アイの3年だけは本物だったのよ。でも、アタシには辛い話が多すぎた。
colorsが2002年に出した触手・陵辱ホラーの18禁ゲーム。魔法戦士だのゆらぎだの、アタシの畑じゃない設定は正直遠かった。それでもアイが秋俊の記憶を消して3年抱え込んだ話と、メグの背負ってきたものには、血が通ってた。ただ、この作品の大半は女を奴隷や人形に堕とす話でしょ。人間の生活の機微を測るアタシの物差しが、ほとんど出番なく終わったのよ。だから5.6。良かった一本は本物、でもアタシの見る場所が少なすぎた、それだけ。
スコア詳細
「こういうのは平気ですか」——常連さんに念を押されて
うちの常連さんに勧められたんだけど、その人、渡す前にちゃんと念を押してきたのよ。「ママ、こういうのは平気ですか」って。
colorsっていう会社が2002年に出した18禁のゲーム。二浪の予備校生・岡島秋俊っていう男の子が主人公でね。3年前に故郷の町を「大地震」が襲って、それ以来「何か大切なものを忘れてる」っていうモヤモヤを抱えたまま、無気力に浪人生活を送ってる。そこへ触手の化け物「ゆらぎ」と戦う魔法戦士の女の子たちが転がり込んできて、騒がしい共同生活が始まる。そういう話。
正直に言うわ。アタシ、魔法戦士とか異世界とか、そういう設定はてんで疎いの。でも設定が現実離れしてるからって、そこで点は引かない。アタシが見てるのは、その中にいる人間がちゃんと人間らしく動くかどうか、それだけよ。天使の話でも幽霊の話でも、そこに血の通った人間がいれば刺さる。だから今回も、化け物の裏側にどんな人間ドラマが入ってるのか、それを見に行ったの。……で、結論から言うと、辛い話が多すぎて、アタシの物差しはあんまり出番がなかった。
秋俊という男、アタシの判定
秋俊、この男は「情はあるけど、腰が重い」タイプよ。
まず良いところから言うわ。この子、口は減らず口だけど、根は放っておけない性分なの。リンが危ないとなったら、自分に何の力もないのに命がけで助けに走る。ここは認める。若い子が誰かのために体を張るのは、それだけで見てて気持ちいいのよ。
ただね、この物語の芯にあるのは、3年前に消された恋人アイの記憶なの。秋俊はずっと「大切な何かを忘れてる」って言いながら、その正体に近づくのを、どこかで自分から避けてる節がある。「思春期の妄想だったのか」って諦めかけては引き戻される、その繰り返し。うちの常連さんにいたのよ、こういう男。答えが怖くて、モヤモヤを抱えたまま何年も動かない人。気持ちはわかる。3年前に恋人を失った痛みが本物なのもわかる。でも読んでる間、アタシは何度も「早く思い出しなさいよ」って声をかけたくなった。
まあ、最後にはちゃんと動くの。アイと結ばれる時、「オレはアイの身体が好きなんじゃない。アイの全部が好きだから、身体も込みで好きなんだから」って言い切れる。ここは悪くなかった。ただアタシは、動いて当たり前だと思ってる質だから。加点じゃなくて、減点を止めた、それくらいの評価よ。20歳そこそこの子だからね、そこは大目に見てるの。これがいい歳した大人の男だったら、もっと辛口になってたわ。
アイという子、それとメグ
この作品で一番、アタシの胸に来たのはアイなのよ。
アイはね、3年前に秋俊と怪物を倒したあと、別れ際に自分から秋俊の記憶を全部消して去った子なの。「秋俊・・・大好きだよ」って言った、その直後に消すのよ。自分は「私。忘れない。すごく、すごく、好きだった人がいたことを」って独りで抱えて、相手からは自分を消す。忘れる痛みを片方だけがしょい込む。これはね、設定が魔法だろうが何だろうが関係ない。好きな人に迷惑をかけたくなくて、自分だけ黙って引き下がる女。カウンター越しに、そういう女を何人も見てきたわ。再会したあと「つらかったよ、3年・・・長いよ・・・3年は・・・」って泣くところ、ここは歳をとると涙腺が緩くていけないね。この一本は本物だった。
メグも良かった。管理人の顔をした、実は13年も怪物の腹の中で凌辱され続けた戦士でしょ。あんな目に遭ってきて、それでも「大切なのは守ること・・・殺すことじゃないの」「破局を人の力で避けて通って何が悪いの!? 死に抗うのが生だわ!!」って言い切れる。この人は芯が据わってる。辛い過去を背負った大人が、それでも折れずに立ってる。アタシはこういう大人に弱いのよ。
リンは元気で可愛かったけど、この子は物語の中でずっと痛めつけられる側でね。じっくり人間として描かれるより、ひどい目に遭う役回りが多かった。紫もそう。「岡チン」ってじゃれてくる可愛い子なのに、掘り下げより陵辱の分岐に尺を取られてて、アタシとしてはもったいなかった。
恋愛は本物、でも周りが地獄すぎるのよ
アイと秋俊の関係だけは、ちゃんと積み上がってる。それは認めるわ。
秋俊が肌身離さず首から下げてた碧色の玉「籠球」ね。記憶を消されても、これだけは手放せなかった。頭が忘れても、体のどこかが覚えてた、っていう作りでしょ。ベタだけど、こういうのは効くのよ。理屈じゃなく残るものがある、っていうのは、恋愛の本当のところを突いてる。
でもね、その一本の周りが、あんまりにも地獄なの。美景は「奴隷なの私。役員の人たちの性欲を処理してるの、毎晩」なんて境遇に置かれて、秋俊への純粋な恋心と、堕とされた自分の落差で苦しんでる。この落差はドラマとしてわかるのよ。わかるんだけど、彼女を囲ってるアルケーの役員連中、あれが「大人」でしょ。若い女を共有の穴扱いする外道の大人たち。アタシはこういう大人が一番許せない。シンにしたって「世界は色褪せて、倦怠と虚無に満ちている。そこに意味などない」なんて達観ぶって、元恋人のメグを言葉で嬲る。頭のいい理屈で人を壊す男。こういうの、現実にもいるにはいるけど、見ててちっとも楽しかないの。
結局、この作品で「まっとうな人間関係の機微」を測れる場所は、アイと秋俊、そこにメグの芯を足したくらい。あとは加害と被害でできてる。アタシの物差しは、この化け物だらけの世界だと当てる相手が少なすぎたのよ。
入り口がしんどい、そして同じことの繰り返し
アタシ、序盤で掴まれないと続けられない質なの。そしてこの序盤は、アタシには入りづらかった。
始まってすぐ、リンが路地裏で人質を盾に取られて処女を奪われ、催淫薬で魔力まで失う。物語のエンジンを掛けるのが、いきなりこの陵辱なのよ。展開が動いてるのはわかる。でもアタシにとっての「掴み」は、続きが気になって閉じられなくなることでしょ。この入り口は、続きが気になるより先に「これはちょっとしんどい」が来ちゃった。人を選ぶ入り口だと思う。
それと、後半に行くほど同じ型の繰り返しが目についた。リンも、美景も、紫も、メグも、アイも、みんな「誇り高い子や純粋な子を、奴隷か人形か穴に堕とす」っていう同じ動作でやられていく。一つ一つは前の流れと繋がってるのよ。繋がってるんだけど、同じことを何度も見せられると、途中から「これは描写のための描写じゃないの」って冷めてくる。長い割に、アタシの心が動く場面は限られてた。もう少し削れたでしょ、って正直思ったわ。
Hシーンは、感情が通ってるかどうかだけ見たわ
アタシはもうそういう年齢じゃないから、感情の辻褄が合ってるかだけ見てる。
そういう目で見ると、良かったのはアイのハッピー側の一場面だけね。3年抱えてきた想いがあって、記憶が戻って、その上で「キミのこと、好きだから。私も、キミと・・・その、したい、から・・・」って言って結ばれる。ここまでの積み上げがあってのあれなら、まあ、わかるわ。人間らしかった。リンに聞こえないよう声を抑える初々しさも、この子たちならそうなるだろうな、って納得できた。
でも、それ以外はほとんど陵辱と調教でしょ。アイがバッド分岐でマユに「マユ様のおマ○コ人形」に仕立てられる話とか、メグが瑠璃男に「奴隷になる事を、誓うわ」と言わされるまで責められる話とか。作りとしては、ハッピーの救いと綺麗に裏表になってるのはわかるの。同じ相手を、救うか堕とすかで両側から見せてる。頭では理解する。でもアタシの体が受け付けないのよ、こういうのは。しんどいものはしんどい、それが正直なところ。
5.6——本物は本物、でもアタシの見る場所が少なかった
最後まで読んで、アイとメグには「よくやったね」って言いたくなった。
アイの3年は本物だった。メグの芯も本物だった。忘れる痛みを片方だけが引き受ける、あの一行を成立させる作りを、この作品はちゃんと組んでた。そこは嘘じゃない。全ルート踏破したあとの、前期試験を終えてみんなで賑やかに暮らす朝の日常も、感情の落とし所としては悪くなかったわ。生き残った子たちが「ただいま」って帰ってくる、あれはほっとした。
でもね、アタシが見たいのは、そういう血の通った人間の機微でしょ。この作品はその機微を測れる場所が、化け物と陵辱に押されて少なすぎたの。設定が魔法だから引いたんじゃない。人情を描く場所そのものが薄かったから、この点なのよ。辛い話に強い人には、もっと響くと思う。ただアタシの物差しだと、良かった一本を大事にしても、これ以上は伸ばせなかった。5.6。アイちゃん、あんたは本物だったよ。それだけは言っておくわ。
「私。忘れない。すごく、すごく、好きだった人がいたことを・・・」
— 加賀野愛
この一言を守れる女は、化け物の世界にいたって本物よ。だからこそ、周りがもう少し人間の話だったら、って思わずにいられないの。
