催淫という仕掛けの発明と、それを書き切れなかったテキストの落差よ。
帝国陸軍強化兵を主人公に据え、強化兵の血が異性を発情させる「催淫」という独自の仕掛けで全Hシーンを世界設定と結びつけた意欲作。設定の尖り方は2001年のエロゲー市場で際立っていて、シチュエーションの独自性は本物ね。ただし官能描写のテキスト品質にルートによって大きなムラがあり、その潜在力を全編で発揮できているとは言い難い。一部のルートだけは「エロゲーでしか成立しない物語」の水準に達している。
スコア詳細
催淫という一語が、私を動かした
Leaf、2001年。ジャンル名は「アクティブドラマタイズノベル」と自称している。
帝国陸軍の特殊強化兵・坂神蝉丸が50年前の石棺から目覚め、平成の依代町で生きる話。ボイスなし、フルテキスト。攻略ヒロインは5人。
私がこれを手に取ったのは「催淫」という設定を耳にしたから——強化兵の血が異性の自制を奪う作用を持つ、という仕掛けが全Hシーンを世界設定と切り離せない形で作られていると聞いて。エロとシナリオを同じ引き出しに入れようとした形跡が2001年の作品にある、それだけで確認する価値があると判断したわ。
「催淫」——この一語から始まる話
強化兵の血が、異性を発情させる。
この設定を聞いた時、私は少し立ち止まったわ。
エロゲーのHシーンはほとんどの場合、本編から分離している——シナリオが終わって「おまけ」としてHが始まる。それが大抵の作り方。誰彼はそうなっていない——少なくとも、そうならないように作った形跡がある。Hシーンを本編の世界設定と切り離せない仕掛けにしようとした作品が、2001年に存在したということ。それだけで、私はこの作品に価値を認めざるを得ないのよ。
シコれるかどうか——これが私の唯一の評価軸よ。答えは「一部、かなりシコれる。一部はテキストが足りない」。それが6.5の内訳ね。
舞台と設定——ここでしか嗅げない匂い
舞台は島神県鏡間市依代町。
昭和の下町情緒と戦後的な猥雑さが混在する架空の街で、エロゲーの舞台としてはかなり異質なのよ。「清潔な学園もの」でも「異世界ファンタジー」でも「現代の普通の街」でもない。退廃と享楽が日常の一部として溶け込んでいる空間。ここに固有の匂いがある——と、私でも認めるわ。
主人公について主人公の坂神蝉丸は大日本帝国陸軍の特殊強化兵で、戦時中に石棺に封じられて50年後の依代町に目覚めた男。名前があって、来歴があって、自分の過去を引きずっている——「プレイヤーの分身」型の主人公とは全く違う作りね。この選択が、本作のエロを面白くも難しくもしているわ。
「催淫」という仕掛け「仙命樹」と呼ばれる人体改造技術によって生まれた強化兵の血は、異性に触れると自制を奪う催淫作用を持っている。蝉丸はその力を持ったまま50年後の依代町を歩く。遭遇する人々、街に潜む危険、50年前から続く因縁——その全てがこの「催淫の力」と何らかの形で絡んでくるの。
ヒロインについて——エロゲーの主人公と関わる女たち
エロの観点から、ヒロインを正直に評価しておくわ。
砧夕霧砧夕霧は依代町で細々と生きている女性で、蝉丸が街で出会う最初のヒロインよ。過去に何らかの傷を持っていることが台詞の端々から匂わされているけれど、語られないまま進む場面がある。キャラとしての質感はある——問題は蝉丸との関係の温度よ。
三井寺月代三井寺月代は蝉丸に対して理由のわからない引力を感じている少女。なぜ初対面の男にそう感じるのか——その問いが物語の中に仕掛けとして存在している。
杜若きよみ杜若きよみは初対面なのに蝉丸に既視感と懐かしさを与える女性。序盤から「この二人には何かある」という引力が描かれていて、そこに物語の核が眠っている。この作品のHシーンが最もよく機能するのも、きよみとの関係においてよ——詳しくはネタバレあり版で言うわ。
桑嶋高子桑嶋高子は診療所の女医・麗子先生と暮らす清楚な女性。麗子は蝉丸に対して謎めいた態度を取るキャラで、この二人が高子ルートの中核を担っているの。
ヒロインのエロ映えに6を付けた理由は——キャラによって差が大きいから。エロシーンで輝くヒロインと、そうでないヒロインがいる。平均すると6ね。
設定で勝負するHシーン——その試みの価値
「催淫」というシステムがどれだけ面白い発想か、少し説明するわ。
普通のエロゲーのHシーンは、本編の外にある。「攻略した→Hシーンが解放される」という構造。そのHシーンがなくても物語は成立する。エロは特典よ。
——誰彼のHシーンは、そうなっていない書き方を目指している。強化兵の血による催淫という世界設定が、Hシーンが発生する理由そのものになっている。物語の中で何かが起きるから、Hが必然として生まれる。そういう構造を目指したの。
設定で勝負するHシーンを見たことがあるかしら。大抵のエロゲーはシナリオとエロが別の引き出しに入っている。この作品は、同じ引き出しに入れようとした。その野心は——認めるわ。
これは、正直に言えば難しい試みよ。試みのレベルとテキストのレベルが揃わなければ成立しない。シチュエーションが独自であっても、その場面を描き切るだけの文章力がなければ実用性は落ちる。
この作品の結果は——部分的な成功よ。その意図が機能している場面は本当によく機能している。「これはエロゲーにしか書けない場面だ」と思った瞬間が、確かにいくつかある。でも全ルート・全シーンで均等に機能しているかというと、そうではないわ。テキストの密度にムラがあって、仕掛けが優れていても描写が追いついていない場面も存在する。
官能描写の文章力に5を付けたのは、このムラのせいよ。平均すると及第点をわずかに割る。ただし一部のシーンは7〜8水準に達している——そこだけ見れば相当に高い。
エロゲーとして誠実か——買う前に知っておくべきこと
この作品、エロゲーとして誠実かと聞かれたら——部分的に、かなり誠実よ。
どういう意味かというと、Hシーンが「本編とは別枠のおまけ」になっていないルートが存在する、ということ。そのルートでは、Hシーンを読まなければ物語が欠けるの。身体で触れる行為が、言葉では届かない何かを伝える手段として機能している。私がエロゲーに求める最高の形がそこにある——と言うと大げさかもしれないけれど、「エロと物語の統合」という意味では本物の場面があるわ。
正直な注意点——ただし、全ルートがそうではないことも正直に言っておくべきね。Hシーンが世界設定由来の必然として作られているのに、描写の密度がそれに追いついていない場面もある。期待値を上げすぎると「物足りない」と感じる可能性があるの。
シチュエーションの独自性に8を付けたのは本当のことで——ゲーム固有の世界設定に根ざした、他では見ないシチュが複数存在する。催淫という力がどう行為と絡むか、その多様な形は体験する価値があるわ。エロゲーとして独自性があることは保証する。シコれるかどうかはあなた次第だけど——可能性は十分にあるわよ。
総評——これを読むべき人、そうでない人
6.5。こういう作品を誰に薦めるか、はっきり言うわ。
「Hシーンがゲームの世界設定と繋がっているもの」を体験したいなら、この作品の一部ルートは確実にその水準に達している。未プレイで2001年の異色作を探しているなら、帝国陸軍強化兵・催淫・依代町という設定の組み合わせはどこにもない。設定の固有性で言えば、私の評価基準で8は高い点数よ。
逆に、テキストの品質が均一で全シーンが高水準であることを求めるなら、正直に言えば別の作品を薦めるわ。ムラがある。この一点は覚悟して手を取る必要がある。
きよみというヒロインとの物語が、この作品の核心よ——詳しくはネタバレあり版で言うけれど。そこだけは「エロゲーでしか書けなかった」と私が認める水準に達しているの。その部分だけでも体験する価値がある作品よ、誰彼は。
