用語集 — Prismaticallization
Prismaticallizationの固有設定・システム用語・引用書名をネタバレ全含みで解説。スクリプト全文から抽出した全29語を収録。
Prism+crystallize+-ation の合成語。時間が結晶に差し込み、多面的に見える本作の世界観そのもの。
- 概要
- 「プリズム化して結晶化すること」「結晶を通してプリズムのように見えること」の両義を含む造語。ゲーム開始時点では意味が明かされず、物語を進めることで解読される。
- 作中での定義
- 草加武則が荘司に語る——「同様に、時間が、それに差し込む。するとプリズムのように、様々に見える。一本の時間線上では通過しない事象も、角度を変えるなり、何かを刻み込むなりすれば……」(section_02)。この台詞がタイトルの定義そのもの。
- 構造的含意
- 過去・現在・未来は一直線ではなく、結晶の中に閉じ込められた多面的な可能性として「在る」。光(=意識・観測)が差し込む角度を変えれば、異なる物語が見える。ループ構造をタイトル一語に圧縮した。
半透明にきらめく鉱石。「過去の結晶。世界そのもの」(草加)。時間操作の中心となるオブジェ。
- 外見・初出
- section_12「きらめく透明な鉱石。……ガラス柱か?細工が精巧なところを見ると、何かの飾りか……」。section_02 でも荘司が夢の中で草加から手渡される。
- 真の意味
- 草加曰く「それ自体が過去。過去の結晶。世界そのもの」「過去だけではなく……もしかしたら、それは有り得る、全ての要素」(section_02)。光(観測・意識)が差し込む角度を変えると、異なる時間線が顕現する装置。
- 循環的所持構造
- 「ふたつあったのかと思っていたが……違うんだ。始めに俺が拾った。それを彼女が持っていった。それを多分、落として……それを君が拾った」(草加、section_02)。単一のオブジェが草加・みゆ・荘司・沢村兄・澄香の手を経由する。
- 作中での動き
- section_11 でみゆが地面を這って探していたもの。section_12 で荘司が木の根本で拾い、澄香に渡し、最終的にクライマックスで決定的な役割を果たす。
主観時間の意。「絡みは解けた」というループ脱出条件と関わるシステム+物語概念。
- 語源
- フッサール現象学の「内的時間意識(inneres Zeitbewusstsein)」の語感に近く、客観時間ではなく主観時間・体験時間の意味でも読める。タイトル画面の「内時性確認」メニューと連動する。
- ループ脱出条件
- 草加が大学夢シーンで語る——「時間は関係無いのさ。それが循環していた理由だ、多分。……となれば、出られる。絡みは解けた。記憶が連続しているのも、そのためだ」(section_02)。「絡み」=登場人物たちの解消されていない想いや執着。それが解けた時、ループを脱出できる。
バッドエンド分類のひとつ。時間ループから脱出に失敗した状態を指すシステム用語。
- 意味
- Diverge(分岐する・逸脱する)からの命名と推察される。ループ抜け出しに必要な条件を満たさないまま進行した場合に発生するバッドエンド分類。
- 登場箇所
- section_00 のシステム用語として登場。タイトル画面で「アンノウン」と並列して掲示される。プレイヤーが特定の選択経路で行き詰まった際に表示される結末画面の名称。
バッドエンド分類のひとつ。記録の矛盾・未定義状態を指すシステム用語。Unknown。
- 意味
- Unknown からの命名。記録の矛盾、もしくは未定義状態を指すバッドエンド分類。
- 登場箇所
- section_00 で「ディヴァージ・エラー」と並列に表示される。両エンドとも、ゲームシステムの用語(記録・参照・解放)が物語の時間ループ構造と意図的に重ね合わせられた命名。
量子論からの借用語。各「記録」が初期値(基底)か変化済み(励起)かを示すシステム分類。
- 意味
- 量子論用語の借用。「基底状態(ground state)」=エネルギーが最小の安定状態。「励起状態(excited state)」=外部からエネルギーを受けて変化した状態。各「記録」の初期値にあるか、条件によって変化した状態にあるかを示す。
- 作中での使われ方
- section_00 の記録番号と並列して表示される内部情報。物語の「時間軸の重ね合わせ」というモチーフと連動する意図的な用語設計。
タイトル画面メニューのひとつ。プレイ進捗を時間軸で確認するシステム機能。
- 概要
- タイトル画面メニュー「秘密の示唆/内時性確認/記録・参照/コンフィグ/各素材観覧」のひとつ。プレイ進捗を時間軸で確認する機能で、本作の「時間ループ」モチーフをメニュー名にまで貫徹している。
タイトル画面メニューのひとつ。隠し要素や分岐条件のヒントを示すシステム機能。
- 概要
- タイトル画面メニューのひとつ。隠し要素・分岐条件のヒントを表示する機能。「秘密の示唆」という命名自体が謎めいており、本作のループ構造への意図的な誘導になっている。
セーブ・ロード・データ消去のシステム用語。物語の時間ループ構造と意図的に重ね合わされた命名。
- 表記
- section_00「『状態』を『記録』しますか?」「『記録』が『解放』されます」。一般的なセーブ・ロード・データ消去機能だが、物語のループ構造と意図的に重ね合わせた命名。
- 象徴的意味
- 「記録」=時間軸の確定。「参照」=過去への遡及。「解放」=ループからの離脱。プレイヤー操作がそのまま物語の「時間操作」の比喩になっている。
タイトル画面メニューのひとつ。ギャラリー・回想モード。本作のCG・BGM・回想を閲覧する機能。
- 概要
- タイトル画面メニューのひとつ。section_13 のキャラ別カテゴリ・section_14 の内部フラグ名と連動して、各キャラのCG・BGM・回想シーンを後から閲覧できるギャラリー機能。
木ノ下家がペンションの真似事として営む山中の宿。観光地から外れ、客足はほぼない。
- 概要
- 「いかにも別荘然とした、商売気の感じられない建物」(section_02)。観光地から離れ、客足はほぼなく、知人から実費程度を受け取って泊める形で運営されている。客室は二部屋しかなく、ツインベッドの同室問題が発生する(「ハメられたよ……」)。
- 歴史
- 八年前まで木ノ下家・琴原家・射場家・柊家が同じ近所に住んでいた時期があり、今は木ノ下家のみが「山持ち」としてこの地に移っている(section_02、section_10)。物語のほぼ全篇の唯一の舞台。
木ノ下家が「真似事」として営む宿泊業。客足はほぼなく、知人から実費程度を受け取って泊めている。
- 詳細
- さよりの本音(section_09)——「ここも夏場だけだし、ちゃんとした営業でもないし……自立しなきゃ、とは思うんだけど、お父さんを放っておくのも心配なのよね……」。さよりルート一年後(section_12末尾)では「もう少し、ちゃんと営業しようって、お父さんとも話してるし」と本格化の意思が示される。
琴原耕一の失踪を指す表現。「ある日突然」家族から消えた、家族崩壊の決定的事実。
- 初出
- section_10。「単身赴任?それとも離婚?」と荘司が問うたのに対し、さよりが「いえ……蒸発しちゃったの。ある日突然」と答える形で、家族崩壊の決定的事実が示される。これで物語の核心へと踏み込む。
- 背景
- 琴原耕一はさよりへの想いを残したまま家族を捨てた。みゆはこれを察知し、さよりを「父を奪った人」として憎みつつ、プリズムを使って父を呼び戻そうとする。
山荘の伝承。失せ物を三度呼ぶと見つかるという作法。呼べる時点で既に手に入れているという逆説。
- 内容
- 失せ物を呼び戻す際の作法として、無くしたモノの名前を三度呼ぶ(section_03、明美と荘司の会話)。
- パラドックス
- 荘司の問いかけ「無くしたモノが判らないのに、呼べるのか?」に対し、明美が答える——「だからそれは……問と答が同じ……それを呼べる時点で、もう手に入れてる……って、ことじゃないかな」(section_03)。「呼べる=既に知っている=既に手に入れている」という自家撞着的構造が、物語の「捜し物(自分の想い)はすでに持っている」という主題と接続する。
山荘周辺の言い伝え。「人、物、そして想い」を見つけるという伝承。物語全体の主題。
- 内容
- section_03 で明美が語る——「捜し物が見つかるっていう、オハナシ」「人、物、そして想い……」「自分の想い……迷って、見失ってしまった自分自身の心……それも見つかる」。物理的な失せ物だけでなく、人の心も対象に含まれる点が特異。
- 一般例との比較
- 荘司は「典型的な、失せ物発見伝承だ。たとえば、27代安閑天皇の皇后が失踪した際にも……」と即座に相対化するが、「想いも探せる」という部分は類例のない伝承。
さよりが過去に小学生の荘司にあげた飴。section_0Fで記憶の核として再登場する小さな思い出。
- 登場
- section_0F の夜空のベンチシーン。さよりが「飴玉あげた事って覚えてる?……うん。甘露飴なんだけど……そういうのは、忘れちゃってるかな?」と問う。
- 荘司の内省
- 「そうやって、ちょっとした好意が刷り込まれていただけかもしれない。しかしそこには確かに、彼女がいた。そして、俺もいたのだ」。八年前の名もなき記憶を喚起する、さよりルートの核心となる小物。
山荘付近の木に刻まれた小さな十字の傷。樹液の染み具合から、時間操作の痕跡と推測される物的証拠。
- 荘司の推理
- 「これは君の行為ではないということだ。自然に行うには、位置が高過ぎる。次に、この十字の、ふたつの傷は時間をおいて付けられている。これは樹液の染み具合から判る。また、この角度からして、最初のそれは右利きの人間によるもの。次のは左利きの誰かだ」(section_02)。
- 意味
- 時間が「同じ瞬間」を繰り返している証拠であり、「過去が部分的に変えられている」ことを示す最初の物的証拠。荘司の観察眼を示す場面でもある。
- みゆとの関連
- section_09 でみゆが「あの傷……どう思いますか……?」「付けたのは……お兄ちゃん……?」「傷付けたいと思いませんか……?」と問う。みゆ自身が傷に関与している可能性が示唆される。
仏語Dépersonnalisation。離人症の意。みゆが自分の感覚不全を表現する医学用語。
- 意味
- 仏語 Dépersonnalisation。離人症・離人感障害の意。みゆが「実在感、現実感、充実感、重量感、所属感……」「自己意識、それに時間感覚……」を喪失した状態を表現する語。荘司は「離人症か……君が?」と即座に和訳で返す。
- 登場箇所
- section_09、丘の上でみゆが「お兄ちゃんは……私のことが嫌いですか……?」と問う直前の自己診断。荘司との哲学談義だけが、みゆの「自分がある感覚」を一時的に回復させる。
みゆが夜の哲学談義で口にする独語と推察される語。Ein Mährchen(ひとつのおとぎ話)の音写か。
- 推察
- 独語 Ein Mährchen(おとぎ話・寓話)の音写と推察される。Ein は不定冠詞「ひとつの」、Mährchen は古綴で Märchen(メルヘン)。みゆの「行動はアイン・マーリヒ(ひとつのおとぎ話)で……」という言い方は、自己の行為を物語化・寓話化する離人症的視座と整合する。
- 登場箇所
- section_0D のみゆと荘司の哲学談義のみで登場。文脈は断片的にしか提示されない。
フッサール現象学の用語。意識作用(ノエシス)と意味対象(ノエマ)。みゆとの哲学談義で言及される。
- 意味
- ノエシス(noesis)は意識作用そのもの、ノエマ(noema)はその対象としての意味内容。フッサール現象学の中核概念。みゆの離人症(=ノエシスの不全)と、「全てが重なって見える」と訴える複合視(=ノエマの過剰)を踏まえた哲学談義。
- 登場箇所
- section_0D みゆとの夜の哲学談義。荘司が「そう……そもそも、ノエマとノエシスの問題として……」と引く。
みゆが自分の状態を西洋哲学で説明する語。デカルトの「我思う、ゆえに我あり」とフッサールの判断停止。
- 意味
- コギト・エルゴ・スム(Cogito, ergo sum)はデカルト「我思う、ゆえに我あり」。エポケー(Epoché)はフッサールの判断停止(現象学的還元の操作)。
- みゆの使い方
- 「エポケーの結果に、コギトが残る。……だから、自分がある。……でも私には、何も残らない」(section_09)。現象学的還元の結果として残るはずの「思考する自己」自体が存在しない、と訴える。荘司は「デカルトの戯言なんて忘れればいい」と返す。
ルイス・キャロル作。雪乃の愛読書(三冊目)。「ここではみんな狂っている」の引用が物語のメタファとなる。
- 作中での役割
- section_03 で雪乃が「チェシャ猫が出てきているところですね」と告げ、荘司が「『でなければ、ここへ来たりはしなかったさ』……かな?」と続きを暗誦する。本作の「ここではみんな狂っている=ここに来ること自体が狂気の証」というモチーフは、山荘での時間ループに見立てられる。
- 荘司の内省
- 「大昔の、ロリコン男の妄想譚か……狂った世界では、客も狂っている。その場に招かれるための条件は、狂うこと、か……」「アリスの気が振れることは、即ち、彼女の世界の変容を意味する」。
ハインライン作。雪乃が兄から贈られた本。タイムトラベルSFで、本作の時間ループ構造と響き合う。
- 作中での役割
- section_03 雪乃と荘司の散歩シーン。荘司は「誰か、男性から贈られた、というところかな?」「ある趣味の男が、女性に勧める定番だからね」と即座に当て、雪乃は「これは、兄から……」と認める。タイムトラベルSFの古典であり、本作の時間ループ構造との含意がある。雪乃の兄の歪んだ執着を後に示唆する伏線でもある。
シェイクスピア作。雪乃が夏に読み返す本。「恋人が取り変わる」モチーフが本作のルート構造を予示する。
- 作中での役割
- section_03 雪乃の散歩シーン。雪乃が「純粋に楽しくて、ハッピー・エンドで。恋人が取り変わっちゃうのは、ちょっと……ですけど」と語る。荘司は「確かに、妖精が暗躍していそうな雰囲気だ」と山荘の雰囲気と重ねる。「恋人が取り変わる」モチーフは、本作の5ヒロインルート構造を予示している。
澄香が読み回す架空の恋愛指南本。荘司と明美の関係を後押しするための「研究書」として登場。
- 概要
- section_0D の「澄香の相愛指南本事件」で登場する劇中の架空書籍。澄香が荘司と明美の「恋愛」を後押しすると思い込んでいる根拠の一部となっている本。荘司の「やれやれ」感を強める小物として機能する。
みゆが荘司を呼ぶ呼称。父親代わりと家族として迎え入れたい願いを併せ持つ二重の意味を持つ。
- 初出
- section_02。「お兄ちゃん?……俺のことか。勿論、柊にではないだろうから」と荘司が困惑する。みゆの初対面での呼称。
- 弁解と真相
- section_09 でみゆは「これは……沢村さんが……」「彼女には兄貴がいるのかな?……彼女の話を聞いて、その影響で……と?」と弁解する。しかし物語全体を通すと、「父親代わり」の意味と「家族として迎え入れたい」という願いを併せ持つ二重的な呼称。みゆルート最後の「お兄ちゃん……おはよう。朝御飯、できています」(section_12)で結実する。
荘司の処世訓。グーを出すと拳骨を喰らう、という体験的ジョーク。みゆへの最初の「秘密」。
- 詳細
- 荘司が初対面のみゆに警告する小ネタ(section_02「あと、ジャンケンではグーを出してはいけない。危険だ」)。グー(拳)を出すと、明美のような女性に「グー=拳骨」を後頭部に喰らうリスクがある、という荘司の体験的処世訓。実際、その言葉の直後に明美のグー(拳骨)が後頭部に入る。section_03 末尾でも繰り返される。みゆへの最初の「私的な秘密」として機能する。
「夏の犬(野犬)」の意。section_11で草加が荘司を冗談に「野犬かと思った」と評する際の語。
- 詳細
- section_11 で草加が「急に走ってきたから、野犬かと思ったよ。サマー・ドッグとか」と冗談で口にする語。夏に山林をうろつく野犬の比喩。草加と荘司の再会シーンの導入を和ませる軽口で、緊迫した場面の張力を一瞬解く役割を担う。
荘司が雑学で引く古代の失せ物伝承例。安閑天皇の皇后失踪伝承への参照。
- 詳細
- section_03 明美の「捜し物が見つかる」伝承を、荘司が一般的な民俗例として相対化する場面で引用——「典型的な、失せ物発見伝承だ。たとえば、27代安閑天皇の皇后が失踪した際にも……」。第27代天皇・安閑天皇(在位531-535年頃)の皇后の失踪に関する民俗的失せ物発見伝承への参照。荘司の博識さと「雑学で場を煙に巻く」キャラクターを示す挿話。