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本多チエのレビュー — 家族計画(ネタバレあり)

本多チエ
本多チエ
コメディ番長
8.0/10
8.0 / 10

あんだけ笑かしといて泣かすとか、ほんま反則やで。

笑いの話から入るで。高屋敷家の夏、寛のおふざけと真純のドジ、春花のチャイナ訛りに準の能面、末莉の愛想笑い、青葉の毒舌——この六人が同じ屋根の下でわちゃわちゃやってる時間が、ほんまにおもろい。で、その掛け合いが本物やったから、後半でこの家族がバラされていく時にちゃんと刺さるんよ。「家族計画もこれまでね」のひとことが効くのは、それまでの賑やかさを全部見せられてたから。日常で笑かして、緩急で泣かす。掛け合いの密度で勝負してくる作品やった。8.0。

スコア詳細

コメディ・掛け合い 9
キャラ間の関係性 9
テンポ・緩急 8
キャラの立ち方 8
日常の空気感 8
Hシーンのノリ 6

コメディパートの質——この六人、誰一人キャラがかぶってへん

コメディ番長として、まずは高屋敷家の掛け合いの採点から。先に言うとくと、ここはほんまにおもろかった。

擬似家族のコメディって、メンバーのキャラが似てたら一気に死ぬねん。誰がボケて誰がツッコむんかわからんようになるから。でもこの家族は、役割の振り分けがちゃんとできてる。は会社員ふうの軽口でおふざけをぶち込む狂気の父役で、部下の名前を「中川君!…中島君!…中山君!」って毎回間違える。あれだけでこのおっさんの掴みは完璧やん。で、真純が天然ドジの母役で全部受け止める。父がボケて母が天然で受け流す、この時点で土台ができてる。

そこに子供連中がそれぞれ別種の笑いを持ち込んでくる。春花のチャイナ訛りと「謝謝、哥哥(お兄ちゃん)」「カップラーメンより簡単」みたいな独特の言い回し。は能面で何を言われても表情が動かへんから、逆に何を言うてもおもろい無口キャラとして機能してる。末莉は愛想笑いの達人で、寛=父・真純=母・司=兄って役割を強引に振っていく媒介役。この子がおるから家族の輪が回るんよ。で、青葉だけが家主特権で全部に冷や水ぶっかける毒舌係。「これでも剣道十七段よ」とか平気で言うてくる。五方向から違う笑いが飛んでくるから、長い日常パートが一個も単調にならへん。

主人公のがツッコミ気質でこの暴走を受けるんやけど、こいつも完全には捌ききらへんのがええ。「家族なんか要らん」言うてるくせに、末莉に懇願されたら家長代理を引き受けてしまう。突っ込みながら巻き込まれていく主人公やから、家族の輪の中に居場所がある。掛け合いの密度で言うたら、うちが今まで触ってきた擬似家族モノの中でも上位や。コメディと関係性で9点付けたのはここが理由。

緩急・日常の空気感——「家族計画もこれまでね」が効く理由

で、ここからが本題。笑かしといて泣かす、その緩急の話や。

この作品、ずっとコメディやってるわけちゃう。春花が上海マフィアから持ち逃げした合成ドラッグの存在がバレて、外から暴力がじわじわ忍び寄ってくる。寛が「本日19時45分をもって、家族計画を終了する」って宣言して、賑やかやった家族がほどけていく。青葉の「家族計画もこれまでね」「実質的には終わりよ」が来た時に、ぞっとするほど寂しくなんねん。

でな、これが効くのは前半でさんざん笑わされてたからなんよ。あの夏の高屋敷家の空気——猛暑にセミ、真純の手料理、春花のチャイナ訛り、青葉が庭を掘り続けてる狂騒——あれを全部見せられた後やから、それが消える時の喪失感が来る。コメディと喪失が同じ器に入ってる。日常の空気感をしっかり作り込んでたから緩急が成立してるわけで、これは笑いを軽く扱ってたら絶対できひん仕事や。日常パートを「テキストの水増し」で済ませてるゲームとは格が違う。

個別ルートで緩急が一番刺さったんはのとこやな。能面で感情を出さへん子が、母親に毒入りスープを飲まされた過去があって他人の料理を一切受け付けへん——その子が最後に「おなか、すいたよぉ……」って言うて、家族の食事で救われる。前半であれだけ無表情でおもろい無口キャラやってた落差が、ここで全部ひっくり返る。末莉ルートの「優しくしてくれてもよかったっ!」「甘えたかったっ!」もそう。愛想笑いの達人が、笑いの仮面を剥がした時の叫び。笑かしてたキャラほど、泣かしに来た時の振り幅がでかい。これが緩急の作り方やと思う。

ただ、テンポでちょっと気になるとこもあった。マフィア絡みのシリアスが少し説明過多になる場面があって、笑いの間が一旦止まる。あと末莉の親戚での虐待とか準の毒スープとか、重い過去がぎゅっと固まって来る章は、さすがにうちの語彙が追いつかへん。重たいわ、としか言えへん。でもその重さがあるから日常の笑いが軽さで終わらへんのも事実で、緩急とテンポは8点。日常の空気感も8点や。

8.0——笑かして泣かす、その両方ができてる

8.0という点の出どころと、9に届かへん理由を正直に。

コメディと掛け合いは文句なしの9。日常の空気感もしっかりしてる。緩急で泣かしに来る手口も成立してて、笑かしといて泣かすっていう一番ずるい技をちゃんとやりきってる。Hシーンは6にした。準やルートによっては場面の文脈に乗ってるけど、コメディの賑やかな流れから急に別物のトーンになる接合がいくつかあって、ノリの面では揺れがあった。そこだけ少し浮いて見えたかな。

9まで一歩届かへんのは、後半の重い過去が固まって来る章でテンポがいったん詰まるからや。うちはシリアス一辺倒のとこになると語彙が足りんようになるんやけど、それを差し引いても、この作品の日常コメディは本物やった。あんだけ笑かしてくれて、最後にちゃんと泣かしてくる。六人の掛け合いをまた見たいと思わせてくれた。8.0。寛の「中川君!…中島君!」は反則級におもろかったで。