坂の下で女の子と出会う話。学園もので終わると思ってたら、人生まるごと殴られた。
2004年のKey、麻枝准たちのシナリオ。母を亡くして父と冷戦してる不良の朋也が、坂の下で立ち尽くす女の子・渚と出会って、廃部になった演劇部を復活させていく話。最初は青春恋愛ものだと思ってた。でもこの作品は二部構成で、学園編はぜんぶ前半でしかない。卒業して、その先にもっと長い物語が続く。あたしはKanonとAIRで散々泣かされてきたけど、CLANNADは桁が違った。9。学園編のテンポで一回つまずいたから10にはしてない。けど後半に入ってからの破壊力は、間違いなく上位。会いに行ってほしい作品。
スコア詳細
「学園もの」だと思って始めたら、もっと大きい話だった
2004年のKey、麻枝准たちのシナリオ。坂の下で立ち尽くす女の子と出会う、青春恋愛ものだと思ってた。違った。
朋也は母を事故で亡くして、父とは口もきかない。バスケで肩を痛めてから何にも本気になれない、遅刻常習の不良。その朋也が、始業時刻を過ぎた坂の下で渚と出会う。「この学校は、好きですか」って、誰もいない方を向いて呟いてた女の子。二度留年して、長期欠席のあいだにみんな卒業しちゃって、慣れたはずの学校に居場所をなくしてた子。渚の口癖は「だんご大家族」と、自分を励ます「えいえいおー」。あたしは最初、この二人が演劇部を復活させて結ばれる、それで終わる話だと思ってた。
違った。CLANNADは二部構成で、学園編はぜんぶ前半でしかない。卒業して、その先に「AFTER STORY」っていう長い長い物語が続く。ここで作品が化ける。学園のキラキラを全部使って、そのあと違う色の話をやる。何が起きるかは絶対に書かない。でも、あたしはKanonとAIRで散々泣かされてきたつもりだったのに、CLANNADは桁が違った。
ここから先は、何が起きるかには触れずに、あたしが何にどう心を動かされたかを語ります。具体的な展開はネタバレ版に全部書いたから、もうプレイした人はそっちで。まだの人は、先に知らないでほしい。本当に。先に知っちゃもったいない作品だから。
渚という子。「えいえいおー」が、ずっと胸に残ってる
あたしのCLANNADは、半分くらい渚の話。弱くて、でも誰よりまっすぐ立とうとしてた子のことを、ずっと考えてた。
渚は病弱で、冬になると熱を出して長期欠席を繰り返す。二度留年して、「卒業するのに五年もかかりました」って自分の卒業式で言う子。中庭で一人あんパン食べてて、「浦島太郎の気分を味わいました」って、友達がみんな卒業しちゃったことを笑いながら話す。この笑いながら、っていうのが効くんだよ。泣き言じゃなくて、笑って受け止めようとする。だから余計に痛い。
でも渚は、ただ弱いだけの子じゃないの。演劇部を復活させたいっていう、自分の夢にちゃんとしがみつく。学園祭の本番で、緊張で台詞が飛んで、大泣きしながら、それでも最後までやり通す。あの場面であたしは一回目を持っていかれた。弱い子が、弱いまま、自分の力で立った瞬間だったから。健気で、ちょっと痛々しくて、でもまっすぐ。あたしはこの「えいえいおー」って自分を励ます渚のことが、進めるほど好きになっていった。
渚って、ただ守られるだけのヒロインじゃないの。弱いなりに、自分の足で立とうとしてる。だからこそ、この子が幸せになってほしいって、こっちが本気で願うようになる。そう願わされた時点で、もうこの作品の手のひらの上なんだよ。渚に会いに行ってほしい。
古河家がずるい。秋生という親父の背骨
CLANNADを支えてるのは、渚でも朋也でもなくて、古河家だったとあたしは思ってる。
渚の父・秋生。古河パンの店主で、口が悪くて乱暴で、最初は朋也を「オッサン」呼びで煙たがられてる側のバカ親爺。早苗のパンが絶望的に下手なのを誰より知りながら店を続けたり、「って、なんで、俺様がてめぇに顎で使われなきゃならねぇんだーっ!」って朋也と喧嘩したり。完全にコメディ担当だと思ってた。違うんだよ、この人。実はものすごく大きいものを家族のために背負ってる人なんだって、進めるとわかってくる。それを一切恩着せがましく言わないのがずるい。
秋生はこの作品で、「町は変わり続けていく」「この町と、住人に幸あれ」っていうテーマを一番体で背負ってる人。母・早苗も含めて、古河家がいてくれるから、CLANNADの「家族」の話が嘘っぽくならずに地に足がつく。あたしは最初、これは渚と朋也の恋愛の話だと思ってたんだけど、最後まで読んで一番胸に残ったのは、実は古河家だった。具体的に何があったかはネタバレ版で書くけど、この親父のことは絶対に覚えておいてほしい。
学園のヒロインたちも、一人ずつちゃんと泣かせてくる
渚に持っていかれがちだけど、学園編のヒロインたちにも一個ずつ刺さるポイントがある。
世話焼きでバイクを乗り回す藤林杏と、占い好きで控えめな双子の妹・椋。天才なのにどこか抜けてる一ノ瀬ことみ。元番長で生徒会長を目指す転校生・坂上智代。星形のヒトデをひたすら彫り続ける不思議な一年生・伊吹風子。旧校舎の資料室を「お店ごっこ」にしてる後輩・宮沢有紀寧。みんな最初は明るかったり不思議だったりするけど、それぞれのルートに入ると、その裏にあるものが少しずつ見えてくる。家族のこと、亡くした人のこと、過去のこと。
智代の話は特に好き。智代エンドの朝に朋也がわざと「短い間だったが、楽しかったよ…」って別れを切り出す冗談を言う場面とか、智代の「私はこの時間が終わった後も、おまえと一緒にいたい」っていうまっすぐな本音とか、強気な子の素が出る瞬間がちゃんとある。普段強い子が一瞬だけ見せる弱さ、ああいうの、ずるい。それぞれのヒロインを雑に消費せず、一人ずつちゃんと時間をかけて向き合ってくれてた。あたしはそれが嬉しかった。
学園編は長い。正直、長い。でもそれが全部、後半の貯金だった
減点の理由はここ。テンポで一回つまずいたんだ。正直に言うね。
学園編が長いの。各ヒロインのルートが一個ずつあって、それぞれちゃんと泣かせてくるんだけど、後半にたどり着くまでがとにかく長い。あたしは正直、中盤で何回か「もういいかな……」ってなりかけた。テンションが乗ったり落ちたりして、感情移入で物語に入るあたしには、その緩急の段差がちょっとしんどかった。減点の一個はここ。
でも、これがあとで全部効いてくるんだよ。学園編で過ごした時間が、後半でちゃんと意味を持って返ってくる。あの長い日常があったから、後半に来るものが重い。一人ずつのヒロインの話も、単発で消費されたんじゃなくて、ちゃんと最後まで繋がってる。だから「長かった」のが、終わってみると「必要だった」に変わる。中盤でつまずいても、絶対に投げないでほしい。投げたらこの作品の本体に届かないまま終わるから。それだけは言わせて。
長いのは間延びしてるからじゃなくて、一人ずつ丁寧にやってるから長い。そこは履き違えないでほしいんだよな。日常を尊いものとしてちゃんと積んでから、それを揺らす。この設計が、今やっても強い。
朋也について。最初は不良、でもちゃんといい男だった
主人公が嫌いだと物語から引き抜かれるあたしだけど、朋也は最後まで一緒に立っていられた。
朋也は最初、皮肉屋でだるそうな不良。親友の春原とくだらない掛け合いをして、「アオテナガフクロオオスノハラモドキ!」とか言ってふざけてる男。でも母を亡くして父と冷戦してるっていう芯がずっとあって、ただのチャラい奴には見えない。渚と出会って「次の楽しいこととか、うれしいことを見つければいいだけだろ」って言う、あの最初の一言から、この人は他人を放っておけない人なんだってわかる。
あたしが朋也をちゃんと好きになれたのは、彼が後半で、痛みをちゃんと通って成長していくから。途中、感情移入してるこっちが「そこで動いてくれよ」って思う瞬間もある。でも、最終的にその朋也がちゃんと自分の足で立ち上がるところまで連れて行ってくれるから、許せる。だからラストで朋也が報われた時、あたしも一緒に報われた気がした。具体的にどう変わるかはネタバレ版で書くけど、主人公をちゃんと好きになれる作品は、それだけで強いんだよ。
エンディングの話(控えめに)。最後に流れた歌で、もう一回やられた
具体的なことは書かない。けどこれだけは言わせて。あたしはこの作品の着地で、人生で一番きれいに泣かされた。
CLANNADのラストは、あたしがやってきたギャルゲーの中でも、いちばん泣いた部類に入る。何が起きるかは絶対に書かない。でも、これだけは言える。この作品のテーマは「家族」で、最後にそのテーマが完全に着地する。渚がずっと言ってた「町も人も、みんな家族です」「だんご大家族です」が、ただのかわいい口癖じゃなくて、この作品ぜんぶの答えだったってわかる瞬間が来る。秋生の「この町と、住人に幸あれ」も、ここで一本の線になる。
これを「お涙頂戴」だって言う人がいるのも知ってる。でもあたしは違う。最後の感動は、前半・中盤でちゃんと積み上げた時間の対価として置かれてた。なんの努力もなしに泣かせにくるんじゃなくて、「ここまで一緒に過ごしたからこそ来る」感動だった。だから、途中でテンポにつまずいても、投げないでほしい。最後まで行ってから、もう一回最初に戻りたくなるから。
あと、これだけ。クライマックスのいちばん感情が高まる場面で、歌が流れる。「小さな手にも いつからか」って始まる歌。曲の良し悪しの話じゃなくて、その「小さな手」っていう言葉が、それまで見てきたものぜんぶと重なるんだよ。歌詞として読んだんじゃなくて、あの瞬間に言葉として聞こえてきた。あたしはその一行で、もう一回涙腺をやられた。どの場面で流れるかは書かない。でも、流れたっていう体験がある。それだけは言っておきたい。
2004年の作品が、2026年のあたしを完全に解体してきた。これは事実なの。「CLANNADは人生」って言われてるのは知ってたけど、やる前は正直ちょっと身構えてた。やったあと、何も言い返せなくなった。人生だったわ。ほんとに。
9.0——坂の下の出会いから、家族をつくっていく話
一言で言うと、人と人が家族になっていく話。それを学園から、その先まで描ききった作品。
「えいえいおー」って自分を励ましながら、弱いまま演劇部を復活させようとする渚。バカ親爺なのに全部背負ってる秋生。一人ずつちゃんと泣かせてくる学園のヒロインたち。ふざけてるようでちゃんといい男の朋也。みんなが少しずつ家族になっていく。あたしはこの全部で泣いた。一回じゃない。
減点は、学園編のテンポで一回つまずいたこと。それだけ。10にしなかったのは、あたしが中盤で「もういいかな」って一瞬思ったのを正直に置いておきたかったから。でも、それを抜けた先のゴールの破壊力は、まぎれもなく上位。書こうとすると「好き」って言葉しか出てこなくなる。
CLANNADを「泣きゲーの最高峰」として読むのもいい。けどあたしのおすすめは、「家族をつくる話」として読むこと。そう読むと、最後の「だんご大家族」が、ただのかわいい唄じゃなくて、この作品ぜんぶの答えだったってわかる。会いに行ってください。それしか言えない。9。
