問いを立てている作品だよ。届き切れていない部分はあるけど、本質から逃げていない。
「人はどこから来てどこへいくの‥‥。この悠久の螺旋から助け出してくれるのは、誰?」——本作はこの問いから始まり、この問いに帰ってくる作品だよ。テーマが一貫していて、世界観に謎と余白がある。孤島の研究施設《デザイア》という舞台設計も機能しているし、3シナリオが互いを補完する構造も誠実だと思う。ただし届き切れていない場所がある——特に序盤シナリオの感情的な薄さ。深みを目指した形跡はある。7.5はそういう評価だよ。
スコア詳細
問いを立てている作品だと分かった瞬間
手に取った理由は単純だよ。「SF伝奇ADVとして語られる18禁ゲーム」という評を何度か目にして、確かめたかった。
1994年のPC-9801原作、1998年にWindows完全版として移植。シナリオは剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき)——後に「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」を手がけたライターだよ。プレイしたのはWindows完全版(CD-ROM版)。舞台は南海の孤島に建造された秘密研究施設《デザイア》。グランチェスタ財団が技術の粋を集めて建造したという施設に、124人の職員が孤立している。
最初の数行でこの作品を判断できると思うよ。冒頭に詩が置かれる——「人はどこから来てどこへいくの‥‥。この悠久の螺旋から助け出してくれるのは、誰? 私を助けてくれる、あの人は‥‥‥‥。」。これを読んで確信した。この作品は問いを立てている。どこから来てどこへ行くのかという問いは哲学の出発点だよ。それを冒頭に置くことの意味——軽薄な作品にはこういう入口を設けない。
「DESIRE」という英単語は「欲望」より「願望」に近い意味合いを持つ。望むこと——誰かを強く求めること。本作はその「誰かを求める」感情と、それが逃れられない螺旋として繰り返される業の構造を描いた作品だと思うよ。
《デザイア》という世界——謎と余白がある
この作品の世界設計は、考察の余地を残している。
南海の孤島という設定は閉塞感を作るための合理的な選択だよ。外界から切り離された施設、財団の政治的な影、謎めいた研究装置——情報が限られた環境で、何が本当に起きているのかを読者が少しずつ組み上げていく構造ね。「知っている者」と「知らない者」の情報格差が、物語の緊張を維持している。
登場人物の設計も評価するよ。謎めいた研究責任者のマルチナ・ステラドヴィッチ教授は本作で最も存在感のある人物で、彼女の周囲に謎が集中している。機内でアルと出会い島の暗部を示唆するカズミの「これから行く《デザイア》は、もっと物騒だ」という第一声——人物の配置に意図があると思うよ。
世界設計として特に評価するのは副題だよ。「DESIRE 〜Corrupt Spiral〜」——腐敗した螺旋、腐れた循環。物語が螺旋を描くことは、プレイ前から予告されている。その予告が最後まで機能しているかどうか——それがこの作品の核心だよ。
3シナリオが互いを補完する——これは誠実な設計だよ
本作の構造は特殊だよ。ヒロインごとのルート分岐ではなく、3つの視点シナリオが順番に解放される形式を取る。
記者の視点でアル篇、研究者の視点でマコト篇——同じ数日間の《デザイア》を、異なる位置から照らす設計だよ。アル篇で謎だった場面がマコト篇で別の角度から意味を持つ——情報の出し入れの設計として、これは機能していると思う。「一つの真実に複数の解釈軸がある」という世界観の提示として、この構造は誠実だよ。
本作は18禁作品で複数のHシーンが存在するよ。物語のテーマと切り離されたHシーンには意味がないと思っているが、本作には接続しているものがある——人間の業が剥き出しになる場面として機能している。詳細はクリア後に書いたよ。
届き切れていない場所——A篇の感情的な薄さ
7.5の内訳として、弱点を言っておくよ。
アル篇は序盤シナリオとして機能しているが、感情的な重みが後続に比べて薄い。記者という立場の人物が施設を観察・取材しながら謎に巻き込まれる——謎を積み上げる役割は果たしているが、アル自身が世界に対して問い返す場面が少ないんだよ。主人公が世界を受け取るだけで終わっている——そういう印象だよ。
ティーナとの関係性の感情的な積み上げも、A篇の尺内では薄いだろうね。二人の間に何かが起きることは伝わるが、それが読者にとっても重みを持つほどの描写時間が確保されていない。終盤の別れの場面で感情が動くかどうかは、読者によって大きく差が出ると思うよ。
……これはある種の贅沢な批判だけど——本作の設定の深さは、最終シナリオを読んで初めて明らかになる。A篇とB篇の大半は、C篇のための前フリとして機能している。それは構造的な必然だとも言える。ただ、A篇単独でも本質に触れていてほしかった、というのが正直なところだよ。
7.5——問いを立てている作品に、それ相応の敬意を
この作品に闇があるかどうかを問われたら——ある、と答えるよ。
テーマ9・設定の独自性9。「悠久の螺旋」というテーマは本物だよ。どこから来てどこへ行くのかという問いを立てて、最後まで回収しようとした。1994年の段階でこの設定の組み合わせ——財団陰謀、孤島研究施設、時間と同一性の問い——は際立っていると思う。
世界の奥行き8・雰囲気8。《デザイア》という閉鎖空間に、謎と余白がある。表層だけ読んでも成立するが、深読みすれば別の層が見える——そういう設計だと思うよ。
伏線9。本作の伏線設計は本質的に評価しているよ。クリア後に詳しく書いたが、プレイ後に振り返ると、序盤から張られていた糸が全部同じ方向を向いていたことに気づく。それは設計の誠実さだよ。
誰に勧めるか。ダーク・SF・伝奇が守備範囲に入る方で、テーマの深さを重視する方には届く作品だと思うよ。萌えゲー・コメディを求める方には最初から合わない。感情の積み上げの薄さが気になる方は、C篇まで辿り着けるかどうかが分かれ目だろうね。真相・ループ構造・伏線の詳細はクリア後に全部書いたよ。読み終わってから来てほしい。
