ストーリー詳細 — 終ノ空
本作は同じひと夏の終末騒動を、複数の生徒の視点から描く多視点構成。共通の発端を起点に、救世主と化す間宮卓司、監禁される若槻琴美、観察者・水上行人、発端となる高島ざくろ、すべてを見透かす音無彩名の五つの道筋へと分かれていく。 ▼ネタバレ詳細 はクライマックス・結末を含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。
発端 — 終わるはずのない日常に
舞台は私立高校の三年生クラス。容姿の冴えない間宮卓司は、武井ら不良からの執拗なイジメに耐えながら、自室の壁に描いた魔法少女リルルの絵に語りかける日々を送っている。隣のクラスの不良・小沢裕一(ザジ)が屋上から転落死し、続いて同じ場所からクラスメイトの高島ざくろが他校生徒二人を伴って投身自殺する。教室には「ノストラダムスの大予言」「七月二十日に世界が終わる」という噂が広がっていく。
担任の清川明日美が朝礼で生徒たちの死を告げる頃から、クラスの空気は静かに変質していく。剣道部の若槻琴美と、屋上で哲学書を読む水上行人の幼馴染コンビは、変わりゆく日常をいつもどおりに過ごそうとする。寡黙な音無彩名だけが、誰よりも先に、この校舎の上に広がるはずのない空を見つめている。
飛び降りる直前のざくろは、卓司にひとつの言葉を残していた。それが、卓司の内側で何かを起動させる。
「私があなたを守ってあげる・・・例え二十日に世界の終わりが来るとしても・・・怖がらなくても大丈夫よ・・・」
— ざくろ、卓司に
イジメに耐え続けてきた卓司は、壁のリルルに現実を打ち明けるうち、自らを「兆しへの予還者」「救世主」と称し、急速に変質していく。残された日々が刻一刻と減っていくなか、終わってほしい日常と終わるはずのない日常の間で、生徒たちはそれぞれの選択を迫られていく。ここから物語は、同じ夏を異なる視点で辿る五つの道筋へと分かれていく。
卓司ルート — 救世主の没落 BE 集団投身
主人公・間宮卓司の視点で進む道筋。イジメられっ子だった卓司が「終ノ空」を悟ったと信じ込み、弟子を取り、信者を増やし、ひとつの教団を作り上げていく。論理が「真理」「兆し」「予還」という独自の言葉へと滑り落ちていく過程が、内側から克明に描かれる。
覚醒:ざくろの死と「二十日に世界が終わる」予言を受け、卓司は自宅で壁のリルル幻覚と論理を組み立てて対話する。「一億年の遺伝子の記憶」「胎児の夢」を辿ったと信じた卓司は、自分が至るべきものの名を授けられる。
リルル「終ノ・・・」
卓司「空!」
リルル「そう、あなたが至るものは」
— 卓司の自室で
翌朝、卓司は「ボクは新しいボクだ」と覚醒し、教室の壇上で長広舌をふるう。世界が平等でも自由でもないことを突きつけ、人間の意味そのものを否定してみせる。
「平等と言う!しかし皆知っている、世界が平等でない事を」「世界に意味などないのだ!人間に意味などないのだ!」
— 卓司、教室での演説
「ボクは・・・終ノ空だ!」「さあ、開けよう・・・」
— 卓司、救世主宣言
最初の犠牲と弟子:卓司を恐喝していた武井を旧プール脇のマンホール下に突き落として殺害。その死体を地下に蠢く存在に「与える」。卓司に怯えて逃げた横山きよしは、やがて「お話が聞きたい」と隠れ家を訪れ、武井の死体を見せられて「サクラメント」を受け、最初の弟子となる。きよしを介して信者は増え、地下の旧排水タンクと新プール土台が「神聖な道場」となっていく。
「ありがたきしあわせです・・・」
— きよし、弟子になって
没落の儀式:担任の清川明日美は卓司の演説のあと、自ら道場へ「私を救って下さい」と来訪する。卓司は清川を「教育という名の洗脳をしてきた」と糾弾し、信者の前で人間性を剥ぎ取る「没落」の儀式を執り行う。卓司は人間からケモノへ、ケモノから単なるモノへと堕ちることを「予還」と呼び、聴衆を煽動する。
「終ノ空に至るがよい・・・」「兆しへの予還者!」「人間からケモノへ/ケモノから単なるモノへ/没落せよ」
— 卓司、没落の演説
「これは私の友達である、アドルフ=ヒットラーがよく使った手だ・・・」
— 卓司、扇動の手口を語って
卓司の妄想は性的な幻覚へと拡張していく。リルルとの夢の中の交わり、音無彩名への幻想的な暴行。だが音無だけは卓司の妄想を完全に見抜き、最後の瞬間に卓司の鼻骨を蹴り折って一蹴する。
「卓司くん・・・さよなら/終ノ空で逢いましょ」
— 音無、卓司に
集団投身:十九日深夜、卓司は屋上に百名を超える信者を集める。きよしを先陣に、やす子・紀美香・美菜代らが次々と手摺りを越えていく。すべての信者が消えたあと、卓司は単独で行人と対峙する。行人が「世界を見続ける」生き方を突きつけるのに対し、卓司は最後の告白を残して飛び降りる。落下の瞬間、卓司は巨大な「終ノ空」を見たと感じる。
「僕は君だけが好きだったんだ・・・だから・・・だから・・・」
— 卓司、行人への最後の告白
琴美ルート — 救出 NE 監禁→救出
剣道部の若槻琴美の視点で進む道筋。卓司の教団化が進む裏側で、明朗活発な琴美が、変質していくクラスの悪意に呑み込まれていく。芯の部分に「弱虫である自分」を隠した彼女は、幼馴染の行人を一人で想い続けている。
日常と想い:毎朝、行人を蹴り起こしに行く琴美。十四日には屋上に連れて行かれ、お弁当を渡し、抱きしめられてキスをする。強くなろうと剣道を始めたのに全然強くなれない、という弱さを抱えながら、彼女は行人がいつかいなくなることに耐えられないと、一人で抱え込んでいる。
「行人・・・だーいすき/チュッ」
— 琴美、屋上で
裏切りと監禁:十六日、クラス全員からの無視と敵意の視線に晒される琴美。可愛がっていた後輩の横山やす子が体育館で豹変し、「センパイを守るのは私だ」と独占欲を剥き出しにする。その夜、琴美は自宅前で殴打されて気絶し、旧プール下の排水タンクで意識を取り戻す。両手を拘束された琴美は、やす子に「人間から没落して下さい」と要求され、男子学生たちによる集団暴行と拷問を受ける。
「琴美センパイに染みついた嘘を洗い落とすためには・・・これしか・・・」
— やす子、琴美に
薬物で意識を朦朧とさせられながらも、琴美は「行人」の名を呼ぶことで辛うじて自我を保ち続ける。卓司の語る世界の終末を、彼女は最後まで茶番だと突っぱねる。
「終ノ空?くだらないよそんなの/茶番だよ・・・」
— 琴美、薬漬けでも自我を保って
救出:十八日深夜、行人が排水タンクに殴り込み、きよしとやす子を退けて琴美を救出する。やす子は最後まで「先輩を守るのは水上先輩じゃない」と叫び続ける。救い出された琴美は、ずっと胸に秘めていた想いを行人にぶつける。世界の終わりは来ないまま、騒動は静かに収束していく。
「やす子・・・も、もう・・・やめて・・・」
— 琴美、監禁の中で
行人ルート — 終ノ空を見つめる者 NE/BE 終ノ空幻視
観察者・水上行人の視点で進む道筋。怠惰を装った思索家である行人は、屋上でカントやヴィトゲンシュタインを読みながら、クラスが壊れていく光景を哲学的に言語化していく。だが、いざという時には自分の命を懸けて動く男でもある。
観察と独白:行人は屋上を読書場所にし、音無とダジャレを交わしながら、卓司の救世主化が進む空気を内側から読み解いていく。「軽傷でいられない人間がいる」という街頭での独白に、卓司の変質を哲学的に説明する内省が重なる。卓司よりも先に、行人は「呪われた生/祝福された生」の構造を言語化している。
「軽傷でいられない人間がいる」「『私はなぜ、ここに存在してるのですか?』と聞いてしまう人間が」
— 行人、街頭での独白
琴美救出:音無の暗示を頼りに、行人は旧プールの隠れ家を突き止める。十八日深夜、きよしとやす子を素手で殴り倒して琴美を救出。自宅に連れ帰り、琴美と初めて結ばれる。行人は飾らずに、ただ愛しているとだけ告げる。
「俺はお前を愛してる/ただそれだけだ」
— 行人、琴美に
「私を行人の色でそめて」「行人のものにして・・・」
— 琴美、行人に
屋上への侵入:十九日深夜、行人は嘘をついて再び家を出る。音無に導かれて排水タンクから新プール土台へ抜け、屋上へ至るハシゴを上る。そこで行人は、清川と卓司が次々に投身していく光景を目撃する。最後に残った卓司との対話で、行人は自分の責任の取り方を突きつける。
「世界を見続ける・・・それが俺達の責任の取り方だ!」
— 行人、卓司に
「俺達は、生まれた瞬間に負け組だ」「だがな、間宮!負けた者はな/負けたなりの/責任の取り方があるんだよ」
— 行人、卓司に
「終ノ空」幻視:卓司の落下と共に、行人は巨大な構造を一瞬だけ見る。信者からは「十字架」「扉」「鍵穴」と見えたもの。その傍らで音無が、起きたことを呪文のように繰り返す。
「ナンデモナイヨ、タダ、マミヤクンガトビオリタダケダヨ」
— 音無、卓司投身の直後
二十日:翌二十日は何事もなく過ぎ、世界は終わらなかった。警察の取り調べを終えた行人は、塾講師が「百を超えると法則が変わると思った学生」の話を引きながら、次の一歩で世界がまだ間に合わず奈落に落ち込むのかもしれないと独白して、物語を閉じる。
「もしかしたら、今までが九九であって・・・もうすでに・・・」
— 行人、エピローグの独白
高島ざくろルート — スパイラルマタイ BE 三人投身
すべての発端となった高島ざくろの視点で進む道筋。クラスで二年間無視され続け、不良・小沢裕一に性奴隷化されていた彼女が、他校生徒との出会いを経て「前世の戦士」という妄想に取り憑かれ、屋上へと向かっていく。物語の時系列上は最も早い時期を描く。
支配と空白:承認欲求が強く自己評価の低いざくろは、優しくしてくれた小沢に油断したところを脅迫され、性奴隷として支配されている。唯一の心の支えは、教室で優しい言葉をかけてくれる琴美だけ。十日、その小沢が薬物の過剰摂取で屋上から転落死し、ざくろは支配者を失う。
「琴美さんは良い人だ/いつも私に優しくしてくれる」
— ざくろ、独白
前世の捏造:差出人不明の手紙に導かれ、ざくろは駅前で他校生徒の築川宇佐美・瑞緒亜由美と接触する。二人は、ざくろが前世で世界を救う戦士「エンジェルアドバイズ」だったこと、最終戦争「ハル・メキド」が七月二十日に来ること、力を取り戻すには「スパイラルマタイ」という儀式が必要なことを告げる。屋上から飛び降りる、それがスパイラルマタイの正体だった。空白を抱えたざくろは、その物語に縋りつく。
「私は世界を救う戦士だったんだ・・・!私が救わないで誰が世界を救うというの!」
— ざくろ
音無は「あなたが世界を救うわけではない」と忠告するが、ざくろはそれを「悪魔の手先」と決めつけて拒絶する。十二日の午前、ざくろは琴美と卓司に別れの挨拶を済ませる。卓司に告げた言葉が、後に卓司の運命を決定づけることになる。
投身:十二日午後六時四十二分、屋上の手摺りを越えて立ったとき、宇佐美と亜由美が泣いて怖がり始める。死にたくないと泣き叫ぶ宇佐美を、ざくろは平手打ちで黙らせ、二人を引きずるようにして投身を決行する。落下の中で、ざくろは静かに天使になったような気分を口にする。
「世界なんて滅んじゃってもいい!私は死にたくない!」
— 宇佐美、投身直前
「翔ぶって気持ちいいのね・・・天使になったような気分・・・あと少しで・・・」
— ざくろ、最後の独白
音無彩名ルート — 永久回帰 余韻 永久回帰
事件の後、七月二十一日と九月一日を舞台に描かれるエピローグ。寡黙な少女・音無彩名は、世界の構造そのものを見透かす存在として、観察者・行人の前に再び現れる。すべての道筋を越えた先に置かれた、永久回帰の暗示。
屋上の問い:七月二十一日、集団自殺のあった屋上で、行人は音無と対話する。音無は「世界はもう終わっているのかもしれない」「次の一歩は奈落かもよ」と行人を試す。空がどこまで続いているのかを語る音無の言葉は、卓司の見た「終ノ空」と静かに響き合う。
「ここから、ここまで、空は続いている」
— 音無、屋上で
閉じる目と無人の教室:行人が目を閉じると、無人の教室に音無と二人きりでいる。生は死にいたる病なのかという対話を交わしながら、音無は行人への想いを打ち明け、二人は結ばれる。世界を祝福できる行人を、音無は好きだったのだと告げる。
「死にいたる病…それは…生だ」
— 行人
「わたし、ゆきとくんが好きだったんだと思う/世界を祝福できるゆきとくんを」
— 音無、行人に
消える存在:再び目を閉じると、場面は九月一日の新学期へ飛ぶ。満員の教室で、音無は最初から存在しなかったことになっている。隣にいるのは琴美。だが琴美は、音無とまったく同じ言葉を口にし始める。二人の声が重なり合い、卓司が落下の瞬間に唱えた「友なる二羽の鷲」の詩と「終ノ空」が、永久に一緒であることの約束として響く。物語は、終わりと始まりが見分けられないまま静かに閉じる。
「ゆきとくんは、ともだち・・・世界が存在した時から…永久に・・・」「ゆきとくん、好きだよ」
— 音無
「有限のなかの無限のうちに・・・」/「無限のなかの有限のうちに・・・」
— 琴美と音無の二重発話
エンディング一覧
| 種別 | エンド名 | ルート | 結末概要 |
|---|---|---|---|
| BE | 救世主・集団投身 | 卓司ルート | 十九日深夜、卓司は百名を超える信者を屋上から投身させ、行人との対話のあと自らも飛び降りる。落下の瞬間に「終ノ空」を見る。 |
| BE | スパイラルマタイ | 高島ざくろルート | 十二日午後六時四十二分、ざくろが怖がる宇佐美・亜由美を引きずり、三人で屋上から投身する。「あと少しで」で物語が閉じる。 |
| NE | 監禁・救出 | 琴美ルート | 排水タンクに監禁された琴美が行人に救出され、世界の終わりが来ないまま騒動が収束する。 |
| NE/BE | 終ノ空幻視 | 行人ルート | 琴美を救出した行人が、卓司らの集団投身現場で「終ノ空」を一瞬だけ幻視する。二十日は普通に過ぎる。 |
| 余韻 | 永久回帰 | 音無彩名ルート | 事件後の二十一日と九月一日。音無は存在ごと消え、琴美が音無の言葉を引き継いで二重発話する。永久回帰を暗示して閉じる。 |