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キャラクター詳細 — 終ノ空

「世界が終わる」という噂に蝕まれていく高校三年生のクラスを舞台に、それぞれの空を見上げる登場人物の詳細プロフィール。各キャラクターの真相・後半の描写・原文セリフを収録。卓司の救世主化と集団投身、行人の救出と「終ノ空」幻視、琴美の監禁、音無の正体、ざくろのスパイラルマタイを含む全ネタバレ記述。

間宮卓司

間宮卓司 まみや たくじ 主人公
間宮卓司
読みまみや たくじ
役割主人公(卓司ルートの視点人物)・後半の自称「救世主」
学年私立高校3年生
視点卓司ルート(集団投身に至る教祖視点)
一人称「ボク」。救世主化後は「私」に切り替わる

容姿の冴えない、教室で孤立した高校三年生。武井ら不良からの執拗なイジメに耐え続けており、嘲笑のすべてを「悪口の証拠」と受け取る徹底した被害妄想型の思考を持つ。頭の中ではクラスの生徒を残酷な刑罰で処刑する妄想を反芻するなど、内面はすでに深く荒んでいる。

自室の壁に描いた魔法少女リルルの落書きを唯一の話し相手とし、独り言で世界への恨み言を打ち明けている。論理を組み立てようとする癖はあるが、その論理はすぐに「兆し」「予還」「終ノ空」といった独自の言葉へと滑り落ちていく。

「うざってーんだよ、と言われても、ボクは独り言を喋っているだけなのに」 — 序盤、武井に絡まれる教室で
救世主化 — リルルとの対話と「終ノ空」の覚醒

飛び降りる直前のざくろから「二十日に世界の終わりが来るとしても怖がらなくていい」と告げられた卓司は、自宅で壁の落書きリルルと向き合う。可能世界をめぐる論理記号の幻覚的なやり取りを重ねるうち、「一億年の遺伝子の記憶」「胎児の夢」「兆しへの予還者」を悟ったと信じ込む。翌朝には「ボクは新しいボクだ」「没落しなければならない」とニーチェ的なポーズで覚醒し、自らを救世主と定義していく。

「ボクは・・・終ノ空だ!」「さあ、開けよう・・・」 — 救世主としての自覚が固まる瞬間
最初の殺人と弟子化

卓司の犯行で確実なのは、彼を恐喝していた武井を旧プール脇のマンホールの下へ突き落として殺害したことである。死体に語りかけ、地下に蠢く「あれら」に「お前を食わせてやる」と告げる。続いて、いじめ仲間だった横山きよしを「サクラメント」と称しておでこに手を当て、遺伝子の記憶を見せたと信じ込ませて最初の弟子とする。きよしを介して信者は雪だるま式に増え、地下の旧排水タンク新プールの土台が秘密の道場となっていく。

「兆しへの予還者!」「人間からケモノへ、ケモノから単なるモノへ、没落せよ」 — 信者を前にした演説
「これは私の友達である、アドルフ=ヒットラーがよく使った手だ・・・」 — 群衆を煽る手口を誇示して
「没落」の儀式と性的妄想

担任の清川明日美が「私を救って下さい」と道場に訪れると、卓司は彼女を信者の前で全裸にし、放尿させ、輪姦させる「便器化」の儀式を執り行う。さらに横山きよしやす子に近親相姦を強要し、琴美の「没落」をやす子に委ねる。一方でリルル高島ざくろの死体に宿ったふたなりの姿として現れ、卓司と性交する幻覚に耽る。屋上では音無彩名を強姦しようとするが、「私はふたなりなんかじゃない」と一蹴され、逆に鼻骨を蹴り折られる。音無は「卓司くんはもう自同律すら保てない」「人間のものですらない」と冷たく告げて去る。

「世界に意味などないのだ!」「人間に意味などないのだ!」 — 没落の儀式での演説
集団投身 — 行人への最後の告白

十九日深夜、卓司は百名を超える信者を屋上に集め、「兆しへの予還者」「あの音を聞け」と煽り、飛び降りる順を決めていく。きよしが先陣を切り、やす子・紀美香・美菜代らが次々と落ちていく。すべての信者が消えたあと、卓司は最後に残った行人と対峙し、「僕は君だけが好きだったんだ」と告げて自らも宙へ身を投げる。その瞬間、彼は「終ノ空」を見たと感じる。

「僕は君だけが好きだったんだ・・・だから・・・だから・・・」 — 投身の直前、行人に向けた最後の言葉
「我々は、すべてを呪って、この世に生まれるからこそ/すべてが誤謬であるからこそ」 — 行人との最後の対話で
ルート別の顛末

卓司ルートでは投身死に至る。行人ルートでも、行人視点から同じ投身が目撃される。琴美ルートでは卓司との直接の対峙はなく、「クラスを変質させた張本人」として遠景に置かれる。ざくろルートでは、プール脇で出会ったざくろに「怯えている」と勘違いされ「守ってあげる」と告げられる、後の運命を決定づける接触が描かれる。

水上行人

水上行人 みなかみ ゆきと 主人公(観察者)
水上行人
読みみなかみ ゆきと
役割主人公・観察者・琴美の幼馴染
学年同高3年生
視点行人ルート(事件全体を見届ける視点)
一人称「俺」。両親が海外赴任中で一人暮らし

怠惰を装いながら思索を続ける少年。屋上を読書場所にし、カント『純粋理性批判』やヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を持ち歩く。「最後の夏休みを有意義にダラダラ過ごす」と公言する一方で、街頭では「軽傷でいられない人間がいる」と独白する内省の深さを併せ持つ。

幼馴染の若槻琴美への愛情を表に出すことは少ないが、いざという時には自分の命を懸けて動く。卓司のように世界に意味を求めて壊れていく人間を、彼は誰よりも早く言葉で理解しながら、同じ場所へ落ちることを拒み続ける。

「カント・・・キャント・・・出来ない本か」 — 屋上で音無と交わすダジャレ
救世主化を先に言語化する観察者

街頭の独白で行人は「人間は意味でしか生きる事を許されない」「終わらない風景を物語へと」と、卓司の救世主化を哲学的に説明してみせる。「呪われた生/祝福された生」という構造を、卓司本人より先に言葉にしているのは行人の方である。世界に意味を求める衝動の正体を理解しながら、それでも彼はその誘惑に呑まれない。

「自分の存在に、意味を見いだそうとする人間がいる」 — 街頭での独白
琴美の救出と初めての夜

音無が残した「這い寄る混沌は暗い所からやってくる」という暗示から、行人旧プールの隠れ家を特定する。きよしやす子を素手で殴り倒し、監禁されていた琴美を救出する。その夜、自分の部屋で二人は初めて結ばれる。行人は飾らない言葉で、ただ「俺はお前を愛してる」とだけ告げる。

「俺はお前を愛してる/ただそれだけだ」 — 琴美救出後、二人で結ばれる夜に
「お前、もし死ぬんだったら俺を殺すんだな」「俺を殺さなければ、俺は絶対にお前の自殺を阻止する」 — 救出直後、琴美を引き戻すために
単独突入と「終ノ空」の幻視

十九日深夜、行人はさらしを腹に巻き「ヤクザ映画みてえだな」と軽口を叩きながら、たった一人で学校へ侵入する。新プールの土台を経て屋上へ至るハシゴを上ったところで、清川卓司の投身を目撃する。卓司との最後の対話で行人は「世界を見続ける、それが俺達の責任の取り方だ」と告げる。卓司の落下と同時に、信者からは「十字架」「扉」「鍵穴」とも見えた巨大な構造を、行人も一瞬だけ幻視する。傍らで音無が「ナンデモナイヨ、タダ、マミヤクンガトビオリタダケダヨ」を呪文のように繰り返し、世界そのものが揺らぐ。

「世界を見続ける・・・それが俺達の責任の取り方だ!」 — 卓司との最後の対話で
「俺達は、生まれた瞬間に負け組だ」「だがな、間宮!負けた者には、負けたなりの責任の取り方があるんだよ」 — 卓司を引き留めようとして
ルート別の顛末

二十日は何事もなく過ぎ、世界は終わらなかった。行人ルートのエピローグでは、警察の取り調べののち、「百を超えると法則が変わると思った学生」の挿話を引いて、「次の一歩で世界がまだ間に合っておらず奈落に落ち込む」可能性を独白して幕を閉じる。音無ルートでは二十一日に屋上で音無と再会し、「世界はもう終わっているのかもしれない」と試される。目をつぶると無人の教室で音無と結ばれ、再び目をつぶると教室は満員で、音無は最初から存在しなかったことになり、隣には琴美がいる。

「もしかしたら、今までが九九であって・・・もうすでに・・・」 — エピローグの独白
「死にいたる病…それは…生だ」 — 音無ルート、生をめぐる対話で

若槻琴美

若槻琴美 わかつき ことみ ヒロイン
若槻琴美
読みわかつき ことみ
役割ヒロイン・行人の幼馴染(琴美ルートの視点人物)
学年同高3年生・剣道部
視点琴美ルート/行人ルートのヒロイン
一人称「私」。剣道部の選手で大会が近い

明朗活発な体育会系の幼馴染ヒロイン。剣道部の選手で、毎朝寝坊する行人を蹴り起こしに来るのが日課になっている。軽口には反射的に強気で返すが、その芯の部分には「弱虫である自分」を隠しており、「強くならなきゃ」が口癖の自己暗示になっている。

「行人がいつかどこかにいってしまう」ことを一人で抱え込み、不安を口に出せずにいる。クラスメイトの高島ざくろを数少ない友人として大切に思っており、ざくろの死を最後まで悔やみ続ける優しさを持つ。

「行人・・・だーいすき/チュッ」 — 屋上で、どさくさにまぎれてキスをして
クラスの悪意と後輩の豹変

クラスが卓司の影響で変質していくにつれ、琴美はクラス全員から無視と敵意の視線を浴びるようになる。慕っていたはずの後輩・やす子は体育館で「センパイは私が守る」と豹変し、卓司の信者として琴美に牙を剥く。琴美の「強くなったはずの自分」という自己暗示は、この悪意の前で少しずつ崩されていく。

「強くなろうと/剣道もはじめたのに/全然つよくなれない・・・」 — 行人に弱さを打ち明けて
監禁と拷問 — 「行人」の名で取り戻す自我

十六日の夜、琴美は自宅前で殴打されて気絶し、旧プール下の排水タンクで目を覚ます。両手を拘束された状態でやす子に鞭打たれ、男子学生数名による集団輪姦、三角木馬での処女喪失、浣腸と公衆排便の強要を受ける。十八日には局部に薬物を塗布されて快楽を植え付けられるが、自慰を強要された際に「行人」の名を呼んだことをきっかけに、彼女は自我を取り戻す。薬漬けの状態でも「終ノ空なんて茶番だ」と言い切る強さが、ここで最後の踏ん張りになる。

「終ノ空?くだらないよそんなの/茶番だよ・・・」 — 薬漬けにされても自我を保って
救出と初めての夜

十八日深夜、殴り込んできた行人に救出された琴美は、ずっと抱えていた想いを初めて言葉にする。行人の部屋で二人は結ばれ、長く臆病だった彼女が、自ら関係を進める側に回る。

「私、行人が好き/昔から/どうしようもないぐらいに行人が好き」 — 救出後、初めて言葉にする想い
「私を行人の色でそめて」「行人のものにして・・・」 — 行人の部屋で結ばれる夜に
ルート別の顛末

琴美ルートでは行人に救出され、世界の終わりが来ないまま彼と結ばれる。行人ルートでは救出と初体験が行人視点から描かれる。音無ルートのフィナーレでは、九月一日の教室で音無の代わりに琴美が現れ、音無と全く同じ「無限のなかの有限のうちに」「永久に一緒」という言葉を引き継ぎ、二人の声が重なって物語が閉じる。

「やっと一緒になれたんだね/行人・・・好きだよ」 — 行人と結ばれた後で

音無彩名

音無彩名 おとなし あやな ヒロイン(観察者)
音無彩名
読みおとなし あやな
役割ヒロイン・全ルートの観察者(音無ルートの中心人物)
学年同高3年生
視点音無ルート(事件後のエピローグ)
一人称「わたし」。断片的で独特な話法

寡黙で、めったに長い言葉を吐かない少女。「クス」と笑うのが口癖で、哲学や宗教の用語、論理記号を平然と日常会話に混ぜてくる。行人にとっては屋上のサボり友達であり、誰よりも先に、この校舎の上に広がるはずのない空を見つめている存在でもある。

彼女の言葉は常に物語の一歩先を示しており、登場人物の誰もまだ気づいていない世界の構造を、すでに見透かしているかのように振る舞う。その実体は終盤に向けて少しずつ揺らいでいく。

「語りえぬことについては、沈黙しなくてはならない」 — 屋上で行人に
すべてを見透かす案内人

音無卓司の妄想を完全に見抜いている。彼が彼女をふたなりだと幻視して襲いかかると、「私はふたなりなんかじゃない」と否定し、一本拳で卓司の鼻を折る。「卓司くんはもう自同律すら保てない」「人間のものですらない」と切り捨て、行人の「世界を見続ける」生き方をそれと対比してみせる。行人ルートでは、彼を排水タンクへ、新プールの土台へ、屋上へと導く案内人として機能し、卓司投身の瞬間には「ナンデモナイヨ、タダ、マミヤクンガトビオリタダケダヨ」を呪文のように唱える。

「卓司くん・・・さよなら/終ノ空で逢いましょ」 — 卓司に別れを告げて
「死ぬのもいや・・・/永久に生きるのもいや・・・/卓司くんって・・・わがまま・・・」 — 「永久に生きる地獄」をめぐる対話で
音無ルート — 存在の消失と琴美への重なり

音無ルートは事件後の二十一日と九月一日が舞台になる。屋上で行人と再会した音無は「次の一歩は奈落かもよ」と彼を試す。目をつぶった行人は無人の教室で音無と結ばれ、「ゆきとくんを愛してる」と告げられる。生と死、生への意志をめぐる対話のあと、九月一日の教室では音無は存在ごと消え、代わりに琴美が現れて音無と全く同じ言葉を口にする。最後は二人の声が「有限のなかの無限のうちに/無限のなかの有限のうちに」と重なり合い、永久回帰を暗示して物語が閉じる。

「わたし、ゆきとくんが好きだったんだと思う/世界を祝福できるゆきとくんを」 — 音無ルート、行人への想いを明かして
「ここから、ここまで、空は続いている」 — 屋上で空を指し示して
ルート別の顛末

卓司ルートでは卓司に強姦されかけて鼻骨を折り返し、彼を拒絶する。行人ルートでは救出と投身の現場へ行人を導く案内人となる。ざくろルートでは「あなたは世界を救うわけではない」と忠告するが、ざくろからは拒まれる。音無ルートでは行人の恋人となり、最後は存在そのものが消えて琴美に重なっていく。

「無限のなかの有限のうちに・・・」 — 音無ルートのフィナーレで

高島ざくろ

高島ざくろ たかしま ざくろ ヒロイン(自殺第1号)
高島ざくろ
読みたかしま ざくろ
役割ヒロイン・物語の発端となる最初の自殺者(ざくろルートの視点人物)
学年同高3年生
視点ざくろルート(スパイラルマタイに至る視点)
一人称「私」。クラスで2年間無視され続けている

内向的で自己評価の極端に低い少女。クラスで「陰湿な感じがする」と無視され続けて二年が経っており、生まれた家庭でも母親に名前を恨むほど、居場所のなさを抱えている。承認されたいという欲求が人一倍強く、その渇望が彼女を破滅へ導く弱点になる。

クラスで唯一優しい言葉をかけてくれる琴美を心の支えにしている。一方で、三組の不良・小沢に優しくされたことをきっかけに油断させられ、脅迫されて性奴隷のように扱われている。

「琴美さんは良い人だ/いつも私に優しくしてくれる」 — 数少ない救いとして琴美を思い
小沢による性奴隷化

ざくろは三組の不良・小沢裕一に優しくされて気を許した後、強姦と写真撮影で脅迫され、性奴隷のように扱われていた。屈辱的な奉仕の口上を強要され、心を削られながら日々をやり過ごしている。その小沢が屋上から転落死すると、ざくろの心の支えはさらに失われ、彼女は差出人不明の手紙にすがるようになる。

「言いたくない・・・言いたくないよぉ・・・」 — 小沢に奉仕の口上を強要されて
前世の捏造とスパイラルマタイ

駅前で他校生徒の築川宇佐美・瑞緒亜由美と接触したざくろは、「あなたは前世で世界を救う戦士だった」「七月二十日に最終戦争が来る」という物語を吹き込まれる。力を取り戻すには「スパイラルマタイ=屋上から飛び降りる儀式」が必要だと教えられ、ざくろはそれを信じ込む。承認に飢えた彼女にとって、「世界を救う戦士」という役割は何より甘い救済だった。

「私は世界を救う戦士だったんだ・・・!」 — 前世の記憶を信じ込んで
投身 — 怯える仲間を引きずって

十二日の午後六時四十二分、ざくろは手摺りを越えて立つ。その段になって宇佐美と亜由美が泣いて怖がり、「世界なんて滅んじゃってもいい、私は死にたくない」と崩れると、ざくろは宇佐美を平手打ちで黙らせ、引きずるようにして三人で投身を決行する。「翔ぶって気持ちいいのね、天使になったような気分、あと少しで」という独白で、物語は閉じる。卓司ルートでは、首がもげかかった死体の姿で卓司の幻覚に再登場し、リルルとの性交の途中で姿を現す。

「私達が立ち上がらないと世界が滅んでしまうのよ!」 — 怯える仲間を投身へ引きずって
「翔ぶって気持ちいいのね」 — 投身の最後の独白
ルート別の顛末

ざくろルートでは投身死に至る。卓司ルートでは死後、首がもげかかった姿で卓司の幻覚に再登場する。琴美ルートでは朝礼で死を告げられ、琴美が深く悔やむ。彼女が卓司に告げた「二十日に世界の終わりが来るとしても怖がらなくていい」という別れの言葉が、卓司の運命を決定づける引き金になる。

「私があなたを守ってあげる・・・例え二十日に世界の終わりが来るとしても・・・」 — 卓司に告げた別れの言葉

その他の登場人物

横山きよし

よこやま きよし 卓司の弟子第1号

体格は良いが頭の回転は遅く、武井の威光を借りて卓司をいじめていた取り巻きの一人。卓司の「奇跡」を見せられた途端に手のひらを返し、最初の弟子になる。十五日に旧プールへ「お話が聞きたい」と訪れ、武井の死体を見せられて「サクラメント」を受けると、以後は卓司を「間宮様」と呼んで敬う。義妹のやす子を勧誘して琴美の「没落」係に充て、十九日には自ら投身の先陣を切る。一度信じたものに盲目的になる、信者集団の典型として描かれる。

「救世主様、最後まで残り全員の終ノ空の至りをたしかめなければなりません」「私を最初に行かせて下さい」 — 集団投身の直前、先陣を志願して
横山やす子

横山やす子

よこやま やすこ きよしの義妹・琴美の後輩・監禁の主犯

きよしの義妹で、剣道部では琴美の後輩。表面は健気で愛嬌のある後輩だが、琴美への憧れが極端化していく。「センパイをいじめるすべてが憎い」「私はセンパイを守りたい」という想いが歪んだ独占欲へと転化し、卓司の影響を受けて琴美を「間違っている」と断じる。十六日夜に琴美を殴打して排水タンクに監禁し、男子学生らに輪姦させながら自身も鞭打ちで「水上先輩のことを忘れて」と迫る。きよしとの近親相姦を強要され、十九日深夜には自らも投身する。

「先輩を守るのは、水上先輩じゃない/先輩を守るのはわたしだ!」 — 琴美への歪んだ独占欲を露わにして

武井

たけい 卓司のいじめ役・最初の犠牲者

教室で卓司をいじめていた不良の中心人物。卓司に金を要求して恐喝し、その額を吊り上げていく。だが十五日、旧プール脇のマンホールの下へ卓司に突き落とされて死亡する。彼の死体は卓司の隠れ家の奥に蠢く「あれら」に与えられ、卓司の救世主妄想が現実の殺人へと踏み越えた最初の証拠となる。自分が死ぬとも知らずに卓司を脅す姿が、物語の転回点を際立たせる。

「もし・・・適当な事言ってたら/てめぇ、明日死ぬ事になるぞ」 — 自分が死ぬとも知らずに卓司を脅して

小沢裕一(ザジ)

おざわ ゆういち 三組の不良・ざくろの加害者

通称「ザジ」と呼ばれる三組の不良。ざくろに優しく接して油断させた後、強姦と写真撮影で脅迫し、性奴隷のように支配していた。物語の連鎖する自殺に先立って、薬物の過剰摂取でラリった状態のまま屋上から転落死する。彼の死は、ざくろが差出人不明の手紙とカルト的な前世の物語へすがっていく決定的なきっかけになる。

「オマエは、オレの性処理道具なんだよ」 — ざくろを支配する立場から
清川明日美

清川明日美

きよかわ あすみ 担任教師

クラスの担任教師。朝礼でざくろの死を告げ、卓司のいじめを見て見ぬふりしてきた人物として、卓司の恨みの対象にもなっている。十六日、旧プール下の道場に自ら「私を救って下さい」と訪れると、卓司に「教育という名の洗脳をしてきた」と糾弾され、信者の前で全裸放尿・「便器化」という凄惨な没落の儀式を受ける。やがて卓司の「椅子」となり、十九日には先頭近くで投身する。秩序の象徴であった大人が真っ先に崩れていく様が、教室の崩壊を決定づける。

「皆さんに悲しいお知らせがあります」 — 朝礼でざくろの死を告げて
リルル

リルル

りるる 卓司の壁の落書き・幻覚

卓司が幼い頃から好きだったアニメ「魔法少女リルル」を、自室の壁に描いた落書き。作中設定では「神さまの夢」を集めて世界を救う魔法少女である。卓司の世界終末妄想と論理記号の対話相手として現れ、「終ノ空」という言葉を彼に教える。卓司ルートでは高島ざくろの死体に乗り移ったふたなりの姿として登場し、卓司と性交する。卓司の壊れた内面を映す鏡であり、救世主妄想の引き金そのものでもある。

「終ノ・・・/空!/そう、あなたが至るものは」 — 卓司に「終ノ空」を教えて

築川宇佐美・瑞緒亜由美

ちくがわ うさみ/みずお あゆみ 他校生徒・ざくろの「前世の仲間」

ざくろを「前世の戦士エンジェルアドバイズ」として勧誘する他校の生徒たち。二人ともそれぞれの学校で性的暴力の被害を受けており、現実逃避として「前世の出身惑星」「次世代超能力」「最終戦争」というカルト的な物語を共同で構築している。瑞緒亜由美は「星を読む」少女とされるが、口にする天体名はすべて創作である。スパイラルマタイの当日、宇佐美は土壇場で「世界なんて滅んじゃってもいい、私は死にたくない」と泣き叫ぶが、ざくろに平手打ちで黙らされ、引きずられるように投身する。物語を捏造した側が誰よりも死を恐れているという皮肉を体現する。

「世界なんて滅んじゃってもいい!」「私は死にたくない!」 — 宇佐美、投身の直前に泣き崩れて

紀美香・美菜代

きみか/みなよ クラスメイト・卓司の信者

クラスのおしゃべりな女子生徒たち。紀美香は物語の序盤、行人琴美に「即死だったらしいよ」「ものすごく血がでてて」とざくろの死を煽情的に語る、噂を広める役回りを担う。後半は二人とも卓司の信者となり、十九日の集団投身に加わる。紀美香が「美菜代いっしょに行こう、また完全な世界でもいっしょだよ」と語って飛ぶ姿は、ありふれた日常を生きていた普通の生徒すら呑み込んでいく、終末の噂の伝染力を象徴している。

「美菜代いっしょに行こう/また完全な世界でもいっしょだよ」 — 紀美香、集団投身の場面で