キャラクター詳細 — EVE new generation
『EVE new generation』の登場人物を、物語の真相まで含めて解説します。各人物の最初の段落は物語の中盤までに見える姿で、▼ネタバレ詳細に真相を収めています。人物の年齢は作中で明示されていないため、記載していません。
キャラクター画像は『EVE ~new generation X~』公式サイトより引用。
天城小次郎
| 読み | あまぎ こじろう |
|---|---|
| 役割 | 主人公(私立探偵。あまぎ探偵事務所の所長) |
| 年齢 | 作中で明示されない |
| CV | 子安武人 |
| 外見 | 黒いスーツを着た長髪の男。高いスーツを汚したくないと気にしている |
港の倉庫街の倉庫を事務所兼住居にしている私立探偵。従業員は氷室恭子ひとりと飼い犬の大五郎だけで、元は桂木探偵事務所の所員だった。愛銃はグロック22のカスタマイズで、初弾を装填しない主義を通している。口では警察でも正義の味方でもないと言い、依頼から降りると宣言しておきながら、記憶を失った少女を匿い、警察にも内調にも嘘をつき、10万ドルの取り引きを蹴って、国家規模の事件のただ中へ自分から踏み込んでいく。言っていることとやっていることのねじれが、彼の描かれ方の芯にある。
危機のさなかでも軽口とダジャレをやめず、超常現象の話は頭から否定する。仮定を置いて矛盾を探すという推理の手順をはっきり持っていて、エフィとの名簿のデータは複製しないという口約束も、弥生にとがめられながら守り通す。その律儀さと、物語の途中から彼を襲うめまいと幻視が、彼自身の知らない過去につながっている。
小次郎は1年前の記憶を、内調の鐘本美奈代にBLD-Vectamideで消されていた。前の年の夏、氷室に連れられて沖岸島へ慰安旅行に来た彼は、港の防波堤で釣りをする少女アルトと出会い、職業を訊かれて正義の味方だと名乗り、何かあったら助けると約束した。写真を撮りたいという彼女にGPS付きのケイタイを貸した直後、アルトは小湊龍司に連れ去られる。小次郎は丸1日以上かけて追いかけ、洋館の地下室で腹部を切り裂かれた彼女を見つけ、そこへ現れた小湊と、銃を構えた法条まりなを目撃した。内調に連れて行かれた取調室で記憶を消され、島へ行ったことさえ忘れていた。
沖岸島で記憶回復薬を自分に打った彼は、全てを思い出したあと、記憶を奪われたことそのものに抗議する。灯台の地下研究所でエフィと向き合い、エレベーターと体育館の消失、2件の殺人の仕掛けを解いてまりなの無実を示すが、犯人はエフィだという結論だけを本人に覆される。初海の遺体の下からアルトの顔が現れて一度は打ちのめされるが、自分で少女の手の平に書いた名前を手がかりに、乃依とアルトが生まれつきふたつの肉体を持っていたと確信し、港へ走る。水上飛行機からアルトを奪い返し、最後の1発で機体を撃ち落とした彼は、校庭でアルトに、自分とはそこに込められた意味なのだと答え、預かっていた指輪を返す。
「俺達は警察でもなければ、正義の味方でもなんでもない。/ただのしがない探偵だ。」桂木探偵事務所で、依頼から降りると告げて
「ただし! ひとつだけ約束してくれ。/たとえどんなことがあっても、俺に対してだけは絶対に嘘をつくな。/嘘をついたとわかったら、その瞬間にこの契約は解消だ。」記憶を失った少女の依頼を引き受ける条件
「思い出したくもない想い出を……俺は忘れたくはなかったんだ……」1年前の記憶を消されていたと知って
「ゼロ。/悪いな。この島の時空は歪んでるんだとさ。」崖のふちで敵を追い詰め、20秒を数え終えて
「紀瀬木アルトはここにいる。その体の中で今も生きている。その体の中に込められた『意味』こそが、紀瀬木アルトの正体だ」結末の校庭で、アルトに
法条まりな
| 読み | ほうじょう まりな |
|---|---|
| 役割 | 主人公(内閣情報調査室の1級捜査官) |
| 年齢 | 作中で明示されない |
| CV | 三石琴乃 |
| 外見 | ピンクの髪。全身ピンクの派手な服装 |
内閣情報調査室の1級捜査官で、特務権限を持つが逮捕の権限は無い。愛銃は作中で「1919」と呼ぶベレッタで、右の太ももの内側に携えている。登場は泥酔して駅員に絡む場面からで、そこから屋上の人影に気づいた瞬間に10階を駆け上がる。この落差が彼女の描かれ方の基本形で、地の文には軽口と自虐と妄想が絶えないが、深刻な場面ではそれがきれいに消える。
情報を頭の中の引き出しに分けて整理する癖があり、日銀の事件では犯人の狙いが最初から人質だったと見抜く。相手が民間人でも組み伏せて口を割らせる強引さの一方で、子供には甘く、犯人が子供だと分かると突入する部隊に発砲を禁じる。目の前で青年の投身を止められなかったことが、彼女を単独の捜査へ駆り立てる。
まりなは1年前の誘拐事件の当事者だった。小湊の別宅の地下室で、丸腰の小湊に挑発されて引き金を引いたが、わざと狙いを外して壁を撃った。小湊に3発撃ち込んだのは鐘本で、まりなは4発目の前に鐘本の手首をつかんで止めている。事件は小湊と組んだ鹿取美穂室長の手で闇に葬られ、抗議したまりなは担当から外された。その場面を、瀕死のアルトが見ていた。アルトは小湊と通じているのはまりなだと思い込み、その思い込みの上に初海の計画が組まれた。本来ねらわれるべきだったのは鐘本だったと、ミカエルが明かしている。
2件の殺人の容疑をかけられ、ミカエルに支えられて逃げ続けたまりなは、その支え自体が罪を着せ続けるための任務だったと知り、目の前で彼を失う。翌朝、彼女は昨日までの自分は死んだのだと宣言して捜索に出る。失われた3時間が戻ったとき、草原の丘で撃つよう迫る「初海」に対して、彼女は空へ撃っただけだったと分かる。彼女は最後まで誰も撃たなかった。容疑は晴れるが、1年前の隠蔽に加担した室長は罪に問われず、まりなはその理屈を分からないと突き放したまま、次の現場へ向かう。
「簡単に謝らないでよ。/謝罪は逃避よ。自責の念から逃れるための言い訳に過ぎないわ。/すぐに謝る人間ほど、信用できないものはない。」ハイヴで捕らえたアルトを問い詰めて
「自分で自分を抱きしめるの、強く……力強く……。/そして自分に言い聞かせる……。/『私があなたを知っている』と……。」タンクローリーのタンクの中で、小次郎に
「嘘をついてきたのはあなたじゃないわ……。/この私よ……。/私は自分で、自分のことを、だましてきたの……。/もう嫌だったから……。」岬の断崖の上で、ミカエルの最期に
「まだよ。/私はここにいる。あなたはそこにいる。/人類はひとつになんかなってないわ。」弟の死を信念の問題だと言う屋代億斗に
「これが――私の仕事なんだから!」休暇を取り消され、次の現場へ向かいながら
紀瀬木アルト
| 読み | きぜき あると |
|---|---|
| 役割 | 記憶を失って小次郎に依頼を持ち込む少女。物語の中心人物 |
| 年齢 | 作中で明示されない |
| CV | 名塚佳織(乃依と同じ) |
| 外見 | 長い髪にリボン、ワンピース、ミュール。薬指に蜜蜂の銀の指輪 |
深夜の倉庫街で小次郎に助けられた、記憶を失った少女。依頼で捜されていた「紀瀬木乃依」と同じ顔をしていて、中盤まではその名で呼ばれる。のん気に語尾を伸ばして話す一方、難しい観念の言葉を平然と使い、言い間違いも多い。ハチミツを原液のような量で飲み、犬をひどく嫌い、耳に触られるのを嫌がる。記憶を失った直後は灰皿を投げつけるほど荒れていたが、それは自分が何者か分からない怖さの裏返しだった。左の太ももの内側には、自分の筆跡で「アルトをさがして」と書かれている。
アルトと姉の乃依は、ひとつの体を二人で分け合う多重身体として作られた存在で、ふたつの肉体のあいだを二つの人格が行き来している。二重人格ではなく、二人が同時に別々の体にいることもできる。1年前、小次郎と出会った直後に小湊龍司に連れ去られ、洋館の地下室で腹部を切り裂かれたが、死んではいなかった。朦朧とする中で犬に群がられる光景を見ていたから犬を嫌い、小次郎が助けに来たことを覚えていたから、借りたケイタイを「御守り」と呼び続けた。
組織が進めるウイルスVOJの移植を拒んで逃げ出し、姉の動きを封じるため、傷のあるほうの体に自分で記憶を消す薬を打った。太ももの文字は、記憶を失ったあとの自分への伝言だった。記憶を無くしても何度も小次郎のもとへ戻ったのは、ひとりではどうにもならないと分かっていたからだと、のちに本人が語る。沖岸島の地下の子供部屋で記憶を取り戻して名乗り、大隈にさらわれたところを、水上飛行機から小次郎に救い出される。結末で彼女の体に傷があるのかどうかは、確かめられないまま終わる。
「探してほしいものが2つあるの。/ひとつめは……証拠。/私が日銀に行ってないということを証明してほしい。/ふたつめは……記憶。/失われた私の記憶を取り戻してほしいの。」あまぎ探偵事務所で、正式に依頼する
「これは私の御守り……。/だから誰にもさわらせない。」小次郎に借りたケイタイについて
「お腹に傷がなかったら、なんだっていうの!」「そしたら私は私じゃなくなるの!?私はアルトじゃなくなるの!?」結末の校庭で、傷を確かめようとする小次郎に
紀瀬木乃依
| 読み | きぜき のい |
|---|---|
| 役割 | アルトの姉。依頼で捜されていた少女の名前 |
| 年齢 | 作中で明示されない |
| CV | 名塚佳織(アルトと同じ) |
| 外見 | アルトと同じ顔。薬指に同じ蜜蜂の指輪 |
依頼人ミゾグチが捜していた少女の名前で、小次郎が少女の手の平に書いた名前でもある。日銀を襲った4人目の犯人の顔を見て、小次郎は「乃依!」と叫んだ。ラベイユの廊下を逃げた人影も、履物から乃依だと見分けられる。中盤までは記憶を失った少女と同じ人物として語られ、その正体はなかなか見えてこない。
乃依は本編の事件の実行犯だった。1ヶ月前に本物の紀瀬木初海が末期ガンで亡くなると、組織を動かすために自ら初海に成り代わり、ウィッグとシリコンの皮膚と変声器で老婦人として振る舞った。沖岸島で小次郎とまりなが会った「初海」は、どちらも乃依である。8月11日に小湊龍司を撃ち、12日にはまりなに変装して大隈の名を騙っていた鹿取宏務を撃ち、家政婦に目撃させた。小次郎をクルーザーで島へ運んでケイタイの日付を書き換え、まりなには自分を撃たせようとして果たせず、薬で記憶を奪った。そして14日の夕方、草原の丘で自分の胸を撃った。
初海の遺したヴィジョンには、初海自身の死までが書き込まれていた。母の描いたヴィジョンを完成させるために、乃依は名前も顔も、最後には命まで差し出した。VOJの移植を受け入れた側でもあり、アルトとは計画をめぐって敵対したが、エフィは二人を根は仲のいい姉妹だったと語る。多重身体を信じるなら乃依はもうひとつの体で今も生きていることになるが、作中はそれを言い切らない。
「ここ数日のあいだに起こった事件は、すべて、私の主導のもとに行なわれました。」8月13日の夜、草原の丘でまりなに
「別に狂気でもかまいませんよ。/革命は常に冷静な狂気によってもたらされるものです。」初海の小屋で、小次郎に計画を明かして
紀瀬木エフィ
| 読み | きぜき えふぃ |
|---|---|
| 役割 | ラベイユ児童養護施設の園長。NPO『ブラー』の2代目主宰、デボラ製薬の社長 |
| 年齢 | 作中で明示されない |
| CV | 伊藤静 |
| 外見 | 名前は外国風だが顔立ちは日本人そのもの。ラベンダーの香水をつける |
爆発事故の現場で名乗らずに小次郎の前に現れ、作り話でカマをかけて彼の関与を見抜いた女性。翌日ラベイユで再会すると、二人は今日が初対面だという建前で話を進める。徹底した敬語で品よく笑い、鏡像段階や大文字の他者といった心理学の概念を淀みなく語る理論家で、乃依とアルトを「娘」と呼び、再会した少女を涙ながらに抱きしめる母でもある。
エフィは紀瀬木初海のクローンで、初海の代わりとなるべく生み出され、人格も筆跡も笑い方も初海の複製であることを求められて育った。代理母は露崎真由美。乃依とアルトを15年間育てたが、それは赤ん坊のうちから二人を同一人物として育てる実験でもあった。クローンは元の人のテロメアの長さを受け継ぐため、余命は長くない。計画を急いだ理由はそこにある。
小次郎は神社で彼女の体からラベンダーの香りを嗅いで犯人だと確信するが、彼女は誰も殺していない。ただし、まりなに変装してホテルのリネンボックスで囮を務め、体育館で一人二役を演じ、草原の丘で空砲を撃ち、遺体を運んだのは彼女で、計画への加担は認めている。大隈の言葉を信じてアルトを引き渡してしまい、ミカエルの死をまりなから聞いて泣き崩れた。連行される朝、本物の初海の遺体の行方だけは答えなかった。彼女の言う「もうひとつの……愛」が誰に向けたものかは語られない。
「教育です。」ラベイユの中庭で、小次郎の「人体実験だな……?」に答えて
「私は母の夢でした。/実体など、どこにもありません。/この体は母、『紀瀬木初海』のものであり、私のものではないのです。」沖岸乃宮神社で、自分がクローンだと明かして
「強要ではありません。求めただけです。」初海に複製であることを求められた日々について
「『なにを捕まえようとしてるの!』……私は尋ねました。/アルトの答えはこうでした。――『今を!』」4歳のアルトとの思い出
紀瀬木初海
| 読み | きぜき はつみ(旧姓 矢枝) |
|---|---|
| 役割 | NPO『ブラー』とデボラ製薬の創設者。ラベイユの前園長 |
| 年齢 | 作中で明示されない(46年前に25歳だったと語られる) |
| CV | さとうあい |
| 外見 | 身なりの整った老婦人。杖をつき、ラベンダーの香りをまとう |
弥生が掘り当てた戸籍謄本に、ブラーとデボラ製薬の創設者として名前が現れる人物。まりなが小湊殺しの真犯人の心当たりとして挙げる「ヤエダハツミ」と同じ人で、旧姓は矢枝。沖岸島の森の小屋に住み、予知の力を持つと称し、事実は多数決で決まると説いて人類をひとつに戻す理想を語る。
本物の初海は、物語が始まる1ヶ月前に末期ガンで亡くなっていた。作中で「初海」として登場し、話すのはすべて成り代わった乃依である。46年前、家の借金のために小湊龍司と政略結婚させられ、恋仲だったミカエルとの子を身ごもったまま駆け落ちしようとした夜、小湊に暴行され、ミカエルは撃たれた。山あいの村で産んだ双子は、36年前、8歳のときに小湊に連れ去られて殺され、耳だけが残った。財閥の力で全てが揉み消され、初海の憎しみは小湊個人ではなく人類という種そのものへ向かった。
沖岸島でブラーとデボラ製薬を興し、自分のクローンとしてエフィを、双子の耳の細胞から乃依とアルトを生み出した。島には外の2日を1日と数える暦を持ち込み、まず屋代億斗と那由太で「教育」を試した。遺したヴィジョンには、ウイルスVOJ、多重身体、小湊と鹿取の殺害、そして自らの死までが書かれていた。死の直前にVOJのサンプルと研究データを処分したことが、皮肉にもアルトの体を唯一のウイルスの宿主にし、大隈に狙わせる結果になった。遺体の埋葬場所は最後まで明かされない。
「人類はなぜ、小湊という欠陥品を世に送り出したのでしょうか……?/それは他ならぬ人類そのものに欠陥があるからです。」ミカエルが回想する初海の言葉
「なんとしてでも、法条まりなをこの沖岸島に連れて来てください。/私達には彼女が必要です。/彼女の手によって、この計画は完成されます。/私の思い描いたヴィジョンは、法条まりなの一撃によって、成就されるのです。」初海がミカエルに託した言葉
ミカエル・ベルンシュタイン
| 読み | みかえる・べるんしゅたいん |
|---|---|
| 役割 | 西ドイツの通信社GPAの日本支局、社会部部長 |
| 年齢 | 作中で明示されない |
| CV | 中田和宏 |
| 外見 | 白人で金髪、金色のあごひげ。肩幅が広く鍛えられた体。まりなの第一印象は「熊みたい」 |
日銀でまりなと出会い、情報の取り引きを持ちかけた記者。初対面で子供を産んでほしいと口説き、返事を催促し続ける飄々とした男で、合気道五段の腕前と水上飛行機の操縦の腕を持つ。警察署からの脱走、偽名で押さえたホテル、包囲を破るタンクローリー、護身用の拳銃まで即座に用意して、指名手配されたまりなの逃亡を支え続ける。なぜそこまでするのかと問われても、愛に理由が必要かとはぐらかす。
ミカエルは46年前に初海と愛し合った相手で、殺された双子の父親だった。駆け落ちの夜に小湊に撃たれ、記録を書き換えられて逮捕され、国外退去になった。半年前、45年ぶりに初海と再会して計画に加わった。彼に課せられた本当の任務は、警察から守り、逃亡を助け、2件の殺人の罪を着せ続けたまま島へ連れて来ることだった。日銀での出会いだけは偶然だったと本人は言う。
廃校の保健室でそのすべてを打ち明け、犯人の名を告げようとしたところで銃撃を受ける。逃げる車の中で、わざと憎まれ口を叩いてまりなを降ろし、自分は囮になって、大隈朋義のサブマシンガンを浴びた。ダッシュボードに遺したボイスレコーダーが真相解明の起点になり、そこには大隈が彼を撃つ瞬間の声まで残っていた。最期の言葉は「愛のために」。その愛がまりなと初海のどちらに向けたものかは、どちらとも読めるように置かれている。
「愛に理由が必要ですかな?」なぜここまでしてくれるのかと問うまりなに
「私に課せられた主たる任務は、あなたをお守りすることだったのです。/無論、警察からです。」廃校の保健室での告白
「法条さん……。/あなたはさっき私のことを助けてくださった。/今度は私が、あなたを助ける番です。/さようなら……法条さん……。」まりなを車から降ろして
大隈朋義
| 読み | おおくま ともよし |
|---|---|
| 役割 | 日銀の情報システム局長。NPO『ブラー』の幹部 |
| 年齢 | 作中で明示されない |
| CV | 保村真 |
| 外見 | 鋭い目つきで感情の失せた顔。コンクリートの塊を削り出したような顔立ち |
倉庫街で小次郎に投げ渡された小切手の名義人。日銀の情報システム局長でありながらブラーの幹部でもあり、ハイヴの子供たちからは計画の立案者として名指しされる。まりなと向き合っても名前と役職とブラーの幹部であることしか認めず、そのあと自宅の地下スタジオで射殺された、というのが中盤までの読み筋になる。
8月12日に殺されたのは大隈ではなく、彼の名を騙ってブラーに潜入していた公安の鹿取宏務だった。大隈は鹿取と家を入れ替えて潜入に協力するふりをしながら、その潜入を「初海」に密告し、見返りにブラーの幹部の座を得ていた。小次郎の事務所に押し入り、もっと崇高な組織の命令で動いていると言った「大隈」は、公安の捜査官のほうだったことになる。本物の大隈は思想を持たない唯一の敵で、金塊6トンの半分を懐に入れ、VOJのデータが消えたあとはアルトの体を売るつもりでいた。
沖岸島の終盤の脅威は、すべて彼である。港で小次郎を撃った覆面の男、氷室を盾にして逃げた男、ミカエルを断崖の上で射殺した男、旅館の前でアルトを車に引きずり込んだスーツの男。その間、彼は一言も発しない。水上飛行機でアルトを連れ去ろうとして小次郎に撃ち落とされるが、爆発の直前に脱出して生きており、逮捕されて金塊の隠し場所を残らず話した。
「ええ、そうですとも、そもそも私は金にしか興味がありませんでした。ブラーなんてカルトな組織は、正直どうでもよかった……。」ミカエルのボイスレコーダーに残った声
「クローンの使い道はいろいろあります。人身売買、臓器売買、優秀な兵士の増産……。」同じ録音から
その他の登場人物
父のオヤっさんから継いだ桂木探偵事務所の所長で、小次郎のかつての恋人。まりなとはマンションの隣の部屋に住む親友でもある。「ミゾグチ」と名乗る女性から少女の捜索を請けたのが、本編の発端になった。情ではなく道の問題だと言って記憶喪失の少女をかばい、ネット調査と足で集めた資料からブラー、デボラ製薬、紀瀬木家の戸籍謄本までを掘り当てる。最後まで、依頼人の正体を知らずに終わる。1年前、小次郎に頼まれてGPSを追ったのも彼女だった。沖岸島の事件には関わらず、後日談で事務所に元気な姿を見せる。
あまぎ探偵事務所のただひとりの従業員で、パソコンに天才的な腕を持つ。かつては教育監視機構という組織の調査員だった。1年前、慰安旅行と称して小次郎を沖岸島へ連れて行ったのが彼女で、小次郎が島へ行ったことを丸ごと忘れていたと証言できる唯一の人でもある。今回は有給休暇で、島に伝わる不思議な風習を再調査しに来ていた。港で覆面の男に人質に取られたあと、小次郎と組んで島を捜索し、最後は漁船で隣の島へ応援を呼びに行く。
内閣情報調査室の本部長で、まりなの直属の上司。のん気に見えて切れ者で、まりなの理解者でもあるが、上の鹿取美穂室長には逆らえず、指名手配中のまりなとの面会の場に鐘本と第六機動隊を差し向けた。黒幕ではなく、最後まで組織の理屈で動く上司である。後日談では、1年前の件が伏せられたまま室長が辞めたことに抗議するまりなに、それが「なにもかも」なのだと返し、そのまま物語の幕を引く。
まりなと同じ内閣情報調査室の1級捜査官で、一度ペアを組んで以来の犬猿の仲。1年前、丸腰の小湊に3発撃ち込んだのも、取調室で小次郎に記憶を消す薬を打ったのも彼女だった。日銀事件の2、3ヶ月前からハイヴを調べていたのは、3年前にラベイユから引き取った娘・鐘本リエを追っていたためで、警察病院の密室から少女が消えた一件も、彼女が無人のストレッチャーに細工して娘を連れ出したものだった。灯台で、まりなに「連れ出したんじゃないわ、助け出したのよ」と言う。強制捜査の参謀を務めたまま退場し、自身の処分は描かれない。
ラベイユの出身で、3年前に鐘本家の養女になった少女。ハイヴのリーダー・エイプに熱を上げている。日銀の発電室で乃依と服を取り替えて犯人側になりすまし、警察病院に収容された「乃依」の写真の少女は、実は彼女だった。メイ・クイーン、『Q』の符丁で呼ばれていたこの少女の名は、小次郎が名簿のDVD-ROMから割り出した。大隈の指示を受けて、まりなを小湊の別宅へ案内させた張本人でもある。その後の処遇は描かれない。
ハイヴのカリスマ「エイプ」で、沖岸島では若い漁師として暮らしている。デパートで死んだ青年と同じ顔で現れ、まりなに時空の歪みや無限ループの話を吹き込んで丸一日振り回したが、すべて嘘だった。正体はサイバーテロと金塊強奪の実行者で、まりなの銃の線条痕のデータを書き換えたのも彼。弟の那由太とともに、生後半年で初海に選ばれた多重身体の被験者第1号で、3歳まで地下から出されずに8年間の「教育」を受けた。まりなをからかった理由を問われると「嘘をついた理由ね、簡単なことだよ。ただあんたを、からかっただけさ」と答えるが、本当の理由は弟を守れなかったまりなへの腹いせだった。去り際、弟の一人称で自分の名を名乗って、連行されていく。
冒頭でまりなの目の前からデパートの屋上を落ちていった青年。左手の平に蜜蜂のタトゥがあり、司法解剖の推定は二十歳前後で、身元は分からなかった。兄の億斗と多重身体を共有していて、初海からまりなの素行調査を命じられ、見張るうちに彼女への想いから強い自我に目覚めた。計画に反対して初海に訴え、退けられると、手首を切ってから屋上に立ち、時間までにまりなが気づいてくれたら全てを話すという賭けに出た。億斗は、弟が自らの死で自分という存在を証明しようとしたのだと語る。託されたペンダントは、最後に億斗の口を開かせることになる。
大隈朋義の名を騙ってブラーに潜入していた公安の捜査官で、内調の鹿取美穂室長のひとり息子。大隈と家を入れ替え、研究所のデータベースからクローンとウイルスの機密を盗み出して、破防法による強制捜査の道を開いた。組織に背いたアルトを証人にしようと近づき、露崎真由美とも手を組んでいた。小次郎の事務所に押し入り、もっと崇高な組織の命令で動いていると言ったのは彼で、その組織とは公安のことだった。大隈に裏切られ、8月12日の夕方、まりなに変装した乃依に地下の収録室で撃たれた。
内閣情報調査室の室長で、本部長の上に立つ人物。作中に一度も姿を見せない。1年前、小湊龍司の求めに応じて誘拐事件を闇に葬り、事情を知らせないまま、まりなに引き金を引かせ、目撃者だった小次郎の記憶を消させた。息子の宏務は、彼女の息子であることも理由のひとつにされて殺された。事件のあと病状の悪化を理由に辞めるが、1年前の件は伏せられたまま罪に問われない。
銀行から海運までを抱える小湊財閥の総帥で、その力は司法や報道にまで及ぶ。46年前に初海を政略結婚で妻にし、駆け落ちしようとした身重の彼女に暴行してミカエルを撃ち、36年前には8歳の双子を連れ去って殺し、1年前にはアルトを沖岸島から連れ去って地下室で腹部を切り裂いた。いずれも財閥の力で揉み消され、自分の命には愚かな人々の何千倍もの価値があると言い放つ。本作のすべての事件はこの男の加害から始まっている。8月11日、別宅の地下室で乃依に撃たれて死ぬ。
「ミゾグチ」と名乗って桂木探偵事務所に少女の捜索を頼んだ、ふくよかな中年の女性。ラベイユの職員で、子供たちからは「おばちゃん」と呼ばれて母親のように慕われ、ブラーでは婦人部長を務める。実はエフィ、乃依、アルトの3人を産んだ代理母だったが、自分が産んだのがクローンだとは知らされていなかった。人類をひとつにする理想がウイルスによる統合だと知って組織に背き、公安の鹿取宏務と手を組んだ。別の探偵社に「アルトを捜してくれ」と頼んでいたのも、記憶を失ってさまようアルトを守るためだった。作中では一言も話さず、その後の生死も描かれない。
中央公園のブルーシート小屋に住む女性の情報屋で、小次郎が最も信頼を寄せる一人。三六九は本名ではなくコードネームで、小次郎が「サブロク」と呼ぶのを嫌がっている。大隈が裏社会の人間ではないことを確かめ、ラベイユの名が蜜蜂を意味すると教え、ミゾグチがもう一社にアルトの捜索を頼んでいたことをつかむ。まりなに老婆の変装をさせられて本部長との会話の代役を務め、第六機動隊に取り押さえられたまま、二度と姿を見せない。
大学病院の脳神経外科医。浮気調査で小次郎に弱みを握られ、表沙汰にできない怪我を診る闇医者を引き受けている。少女の記憶喪失の原因がデボラ製薬の極秘の薬物BLD-Vectamideだと突き止め、記憶を取り戻すCB1アンタゴニストを3本渡した。この3本が小次郎と少女とまりなの記憶を取り戻すことになる。自分にも打って、去年の秋の記憶を取り戻したと話しており、彼もまた記憶を操作されていたことになるが、誰の手によるものかは語られない。
倉庫街の廃工場に捨てられていたのを小次郎が拾った犬で、見た目はミニチュアシュナウザー。実は初海が飼うVOJを宿したビーグルの母犬から生まれた4匹のうちの1匹で、母の複製として生まれたラベイユの仔犬3匹とは違い、父の血が戻った雑種として生まれた「25%の失敗」だった。隠すために島の外へ捨てられていたのである。結末で、この犬の存在が、生命は単一なものに戻らないという小次郎の答えの証になる。後日談で耳の裏に「B」の一文字のタトゥが見つかり、同じ腹の仔犬3匹とともにアルトに託される。
セントラルアベニューの裏通りにあるタトゥスタジオの主。まりなに、『B』のタトゥは街で流行っている象徴のようなものだと教え、クラブ『ハイヴ』の名を明かす。蜜蜂を表すものなら絵でもかまわないという一言から、まりなは左肩に蜜蜂のシールを貼ることになり、それがのちに彼女の無実の証になった。性別は作中ではっきりしない。
日銀の見学ツアーで人質に取られた子供たち。犯人からスタンガンを奪って返り討ちにしたとして、まりなは彼らを英雄と讃える。タカシはまりなの言葉がなかったら怖じ気づいていたと礼を言い、マンガ喫茶で再会したノブやユキヒコはハイヴも『B』のタトゥも知らないと答えた。だが15人全員が犯人4人と示し合わせた仲間で、ハイヴのメンバーだった。まりなはハイヴで全員の居場所をつかみながら一人も確保できず、その後の行方は語られない。