ストーリー詳細 — Prismaticallization
選択肢のないループ型ADV。繰り返す山荘の一日を舞台に、5人のヒロインそれぞれと向き合う5ルートと、ループ失敗のバッドエンドで構成される。▼詳細を読む(ネタバレ)はアコーディオン内。プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。
共通パート — 繰り返す夏の一日
受験生の射場荘司が幼馴染・柊明美に連れられ山荘へ。あてがわれた部屋はツインベッドの同室(「ハメられたよ……」)。先客の鳴川澄香・沢村雪乃と、山荘の娘・木ノ下さより、従姉妹のみゆが揃い、他愛ない夏の日々が始まる。しかし荘司はやがて、この夏が「いつも通りの一日」ではないことに気付き始める。
山荘到着:「いかにも別荘然とした、商売気の感じられない建物」。さよりとみゆに迎えられる。みゆは初対面の荘司を「お兄ちゃん」と呼び、「ジャンケンではグーを出してはいけない。危険だ」という荘司の処世訓を静かに聞く。直後に明美のグーが炸裂する。荘司は山荘付近の木の幹に「小さな十字の傷」を発見し、「ふたつの傷は時間をおいて付けられている——樹液の染み具合から判る」「最初のは右利き、次は左利き」と即座に推理する。この傷が「時間操作の痕跡」であることは後に判明する。
草加との夢の会話:夢の中で謎の大学生・草加武則と出会い、「過去が変えられることが判った」「同様に、時間が、それに差し込む。するとプリズムのように、様々に見える」という言葉とともに、半透明にきらめく鉱石(プリズム)を手渡される。草加は「それ自体が過去。過去の結晶。世界そのもの」と告げ、複数の人物がこの鉱石を巡って動いていることが示唆される。
初日・顔合わせ:先客の鳴川澄香が「秘めた想いを抱いた者同士!協力し合いましょう!先輩!!」と荘司への誤解全開で共闘を申し込む。澄香の親友・沢村雪乃とは散歩で知り合い、「世の中に無駄なことって無いような気がします」という芯の言葉を聞く。明美から山荘の「失せ物発見伝承」——「人、物、そして想い……」——と「三度呼べ」の謎を聞く。「問と答が同じ……それを呼べる時点で、もう手に入れてる」。雪乃と散歩に出て、愛読書の話をする(『不思議の国のアリス』三冊目・『夏への扉』は兄から・夏に読み返す『真夏の夜の夢』)。
雨の日と各アクティビティ:雨天には部屋で勉強しながら過ごす中、雪乃の兄から電話が入り澄香が激昂して雪乃を泣かせる。晴れると湖で水遊び、バドミントン(雪乃が貧血で倒れる)、占い、トランプ、夕食……他愛ない夏の日々を重ねる。夕食後にさよりとの夜の散歩も重ねる。さよりはどこか遠くを見るような言葉を漏らし、過去に「ある男」への想いを抱えていることが匂わされる。
みゆとの哲学談義:みゆが離人症「デペルソナリザシオン(Dépersonnalisation)」を打ち明ける——「実在感、現実感、充実感、重量感、所属感……」。荘司との哲学問答だけが、みゆの「自分がある感覚」を一時的に回復させる。「エポケーの結果に、コギトが残る。……だから、自分がある。……でも私には、何も残らない」というみゆの言葉に、荘司は「デカルトの戯言なんて忘れればいい」と返す。
みゆ失踪の朝と真相:みゆが朝に姿を消す。さよりが「みゆちゃんのお父さん、今、いないの——蒸発しちゃったの。ある日突然」と打ち明ける。林の中で荘司はみゆを発見し、地面を這ってプリズムを探していたことを知る。草加と沢村兄もまた、それぞれの目的のためにプリズムを狙っていた。荘司が木の根本でプリズムを拾い、物語はクライマックスへ向かう。
柊明美ルート GOOD
八年来の幼馴染との物語。「友達、かな?」と自答し続けてきた明美が、山荘に来た本当の動機を荘司に向ける。自信をなくした自分が「大事にされるか確かめたかった」という告白と、荘司の「踏み出し」が交わる。
山荘を持ちかけた明美の真意は、荘司の夢の中の手紙に書かれている——「自分に自信が無くなって。だから、確かめたくなって。あたしなんかでも、大事にしてくれる人はいるんじゃないか……知りたかったんだ。だから、荘司に。……ずるいんだ、あたしは」。
過去に草加武則へ告白して断られた経験が、明美の自信喪失の一因となっていた。「叱って欲しいんだよ。馬鹿なコトするな、って」。草加は後に、明美の告白を断ったことを「俺には、想う相手がいるからと。……それは変わらない。変わったのは、俺だ」と短く語る。
明美は山荘の「三度呼べ」の謎解きを荘司に贈っていた——「問と答が同じ……それを呼べる時点で、もう手に入れてる」。自分が探しているものはすでに手に入っている、という逆説。これが物語全体のテーマを予示する。
みゆ失踪の翌朝、明美は荘司に「……ま、とにかく、ごめん。それに、ありがと」と告げる。互いが「先に進んでいる」ことを認め合い、友人より少し先の関係を言葉ではなく空気で再定義する形でルートが結ばれる。
「問と答が同じ……それを呼べる時点で、もう手に入れてる……って、ことじゃないかな」(明美)
「友達、かな?」(自己紹介で荘司との関係を答えて)
鳴川澄香ルート GOOD
明るく押しの強い高校一年生との物語。「不安からの行動」が、荘司の言葉を経て「信頼からの行動」へと転換する瞬間が中心にある。
澄香の押しの強さの源泉は「孤独への恐怖」。雪乃が兄の連絡不通で帰ろうとした夜、澄香は「冗談止めてよ、ブラコン!」と激昂して雪乃を泣かせ、直後に「……私……最低だ……」と一人で泣く。
翌朝、荘司に本音を吐露する——「私……他人から嫌われるのが、やなんです……」「私……独りなのって、耐えられないんです……怖くって、寂しくって、泣きたくなって……」。
荘司はこれに「信頼に近いかもしれない。他者に対する、依存ではない、信託」と返す。澄香は「みんなは、私を嫌いになったりしない。当然だ!……って思えばいいと!」と宣言し、「不安から行動する」から「信頼して行動する」への転換を遂げる。
クライマックスでは荘司から草加に奪ったプリズムを渡され「澄香!走れ!」と草加から逃がされる重要な役を担う。ルートの到達点は「先輩を信用していいわけですよね!?当然!」という澄香の宣言。
「秘めた想いを抱いた者同士!協力し合いましょう!先輩!!」(初日・荘司への完全誤解)
「みんなは、私を嫌いになったりしない。当然だ!……って思えばいいと!」(信頼獲得の宣言)
沢村雪乃ルート GOOD
内気な読書家との物語。「世の中に無駄なことって無いような気がします」という序盤の言葉が、妹への歪んだ執着を持つ兄への最後の拒絶として返ってくる。
雪乃が山荘に来た本当の理由は「受験中の兄が近くにいる自分を気にするから」。しかし実際の兄は妹への病的な執着を持ち、山荘まで追跡してくる——「見張っていた。ずっと」。
雪乃ルートのクライマックス。兄が「この世には、無駄なものが多すぎる。必要なのは、雪乃だけだ」と宣言した時、雪乃は序盤の言葉そのままを返して拒絶する——「私は……世の中に無駄なことって、無いと思う」「お兄ちゃんのことは大事だと思うけど……それでも私には、澄香ちゃんや、他にも、大事な人や、ものが、いっぱいあるから」。
後日談として、兄は「嫌がらせ」としてスーパーの袋を持たせた雪乃を荘司の家に送り込む。荘司はその光景を「現実への復讐の傑作」として笑い出す形で幕が閉じる。
「私、世の中に無駄なことって無いような気がします」(荘司との最初の会話)
「私は……世の中に無駄なことって、無いと思う」(兄への決定的な拒絶)
「お兄ちゃんのことは大事だと思うけど……それでも私には、澄香ちゃんや、他にも、大事な人や、ものが、いっぱいあるから」(雪乃の宣言)
木ノ下さよりルート GOOD
山荘の娘・さよりとの物語。荘司より5歳上、もうすぐ24歳。幼少期から抱え続けた「ある男(みゆの父)」への想いを、みゆの前で初めて言葉にする。一年後の再訪でルートは結ばれる。
さよりの抱える秘密。みゆの父・琴原耕一はさよりの実妹の夫(義理の弟)であり、さよりへの想いを残したまま家族を捨てて蒸発した。さより自身も幼少期からこの男に恋い焦がれていた。
夜の散歩では「飴玉あげた事って覚えてる?……うん。甘露飴なんだけど……そういうのは、忘れちゃってるかな?」と荘司に問い、八年前の小さな記憶を手繰り寄せる。「……荘司ちゃん、寂しくないのかな」。
クライマックスでみゆが「その人が、父を取ったんです」と告発した時、さよりは沈黙の後に答える——「馬鹿にしないで。わたしが何をしたっていうの。……何もしていない。できるわけ無いじゃない。……それが、あの人を苦しめたとしても……でも、それで逃げるのは、弱い男よ。わたしは、そんな男に惚れちゃった。馬鹿みたい。……でも、そのことに後悔は無いの。人を好きになるのに、理由なんて無いから」。そしてみゆを抱きしめる。
さよりルートのエンディングは一年後の再訪。「もう後が無いから。早く、素敵な旦那様を見つけなきゃ」「ここに泊まってくれる殿方は、みんな候補さんよ、荘司ちゃん」。
「人を好きになるのに、理由なんて無いから」(みゆへの告白・自己定義)
「飴玉あげた事って覚えてる?……うん。甘露飴なんだけど」(夜空のベンチ)
みゆルート GOOD
さよりの従姉妹・みゆ(琴原みゆ)との物語。離人症を抱え「コギトが残らない」と訴える少女が、荘司との夜の哲学問答の中で少しずつ心を開く。父の失踪・さよりへの憎しみ・プリズムを使った時間操作——すべてを経た先の「同居」エンド。
みゆの父・琴原耕一は義理の姉にあたるさよりへの想いを残したまま家族を捨てて蒸発した。みゆはそれを察し、さよりを「父を奪った人」として憎みつつ、父を呼び戻すためプリズムを使った時間操作に手を染める。林の中で地面を這ってプリズムを探していた。
みゆの離人症の自己診断——「実在感、現実感、充実感、重量感、所属感……」「エポケーの結果に、コギトが残る。……だから、自分がある。……でも私には、何も残らない」。荘司との哲学談義だけが、みゆの「自分がある感覚」を一時的に回復させる。
クライマックスでさよりがみゆの前で「人を好きになるのに、理由なんて無いから」と告白してみゆを抱きしめた後、琴原が「みゆ、行こう」と一度だけ姿を現す。みゆは毅然と拒絶する——「お母さんがいないなら、私は行かない」。琴原は「私に、親の資格は無いんだよ」と言い残して再び去り、みゆは幼い子供のように泣く。
みゆルートのエンディング。琴原は再失踪し、母はみゆを放任する。みゆは荘司の家に同居人として収まり、毎朝「お兄ちゃん……おはよう。朝御飯、できています」と朝食を運ぶ。
「エポケーの結果に、コギトが残る。……でも私には、何も残らない」(デカルトへの異議)
「お母さんがいないなら、私は行かない」(父・琴原への拒絶)
「お兄ちゃん……おはよう。朝御飯、できています」(みゆルートEND朝食シーン)
バッドエンド — ディヴァージ・エラー / アンノウン BAD
時間ループからの脱出に失敗した状態(ディヴァージ・エラー)、または記録の矛盾・未定義状態(アンノウン)。いずれもシステム画面上のエラー表示として描かれる。
ディヴァージ・エラー(Diverge Error):ループ脱出に必要な条件を満たさないまま進行した場合に発生する。Diverge(分岐・逸脱)からの命名と推察される。特定の選択経路で荘司が時間の歪みに取り込まれ、「ディヴァージ・エラー」の文字が表示される。タイトル画面メニューでも冒頭から名称として掲示されている。
アンノウン(Unknown):記録の矛盾、もしくは未定義状態に至ったバッドエンド分類。ディヴァージ・エラーと並列してタイトル画面のシステム用語として示されている。
両エンドとも「ゲームシステム(記録・参照・解放)の用語が物語の時間ループ構造と重なる」という本作の構造的意匠の延長線上にある。「絡みは解けた。記憶が連続しているのも、そのためだ」(草加)という正解ルートの台詞が、裏から両エンドの意味を照射している。
エンディング一覧
| 種別 | エンド名 | ルート | 結末概要 |
|---|---|---|---|
| GOOD | 明美END | 柊明美ルート | 互いが「先に進んでいる」ことを認め合い、関係を再定義する |
| GOOD | 澄香END | 鳴川澄香ルート | 「みんなが私を嫌いにならない、当然!」と転換した澄香と対等な関係が成立する |
| GOOD | 雪乃END | 沢村雪乃ルート | 兄の歪んだ執着を拒絶。後日談として雪乃が荘司の家に料理を持参する |
| GOOD | さよりEND | 木ノ下さよりルート | 一年後再訪。「お婿さん募集中」と冗談を言いながらさよりが荘司を迎える |
| GOOD | みゆEND | みゆルート | 琴原は再失踪、母が放任。みゆは荘司の同居人として共に暮らす |
| BAD | ディヴァージ・エラー | バッドエンド | 時間ループ脱出に失敗。システムエラー画面として描かれる |
| BAD | アンノウン | バッドエンド | 記録の矛盾・未定義状態。ディヴァージ・エラーと並列して示される |