チエのレビュー — 高2→将軍

チエ
チエ
笑い担当
7.5/10
7.5 / 10

秀吉の「だがや」と現代知識のボケが思ったより刺さる、戦国コメディの拾い物。

戦国タイムスリップって字面だけ見ると重たそうやんか。実際プレイしてみたら、これけっこう笑える作品やってん。秀吉が「わしがおみゃあらの大将の、木下藤吉郎秀吉だがや」って尾張弁全開で出てきて、主人公は「保健体育の鬼と呼ばれた僕に、不可能はない!」とか言い出す。現代の高校生が戦国に飛ばされた状況を、シリアスやのうて自虐ボケで処理してくる軸がある。9系統135エンドという物量は正直うちの守備範囲を超えてるけど、コメディの密度はちゃんと高い。7.5はそういう評点。

スコア詳細

コメディ・日常 9
テンポ・緩急 7
キャラ間の関係性 8
ヒロインの魅力 7
序盤の掴み 7
主人公の造形 7

「戦国にタイムスリップ」をマジメに重たくせえへんかった話

タイトルが「高2→将軍」やん。この時点で「わかってる人が作ってる」感あった。

2000年10月にアスクからPlayStation向けに出たチャレンジノベル。うちがプレイしたのもそのPS版(2000年)。普通の高校2年生がある日突然永禄年間(1560年代)の尾張に飛ばされて、織田信長の家来になっていく——っていう戦国群像劇やねん。シナリオは10人以上のチームライティング、原画はあんも・ないと。

ジャンル表記はチャレンジノベル。「いやいやどんなジャンルやねん」って最初うちもなったわ。実際プレイしたらわかるねんけど、これADVとRPGの合体技で、しかも分岐がエグいねん。9系統135エンドという数字、嘘ちゃうで。「王道」「覇道」「商人」「宗教」「拳聖」「芸術」「海賊」「究極」「現代」っていう9つの編が、ジャンルごと別々に進む。秀吉と信長について戦国時代を駆け抜ける王道編もあれば、桔梗屋に丁稚奉公して商売する商人編もあるし、能島村上水軍に拾われて海賊になる海賊編まであるねん。なんやねんこの量は。

シリアスに重たい話するんやろなって構えてたら、序盤からずっと笑かしてくる。それがうちのこの作品への第一印象やった。

秀吉「わしがおみゃあらの大将の、木下藤吉郎秀吉だがや」

この作品、秀吉が出てきた瞬間に「あ、これおもろいやつやん」ってなった。

秀吉——後の豊臣秀吉やねんけど、本作では主人公が戦に駆りだされた最初の大将として出てくる。第一声がこれ。「わしがおみゃあらの大将の、木下藤吉郎秀吉だがや」。尾張弁。「だがや」「みゃあ」を全開で喋る、猿顔の小男のお調子者として描かれてるねん。

これが効くねん。秀吉ってどう描いても重要キャラやから、変に格好つけて出されても困るんやけど、この秀吉は最初から軽い。命令も茶化しも全部「だがや」で済ます。でも墨俣の一夜城を成功させる場面ではちゃんと知略を見せる。お調子者の顔と切れ者の顔が両方ある。キャラとしてめっちゃ立ってるんよ。

それと現代側のボケがこの秀吉に合うねん。墨俣築城のとき、社会75以上のステータスがあったら主人公が「墨俣の一夜城」を連想する隠し選択肢が出てくる。これを引き当てると、秀吉と組んで歴史通りに策が成功する。「現代の教科書知識→戦国で武器」っていう仕組みが、秀吉の軽い口調にうまいこと噛み合ってる。シリアスにやろうと思ったらいくらでも重く描けるシーンを、二人のテンポでサラッと笑いに変えていく。これは脚本がよくわかってる。

「保健体育の鬼と呼ばれた僕に、不可能はない!」

この作品の戦闘システム、笑える方向に振ってあるねん。

本作の核は7科目ステータスっていう仕組み。体育・社会・国語・理科・芸術・数学・英語の7つに数値が割り振られてて、各章で「○科目○以上で隠し選択肢が出る」って分岐が組まれてる。ここまでは普通の育成系の構造やねんけど。

セリフが笑かしにきよるねん。導入編で体育65以上やと「保健体育の鬼と呼ばれた僕に、不可能はない!」って隠し選択肢が出る。なんやそのキャッチコピー。「保健体育の鬼」ってなんやねん、「不可能はない!」って体育の話やんけ。この一行で、この作品が現代知識を真面目に使う気あんのか不安になるんやけど、その不安どおり、ぜんぜん真面目に使ってこんねん(褒めてる)。

覇道編には体育90以上で「オラオラ、そこどけや」「左の拳をたたきこんだ」「顔面がお留守だぜ」みたいな選択肢ルートがあるし、覇道編の別の場面では「俺の脳味噌は筋肉の一部だゼ」「顔で刀を受けとめた」「頭で刀を受けとめた」が並んでる。なんやねんこの選択肢群は。完全にボケや。

こういう「現代の教科書知識を戦国で使う」って前提を、シリアスSFとしてやろうと思ったらいくらでも重く書ける題材やと思う。けど作者はあえてここを笑いに振った。各科目のステータス分岐の文言が「面白くなろうとしている」のがちゃんと伝わってくる。コメディ9はここに乗せた評点。具体的には次のセクションで挙げた「3WAYショット」みたいな破壊力のあるボケ選択肢——あれはネタバレあり版で詳しく扱う。

9系統135エンドはちょっと多い、けど

物量に対する正直な感想を言うと、9系統はちょっと多いわ。

うちは普段30〜50本くらいプレイするタイプの人間で、コメディ系を中心に追ってる。1本のゲームで9系統135エンドって、それだけで攻略本一冊分のボリュームやんか。商人編は経済劇やってるかと思えば、海賊編は瀬戸内海上の冒険活劇に切り替わって、宗教編では宣教師ピエールと組んで布教ドラマやり始める。芸術編は絵師の弟子になる徒弟もの、拳聖編は気の暗殺拳の伝奇バトル。それぞれが独立した「別ジャンルのゲーム」として進むねん。

これ、密度に正直ばらつきあるで。王道編は史実イベントを縦走するから一番厚みがあって、本能寺・山崎まで連続イベントで盛り上がってく。商人編は短くまとまっててテンポええ。一方で覇道編(公家姫綾乃を匿う政治劇)とか宗教編は章数のわりにエンド数が多すぎて(覇道34・宗教13)、選択肢分岐の薄いエンドが並んでる印象。「とりあえずエンディング数水増ししとこか」感の出てる場面が、編によってはある。テンポ7はそこの評点。

ただ——うちこういうの、嫌いやないねん。9系統あると「うちが今笑いたい気分はどれや」で選べる。今日はサクッと笑える商人編、明日は本気の戦国群像で王道編、気分で切り替えながら進むのが楽しい。物量があるから1周じゃ全部見れんわ。それでも見てて飽きへんかったのは、編ごとに別ジャンルになってるからやと思う。9系統の物量は欠点でもあり、長所でもある——みたいな評価になる。

ヒロイン12人——多すぎへん?

戦国側に5人、現代側に7人。合計12人のヒロインがおる。

戦国側はかすみ(商人編・桔梗屋の長女)、綾乃(覇道編・公家姫の家出娘)、鈴音(海賊編・能島村上頭領の娘・少年口調)、(拳聖編・忍びの里のくノ一)、ユキ(宗教編・はしかから救った村娘)。それぞれ編ごとに主役級でおる。

現代側は学校パート(現代編)で展開する。右京ともえ(合気道部・ぐいぐい系)、鈴宮真央(「●っち~」と呼ぶ快活キャラ)、雪村栞(物静かな図書室タイプ・眼鏡娘)、春日愛(「ですわ」口調の学園一お嬢様)、綾城美穂(幼稚園からの幼なじみ・乗馬部)、沢双葉(落ち着いた園芸部)。それと男友達ポジションの鳴海

うちが好きなん挙げるんやったら、戦国側は鈴音やわ。能島村上頭領の娘で「ボク」って自称する少年口調の女の子っていう設定だけで掴みが強いし、海賊編の道中で「ボク、友だちっていなかったからさ」っていう一言の重さがちゃんと効いてる。明るく振る舞う子の影の出し方が雑じゃない。

現代側でいうと真央。「●っち~」って語尾につけるテンションのキャラ、ハマるとめっちゃ可愛い系のやつや。ヒロインの数が多いからどうしても一人当たりの掘り下げ深度は浅めになるけど、それぞれちゃんとキャラが立ってる。ヒロインの魅力7はそういう評点。「めっちゃ刺さるヒロインがおったか」っていうと特定の一人やなくて、「全員バランスよく可愛い」タイプの作品やった。

7.5——戦国コメディの「拾い物」やった

プレイ前は正直、戦国タイムスリップって字面で警戒してた。

重たい歴史群像劇を9系統135エンド分やらされるんかなって思ってたら、ぜんぜん違うかった。秀吉「だがや」のテンポ、現代知識ボケの破壊力、編ごとにジャンルが切り替わる物量設計。「戦国を真面目に重く描く」のとは真逆の方向で、笑いとテンポを優先して設計されてる作品やってん。

2000年のPS全年齢ADVって、ぶっちゃけ正直うちあんまり手出してへんジャンルやってんけど、この作品はおもろかった。コメディ9点はうち基準やと相当高め。理由は次のセクションで挙げる「お約束講座その1〜10」みたいなメタギャグ装置や、3WAYショットレベルの破壊力ボケ選択肢が、9系統の中にちゃんと仕込まれてるから。これらネタバレに踏み込むんで詳しい話はネタバレあり版に譲る。

9系統の物量は、編によって密度のばらつきはある。だから10は付けへんかった。けどコメディ装置の方の「狙って当ててる」感はホンマもんや。テンポ7と物量の長短を相殺して、総合7.5。

また読みたいと思えたか。9系統あるから、まだ全部見れてへんねん。その時点で答え出てるやろ。

「戦国を真面目に重たく描かんで、現代知識のボケと秀吉の『だがや』で笑かしてくる作品やった。9系統あるから1周じゃ終わらん。それが欠点でもあり、最大の魅力でもある。うちはまた起動する。」

— チエ