用語集 — リフレインブルー
『リフレインブルー』(elf・1999年)に出てくる海辺の場所、サマースクールの行事、少女が語る七夕のおとぎ話にまつわる伝承、繰り返し語られる言葉、品物、生き物と花、人物を解説します。7年前の別れの経緯や額縁の絵の行き先のように、たどる章によって語られ方が変わる事柄は、章ごとに書き分けました。▼ネタバレ詳細には各章の結末や人物の正体まで含まれます。タグをクリックするとカテゴリを絞り込めます。
物語の舞台になる海辺。東向きの砂浜、南へ突き出た岬、寮の前の白い砂浜と松原がある。かつては観光地だったが、僻地のため数年前に寂れ、今は寮のほかに住む人はいないという。善博にとっては、7年前の夏を過ごした「あの遠い夏の、想い出の地」でもある。
- 詳細
- 7年前の夏、善博が旅の画家・深景と出会い、恋人として過ごし、そして別れた場所。善博は、あの青い海に「置き去りにしたままの何か…」を取り戻すために戻ってきたと独白する。海が7年前と少しも変わっていないことは、何人もの人物の口から繰り返し語られる。
- 登場場面
- 奈緒の章で、センパイを忘れられずにいる奈緒が泣きながら言う。奈緒「この海は許してくれない…去年とちっとも…変わってない」
東陽学園の臨海寮で、サマースクールの宿舎。新しい2階建てで、7年前にはこの海辺に無かった建物だ。住んでいるのは関西弁の管理人と、お手伝いの川奈由織だけ。いちばん近い街までは1時間かかる。善博は2階の来賓用の部屋に泊まり、ラウンジには宿泊者の寄せ書きノートが置かれている。
- 詳細
- 由織は、寮ができた3年前からここで働いている。誰とも恋人にならずに海辺を去るバッドエンドは、最終日の朝、管理人と由織に見送られた善博が、1週間を過ごした天山荘に別れを告げるところで終わる。
- 登場場面
- 到着の日、善博が建物を見上げて。「入り口脇の表札には『天山荘』とあった」
海辺の南に突き出た小さな岬の先端で、地の文は「天然の展望台」と呼ぶ。7年前、深景はここで絵を描き、この場所を「とびっきりの特等席」と呼んでいた。今は、無口な生徒の雫が「海の詩」を聴きにひとりで通ってくる。善博も滞在中、何度もこの岬に足を運ぶ。
- 詳細
- 「特等席」は二つの場所をさす。一つは深景の岬で、善博が持ち歩く額縁の海の絵は、ここから見た海を描いたもの。もう一つは山頂近くの崖の上で、山登りの日に奈緒が自分の「特等席」として善博を案内する。善博はその言葉を「どこかで聞き覚えのある言葉」と感じる。奈緒の章の帰る朝、善博はこの岬で絵の名前を決める。
- 登場場面
- 「深景さんの特等席。/かつて深景さんが、絵を描いていた場所だ」
寮の前に広がる白い砂浜と、東西の浜。東向きの砂浜は人影もなく寂しい。到着の翌朝、7年前に訪れたこの砂浜で、善博は名も知らぬ黒髪の少女に「よしひろくん」と呼び掛けられる。夜の散歩や行事の場面にも、たびたび出てくる。
- 詳細
- 東の砂浜は、7年前に善博が波打ち際で深景に声を掛けられた場所。雫の章では、夜9時にここでウミガメの孵化を見る。西の砂浜は、奈緒の章の深夜に奈緒が夜の海に浸かっていた場所。浜の端には奈緒の「センパイと私だけの場所」があり、由織の章の夢で「たまて箱」を埋めた松の根元もある。深景の章の最後の夜、善博は少女を追って、この砂浜を裸足で走る。
寮と海辺のあいだに広がる松林と、その中を縫う小道。地の文に「松原の元を縫う小径が、寮への帰り道だ」とある。夕暮れの帰り道や朝の散歩など、登場人物が誰かと並んで歩く場面がよく置かれる。「小径」は「こみち」と読む。
- 詳細
- つぐみの章では、夕暮れの松原でつぐみの背中を見ながら寮へ戻る場面があり、由織の章では由織との「松原の逍遙」として出てくる。場所そのものに特別な由来が語られることはない。
- 登場場面
- 「暮色蒼然とした松原の合間を、くぐり抜けていく」
寮の外に置かれた腰掛け。夜になると名も知らぬ黒髪の少女がここに座っていて、善博に「このうみべに伝わる、七夕のおとぎ話」を少しずつ聞かせる。風鈴の音に誘われて縁台へ行くと、少女が待っている夜もある。少女が座ると、足が地面に届かない。
- 詳細
- 少女はここで物語を語るだけでなく、善博に目を閉じるよう促して、7年前の旅館の夜を思い出させることもある。善博の記憶を呼び起こす場として、何度も使われる。
4日目の山登りで登る山。途中に「頂上まであと500m」と書かれた道標(みちしるべ)が立ち、蔦の絡まったY字の大木が頂上の目印になる。善博が7年前に見たときには、道標の字はまだ読めた。善博は登りながら、7年前の記憶をたどっていく。
- 詳細
- 7年前、善博は深景とこの山に登り、木陰で初めて口づけを交わして恋人同士になった。山頂近くの崖の上は、奈緒の「特等席」。下山の途中で、善博の膝の古傷は限界になる。
- 登場場面
- 「見ると、そこには1枚の道標が立っていた」
奈緒の章の最終日に、森沢奈緒が善博を連れて行く、砂浜を端まで行った先の岩陰。奈緒自身がこの場所をそう呼んでいる。ここで奈緒は、去年の夏から抱えてきた想い出のことを、自分の口で善博に語る。
- 詳細
- 1年前の夏、奈緒が恋人のセンパイと、いつかまたふたりで一緒にここに来ようと約束した場所。奈緒はここで「想い出にしがみついていたのは、私の方」「この海の想い出は、この海に返すんです」と語り、善博に想いを打ち明ける。
海岸道路の脇にある、もうバスの停まらないバス停。錆びた標識と時刻表だけが残り、前には堤防がある。地の文は「時間から忘れ去られたバス停」と書く。ここから海沿いの道をさらに行くと、古い旅館の廃屋がある。
- 詳細
- つぐみの章で、捻挫したつぐみと善博は雨上がりの堤防に座り、互いの想い出話をする。善博は7年前の恋の結末を偽って話し、つぐみの話も、のちに人から聞いた想い出だったと分かる。幼いつぐみが母に置き去りにされたのもバス停だが、それがこの場所なのかは、作中で明確な答えは示されていない。
- 登場場面
- 「時刻表が意味をなさない、忘れられたバス停」
海沿いの道の先にある、古い旅館の廃屋。かつてはこの海辺で唯一の旅館だったが、営んでいた老夫婦はもういない。今は無人で、建物もすっかり寂れている。庭には人の背丈より高く育った月下美人の株が残っている。
- 詳細
- 7年前に善博と深景が泊まった宿。庭の月下美人は、そのとき二人で植えた苗が育ったもの。つぐみの章ではつぐみの嘘が暴かれる場所になる。由織の章では、善博が深景と思って追った人影が少女だったと分かり、その夜、由織が手入れしてきた月下美人が咲く。深景の章では、7年前に深景が最期を迎えた部屋がここにある。
- 登場場面
- 「今はもう無人となっており、建物自体も寂れている」
海を望む一面の花畑。由織の章の8月5日、名も知らぬ少女に誘われて、善博と由織が訪れる。少女は咲きそろったコスモスを前に「これはみんな、わたしが育てたの」と言う。由織はこの景色を「山村暮鳥の詩みたいですね」と言い、コスモスの花言葉も教えてくれる。
- 詳細
- 深景の章で畑のことを尋ねられた由織は、「私と松永さんと…二人だけでしたよ」と答え、少女がいたことを覚えていない。最後の夜が明けた朝、畑は枯れ果てていて、善博は芥子粒のような種を持ち帰り、いつか海の見える場所に一面のコスモス畑を作ろうと決める。
オリエンテーリングの日、少女が冷たい手を重ねて善博を連れて行く、一面が青に包まれた場所。温度がなく、手のひらに乗るほど小さな象がいる。少女は「くすくす…ここが海のくによ」と笑い、「よしひろくんだけの、とくべつだからね」と言う。目を開けると、善博は縁台に戻っている。
- 詳細
- 少女は象が小さい理由を「海は、おかあさんだから」「海の中…おかあさんの中にいるから」と説明する。ここがどこなのかについては、作中で明確な答えは示されていない。
サマースクールを催す学校。地の文が「自由を旨とする東陽学園の校風」と書くように、自由と自主性を重んじる校風で知られる。善博はこの学校の臨海学校に、添乗員として同行する。早瀬雫・森沢奈緒・津賀島つぐみ・杉野治美らはこの学校の生徒で、海外への交換留学の制度もある。
- 詳細
- 岩崎ちなつは「東陽学園の1年生」として紹介されるが、実は東陽の生徒ではない。治美の従妹で、治美の演劇部の後輩「岩崎ちなつ」の名前を借りて参加していた。
- 登場場面
- 治美が善博に打ち明ける。治美「ちなつは本当は、東陽学園の生徒じゃないんです」
東陽学園の6泊7日の臨海学校。生徒は30名前後、引率の教師は3名で、8月2日に着いて8月8日の朝に帰る。水泳の授業、飯ごう炊さん、ビーチバレー大会、山登り、オリエンテーリング、肝試し、最後の夜の花火大会があり、レポートや植生スケッチの課題も出る。
- 詳細
- 奈緒は去年もこのサマースクールに参加している。ちなつは本来の参加者ではなく、名前を借りて紛れ込んでいた。誰とも恋人にならずに海辺を去るバッドエンドでは、善博がこの1週間を振り返りながら天山荘を後にする。
- 登場場面
- 「長いようで、あっと言う間だったこの1週間」
善博の職業。バス会社の添乗員で、2年のキャリアがある。今回はサマースクールに付き添い、寮にただで泊まっている。仕事らしい仕事は集合写真の撮影くらい。雫やつぐみをはじめ、生徒たちからは「添乗員さん」と呼ばれる。
- 詳細
- 山頂で善博は奈緒に、添乗員になったのは「あちこち旅をしていれば、いつかまた、どこかで…あの人に会えるんじゃないかと思って」だと話す。「添乗員さん」という呼び名は物語の最後まで残る。奈緒は「私だけの添乗員さんでいてください…」と言い、絵本作家になったつぐみは、デビュー作のあとがきで「添乗員さん」に感謝を記す。
森沢奈緒が所属するブラスバンド部と、東陽学園の交換留学の制度。奈緒はフルートを吹いていたが、今はほとんど顔を出さない幽霊部員だという。運動は苦手で、本人は自分を「運動音痴」と言う。
- 詳細
- 奈緒はフルートも東陽学園も、恋人のセンパイを追って選んだ。センパイは交換留学生に選ばれ、「音楽の都、ウィーン」へ向かった。奈緒の章で伊藤は、奈緒がブラバン部をやめないのはセンパイのせいだと言い、自分のところのマネージャーに誘う。最後の夜、奈緒はブラバンを続け、来年は自分が交換留学生として留学して「彼の夢の続き」を受け継ぐと決める。
サマースクール2日目、8月3日の夕方に行われる野外炊事。善博は、薪の組み方がわからずかまどに苦戦する奈緒を手伝う。そこへ奈緒の先輩の伊藤が現れ、善博をじろじろと見る。津賀島つぐみは皮を剥かずにニンジンを切って叱られる。その夜、奈緒は失敗したカレーを善博のところへ持ってきて、善博はそれを全部食べる。
3日目の午後、奈緒の先輩の伊藤が言い出して行われる、ペア対抗のビーチバレー。伊藤が審判を務め、ペアは抽選で決まる。善博は奈緒か治美と組むことになる。奈緒と組んだ善博に、奈緒は「もし勝ったら、キスしてあげますよ」と言い、すぐに「くすっ、投げキッスですけどね」と付け足す。勝ち進むと、決勝の相手は伊藤のペアになる。
4日目、8月5日の登山行事。管理人が虫よけや塩気の多いおにぎり、氷砂糖を持たせてくれる。出発前の集合写真では、写真嫌いのつぐみが身を伏せて「写真に撮られると、魂を抜かれて寿命が縮んでまうんよ」と言う。登る途中、善博は7年前の記憶に入り込んでいく。
- 詳細
- 善博にとっては、7年前に深景と登った山でもある。登山の途中でつぐみが右足首を捻挫したり、山頂で奈緒の「特等席」に案内されたりと、この日の出来事はいくつかに分かれる。寮に残る日もあり、そのときの善博はユウキのBB弾が当たって階段から落ち、足首をひねって登山を見送る。
- 登場場面
- 「山登りの疲労が、子守歌代わりとなったらしい」
5日目、8月6日の午前の行事で、生徒たちはペアを組んで参加する。この日には、善博が縁台の少女に冷たい手を重ねられ、一面が青い「海のくに」へ連れて行かれる場面もある。目を開けると、善博はもとの縁台に戻っている。
- 詳細
- 雫の章では、雫がペアの男子と揉めて口汚く罵られ、森の奥に置き去りにされていたことが、治美の口から伝えられる。奈緒の章では、この日に伊藤が奈緒をマネージャーに誘い、善博に「もう森沢さんに構わないでくれよな」と迫る。
- 登場場面
- 「口汚い言葉で、罵られもしたらしい」
サマースクール5日目、8月6日の夜の行事で、生徒たちはペアを組んで回る。昼のオリエンテーリングと同じ日の夜にあたる。雫や奈緒の物語では、行事そのものより、この夜に交わされる言葉や約束が大きな意味を持つ。
- 詳細
- 雫の章では、肝試しに遅れた善博の前に、雫が約束どおり姿を見せる。奈緒の章では、伊藤と組んだ奈緒が「マネージャーになりますから、その代わり、絶対に松永さんには構わないでください」と言ったと伊藤が善博に告げ、「試させてもらうからな」と言い残して去る。
サマースクール最後の夜、8月7日の花火大会と、縁台で少女とする線香花火のこと。線香花火をしながら、少女は「だって、わたし、こどもじゃないもの」と言う。善博は、昔も誰かと二人で花火を見たことを思い出しかける。
- 詳細
- 7年前、善博と深景は宿の庭でもらった花火をし、深景は打ち上げ花火から彼岸花の話をした。雫の章の花火大会では、善博が深景の絵を雫に「預ける」。奈緒の章では、奈緒が花火の夜に留学の決意を語る。深景の章では、少女が「これで、さいごなんだもの…」と最後の線香花火を分け合い、七夕の話の続きを語る。
- 登場場面
- 7年前の宿の庭の花火。「七彩(なないろ)に輝きながら降り散る、光の雨」
体育の単位になる水泳の授業で、生徒たちは寮の前の海で泳ぐ。暑いのが嫌いな雫は授業を抜け出し、岬に隠れて「海の詩」を聴いている。奈緒は泳ぎが苦手で、今も5メートルしか泳げないという。
- 詳細
- 奈緒は去年のサマースクールで、この授業の最中に足をつって溺れかけている。海を避けていた雫は、雫の章の最終日に善博に導かれて初めて海に入り、翌年の夏には泳ぎ始めている。
善博が蜻蛉海岸で旅の画家・深景と出会った夏。陸上の長距離に打ち込んでいた善博は右膝の骨にひびが入って走れなくなり、家を出てバスに揺られるうち、この海辺で降りた。波打ち際にしゃがみ込む善博に声を掛けたのが深景で、二人は毎日を岬で過ごすようになる。当時の善博の一人称は「俺」。
- 詳細
- 作中で語られる出来事は、山での初めての口づけ、旅館の夜のなぞなぞ、絵の名前の宿題、絵の完成、ウミガメの孵化を待った夜、月下美人の苗と彼岸花の話など。別れは8月7日の朝で、その経緯はたどる章によって違う。ちなつの章の回想では、深景が「もう会えない」と告げ、翌朝置き手紙を残して消える。雫の章では、深景から骨の悪性腫瘍を打ち明けられ、翌年の夏にまたこの海で会う約束をするが、深景は来なかった。奈緒の章では置き手紙を残して消え、善博は後に絵の裏の2枚目の手紙で事情を悟る。つぐみの章で善博は、深景が重い病気で亡くなったこと、それを知っていながら止められなかったことをつぐみに明かす。深景の章では、善博は最後まで側にいて、宿の部屋で深景を看取る。
- 登場場面
- 「7年前…深景さんがいたあの頃」
7年前、陸上の長距離に打ち込んでいた善博が負った右膝の怪我。骨にひびが入り、医者から激しい運動を控えるよう言われて、走ることをやめた。今も古傷として残っていて、善博は人に「ちょっと膝を痛めたことがあってね」と話す。
- 詳細
- 周囲の励ましを疎み、自分が人に優しくできない人間だと思い知らされて家を出たことが、深景との出会いにつながった。深景はその善博に「善博くんには、走るのをやめて立ち止まることが、必要だったのよ。…人生という旅の途中でね」と言う。4日目の下山では、この古傷が限界になる。
つぐみがずっと人に見せないようにしてきた、体に残る古い火傷の痕。つぐみ自身はこの痕について何も語らず、明るい関西弁と「商売」の顔の下に隠している。善博がその存在を知るのは、つぐみの章の最終日になってからのこと。
- 詳細
- 赤ん坊の頃に熱い天ぷら油を掛けられてできた痕だと、つぐみは医者から聞いた話として語る。誰が掛けたのかは明言されないが、地の文は「誰が掛けたのかは、言うまでもないだろう」と書く。地の文はこの痕を「呪われた想い出の証」と呼ぶ。善博は「僕が、愛してあげる。僕がつぐみちゃんのことを、愛してあげるよ」と受け止める。
- 登場場面
- つぐみ「この痕がある限り…ウチには想い出作る資格なんてあらへんのや…。一生、嘘つきのままなんや…!」
4日目の朝、管理人の立ち話で分かる出来事。奈緒は去年もサマースクールに参加していて、水泳の授業中、深さ1メートルほどの浅いところで足をつって溺れかけた。管理人は「この姉ちゃんな、実は去年の水泳の授業の最中に、足をつって溺れかけたんや」と話す。
- 詳細
- 奈緒にとっての去年の夏は、恋人のセンパイをウィーンへ見送った夏でもある。センパイを忘れようとして今年もこの海に来た奈緒は、海が去年と少しも変わっていないことで、かえって忘れられないと思い知る。
4日目、8月5日の夜に寮で起きる停電。廊下も部屋も真っ暗になり、灯りが戻るまでのわずかな時間に、思いがけない出来事が起こる。その中身は、善博がそのとき誰の近くにいるかによって違ってくる。
- 詳細
- 奈緒の章では、夜8時過ぎ、廊下の闇の中で奈緒が善博に口づけし、灯りがつくと「これで…忘れられるかな」と言って走り去る。由織の章では、ユウ坊が梯子を使ってブレーカーを落とした5分ほどの停電で、怒る管理人から由織がユウ坊をかばう。
- 登場場面
- 由織の章で、犯人が分かって。管理人「あれはこのクソ坊主の仕業やったんや」
深景の章の途中、意識を失った善博が目を覚ます世界。善博は会社勤めをしていて、2か月前に深景と結婚し、都会で夫婦として暮らしている。深景は専業主婦で、懸賞で当たったウェッジウッドのカップや、お盆休みに予約した温泉宿「高橋旅館」の話が出てくる。
- 詳細
- 善博はテレビの墜落事故の追悼番組や、ちなつの声で掛かってくる間違い電話、本屋で「パパ!」と呼ぶ小さな女の子に既知感を覚え、深景が消えてしまう不安に取りつかれていく。帰り道がわからなくなり、自宅から見知らぬ人が出てきたのを受け入れた瞬間、世界は白い砂となって崩れる。善博は、深景との幸せを求めて「無限大に繰り返す、運命の連環」を巡っていたと悟る。織姫はこの世界を「運命の袋小路」と呼ぶ。
- 登場場面
- 「すべてが泡沫の夢のように、消え去ってしまった」
新婚の世界で、テレビが「1年前の今日起こった」事故として追悼特集を流す航空事故。成田を発った国際線が洋上で墜落し、機体は引き揚げられなかった。番組を見た善博は、なぜか覚えのある出来事のような気がする。
- 詳細
- 奈緒の章では、1年前の夏、ウィーンへ発つセンパイを見送ったその夕方に、奈緒が誰もいない家のテレビで『乗客…名簿……』『大使館に……確認された……お名前は……』という速報を見て凍りつく。この二つが同じ事故なのかは、作中で明確な答えは示されていない。
- 登場場面
- 「成田から発った国際機が、洋上で墜落」
サマースクール5日目。川奈由織と、管理人の息子ユウキの誕生日にあたる。3日目の8月4日、年齢を尋ねられた由織は「私は22です」と答え、誕生日は「6日です…明後日ですね」と話す。昼はオリエンテーリング、夜は肝試しがある。
- 詳細
- 由織の章では、23歳になった由織と、7歳になったユウ坊の誕生日を3人で祝う。その夜、善博は深景の海の絵の額縁を誕生日の贈り物として由織に渡す。1年後の夏、善博は「24回目の誕生日おめでとう、由織さん」と告げて、この海辺に戻ってくる。
サマースクール最後の丸一日。夜には花火大会があり、翌8月8日の朝に一行は帰る。善博にとっては、7年前に深景と別れた朝と同じ日付でもあり、善博は「今日…8月7日。/深景さんとの別れがあった、あの朝の日付」と思う。
- 詳細
- 深景の章では、前日の8月6日のままになっていた日めくりをめくると、8月7日の数字の下に「旧七夕」と刻まれている。それを見た善博は、裸足で夜の砂浜へ走る。
名も知らぬ少女が「このうみべに伝わる」と言って、夜の縁台で何日かに分けて語る昔話。流れ星の降った夜の翌朝、働き者の漁師・彦星が、砂浜に倒れていた娘を見つけて看病する。夜闇より黒い髪の娘は「織姫」と名乗り、嵐で舟が難破したと言うが、前の日は嵐ではなかった。二人はやがて夫婦になる。
- 詳細
- 織姫は、機織りをしている姿を見ないよう彦星に約束させるが、彦星は約束を破ってしまう。織姫は海の水から布を織る「水の棚機女」だった。正体を知られた織姫は天の国へ連れ戻され、天帝は1年に一度の逢瀬を許す。深景の章では続きが語られる。七夕に彦星は月の舟を待つが、織姫は何年経っても来ない。そして7年目の七夕、織姫はやって来た。天の国の1年は地上での7年で、天帝は彦星も天上に迎えた。この結末を、少女は深景の声で語る。
- 登場場面
- 「実は天の国の1年は、地上での7年だったのです」
二つの意味を持つ名前。一つは、七夕のおとぎ話で砂浜に倒れていた娘が名乗る名。もう一つは、善博の夢に現れる女性の声の名乗りで、声は「私は織姫…。あなたの糸を、織りなす者…。」と告げ、運命の糸の話をする。到着の夜の夢では、声は善博の「仮止めの糸」を解こうとする。
- 詳細
- 深景の章で、織姫は心の深海の底、金色の紗の向こうで織機を扱い、深景との運命の糸を切れば、出会った事実ごと悲しみも消えると告げる。善博は拒んで織機を荒らすが、7年前に深景を看取ったあと、糸を切ることに同意する。織姫は「目が覚めれば、何かを忘れた…ということさえも、忘れているはずよ」と言い、夢に現れるのはこれが最後だと告げて去る。織姫と深景が同じ存在なのかについては、作中で明確な答えは示されていない。重なる言葉はあるものの、声も口調も違い、二人が同時に現れる場面もある。
- 登場場面
- 糸を切ると告げて。織姫「これはあなたのためなのよ」
七夕のおとぎ話に出てくる働き者の漁師。流れ星の降った翌朝、砂浜に倒れていた娘を見つけて看病し、娘は「織姫」と名乗る。やがて二人は夫婦になる。少女が語る物語の、もう一人の主人公にあたる。
- 詳細
- 約束を破って機織りをのぞき、織姫は天へ帰ってしまう。その後の彦星は、七夕のたびに砂浜で月の舟を待ち、「愛する人の面影を求めて、砂浜を彷徨い歩く」。7年目に織姫と再会し、天上に迎えられる。深景の章で、善博も「あの砂浜をひとりで彷徨っているんだ。深景さんの面影を求めて…」と口にする。
- 登場場面
- 「彦星は砂浜に出て、織姫の乗った月の舟が来るのを、待ち受けていました」
七夕のおとぎ話の中ほどで出てくる言葉。「棚機女」は機織りをする女の人のことで、少女によれば「『たなばた』という言葉の語源だともいわれているの」。「水織の術」は、海の水を糸にして布を織る不思議な術をさす。
- 詳細
- 織姫が海の水に足を浸けて呟くと、水が糸になり、布になっていく。それを見た彦星は、噂に聞く「水織の術」だと気付き、織姫が天上人の着る水の羽衣を織る「水の棚機女」だと知る。正体を知られた織姫は、天の国へ連れ戻される。
- 登場場面
- 「そう、実は織姫は水の棚機女だったのです」
七夕のおとぎ話で、織姫が「機織りの名手でした」と語られる仕事。織姫は、機織りをしているときの自分の姿を見ないよう、彦星に約束させる。善博の夢に現れる声も、人と人の運命の糸を機で織っていると語る。
- 詳細
- 声だけが語るバッドエンドでは、声が「いつまでもここで機を織り続ける」と言う。深景の章では、織姫が心の深海の底で織機を使い、深景との糸を切ろうとする。善博は拒んで織機に手を掛け、糸を乱す。
- 登場場面
- 「その服の布地を、また糸に解きほぐし直して、機に掛けていたのです」
七夕のおとぎ話の続きに出てくる、星の海を渡る半月の舟。天の国へ帰った織姫が、彦星のもとへ来るときに乗る舟とされる。深景の章で、少女が最後の線香花火をしながら語る部分に出てくる。
- 詳細
- 七夕のたびに彦星は砂浜で月の舟を待つが、舟は降りて来ない。7年目の七夕、織姫は月の舟に乗ってやって来る。深景の章の最終日には、海の詩の一節として「月の舟にのせて…」という言葉も現れる。
- 登場場面
- 「翌朝になっても、月の舟は降りて来ませんでした」
日めくりの8月7日の、日付の数字の下に刻まれていた文字。深景の章の最終日、前日の8月6日のままになっていた日めくりをめくった善博がこれに気付き、「旧七夕…」とつぶやく。
- 詳細
- これを見た善博は裸足で深夜の砂浜へ走り、少女に「…深景さん」と呼び掛ける。七夕のおとぎ話の結末は、この夜に語られる。
7年前の旅館の夜、深景が旅館のおばさんから聞いた話として善博に語った、海辺の女の子の言い伝え。水のような服を着た、濡れたような黒髪の小さな女の子で、寂しい海辺に現れ、人が集まると輪に紛れ込んで遊ぶ。誰も気付かないが、数え直すとひとり多い。深景は「座敷童の海バージョン」と言う。
- 詳細
- 正体は海のあぶくから生まれた海の精霊で、人魚もその仲間だという。人がいなくなると、またあぶくに戻ってしまう。黒髪の少女との関係については、作中で明確な答えは示されていない。
- 登場場面
- 深景「海童女ちゃんは、とっても寂しがり屋なの」
浦島太郎の話にまつわる言葉。10年ほど前にこの海辺の旅館に泊まり、浦島太郎の話を信じて、飼っていたミドリガメを海に流し、竜宮城からの迎えを砂浜でずっと待っていた、という想い出話に出てくる。つぐみの章で、つぐみが善博に語る話。
- 詳細
- この想い出話の本当の持ち主は由織で、つぐみは由織にせがんで聞いた話を自分のノートに書き写していた。由織の章では由織本人が、乙姫に憧れてカメを海に流し、迎えを待った子供時代の話をする。夢の中の幼い由織は、少年に「あなたはりゅうぐうじょうのカメさんですかぁ?」と尋ねる。
- 登場場面
- つぐみ「これで竜宮城行けると思うて、ずっと砂浜で迎えが来るのを待っとったんやけど…」
作中に繰り返し出てくる海の存在。雫は兄のことを「人魚に恋をして…行ってしまった…」と話す。深景が語った海童女ちゃんの話では、人魚も海の精霊の仲間だとされる。深景が子供の頃に読んだ絵本にも、寂しく泣く人魚が出てくる。
- 詳細
- 雫はのちに「兄さんを奪った海なんて…嫌い」と言う。兄がどうなったのかは、はっきりとは語られない。つぐみの章の結末、7年後の本屋の場面では、小さな女の子が人魚の絵本をねだり、『つきとにんぎょひめ』を選ぶ。
- 登場場面
- 深景「人魚も、この海の精霊の仲間らしいわ」
善博の夢に現れる声が語る、人と人の出会いを結ぶ糸。「1本1本では、弱く脆い糸」でも、織り合わせれば確かなものになるという。縦糸はあなた自身、横糸は出会った人たちで、二つが交わるのは一度きり。声はそれを一期一会(いちごいちえ)と言う。
- 詳細
- 夢の声は「糸を織りなすことで、運命を結びつけた」と言い、善博と最も近い運命を持つ人の過去をたどるよう告げる。声だけが語るバッドエンドでは「想いが結び合わなければ、それは絆とはならない」。深景の章では、糸を切れば出会いそのものが消えるとされ、深景との糸が切られる。深景は、自分の死に善博を付き合わせた償いとして、善博に近い運命を持った人たちとの出会いを織り合わせ、「私ではない、本当の運命の人」を見つけてほしかったと独白する。
- 登場場面
- 声だけが語るバッドエンドの冒頭。「運命の人は見つけたのに…。/運命の糸を結びつけてあげたのに…」
到着の夜の夢で、織姫を名乗る声が口にする言葉。声は善博の糸を「仮止めの糸だから、もう必要なくなったのよ」と解こうとするが、善博が頼むと残してくれる。そして「あなたに本当に必要なもの…。それはあるべき運命の絆」と告げる。
- 詳細
- 3日目の夜の夢で、声は「仮止めとなる、もう1本の糸」を結ぶと言う。到着の夜の声は「お別れを言いに来てくれたのね」「ちょうど今から、解くところだったのよ」と、すでに何かを経たあとのような言い方をしていて、深景の章で織姫が言う「糸を解くだけでは足りなかった」と言葉が重なる。
- 登場場面
- 「この仮止めの糸の支えがね…」
深景の章の夢の中で語られる二つの言葉。「連環」は輪のようにつながって繰り返すもの、「袋小路」は行き止まりの道をさす。どちらも、善博がこれまでたどってきた運命の道のりを言い表す言葉として出てくる。
- 詳細
- 新婚の世界が崩れたあと、善博は、深景との幸せを求めて「無限大に繰り返す、運命の連環」を巡っていたと悟る。織姫は新婚の世界を「運命の袋小路」と呼び、「運命の袋小路に落ちてしまったあなたを、ここまで引き戻すのには苦労したわ」と言う。声だけが語るバッドエンドの「あなたは何度でも、運命を巡ることが出来る」とも重なる言葉。
- 登場場面
- 「僕はただ茫然として、崩壊れゆく世界を眺めていた」
水平線の向こう、運命の果てをさす言葉。7年前、深景は彼岸花の話をしながら、彼岸の意味を「例えば、水平線の向こうね」と説明し、「『三途の川の向こう側』という意味も、あるらしいんだけどね…」と付け加える。夢の声の言葉の中にも出てくる。
- 詳細
- 声だけが語るバッドエンドで、声は「運命の彼岸の先に、またあなたはここへ来るわ」と言う。深景の章では、白い世界の果ての境界線が「人生の彼岸」として語られる。最終日には、海の詩が「海の向こう…彼岸から届いた想い」と書かれる。
- 登場場面
- 「そして……僕は『彼岸』を突き抜けた」
作品の題名と同じ「リフレインブルー」の読みが振られた言葉。物語の中でたった一度だけ、深景の章の終盤、善博の独白の中に現れる。題名と同じ響きの言葉が作中に出てくるのは、この箇所だけ。
- 詳細
- 深景を看取ったあとの善博の独白。「人は悲しみに帰るんだ。/あの暗く寂しい海の底へ。…」に続いて、この言葉が出てくる。この直後、善博は織姫の前へ戻され、深景との糸を切ることに同意する。
- 登場場面
- 「人生が、繰り返す悲しみに還る物語だと言うなら…」
到着の夜、善博の夢の終わりに響く言葉。『私は、海で待っています』。この時点では誰の言葉なのか分からないが、物語の中で何人もの人物が、少しずつ形を変えて同じ言葉を口にする。
- 詳細
- 奈緒の章では、深景の置き手紙に「たとえ私がいなくなっても、私は海で待っています」とあり、善博はそれを「想い出は、海に返す」ことだと受け取る。由織の章の夢では、幼い由織が「わたしは、この海でまっています」と言い残す。深景の章では、死の床の深景が善博にこの言葉を残す。
- 登場場面
- 深景の章、7年前の宿の部屋で。深景「私は…海で待ってる…。海で…あなたが来るのを…待っているから…」
無口な雫が、岬で耳を澄ませて「聴いている」もの。雫は「兄さんが…好きだった…海の詩…」と言い、「見ているんじゃなくて…聴いているの…」と善博に話す。兄が聴かせてくれると約束したから、この海に来たのだという。
- 詳細
- 兄は「…俺と同じ歳になったら、聴かせてやるよ」と約束していて、雫はその歳になってこの海へ来た。兄を奪った海を「嫌い」と言い、一度はもう聞こえないと言うが、最終日に「聞こえる」と兄に別れを告げる。花火の夜、兄の声が「あれはお前のために詠った詩なんだ」と雫に語りかける。深景の章では、雫が「詩が…届きましたから」と言って、善博に海の絵を返す。
- 登場場面
- 善博「もう聞こえたかい、海の詩は」
雫の兄が語ったという、深い海の色。海に潜って見上げると、光と闇の狭間に青が見える。兄はそれを「本当の青」と呼び、雫の瞳と同じ色だと言った。雫の章で、泣きながら眠る雫の瞳を見つめる善博の中に、兄の語りが重なる。
- 詳細
- 兄の語りでは、闇の底の声が「還ってこい」と呼んでいて、兄は「その闇の中に飲み込まれて、溶け合ってゆく」と言う。「このまま海に身を任せて沈んでしまおうか」とも口にしていた。
- 登場場面
- 雫の兄「呼んでいるんだよ、『還ってこい』って」
海の彼方をさす言葉で、作中に何度も出てくる。7年前、深景は「海の向こうにはね、やっぱり海の向こうがあるの」と話し、海の向こうにもきっと自分がいるのだと善博に語った。少女が渡す古い十円玉は、電話を掛けると「海の向こう」に繋がるという。
- 詳細
- 奈緒の章では、奈緒が飛び立つカモメのジョナサンに伝言を託す。深景の章の最終日には、海の詩が「海の向こう…彼岸から届いた想い」と書かれる。
- 登場場面
- 奈緒「飛んでいって、伝えて欲しいの…海の向こうにいる、あの人のところへ」
由織の章で、川奈由織が口にする言葉。8月6日、岬で島崎藤村の詩を諳んじたあと、由織は「もしもう一度、青い風が吹いたら…。そのときは、飛んでいけそうな、そんな気がするんです…」と話す。その前には「私は風になりたい…」とも言っている。
- 詳細
- 由織が一年中この海辺を離れない理由は語られない。1年後の夏、紅いアスターを持って戻ってきた善博を迎えた由織の胸の内が、「やっと、青い風が吹いた…。/私をこの海から連れていってくれる、青い風が…。」と書かれる。
奈緒の章で、森沢奈緒が口にする言葉。想い出は棘だらけで、棘だけを抜き取ることはできない。抱えたまま生きるのではなく、想い出そのものを海へ手放す、という考え方をさす。
- 詳細
- センパイを忘れられずにいた奈緒は「棘だらけの想い出を抱いて生きるのは、もういやなの」と泣く。最終日、奈緒はセンパイの写真を破って海に撒き、「想い出は…海に返すよ…」と言う。センパイと約束を交わした岩陰では「この海の想い出は、この海に返すんです」。善博は深景の置き手紙の「私は海で待っています」をこの意味だと受け取り、帰る朝、額縁の海の絵を海に返す。
- 登場場面
- 帰る朝の岬で。善博「想い出、返すよ」
作中で繰り返し使われる言葉。蜻蛉海岸は善博にとって「あの遠い夏の、想い出の地」で、ほかの登場人物もそれぞれに想い出を抱えている。花や絵、写真、ノート、手紙といった形あるものに、想い出が託される場面が多い。
- 詳細
- 月下美人は善博と深景の「僕たちの想い出の証」で、深景は苗を植えながら「想い出を、何か形にして残しておきたい」と話した。彼岸花の花言葉は「悲しい想い出」。つぐみは人から聞いた想い出話をノートに書き溜め、「ウチには想い出作る資格なんてあらへん」と言うが、帰る朝に渡す領収書の代金は「『想い出』」となっている。
- 登場場面
- 「月下美人…深景さんと一緒に植えた花。/僕たちの想い出の証」
作中で繰り返し使われる言葉で、多くの人物が誰かと約束を交わしている。七夕のおとぎ話で織姫が彦星に求める「機織りしているときの私を見ないように」という約束や、雫と兄の「海の詩」の約束が序盤から語られる。果たされる約束もあれば、果たされない約束もある。
- 詳細
- 深景と善博の間には、たどる章によって、また会える、来年の夏にまたこの海で会う、絵の名前が決まったら返しに来る、といった約束がある。ほかにも、ちなつと父の「泣かない」約束、雫と兄の「嫌い」と言わない約束、雫と善博の夜9時の砂浜の約束、奈緒とセンパイのまたここに来るという約束、夢の中の少年と幼い由織の「たまて箱」の約束などがある。
- 登場場面
- 雫の章の最終日、深景の代わりに。雫「約束…守ってくれて、ありがとう…」
ちなつの章の最終日、善博がちなつに言う言葉。「出来ない約束なんて、しない方がいい」。守れないとわかっている約束なら、初めから交わさない方がいい、という考え方をさす。
- 詳細
- 9月に遠くの街へ転校するちなつは、夕陽の海で善博に好きだと打ち明け、また会えると約束してほしいと求める。善博は「いや、もう会えないよ」と拒み、ちなつに応えないまま別れる。善博は、7年前に深景が去ったのは「僕を『大人にする』ためだった」と考えていた。数年後、偶然再会したちなつは、約束を守れなかったと泣く。
- 登場場面
- 数年後の再会で。ちなつ「約束、守れなかったよ。出来ない約束だったよ」
7年前、深景が善博に出した宿題。水切りの石を一緒に探す賭けに負けた善博は、深景が岬で描いた海の絵に名前をつけるよう頼まれた。深景は「善博くんに、この絵の名前を決めて欲しいの」と言う。深景自身が決めた名前は「ヒミツ」だった。
- 詳細
- 善博は「名前を決めてしまうと…何かが失われるような気がして」、7年たっても決められずにいた。奈緒の章の深景の置き手紙には「絵の名前が決まったら、返しに来てください」とある。帰る朝、善博は岬で名前を「夏の幻」と決める。
- 登場場面
- 善博「俺…この絵の名前、決めたよ」
深景が7年前に描き、善博が持ち歩いている海の絵の名前として、善博の口から出てくる言葉。奈緒に絵の名前を訊かれて「この絵は、『夏の幻』って言うんだ」と答えることもあれば、「まだ、決めてないんだ」と答えることもある。
- 詳細
- 奈緒の章の帰る朝、善博が決めた絵の名前。絵の裏にあった深景の2枚目の手紙を読んだあと、善博は絵を海に返して別れを告げる。
- 登場場面
- 『さようなら、夏の幻……』
時を経てから受け取る手紙をさす、善博と奈緒の言葉。奈緒の章の最終日、善博は寄せ書きノートに挟まれていた写真を奈緒に渡すとき、それを「彼からの、遅れてきた手紙」と呼ぶ。届くはずの時を過ぎてから受け取る言葉、という意味で、このあとも二人の間で使われる。
- 詳細
- 写真の裏にはセンパイのメッセージがあり、奈緒はそれを読んで笑い、「でも、もう遅いですよーだ」と破って海に撒く。花火の夜、奈緒の留学を待つと約束した善博は、その条件として「『遅れてきた手紙』なんて出さない」ことを奈緒に約束させる。帰る朝、善博自身も、額縁の絵の裏に深景からの手紙を見つける。
- 登場場面
- 善博「深景さんからの…遅れてきた手紙」
7年前の深景との会話に由来する話。夜空の星は変わらないように見えるが、100万年も経てば星空さえ変わってしまう、というもの。奈緒の章の深夜、奈緒と星空を見上げる場面で、善博はこの話を思い出す。
- 詳細
- 奈緒は「人が死んだら、空のお星様になるとか…」「でもあれって嘘です」「センパイがいなくなっても、変わらない星空のまま…」と言う。善博は「いつか変わるんだよ、この星空さえも…。どんなに変わらないように見える星空でも、100万年後には変わってしまうんだ」と答え、「だから、奈緒ちゃんも変わったっていいんだよ」と続ける。のちに善博は「奈緒ちゃんを苦しみから解き放ったのは、深景さんが僕にくれたそんな言葉だった」と振り返る。
「海へ還る」の形で繰り返し出てくる言葉。7年前、ウミガメの孵化を待つ夜に、深景は「どうしてそんな厳しい海に…還って行こうとするんだと思う?」と善博に問いかける。その問いの答えは、そのときには語られない。
- 詳細
- 雫の章で、善博は子ガメが海へ還るのは「それは、約束だからなんだよ」と答える。雫の兄の語りでは、闇の底の声が「還ってこい」と呼ぶ。深景の章の結末で、少女の姿の深景は海へ帰っていく。地の文は「この身体は借り物だから、海に返さなくちゃ」と書く。
- 登場場面
- 「孤独な詩をうたう、海の元へと還る」
深景と雫の瞳を表す言葉。7年前の深景の瑠璃色の瞳は、「どこか遠く…水平線の彼方の方を見つめているような気がした」と描かれ、時おり薄い翳りが浮かんだ。深景は「不意に私が消えてしまいそうな気がするの」と口にしていた。
- 詳細
- 雫の章で、善博は雫の瑠璃色の瞳に心をとらわれる。雫の瞳は、兄が語った「本当の青」と同じ色とされる。雫は自分の目が嫌いで、善博に「私の目…嫌いだから…見ないで…」と頼む。
- 登場場面
- 「僕はずっと、瑠璃色の瞳に気をとらわれていた」
7年前、48色の水彩絵の具で絵を描く深景に、善博が「もしひとつだけ色を選ぶとしたら?」と尋ねたときの答え。深景は「海色の絵の具…でも、あればいいかな」と言い、「私が見ている海と善博くんが見ている海は、きっと違う色をしているもの」とも話した。
- 詳細
- 深景の描いた額縁の海の絵は「様々な色調のブルー」で塗られている。少女の持つ風鈴も「海の色にも似た、深く溶け込んだブルー」をしている。
7年前の旅館の夜、深景が出したなぞなぞ「世界で一番大きな鏡って、なんでしょうか?」の答え。答えは夜の海で、深景は「夜の海は夜空を映す、黒く磨かれた鏡なの」と言う。深景はなぞなぞを出すとき、口調が丁寧になる癖がある。
- 詳細
- 雫の章では、雫の瞳が「磨き込まれた水鏡のように」善博を映す、と書かれる。
- 登場場面
- 「海は夜空を映す、黒く磨き込まれた鏡だった」
幼い日の雫が、兄と二人でした遊び。わらべうたの「かごめかごめ」の「かごめ」を、雫が「かもめ」と思い込んでいたことから、こう呼ばれる。雫の章で、雫の過去をたどる場面に出てくる。
- 詳細
- 幼い雫は近所の子らに、かごめかごめの輪の中で「しずくちゃん、だーあれ?」と責められ、笑われて置き去りにされた。兄だけが味方で、二人で「かもめかもめ」をした。最後の夜の兄の声の場面でも思い出される。
由織や深景が語る花の意味。寮の花壇でアスターを育てる由織は、その名前が「『星の花』という意味なんですよ」と教える。7年前、深景は彼岸花の花言葉を「悲しい想い出」だと話していた。花に託された意味が、人物の気持ちを代わりに語る場面がある。
- 詳細
- コスモスの花言葉は「乙女のまごころ」で、由織の章で由織が教える。アスターの花言葉は「永遠の別離(わかれ)」で、由織は帰る朝、そう告げて種を善博に渡す。1年後に戻った善博は、紅いアスターの花言葉が「私の愛は、あなたよりも深い」だと告げる。
- 登場場面
- 由織「アスターの花言葉は、『永遠の別離』です」
7年前、深景が岬から見た海を「様々な色調のブルー」で描いた、写真ほどの大きさの水彩画。善博はこの絵を額縁ごとポケットに入れて、今も持ち歩いている。作中では「海の絵」「深景の絵」とも呼ばれる。
- 詳細
- 絵の行き先は、たどる章によって違う。ちなつの章の回想では、深景の置き手紙に絵を譲ると書かれていた。雫の章では、7年前に「今度また会ったときに、私に返してね」と預かり、最後の夜に雫へ「預ける」。奈緒の章では、完成の日に深景が「この絵は、私と善博くんのふたりで描いた絵なの」と言い、善博は名前を「夏の幻」と決めて海に返す。額の裏には深景の2枚目の手紙があった。由織の章では、由織の誕生日の贈り物になる。深景の章では、死の床の深景が「私が生きていたという証」として託し、のちに雫が「約束ですから…お返しします…」と善博に返す。
深景が旅先で描いている、写真ほどの大きさの小さな風景画。48色の水彩絵の具を少しずつ買い足しながら使っている。深景は自分のことを「ふふっ、さしずめ放浪の画家ってところかしらね」と言う。善博が持ち歩く額縁の海の絵も、この大きさで描かれている。
- 詳細
- 深景は幼い頃、父に連れられて行った展覧会で、一面のコスモスの花畑を描いたミニチュア画に心を奪われた。絵を描く理由を、深景は「誰かに受け取って欲しいからかな…想いを」と話す。絵を描く旅に出たのは、自分に残された時間が少ないと知ったからでもあった。
- 登場場面
- 深景「その一面のお花畑の絵に、私は…そう、虜になっちゃったの」
7年前の別れの朝、深景が善博のもとに残していった手紙。手紙の文面や、そのあとに見つかる手紙があるかどうかは、たどる章によって違う。善博は、手紙と一緒に残された海の絵を今も持ち歩いている。
- 詳細
- ちなつの章の回想では、謝罪と海の絵を譲る旨が書かれ、善博が覚えているのは『旅の終わりに、あなたに会えてよかった』の一文だけ。雫の章には置き手紙は無く、翌朝のバス停で別れる。奈緒の章の置き手紙には「おそらくもう二度と、会うこともないでしょう」「私は海で待っています」「絵の名前が決まったら、返しに来てください」とあり、額の裏の2枚目には「おそらく、善博くんがこの手紙を読んでいる頃には、私はこの世にはいないでしょう」と書かれ、追伸は「大好きでした」。深景の章の最後には、深景の手紙が置かれる。
- 登場場面
- 深景の章の最後の手紙。「この手紙は、きっとあなたには届かないでしょう」「たったの20年しか生きられなくて…」「私を好きになってくれた『あなた』へ…ありったけの『ありがとう』」
ちなつの章で、名も知らぬ少女がちなつに渡す、赤黒く錆びた古い十円玉。少女は、この十円玉で電話を掛けると「海の向こう」に繋がると言う。ちなつは寮のラウンジの電話で、この十円玉を使ってみる。
- 詳細
- 十円玉を入れると電話はひとりでにダイヤルし、ちなつは遠く離れた父の家に掛けたつもりで話すが、間違い電話だと思って切る。出た声は善博そっくりだった。十円玉はそのまま電話機に飲み込まれる。深景の章の新婚の世界では、善博の家にまったく同じやり取りの間違い電話が掛かってくる。電話がどこに繋がったのかは、作中で明確な答えは示されていない。
- 登場場面
- ちなつ「あの…小泉…のお宅じゃないんですか?」
名も知らぬ少女が持っているガラスの風鈴。「海の色にも似た、深く溶け込んだブルー」をしていて、少女は「くす…これ、きれいでしょう?お水をかためてつくったみたいに透きとおってて」と言う。4日目の夜、善博は風鈴の音に誘われて縁台へ行き、少女と会う。
- 詳細
- 深景の章の最終日、少女の風鈴を雫が持っていて、雫は風鈴を鳴らしながら、海の絵の額縁を善博に返す。
- 登場場面
- 雫「詩が…届きましたから」
寮のラウンジに置かれている大学ノート。これまで天山荘に泊まった人たちが、記念にそれぞれの言葉を書き残している。サマースクールの生徒たちも、ラウンジでこのノートを開いて眺める。
- 詳細
- 奈緒の章の深夜2時、差出人のない手紙に呼ばれてラウンジへ行くと、卓上にこのノートが開かれていて、奈緒とセンパイが写った写真が挟まっていた。手紙の差出人は明かされない。
つぐみが大切に持っている古い大学ノート。日付の記されていない、日記帳のようなもので、ふだんはつぐみの部屋のカバンにしまわれている。善博は以前、階段でつぐみとぶつかった朝に、このノートを目にしている。
- 詳細
- 中には、幼い字から次第に整った字へと、人から聞いた明るい想い出話が書き溜められていて、最後の方には由織から聞いたミドリガメの話がある。つぐみの章の最終日、善博はつぐみの部屋に無断で入ってこれを読み、つぐみの語っていた想い出が借り物だったと知る。
- 登場場面
- 善博「でもそれは偽りだ、偽りの想い出だ」
つぐみの商売道具。つぐみは大きな肩掛けカバンと赤い背表紙の手帳、使い捨てカメラを持ち歩き、撮った写真を1枚200円で売っている。「これはウチが、商売としてやってることですから」。そのくせ、自分が写真に撮られるのはひどく嫌がる。
- 詳細
- つぐみの章で、善博が没収したカメラでつぐみを撮ると、つぐみはカメラを海へ投げ、泣きながら走り去る。最終日には、つぐみのほうから撮影会をしようと言い出し、「今、ウチ、主役やな!」とはしゃぐ。
- 登場場面
- つぐみ「添乗員さんの、アホ~~~~~~!!!!」
4日目の朝、階段でぶつかった善博に、つぐみが言い渡す慰謝料10万円と、その書面のこと。写真の代金に荷物持ちの手間賃と、商売人を名乗るつぐみは何にでも値段をつけていて、善博はこの約束までさせられてしまう。
- 詳細
- 稼いだお金を、つぐみはすべて募金していた。「ウチが欲しいもんは、お金じゃ買えへんし…」。帰る朝に渡される請求書は「慰謝料100000円/24枚撮りカメラ1500円/ハンカチレンタル料100円/その他0円/合計金額101600円也」。添えられた領収書の代金は「『想い出』」となっている。
つぐみの幼い日の記憶に出てくる、遊園地の風船。小さなつぐみが母に初めて甘えさせてもらい、風船売りの赤い風船を全部買ってもらう。母は「つぐみ、今日はたくさん甘えてもいいのよ」とやさしい。
- 詳細
- 母はこのとき「…これで、最後だからね」とつぶやいていた。その日の後、母は「ここで待っているのよ」とつぐみをバス停に残し、雨の中で待っても迎えに来なかった。
- 登場場面
- つぐみ「ウ、ウチの…ウチのたったひとつだけの想い出が、捨てられたことやなんて…」
ちなつが誕生日に父に買ってもらった、片方の耳が曲がったうさぎのぬいぐるみ。ちなつの章の最終日の夕方、ちなつが自分の話として善博に語る。父と離れて暮らしてきたちなつにとって、父との思い出が残る品。
- 詳細
- 母を亡くしたあと、研究者の父は海外へ招かれ、幼いちなつを杉野家に預けて旅立った。父と別れた寂しさを、ちなつが我慢できた理由の一つが、このぬいぐるみだった。
寄せ書きノートに挟まれていた一枚の写真。奈緒と、フルートを持った背の高い男性が写っている。写真の中の奈緒は、今とは髪型が違う。奈緒の章の深夜、寮のラウンジで善博が見つける。
- 詳細
- 写っているのは奈緒の恋人だったセンパイ。写真の裏にはメッセージがあるが、その文面は示されない。最終日、善博はこの写真を「彼からの、遅れてきた手紙」として奈緒に渡し、奈緒は裏を読んで笑い、「でも、もう遅いですよーだ」と破って海に撒く。
- 登場場面
- 奈緒「想い出は…海に返すよ…」
由織の章の夢の中で、小学4年生の少年「ボク」と幼い女の子「ゆうちゃん」が、「未来のボクたち」に宛てて作る箱。クッキーの空き箱に、ゆうちゃんは花の種を、ボクは野球のボールを入れる。
- 詳細
- 二人は砂浜の端の松の根元に箱を埋め、「大人になったら、ふたりで掘り出す」と約束する。ゆうちゃんは迎えに来た執事に連れられて帰るとき、「わたしは、この海でまっています」と言い残す。最終日、善博は砂浜を掘ってみるが何も出てこず、「一度砂に埋めたものは、掘り起こしてはならない」と心に決める。箱が掘り出される場面は描かれない。
由織の章で、海を望む一面のコスモス畑を前にした由織が「一面のコスモス…山村暮鳥の詩みたいですね」と名を挙げる詩人と、その詩。そばにいた少女が「いちめんのなのはな…」と口ずさみ、画面には出典として「山村暮鳥『銀色もざいく』より」と詩句が示される。
由織が諳んじる詩の一節。由織の章の8月6日、由織は「私は風になりたい…」と言ったあと、「風よ静かに彼(か)の岸へ/こひしき人を吹き送れ/海を越えゆく旅人の/群れにぞ君はまじりたる…」と口ずさみ、「島崎藤村の詩の一節です」と言う。このあと由織は、青い風の話をする。
深景の章の終盤、善博の独白に引かれる詩。金色に光る朝の海を前に、善博は泣き笑いを浮かべて「中原中也の詩じゃあるまいし」と思い、「死ぬときに思い出すことは/たぶんお天気の日の海のことです」という詩句が続く。
- 詳細
- 7年前、宿の部屋で深景を看取ったあとの朝の独白。善博は深景の最期を見届けたあと、ひとりで金色の海を眺めている。
7年前の夜、深景が子供の頃に読んだと話した絵本。寂しくて泣いてばかりいる人魚の話し相手に、お月様がなってくれる。お月様は半月の夜にいちばん微笑むという。深景は夜空を見上げて「今日のお月様は、笑ってるわね」と言う。
- 詳細
- 「月が笑う」という言い方は、このあとも繰り返される。由織の章で善博は「月が笑ってる、か…」とつぶやき、深景の章では、死の床の深景が「月は、笑ってる…?」と尋ねる。旧七夕の夜にも「今日もお月様は、笑ってるね」という言葉が出てくる。
つぐみの章の結末に出てくる、月と人魚姫をめぐる絵本。題名はすべてひらがなで書かれている。本屋で人魚の絵本をねだる小さな女の子が選ぶ一冊で、あとがきには、ある人への感謝の言葉が記されている。
- 詳細
- 7年後、絵本作家になったつぐみのデビュー作。選んだ女の子は善博の娘の美佳。あとがきには、編集の神野さんや日美野印刷の平野さんへの謝辞に続けて、「添乗員さん」への感謝が書かれている。善博はサマースクールの間、つぐみの植生スケッチの上手さを褒めて、絵本作家を勧めていた。
- 登場場面
- 「私が、この絵本作家の道を進むことになるきっかけを作ってくださった『添乗員さん』へ…/心からの、ありがとう。」
天山荘の管理人が春先に保護した、翼を怪我したカモメ。寮の裏で飼われていて、冬に来る群れに返すつもりだという。釣りたての魚しか食べない。雫がよく餌をやりに来ては、「よく…噛まないと…だめです」と話しかけている。
- 詳細
- 雫の章では、雫が餌と一緒に親指をくわえられ、「嫌い…」と言って走り去る。奈緒の章では、傷は治ったのに飛ぶのを怖がっていると管理人が話し、奈緒が「カモメって言ったらジョナサンです」と名づける。最終日、奈緒の励ましでジョナサンは初めて高く飛び、奈緒はセンパイへの伝言を託す。
- 登場場面
- 奈緒「どこにも飛んで行かずに、ずーっとここにいれば…苦しい思いをすることもないんだよ」
砂浜で卵から孵り、一斉に海へ還っていく子ガメ。7年前の夜、善博と深景は堤防で孵化を待ったが、そのときは見ることができなかった。待ちながら、深景は流れ星や海の向こうの話をし、子ガメがなぜ厳しい海へ還っていくのかを善博に問いかけた。
- 詳細
- 雫の章の夜9時、東の砂浜で子ガメが一斉に孵り、海へ還っていく。善博は、子ガメが海へ還るのは「それは、約束だからなんだよ」と語り、雫は子ガメに兄への伝言を託す。
- 登場場面
- 「ほとんどの子供たちは、その試練に克ち勝てずに、命を落とすことになる」
サマースクール5日目の朝、食卓に出たアサリの吸い物を前に、雫は「生きてた…のに…」とつぶやく。謝る由織に、雫は「嫌い…」と言い残して席を立つ。由織は「アサリさんのご冥福は、お祈りしましたけど…」と言う。
- 詳細
- 雫の章では前の晩、由織と雫が並んでアサリの砂抜きに悩む場面があり、雫は砂を吐くアサリを「生きて…ますから…」と気にかけている。
海沿いにある旅館の廃屋の庭に、人の背丈より高く育っている株。営む人のいなくなった庭で、今も枯れずに残っている。善博にとっては、7年前の夏の記憶と結びついた花でもある。
- 詳細
- 7年前、善博と深景は宿の庭にこの苗を植えた。深景は「想い出を、何か形にして残しておきたい」と話した。つぐみの章の8月7日、つぼみは閉じたままで、「来たときには、もう咲いとった」と言ったつぐみの嘘を暴く決め手になる。由織の章では8月7日の夜に花が咲いていて、3年前から由織が、枯れかけていた株を手入れしてきたことが分かる。由織は「想いはいつか花となって咲くんです」と言う。
- 登場場面
- 「月下美人…深景さんと一緒に植えた花。/僕たちの想い出の証」
由織が寮の花壇で毎年育てている花。由織は「アスターというのは、『星の花』という意味なんですよ」と教え、「お花は愛情を込めて育てると、そのお礼にきれいに咲いてくれるんですよ」と話す。
- 詳細
- 由織の章の帰る朝、由織は花言葉を「永遠の別離(わかれ)」と告げて、アスターの種を善博に渡す。1年後の夏、アスターを植えずにいた由織の前に、自分で育てた紅いアスターの花束を持った善博が現れ、紅のアスターの花言葉は「私の愛は、あなたよりも深い」だと告げる。
- 登場場面
- 善博「ああ、紅いアスターが咲いたよ」
海を望む畑に一面に咲く花。由織の章で、少女に案内された畑に咲きそろっていて、由織はその花言葉を「乙女のまごころ」だと教える。地の文には「一斉に咲き誇る秋桜」とあり、「秋桜」と書いて「コスモス」と読ませている。
- 詳細
- 深景の好きな花で、深景は「風に倒されても、力強く咲くコスモスの花」と言う。深景が幼い頃に心を奪われたミニチュア画も、一面のコスモスの花畑を描いたものだった。深景の章の最後の朝、畑は枯れていて、善博は芥子粒のような種を持ち帰る。
7年前、宿の庭で花火をした夜に、深景が打ち上げ花火を見て思い出した花。深景は「彼岸花という花よ。知らない?」「曼珠沙華とも言うんだけれど…」と善博に話し、花言葉は「悲しい想い出」だと教える。
- 詳細
- 深景は彼岸の意味を「例えば、水平線の向こうね」と説明し、三途の川の向こう側という意味もあると付け加える。深景の章で、少女は最後の線香花火をしながら、散っていく火花の形に似た花を善博に思い出させようとするが、善博は思い出せない。
由織が「はい、浜の木の綿と書いて浜木綿です」と紹介する、海辺に咲く花。由織の章の8月6日、由織が善博に教える。由織は「人の都合で温室や花壇に閉じこめてしまうよりは…」と言葉を続け、同じ日に「お花は種を残します」とも話す。
朝の散歩の途中、雫がひとりで見つめていた小さな花。雫は露草を指先で揺らし、こぼれる水滴を見ている。善博は「確か『露草』という名の花だ」と思い出す。別の朝には、林で雫と由織が並んで露草を見ていて、由織はこの花を「露草さん」と呼ぶ。
物語の主人公。24歳のバス会社の添乗員で、東陽学園のサマースクールに付き添い、7年ぶりに想い出の海辺へやって来る。一人称は「僕」だが、7年前は「俺」だった。7年前に深景が描いた海の絵の額縁を、今も持ち歩いている。
- 詳細
- 7年前に深景とどう別れたか、深景の死を知っていたかは、たどる章によって違う。どの章でも、目の前の相手に惹かれることを深景への裏切りのように感じて揺れる。深景の章では、深景との記憶そのものが消されていたことが分かる。つぐみの章の7年後では、妻と娘を持つ父になっている。
7年前の夏、善博がこの海辺で出会った年上の女性。写真ほどの大きさの風景画を描きながら一人旅をする画家で、「そう…深いに景色の景って書いて、深景」と名乗った。艶やかな長い髪と白い肌、瑠璃色の瞳をしている。姓は作中に出てこない。
- 詳細
- 骨の悪性腫瘍を患い、余命を告げられていた。絵を描く旅に出たのも、時間が無いと知ったからだった。亡くなった時期や、善博がそれを知っていたかどうかは、たどる章によって違う。深景の章では、名も知らぬ少女の姿で善博のそばにいたことが明かされ、地の文は「この身体は借り物だから、海に返さなくちゃ」と書く。
- 登場場面
- 雫の章、7年前の最後の夜。深景「私ね、死ぬの」
寮のまわりに現れる、名を明かさない黒髪の小さな女の子。初対面から善博を「よしひろくん」と呼ぶが、名前を訊かれても「うん、おしえてあーげない」と笑う。夜の縁台で七夕のおとぎ話を語り、手は真夏でも海の水のように冷たい。寮には管理人とお手伝いしか住んでいないはずだという。
- 詳細
- 深景の章の最後の夜、善博に「…深景さん」と呼び掛けられ、深景の声で七夕の結末を語る。善博の記憶から深景が消されたあとも、少女の姿で待っていた。地の文は「この身体は借り物だから、海に返さなくちゃ」と書き、深景は海へ帰っていく。ほかの章で少女が何者なのかについては、作中で明確な答えは示されていない。
- 登場場面
- 旧七夕の夜の砂浜で。「だけど本当は言いたかった。私が深景なんだって、言ってしまいたかった…」
東陽学園の1年生で、演劇部員として紹介される女の子。行きのバスで善博と知り合い、やがて「おにーさん」と呼んで慕うようになる。明るくよくはしゃぎ、3年生の杉野治美がいつも世話を焼いている。人前では治美を「先輩」と呼ぶ。
- 詳細
- 実は東陽学園の生徒ではなく、治美の従妹。治美の演劇部の後輩「岩崎ちなつ」の名前を借りて、サマースクールに紛れ込んでいた。本当の名字は作中に出てこない。母を亡くし、父が海外へ渡ってからは杉野家で育ち、父との「泣かない」約束を守ってきた。ちなつの章の最終日、9月に遠くの街へ転校することを明かし、夕陽の海で善博に好きだと打ち明けるが、善博は応えないまま別れる。数年後、偶然再会したちなつは、約束を守れなかったと泣く。
東陽学園の3年生。無口で、クラスでは孤立しがち。暑いのが嫌いで水泳の授業を抜け出し、岬でひとり「海の詩」に耳を傾けている。話すときは「…はい」「…です」と言葉を区切る。腰の下まで届く長い髪をしている。
- 詳細
- 幼い頃、近所の子らに仲間外れにされ、兄だけが味方だった。兄がいなくなったあと、父は「なぜよりによって、出来の悪い方が残ったんだ」と言い、雫はそれを聞いていた。雫の章では、兄を奪った海を嫌っていた雫が、最終日に海の詩を「聞こえる」と言って兄に別れを告げ、初めて海に入って笑う。翌年の夏、大学生になった雫は、善博と二人で深景の墓に参る。
東陽学園の生徒で、ブラスバンド部でフルートを吹いていた。几帳面ですぐに頭を下げるが、「ふっふっふっ、森沢は七色の声の持ち主なのです」とおどける茶目っ気もある。運動は苦手。去年もサマースクールに参加していて、先輩の伊藤に誘われて今年も来た。
- 詳細
- 1年前の夏、恋人のセンパイをウィーンへの留学に見送ったその夕方、テレビの速報で乗客名簿のことを知る。センパイを忘れるためにこの海へ来たが、海が去年と少しも変わっていないことで、かえって忘れられないと思い知る。奈緒の章では、センパイの写真を海に撒いて想い出を返し、ブラバンを続けて来年は自分が留学すると決める。善博は、奈緒が戻ってくるのを待つと約束する。
関西弁で話す東陽学園の1年生で、「ウチは1年3組出席番号31番の津賀島ゆうもんです~」と名乗る。使い捨てカメラで生徒を撮っては写真を1枚200円で売るなど、何かと「商売」に励む。そのくせ自分が写真に撮られるのはひどく嫌がる。善博を「添乗員さん」と呼ぶ。
- 詳細
- 幼い頃、実の母に「…お前さえ生まれてこなければ」と言われ、暴力を受けて育ち、遊園地に連れて行かれた日にバス停に置き去りにされた。その後「津賀島のうちの子」になる。人から聞いた明るい想い出話をノートに書き溜め、自分の想い出として語っていた。つぐみの章では恋人にはならずに別れ、7年後に絵本作家としてデビューする。
天山荘でお手伝いとして働く女性。22歳で、8月6日に23歳の誕生日を迎える。寮が開いた3年前から住み込みで働き、花壇でアスターを育て、管理人の息子ユウキの母親代わりもしている。おっとりした丁寧な話し方で、「露草さん」「アサリさん」と物にも「さん」を付ける。
- 詳細
- 幼い頃は執事の付く「お屋敷」の娘で、あだ名は「ゆうちゃん」。「川奈のお嬢さん」と呼ばれるのを拒み、家を出た理由は語られない。由織の章では、善博の心に深景がいることを「知ってましたよ」と受け止めながら、一緒に来てほしいという求めには首を振って別れる。1年後の夏、紅いアスターを持って戻ってきた善博を迎える。
- 登場場面
- 由織「松永さん、素敵な恋をありがとうございました」
東陽学園の3年5組で、サマースクールの実行委員。演劇部に入っていて、受験を控えている。しっかり者で、ちなつのことを母親のようにたしなめ、何かと世話を焼く。雫とは同じクラス。
- 詳細
- ちなつの従姉。ちなつを元気づけようと、演劇部の後輩「岩崎ちなつ」の名前を借りて、東陽学園の生徒ではないちなつを連れてきた。善博にちなつの素性を打ち明け、ちなつを甘やかさないでほしいと頼む。雫の章では、オリエンテーリングで雫が置き去りにされたことを善博に伝える。
- 登場場面
- 治美「ちなつを元気づけようと思って連れてきたのに…。ホント、これじゃ姉として失格です」
天山荘の管理人。関西弁で話し、善博を「兄ちゃん」と呼ぶ。名前は作中に出てこない。寮の裏で菜園を作り、翼を怪我したカモメを保護して世話している。海釣りが趣味で、酒にはめっぽう弱い。ユウキの父親。
- 詳細
- 国際結婚のあと離婚し、元妻は祖国のアメリカへ帰った。酒が入ると「結婚だけは、もう二度とこりごりや」とこぼす。奈緒の章では、カモメが飛べたことを奈緒に礼を言う。由織の章では、善博を見送ったあとの由織に、追いかけるよう勧める。
- 登場場面
- 由織に。管理人「心にもないことを言うときには、もうちょっと、それらしい顔をするもんやで」
管理人の息子で、金髪に青い目をした男の子。誕生日は由織と同じ8月6日で、この日に7歳になる。普段は祖父母のもとに預けられていて、休みの間だけ寮に来ている。由織を母親のように慕い、親しくする善博に「おまえなんか、ゆおりとなれなれしくするなっ」と突っかかる。善博は「ユウ坊」と呼ぶ。
- 詳細
- いたずら好きで、BB弾で善博を撃って階段から落としたり、寮のブレーカーを落として停電させたりする。自分のせいで由織が謝ると、「ゆおりはわるくない。わるいのはおれだ。だから、ゆおりはあやまるな」とかばう。由織の章では「ゆおりは、おれのママになるんだよっ」と言う。
奈緒の先輩にあたる男子生徒。背が高く、バスケ部の副キャプテンを務める。ビーチバレー大会を言い出して、審判もする。飯ごう炊さんの場で奈緒に親しげに話しかけ、そばにいた善博をじろじろと見る。下の名前は作中に出てこない。
- 詳細
- 2年近く奈緒を口説いてきて、センパイを失ったあとの奈緒に優しくし、サマースクールに誘った。奈緒の章では奈緒を部のマネージャーに誘い、善博に「もう森沢さんに構わないでくれよな」と迫って、「試させてもらうからな」と言い残す。
- 登場場面
- 伊藤「でも森沢さんのことだけは、本気だから」
奈緒が「センパイ」「彼」と呼ぶ人で、奈緒の章で少しずつ語られる。背が高く、フルートを吹いていた。小学生の頃に奈緒の家の近所へ越してきて、同じ登校班になった。名前は作中に出てこない。
- 詳細
- 奈緒の恋人。東陽学園で交換留学生に選ばれ、一流の演奏家を目指して、1年前の夏にウィーンへ発った。見送った日の夕方、奈緒はテレビの速報で乗客名簿のことを知る。何が起きたのかははっきりとは語られないが、奈緒は「彼の夢は…途中で断たれてしまいました」と言う。奈緒には「あの星を奈緒だと思う…」という言葉を残していた。
- 登場場面
- 見送りの日の最後の一言。センパイ「ああ、またな」
雫が「兄さん」と呼ぶ人で、名前は作中に出てこない。海の詩が好きだったという。雫は、兄が聴かせてくれると約束したから、この海に来たと話す。雫の章では、兄が「人魚に恋をして…行ってしまった…」と語られる。
- 詳細
- 海に深く潜る人で、幼い雫のただ一人の味方だった。雫に「嫌い」と言わない約束をさせ、二人で「かもめかもめ」をした。亡くなった経緯は描かれず、父は「あいつさえ、あんなことにならなければ」と言う。花火の夜、兄の声が雫に語りかける。
- 登場場面
- 兄の声「お前はな、ひとりじゃないんだ」「もう、泣くなよ」
雫の章で、幼い雫の記憶の中に出てくる父と母。名前は作中に出てこない。父は雫を「あの馬鹿娘は、とんだ出来損ないだ」と言い、母は「あなた…もしそんなこと雫が聞いたら…」と制する。
- 詳細
- 兄がいなくなったあと、父は母に「なぜよりによって、出来の悪い方が残ったんだ」と言い、雫はそれを聞いている。手を上げる場面は描かれない。父は、雫が翌春に進学する大学の卒業生でもある。
ちなつの父と母。父は植物を研究する学者で、長いあいだ海外の大学で研究を続けている。母の千亜希は、ちなつが幼い頃に亡くなっている。ちなつは誕生日に父から、片方の耳が曲がったうさぎのぬいぐるみを買ってもらったことがある。
- 詳細
- 父は「小泉さん」と呼ばれ、ちなつは電話で「小泉…のお宅」を求める。ちなつ本人の本当の名字は作中に出ない。母の死後、父は海外から招かれ、イギリスの大学で植物を研究することになって、幼いちなつを杉野家に預けた。別れのとき、父とちなつは「泣かない」と約束し、戻ってきたときにはたくさん泣いても甘えてもいい、とも約束した。父は7年ぶりに戻ってきて、ちなつと一緒に暮らすことになっている。
- 登場場面
- ちなつを預けるときの父。「今回は向こうからの招聘ですから、いつまでとは決め兼ねるんですが…」
幼いつぐみの記憶に出てくる母。遊園地で、標準語でやさしく「つぐみ、今日はたくさん甘えてもいいのよ」と言い、赤い風船を全部買ってくれた。名前は作中に出てこず、つぐみは母を「お母ん」と呼ぶ。
- 詳細
- 実際には、男に捨てられたことをつぐみのせいにし、「…お前さえ生まれてこなければ」と言って、殴る蹴るを毎日のように繰り返していた。遊園地の日のあと、「ここで待っているのよ」とつぐみをバス停に残し、迎えに来なかった。
- 登場場面
- 遊園地で、つぐみの耳には届かなかったつぶやき。「…これで、最後だからね」
物語の終盤に登場する小さな女の子。人魚の出てくる絵本が好きで、本屋の場面でその絵本をねだる。地の文では「美佳」と書かれ、本人はひらがなで「みか」と名乗る。出てくる場面はごくわずか。
- 詳細
- つぐみの章の結末で、7年後の善博の娘として登場し、もうすぐ生まれる赤ちゃんの「お姉ちゃん」になる。選んだ絵本は、つぐみのデビュー作『つきとにんぎょひめ』。深景の章の新婚の世界でも、本屋で善博を「パパ!」と呼ぶ女の子として現れ、善博は既知感を覚える。
- 登場場面
- 美佳「あかちゃん、もうすぐうまれるんでしょ?」
サマースクールに付き添う引率の先生たち。森先生は体育の教師で、つぐみのいる1年3組の担任。授業を無断で休んだ雫を呼び出して注意する。豊嶌(とよしま)先生は保健の女性教師で、生徒が具合を悪くしたときに呼ばれる。
由織の章の夢に出てくる二人。善博は夢の中で小学4年生の「ボク」になり、砂浜でカメを待つ幼い「由織お嬢様」に出会って、「お前のあだ名はゆうちゃんだな」と名付ける。やがて黒服でひげの執事が、由織を屋敷へ連れ帰りに来る。
- 詳細
- 二人は「たまて箱」を砂浜の松の根元に埋め、大人になったら掘り出す約束をする。「ボク」が善博本人なのかは「その唇がいったい何という名を刻んだのか、僕にはもうわからなかった」と伏せられていて、作中で明確な答えは示されていない。
7年前、善博と深景が泊まった海辺の旅館を営んでいた老夫婦。おばさんは深景に、寂しい海辺に現れる女の子「海童女ちゃん」の話を聞かせた。今は旅館も廃屋になり、二人ももういない。
- 詳細
- 宿の庭に植えた月下美人の苗と、庭でした花火をくれたのもこの夫婦。深景の章では、砂浜で倒れた深景を運ぶのを手伝い、救急車を呼ぼうとするが、最期まで二人で一緒にいたいという善博と深景の意志で見合わせた。
- 登場場面
- 深景「ええ、おばさんも言っていたわ」