笑わせといて泣かせるの、反則やで。でもまあ、そういうゲームやった。
1998年のゲームや。うちまだ産まれてへんやん。「泣きゲーの元祖」みたいに言われてる作品やから、なんか覚悟して起動したんよ。でも冒頭のモノローグが終わって朝の起こしシーンが始まった瞬間——浩平くんのキャラが面白すぎて、「あれ、おもろいやん」てなった。コメディとして機能してる。テンポがいい。ヒロイン6人全員ちゃんと立ってる。序盤のコメディのおかげでなんとか乗り越えられたけど、ゲームの全体像がつかめるまで時間がかかったのだけが難点。全部やったあとに「また読みたい」と思えたから、うちの評価は7.8。
スコア詳細
舐めてかかったら、最初のボケで負けた
1998年のゲームや。うちまだ産まれてへんやん。
プレイしたのはPC版(ボイスなし)。「泣きゲーの元祖みたいな作品がある」って聞いて、「ふーん、古いし感動路線か」くらいに思ってたんよ。で、起動した。冒頭のちょっと不思議なモノローグが終わって、朝の起こしシーンが始まった。
主人公・折原浩平——高校2年生、口が悪い、ボケが止まらない——が布団を剥がされても寝てる。枕で顔を押し込まれて「ぐ……ぐもも…」言いながら寝ようとする。ようやく顔を上げて「どわっ!どうして見も知らぬ美少女が朝一番にオレを起こしにくるんだッ!?」って言う(毎朝来てる幼なじみに)。このノリが最後まで続くのか——と思ったら、続いた。
6人の少女が登場する。毎朝叩き起こしに来る幼なじみの長森瑞佳さん、乙女願望が強い転校生の七瀬留美さん、盲目の先輩・川名みさきさん、「みゅーっ」としか言えない椎名繭ちゃん、スケッチブックで会話する後輩・上月澪ちゃん、そして雨の空き地でひとり佇む里村茜ちゃん。全員と順番に関わっていく構造になってる。
浩平くんというキャラ、おいしすぎるやん
このゲームのコメディ、本物やねん。
一番好きなシーンの話をすると、浩平くんと長森さんの「星人」の掛け合い。長森さんが「浩平は『ばかばか星人』だよ」って言ったら、浩平くんが「美男子っ、うー、美男子、美男子、美男子、はぁーっ美男子っ、まったく美男子だ。これでオレは『美男子星人』だっ」って対抗する。長森さんが「でも美男子星出身ってだけで、浩平自身は美男子じゃないかもしれないよ」って冷静に突っ込む。浩平くんが「長寿村って言って、みんなが長寿なわけじゃないもん」って返された瞬間に「今度は『もんもん星人』に変身しやがったなっ」って言う。
この論理のエスカレーションが気持ちいいねん。「だよもん星人」の命名まで辿り着くまでの流れ、テンポが完璧で全部繋がってる。最終的にふたりで「うーっ」「ふかーっ!」って威嚇し合って、「……って、時間!!」「おっと、威嚇し合っている場合じゃなかった!」で終わるの、ここ笑えた。
で、浩平くんだけじゃない。七瀬さんのツッコミも本職感がある。自分のボケが滑った時に「殺人的に面白くないわよっ」「凶悪に面白くないわよっ」って言うんやけど、スケールがおかしすぎてちゃんと笑える。「殺人的」ってどういう基準や。でも「おもろくない」を強調しようとするセンスがキャラとして正解やと思う。繭ちゃんの「みゅーっ」だけで全部伝わる存在感も、これはこれで本物やし。
ボケとツッコミの役割が自然に決まってて、二人の間の呼吸がある。「キャラ同士の掛け合いがおもろい」の教科書みたいなやつを1998年にやってるのか——て思ったら、なんかちょっと感心してしまった。
6人おるのに、全員ちゃんとおいしい
ヒロインが6人おる。多い。でも全員ちゃんと立ってる。
「みゅーっ」としか言えない繭ちゃんが、「みゅーっ」だけで存在感を作れてるのがまずすごい。台詞が一種類しかないのに、シーンによって「みゅーっ(困惑)」「みゅーっ(怒り)」「みゅーっ(嬉しい)」って全部違う意味に読めるんよ。テキストだけでこれができるって、キャラ設計として面白い。
澪ちゃん——言葉を持たなくてスケッチブックで会話する後輩——との学食での初対面シーンも好きやった。同じタイミングで同じメニューをトレーに置く、それだけのシーンなんやけど、言葉なしの居心地のよさがちゃんと伝わってくる。このシーン、テキストだけでこういう間を作れるんやって思った。
6人がそれぞれ浩平くんとの「ボケのラリー」を持ってる。長森さんとは「星人」シリーズ、七瀬さんとは「スケールのおかしいツッコミ」、繭ちゃんとは「みゅーっ」の解釈ゲーム——それぞれ別のおもろさやから飽きひん。「ヒロイン多いゲーム」にありがちな、全員同じパターンで仲良くなってく感じが薄い。
序盤だけ、正直しんどかった
ここだけは正直に。
共通ルートが長い。日常が続く。「このゲーム、何が起こるん?」ってなる時間が確かにある。最初のルートをクリアした段階では、正直「なんかまだぼんやりしてるな」って感じがあった。
コメディが機能してくれてたから持ちこたえられたけど、ルートに入ってからが本番、というのがわかるまでに時間がかかった。うちみたいに「笑えなかったら止まるかもしれない」タイプにはギリギリやった。全部クリアしてから「あの積み重ねが必要やったんやな」ってわかるけど——知らないまま序盤で止めた人に届かないのは、ちょっと残念やなとは思う。
笑わせといて泣かせるの、反則やで
笑わせといて、泣かせてくる。
コメディゲームやと思ってプレイしてたら、各ルートの後半でちゃんとくる場面がある。「えっ、こういう話やったん」ってなる感じ。ネタバレになるから何が起きるかは書けへんけど、「浩平くんと仲良くなった分だけ、後半にくるものがある」という設計になってる。共通ルートで笑わせてくれた人間だから、その後半がきつい。笑わせた分の責任をちゃんと取らされる感じがある。
……まあ、泣いたのはほんまの話やけど。それはそれとして、コメディとして面白かったことと感動したこととは別の話やから。ネタバレあり版に詳しく書いた。
7.8——また読みたいと思ったか。うん、思った
7.8をつけた理由はこうや。
コメディの密度と質が本物やった。テンポが気持ちいい時間帯が長い。ヒロイン6人全員に「このキャラのシーン、もっと見たい」と思わせる個性がある。序盤のコメディで乗り越えられたけど全体像がつかめるまでが長かった——でもそれを差し引いても、全部やったあとに「また読みたい」と思えるゲームはそんなにないから、それがうちにとっての答えや。
各ルートのコメディとシリアスのバランスについては、ネタバレあり版に詳しく書いた。笑いと感動、どっちがどれくらい機能してたか、ルートごとに違うので。
