
旅の途中でウルフィは記憶を失う。英雄と呼ばれた男が自分が何者かも分からないまま彷徨うことになり、人魚型の変異体ティティ、元研究助手のエルザ、ルゥリィといった人々と関わりながら少しずつ回復していく。
終盤、カイトの旅と合流してイジュウインシティへ乗り込む。人造の従者アリスは最期に、世界破壊を発動させたスザクを止めるためのカードキーをウルフィに託して自ら命を絶った。滅ぼす手を打ちながら、止める鍵を敵に渡すという矛盾を、彼が受け取ることになる。
そしてカイトと二人でスザクを破壊し、崩れゆくシティから脱出する。後日談では、人間と変異体が共に暮らすセイラムの村を起点に、シェルターの生存者を地上へ導く旅を計画しはじめる。探しに行った「ニンゲン」と、最後は肩を並べて生きることになった。
アンジェラ
| 読み | あんじぇら |
|---|---|
| 立場 | 脱出ポッドで眠っていたところをカイトに見つけられる |
| 特徴 | 背中に翼をもがれた二本の傷跡がある |
| 関係 | 双子の妹ファーの行方を探している |
記憶を失った状態でカイトと出会い、そのまま旅に同行する。自分に片割れがいるということだけを知っており、それが旅の指針になっている。
背中に残る翼の跡は、彼女がかつて翼を持っていたことを示している。変異体のようでいて、どこか異質でもある。彼女が何者なのかという問いが、物語の中軸のひとつを成す。
アンジェラと妹ファーの正体は、エヴァンズ博士が造った生体コンピュータ——生きた脳を情報体として用いる有機的な超情報体だった。人でも変異体でもない、第三のものである。
そして彼女の記憶が失われている理由も明かされる。翼を切除されていたこと、幼い頃にイジュウインシティの工作員へ連行され、その際に父を目の前で撃たれていること。記憶がないのは事故ではなく、奪われた結果だった。
失われた記憶を取り戻していく過程が、そのままイジュウインシティの罪をたどる道筋になっている。旅の同行者として自然に受け入れられていた少女が、実は事件の中心にいた被害者だったという構図である。
ラビィ
| 読み | らびぃ |
|---|---|
| 立場 | うさぎ族の少女。前作からウルフィと旅を共にしてきた |
| 体質 | 他人の魂が体に入り込みやすい霊媒体質 |
| 関係 | ウルフィの恋人。イリア・ニースとは旅の仲間 |
前作から変わらずウルフィの隣にいる少女。元気で口が達者、怖がりだがいざという時には動く。霊媒体質という特異な性質は前作でも鍵の探索に使われていた。
読者にとっては最も見慣れた、安心して見ていられる人物である。だからこそ彼女に仕込まれた真相が効いてくる。
物語の途中で明かされるのは、ラビィが既に一度死んでいたという事実である。実験体に殺されたその瞬間、ブルーが彼女の魂を抜き取り、ウォーレンの技術で育てられたクローン体へ移すことで蘇らせていた。仲間たちが当たり前のように接してきた少女は、別の体に入った状態で旅を続けていたことになる。
終盤、瀕死となったファーの魂を、霊媒体質のラビィが宿す。そして生体コンピュータの力を受け継ぐ。一度死んで別の体に移された少女が、今度は他人の魂を受け止める器になるという流れである。
「自分とは何によって決まるのか」という問いが、この人物ひとりの上に二重に積み重なっている。本作でもっとも静かに重い設定を背負わされた人物といえる。
ヴィアンカ
| 読み | ゔぃあんか |
|---|---|
| 正式名 | ヴィアンカ=A=イジュウイン |
| 立場 | イジュウイン=ドームシティを統べる令嬢 |
| 行い | 変異体の殲滅を推し進めている |
唯一現存するドーム都市を統べる令嬢。変異体を滅ぼす計画を淡々と進める、本作の敵役として立ちはだかる。
だがこの人物については、名前からして事実と違っている。
シティを統べていた令嬢は本物ではない。正体は、本物の令嬢に仕えるため彼女の父——イジュウイン家の前当主——が造った人造の従者アリス=C=イジュウインである。
経緯はこうである。8年前に前当主が死に、本物のヴィアンカの精神が蝕まれていった。7年前、アリスは研究所の事故を偽装する。アリスは死亡、ヴィアンカは重傷——という筋書きを作り、1年かけて主人に成り代わった。以後の統治も変異体殲滅も、すべて彼女が「ヴィアンカ」として行ってきたことになる。
ただし殲滅思想そのものはアリスの独断ではない。それは本物のヴィアンカが父の教えから抱いていた願いであり、アリスは「ヴィアンカ様がそう望んでいたから」代わりに引き継いだにすぎなかった。造られた従者が、主人の願いを主人以上に忠実に果たし続けた結果が、種族ひとつを消しにかかる計画だった。
最期、本物のヴィアンカがアリスをかばって命を落とす。残されたアリスは、自分の思考パターンを仕込んだマザーコンピュータスザクに世界破壊のエマージェンシーモードを発動させ、そのうえでカードキーをウルフィに託し、光の剣によって自ら命を絶った。滅ぼす手を打ちながら止める鍵を渡すという矛盾が、この人物の最後の行為である。
ビィ
| 読み | びぃ |
|---|---|
| 立場 | イジュウインシティ内で暮らす少女 |
| 関係 | ヴィアンカを慕っている |
シティの中で「ビィ」と呼ばれ、ヴィアンカを慕っている少女。物語の大半では背景に近い位置にいる。
この少女こそが、精神を病んだ本物のヴィアンカである。父の死によって心を蝕まれ、自分の名も立場も失って、成り代わった従者の傍らで「ビィ」と呼ばれて暮らしていた。
慕っている相手が自分になりすました存在であるという事実を、彼女が理解していたのかどうかは判然としない。それでも最後の場面で彼女が取った行動は明確だった。アリスをかばって電磁カッターに貫かれて死ぬのである。
仕えられていた側が、仕えていた側を守って先に逝く。主人と従者という関係が最後に反転するこの一瞬が、本作でもっとも切ない場面にあたる。
その他の登場人物
アンジェラの双子の妹で、背に二枚の翼を持つ。物語開始時点では行方が分からず、姉が探し続けている相手である。正体は姉と同じくエヴァンズ博士が造った生体コンピュータで、姉妹のうち本体にあたるのは彼女だった。終盤の戦いで瀕死となり、その魂は霊媒体質のラビィに宿されて、生体コンピュータの力はラビィへと受け継がれる。姿を消していた片割れが、最後に別の少女の中で生き続けることになる。
ウルフィの仲間で、前作から旅を共にしてきた歴戦の戦士。一行の主戦力にあたる。前作で宿敵だったブルーとの因縁を引きずっており、本作でもその関係が物語に絡む。終盤、死を選ぼうとするブルーを叱咤して生きる道を選ばせるのも彼女である。かつて斬り結んだ相手を最後に引き戻す役回りを担った。
ウルフィの仲間で、前作から同行している鳥族の少女。前作の終盤で尾羽を得て飛べるようになった経緯を持つ。本作でも一行のムードメーカーとして、緊張の続く旅路に息を入れる役回りにある。
人間の親から生まれた変異体の少女。旅の途中でカイトに同行する。人間と変異体のどちらにも属しきれない出自であり、本作の主題である共存を、生まれながらに体現している人物にあたる。人間しか知らずに育ったカイトにとって、最初に近しく接する変異体でもある。
前作『ワイルドフォース』で立ちはだかった光喰いの長。前作の結末で炎の中に消えたはずだったが、生き延びていた。本作では敵とも味方ともつかない立場で物語に関わる。実験体に殺されたラビィの魂を死の瞬間に抜き取り、ウォーレンの技術で育てたクローン体へ移して蘇らせたのは彼である。かつて自ら死を選んだ者が、他者を生かす側に回っている。終盤、イリアの叱咤を受けて今度は生きる道を選ぶ。
各地を渡り歩く風変わりな研究者で、ブルーを「ルーちゃん」と呼ぶなど掴みどころがない。クローン体の育成をはじめとする高度な技術を持ち、ラビィの蘇生もこの人物の技術によっている。旧名をケインといい、弟を手にかけた過去を背負っている。傍らには常に少女ルゥリィを連れている。物語の随所で助けにも障害にもなる、立ち位置の定まらない人物である。
ウォーレンに付き従う少女。その正体は人工生命であり、さらに二重スパイとして動いていたことが明かされる。誰の側にいるのかが最後まで読めない人物で、記憶を失ったウルフィが関わる相手のひとりでもある。造られた存在が自分の立ち位置を選ぼうとするという点で、アリスと対をなしている。
元イジュウインシティの研究助手。シティの内情を知る立場にあり、記憶を失ったウルフィが関わる人々のひとりでもある。Aクラス市民という身分制度に連なる出自を持つ。物語を締めくくる一文を手記に残すのは彼女である——「カナンとは求めて得るものではなく作り出すもの、この地球そのものがカナンなのだ」。長い旅の結論を言葉にする役を託された人物といえる。
前作にも登場した人魚型の存在。過去のニンゲンの科学者が造った人工の生体であり、本作でも記憶を失ったウルフィが関わる相手のひとりとして現れる。人でも獣でもない造られた者という点で、アンジェラやルゥリィと同じ列に並ぶ人物である。
関西弁を話す双子の姉妹で、イリアの従姉妹にあたる。前作ではイリアにライバル心を燃やして決闘を挑んでいた。本作でも賑やかな掛け合いを持ち込み、重い題材の続く物語に緩みを与える役回りを担う。
アンジェラとファーを生み出した研究者であり、二人の父。生体コンピュータの創造者にあたる。娘たちが幼い頃、イジュウインシティの工作員に踏み込まれ、アンジェラの目の前で撃たれて命を落としている。彼女の記憶が失われているのは、この場面ごと消されたためだった。
旅の途中で出会う老いた博士。世界の成り立ちや技術についての知識を持ち、主人公たちに手がかりを与える助言者にあたる。