用語集 — EVE new generation
『EVE new generation』に出てくる組織・場所・事件・道具・言葉を解説します。▼ネタバレ詳細を含む項目はアコーディオン内に格納されています。タグをクリックするとカテゴリを絞り込めます。
破壊活動防止法のこと。公安がブラーに適用して強制捜査に乗り出すらしいと、ミカエルがまりなに伝える。
- 詳細
- 鹿取宏務が盗み出したクローンとウイルスの機密が、適用の裏づけになった。組織に背いて逃げたアルトは、その証人にされかけていた。アルトが記憶を失って行方をくらますと、鹿取は血眼になって街を捜していた。
投身した青年が残した「BOJ」は、のちに犯行声明から「VOJ」の聞き違いだったと分かる。サイバーテロの作戦名「Vector of Juggernaut」の頭文字で、まりなは「ジャガーノートの運び手」と訳す。
- 詳細
- 作戦名であると同時に、デボラ製薬が作ったウイルスそのものの名でもある。受精したばかりの卵の遺伝情報を乃依とアルトのものに書き換え、母から子へ受け継がれていくため、感染した女性からは常に乃依とアルトが生まれ、世代ごとに倍々に増えていく。人類をひとつに戻すための手段だった。移されたのは傷の無いほうの体だけで、初海が死ぬ前にサンプルとデータを処分したため、アルトの体が世界でただひとつの宿主になり、大隈に狙われた。小次郎は、母がVOJを宿していても雑種として生まれた大五郎を挙げて、VOJは完全ではないと結論する。
初海が持つと称する、過去や未来の光景が見える力。小次郎はこれを予知ではなく、自分で未来を作るマッチポンプだと退ける。組織には「すべてはヴィジョンのままに」という合言葉がある。
- 詳細
- 初海が遺した未来の構想、つまり計画書そのものだった。ウイルスVOJ、多重身体、小湊と鹿取の殺害、日銀襲撃、サイバーテロ、そして初海自身の死までが書かれていた。初海の死後も組織は初海の予知という形で動き続け、乃依は母の描いたヴィジョンを完成させるために、自分の死まで引き受けた。
ミカエルが日銀の場で口にした、ブラーの計画の呼び名。まりなは前者を「進化」、後者を「革命」と訳す。エフィも、人類は進化か革命によってひとつに戻らなければならないと語る。
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- ブラーの標語であり、目的そのもの。人類をひとつに「する」のではなく、ひとつに「戻す」という言い方に、人類はもともとひとつだったという初海の考えが表れている。その手段がVOJで、まりなは人類を生け贄にするつもりかと問い詰める。
ひとつの人格が複数の肉体を持つとされる状態。エフィが二重身体の先にある最終目標として語り、ひとつの人格が複数の体を持てば、事故や病気で死ぬ確率が下がると説明する。小次郎は相手にしない。
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- 本作の最大の設定で、乃依とアルトは生まれつきふたつの肉体を分け合っていた。二重人格ではなく、二つの人格がふたつの体を行き来し、二人が同時に別々の体にいることもできる。決め手は、8月10日の朝に小次郎が手の平に書いた文字が、同じ日の午後に日銀に現れた少女の手の平には無かったことだった。屋代兄弟も、8年間の「教育」でこれを身につけた被験者第1号である。作中は最後まで科学的な証明を与えず、信じるかどうかは信念の問題だという億斗の言葉に委ねている。
エフィが乃依とアルトの関係を説明するために持ち出した言葉。ふたつの肉体にひとつの人格が宿った状態で、二重人格の逆だという。エフィは双子の遠隔感応の例を延々と並べて、その根拠にする。
- 詳細
- 多重身体のうち、肉体がふたつの場合を指す。乃依とアルトについてのエフィの説明は、この点では正しかった。それを小次郎が二重人格と読み替えてしまったことのほうが、誤りだった。
幼児が鏡に映る自分の姿を通して、自分というまとまった像を手に入れるとされる段階。ラカンの考えで、エフィが乃依とアルトの育て方を説明する出発点として持ち出す。
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- エフィと初海の実験の設計図そのものだった。この段階に達する前の赤ん坊二人を同一人物として育てることで、自分というものが生まれる前に、ふたつの体をひとつの自分として覚え込ませた。小次郎に人体実験かと問われたエフィは、教育だと答えている。
エフィが、3人の囚人のクイズと、鏡に自分の後ろ姿が映る絵葉書を使って説明する概念。自分を見るための、架空の視点のこととされる。小次郎はクイズを正しく解く。
- 詳細
- 初海はこれを26本の糸の結び目にたとえる。全体主義は26本の糸を一か所で縛るものだが、自分たちはすべてを溶かしてひとつにし、1本の糸で結ぶのだと語る。全体主義とは違うと言いながら、それより徹底した消去を宣言していた。
エフィと初海が、乃依とアルト、そして屋代兄弟に施したことを指して使う言葉。
- 詳細
- 人体実験の言い換えだった。自分というものが生まれる前の赤ん坊を同一人物として育てるもので、屋代兄弟は生後半年で選ばれて3歳まで地上に出されず、8年間続けられた。わざと片方を溺れさせてもう片方に助けさせるようなことを、日ごとに役と名前を入れ替えて繰り返させた。エフィ自身も、初海の複製であることを求められて育っている。
人間同士のDNAの違いのわずかさを表す数字。初海の小屋で、人類をひとつにする理由として持ち出される。
- 詳細
- 本作の主題そのものが、この数字をめぐる対決として置かれている。わずか0.1%の違いのために人々は争い傷つけ合うという初海に、小次郎は、その違いがあるからこそ人は愛し合えると返す。結末の、「自分」とは何かという問答も、この対立の続きにある。
初海がまりなに向かって語る言葉。運命はあなたのまなざしを求めている、現実は見る者の「見る」という行為によって確かなものになる、と説く。
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- 計画の芯にある考え方だった。まりなに自分を撃たせれば、真犯人であり最大の証人でもある自分の口が封じられ、まりなへの疑いは決定的になる。まりなが撃たない場合に備えて、小次郎に偽の犯行の場面を見せ、証言させる段取りも用意されていた。屋代那由太も、まりなのまなざしによって自分というものを確かめようとして死んだ。
瞬間移動。記憶を失った少女が、自分にはその力があるらしいと打ち明ける。自分では操れず、時間も場所も選べないという。沖岸島ではエフィが、体育館でまりなを消してみせると言う。
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- どれも人の手による仕掛けか、現象の読み違いだった。ホテルのエレベーターから少女が消えたのは、乗っていた乃依とエフィが16階を経由して時間をずらした仕掛けで、体育館の消失はエフィがまりなに扮した一人二役だった。少女の言う時間の飛びは、もうひとつの体が動いていたあいだの記憶の欠けだった。
記憶を失った少女の症状についての、小次郎の見立て。自分の生涯の記憶だけをすべて失い、言葉や計算、一般の知識や技能の記憶は残る。少女の記憶は、事務所の前に立っていた晩から始まっている。
- 詳細
- 症状の見立ては正しかったが、原因は病気ではなくBLD-Vectamideだった。しかも打ったのは少女自身で、姉の動きを封じるために、傷のあるほうの体に自分で打っていた。
沖岸島の人々は、外から来た者のケイタイが8月13日を示していても、誰もが今日は8月7日だと答える。島で暮らす人々が当たり前のように使っている日付の数え方。
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- 外の世界の2日を、島の1日として数える島だけの暦。初海が25年前に持ち込み、20年前に定着させた。外の8月13日と14日が、どちらも島の8月7日にあたる。同じ1日を2度繰り返すこの暦が、屋代兄弟の「教育」に使われ、別の日の出来事を同じ1日の出来事と取り違えさせる仕掛けの土台にもなった。まりなは、前の日に渡したペンダントを億斗が今日も持っていたことから、暦の仕組みを見破る。
沖岸乃宮神社の祭り。島の暦で8月7日が前夜祭、8月8日が本祭にあたり、岬の先端の広場にやぐらと露店が出て、島民百人以上が集まる。エフィは、クリスマスイヴと同じように島にとって大切な意味を持つと言う。
- 詳細
- 島の暦では2日をまとめて1日と数えるため、1年が365日の奇数で割り切れず、8月8日だけが1年で唯一繰り返さない日になる。その2度と来ない1日を祝うのが本祭で、閏年は8月8日も繰り返すため、祭りは開かれない。
本作のゲームシステムの名前。SELECTボタンで視点を切り換え、天城小次郎と法条まりなが同じ日々をそれぞれの場所で過ごすさまを追う。分岐するルートは無い。
- 詳細
- 終盤では二人の視点が1場面ずつ交互に並び、最後に同じ場面へ合流する。真相の全体像は、二人の側を合わせて初めて完成する。エレベーターや体育館の仕掛けは小次郎の側で、初海の死や乃依の成り代わりはまりなの側で明かされ、大隈との決着は小次郎が、事件の後始末はまりなが受け持って幕が下りる。
組織の側で、合言葉のように使われる言葉。
- 詳細
- 8月15日の朝、ヘリで連行されるエフィに、小次郎は神社で受け取った手紙を書いたのは誰かと尋ねる。エフィの答えはこの言葉だけだった。誰が書いたかは問題ではなく、計画が計画のとおりに動いただけだ、と読める答えになっている。
小次郎は、自分は警察でも正義の味方でもない、ただの探偵だと繰り返し口にする。
- 詳細
- 1年前、沖岸島の防波堤で職業を訊かれた小次郎が、アルトに名乗った肩書きだった。何かあったら助けると約束し、その記憶を消されたあとも、彼の足は少女を救うほうへ向かい続けた。水上飛行機から救い出したとき、彼は1年前と同じように、少女をお姫様と呼ぶ。
後日談で出てくる言葉遊び。「灯台下暗し」をもじったもの。
- 詳細
- 姉弟元暮らしと書き、大五郎と3匹の仔犬を一緒に暮らさせることを指す。仔犬たちは同じ母犬の複製で、大五郎はその同じ母から生まれた雑種だから、たしかに姉弟にあたる。研究所の入口が灯台の足元にあったことと、答えが最初から小次郎の足元にいたことの両方に掛かっている。
ラベイユ児童養護施設の運営母体のNPO。表向きは環境保護を掲げ、福祉の活動もしているとされる。主宰は紀瀬木エフィで、大隈朋義が幹部、ツユザキマユミが婦人部長を務める。名前の意味は作中で説明されない。
- 詳細
- 紀瀬木初海が約30年前に創った、実質的なカルト組織。設立当時はNPOの制度がなく、十数名のボランティア団体として始まった。デボラ製薬の研究と一体で、ラベイユを子供の供給源にし、ハイヴとジャガーノートを下部の実行部隊に持つ。沖岸島の島民は事実上その信者だった。目的は人類をひとつに「戻す」ことで、その手段がウイルスVOJだった。初海は、ブラーは宗教団体ではないと口癖のように言っていた。8月15日の強制捜査で、主宰も職員も逮捕された。
紀瀬木エフィが代表取締役社長を務める製薬会社で、医療機関や研究機関に薬を卸している。小次郎は社名の語源を、ヘブライ語で蜜蜂を意味する「デヴォーラー」だと指摘する。
- 詳細
- 初海が約30年前、沖岸島の小さな研究施設から興した会社で、ブラーとほぼ同じ時期に設立された。研究していたのは記憶を消す薬BLD-Vectamide、クローン、ウイルスVOJ。島の地上の研究所はほとんど廃墟で、現役の施設は灯台の裏から入る地下にあった。公安の鹿取宏務がこの研究所のデータベースからクローンとウイルスの機密を盗み出したことが、強制捜査の引き金になる。8月15日に研究所が押さえられ、職員は全員逮捕された。
閑静な住宅街にある児童養護施設。ラベイユはフランス語で蜜蜂を意味し、建物は六角形を3つ合わせた蜂の巣型をしている。門柱の蜜蜂の紋章は少女の指輪と同じ意匠で、在籍する子供は約96名。園長は紀瀬木エフィ。
- 詳細
- ブラーが運営する施設で、組織にとっての子供の供給源だった。屋代億斗と那由太は生後半年でここに預けられて初海に選ばれ、鐘本リエもここの出身。日銀襲撃事件の子供たちもここを経ている。前の園長は紀瀬木初海で、エフィは4年前に引き継いだ。後日談では、この中庭で大五郎と3匹の仔犬がアルトに託される。
ラベイユ児童養護施設のかつての名前。曾祖父の代から続く名で、数年前に建物を改築したのを機に、今の名に改められた。
- 詳細
- 改称は蜜蜂の名を日本語から外国語へ移しただけで、意味は変わっていない。記憶を失った少女が、自分を蜂の子供だと言うことと、そのまま響き合う名前でもある。
二つの意味を持つ名前。ひとつは、体のどこかに蜜蜂を表すタトゥを入れれば誰でも仲間と見なされる、1000〜2000人規模の若者の集団。もうひとつは、セントラルアベニュー裏の路地にある同じ名のクラブで、DJのエイプがカリスマとして慕われている。
- 詳細
- ブラーの下部組織で、ブラーの考えを若者に広めるために、組織と無関係に見える名前で作られた。実際に指示を出していたのはブラーの幹部の大隈朋義。日銀襲撃事件の19人は全員がハイヴのメンバーで、そろって共犯だった。名の意味は蜂の巣で、まりなは蜜蜂、Bee、『B』、HIVEがひとつにつながることに気づく。
8月11日深夜のサイバーテロについて犯行声明を出した、正体の分からない集団。名前の由来は、山車に轢かれた者は救われるという人身御供の信仰で知られるヒンドゥー教の破壊神だと、まりなが説明する。
- 詳細
- ハイヴの中の精鋭部隊で、エイプこと屋代億斗が有志を集めて作った。サイバーテロと金塊強奪の実行部隊で、直接の指示は大隈朋義が出していた。本来のリーダーは那由太になるはずだったが、その死によって不在のまま決行された。作戦名「Vector of Juggernaut」の後半はこの名から取られている。まりなは「初海」に、人類を生け贄にするつもりかと問いかけるが、答えは返ってこなかった。
法条まりなと鐘本美奈代が所属する政府機関で、略して内調。1級捜査官には特務権限があるが、逮捕の権限は無い。テロ対策も受け持ち、外からの電話には「光と影信仰協会」という偽の団体名で出る。室長は鹿取美穂、本部長は甲野三郎。
- 詳細
- 1年前の誘拐事件を、室長の鹿取美穂の主導で闇に葬った組織そのものだった。小湊龍司の求めに応じ、事情を知らせないまま、まりなに引き金を引かせ、目撃者の小次郎の記憶を薬で消させた。8月11日の昼に本部が一時停電した隙に、まりなの銃の線条痕のデータが書き換えられている。物語の幕切れでも、室長は辞めるだけで、1年前の罪は伏せられたまま終わる。
ミカエルが伝える噂の中に現れる捜査機関。例のNPOに破防法を適用して強制捜査に乗り出すらしい、という話として、まりなの耳に入る。
- 詳細
- 鹿取宏務が所属していた組織。宏務は大隈朋義の名を騙ってブラーに潜入し、研究所のデータベースからクローンとウイルスの機密を盗み出して、破防法による強制捜査の道を開いた。宏務が小次郎に言った、もっと偉大で崇高な組織とは、ブラーではなく公安のことだった。
警視庁のテロ対策の特殊部隊で、略して六機。公安の大がかりな強制捜査の主力とされ、鐘本美奈代が当面の指揮を任されている。
- 詳細
- 8月12日、本部長はまりなとの面会の場にこの部隊を差し向けたが、取り押さえたのは、老婆に変装して代役を務めていた三六九だった。まりなの逃亡劇では常に追う側に立ち、最後は沖岸島の強制捜査を担う側に回る。
小湊龍司を総帥とする巨大な企業集団。銀行・保険・商社・化学・石油・鉄鋼・造船・海運などを抱え、その力は司法・立法・行政から、政界や報道機関にまで及んでいる。
- 詳細
- 小湊龍司が46年前に初海を暴行してミカエルを撃ったことも、36年前に双子を殺したことも、1年前にアルトをさらって傷つけたことも、すべてこの財閥の力で揉み消された。46年前の事件は、押し入った武装の一団への正当防衛として記録を書き換えられ、ミカエルのほうが逮捕されて国外退去になっている。司法がゆがめられ続けたことが、初海の憎しみが小湊個人ではなく人類そのものへ向かう前提になった。
作中で「日銀」と呼ばれる中央銀行。重要文化財の旧館と、営業場のある新館を持ち、無料の見学ツアーを開いている。地下には大金庫があるとされるが、案内の職員もその場所を知らない。情報システム局の局長は大隈朋義。
- 詳細
- 地下には6トンの金塊が眠っていて、今の価値で約90億円にあたる。公式の図面に載っていない地下4階があり、停電のときに防犯の機能を保つための発電室だけはアナログの鍵で閉まる。犯人がそれを知っていたこと自体が、内部に協力者がいた証拠だった。協力者は大隈で、8月10日の襲撃と12日未明の金塊強奪は、どちらも彼の手引きによる。金塊は最後にすべて日銀へ戻った。
ミカエル・ベルンシュタインが勤める西ドイツの通信社。日本支局はビルのワンフロアを借り切っていて、ミカエルは社会部の部長。逃亡中のまりなの隠れ家にもなる。
- 詳細
- ミカエルが記者だったことは事実だが、まりなに近づき続けた本当の目的は、彼女を警察から守りながら、2件の殺人の罪を着せ続けることだった。GPAのビルの屋上は、まりながミカエルに1年前の事件を語る場面の舞台になる。
天城小次郎の事務所。港の倉庫街の倉庫を事務所兼住居にしていて、外壁が鉄板のため真夏はひどく暑い。従業員は氷室恭子ひとりと、飼い犬の大五郎。物語の始まりの時点では依頼が無く、開店休業の状態。
- 詳細
- 事務所に置かれたラベンダーの鉢植えは、犯人を絞り込む手がかりになるラベンダーの香りの伏線になっている。8月11日の夜には、大隈の名を騙る鹿取宏務が部下を連れて押し入り、ピアノソナタをかけさせながら、手を引けと警告する。後日談で小次郎が戻ってくる場所でもある。
桂木弥生が父のオヤっさんから継いだ探偵事務所。ビルの3階にあり、多くの所員を抱える。依頼人を撮る隠しカメラを常に備え、電話には逆探知を防ぐ機能が付いている。小次郎はかつてここの所員だった。
- 詳細
- 本編の発端はここにある。8月9日の夕方、ツユザキマユミがミゾグチと名乗って訪れ、総額10万USドル、依頼人の素性は詮索しないという条件で、少女の捜索を頼んだ。弥生はここを拠点に、ブラーからデボラ製薬、紀瀬木家の戸籍謄本までを掘り当てる。
氷室恭子がかつて調査員として所属していた組織。あまぎ探偵事務所に来る前の経歴として触れられる。
- 詳細
- 作中でそれ以上の説明は無い。氷室のパソコンの腕と調査の力がどこから来たのかを、わずかに示すだけの名前にとどまる。
小笠原諸島のはずれ、本土の街から約1000km離れた、人口200人あまりの島。漁業が中心で、一部の農家がパッションフルーツを育てている。ケイタイは圏外で、駐在所もない。東の灯台、西の砂浜、南の漁港と旅館が目印になる。
- 詳細
- デボラ製薬が生まれた場所で、ブラーの本拠。紀瀬木家の本籍地でもある。初海は約30年前に島へ来て、十数年で島民を思いのままにした。エフィの言う時空の歪みは超常現象ではなく、島民ぐるみの仕掛けだった。小次郎が「島」という言葉に頭痛を起こしていたのは、1年前にここへ来た記憶を封じられていたためである。
沖岸島の西の岬にある神社。瓦屋根の大きな社殿と、かがり籠、苔むした石畳、鳥居が並ぶ。裏手の森を抜けた岬の先端の広場が、祭りの会場になる。
- 詳細
- 小次郎はここで漁師の青年から初海の手紙を受け取り、エフィから自分がクローンであることや、テロメアと余命のことを聞かされ、抱きしめられる。エフィはこのとき小次郎に打つはずだった注射を打てず、計画が狂っていく。
沖岸島の東の岬の先端に立つ灯台。左右は海面まで30〜40mの断崖で、内部の螺旋階段を上ると展望台に出る。小次郎は島民たちの謎かけを解いて、ここにたどり着く。
- 詳細
- 灯台の裏側に鋼鉄の扉と操作盤があり、くぼみに蜜蜂の指輪をはめて回すと、地下の研究所へ下りる螺旋階段が現れる。島じゅうを探し回った末に、いちばん目立つ建物の足元が答えだった。後日談の言葉遊び「キョウダイモトクラシ」は、この灯台下暗しにも掛かっている。
灯台の裏から入る地下の施設。長い一本の通路と3つの扉、噴霧のノズルや防護服の置かれた小部屋が続き、どの部屋も気圧が低く保たれている。
- 詳細
- デボラ製薬の本当の拠点。屋代兄弟も乃依とアルトも、幼いころはここで育てられた。8月15日の未明、小次郎がエフィと対決し、手術室で初海の遺体の正体が明かされる場所になる。小次郎は叩き壊してやると宣言したが、研究所は壊されるのではなく、強制捜査で押さえられて決着する。
地下研究所の最奥にある、窓のない一室。天井一面に空とペガサスの絵が描かれ、小さなベッドが2つと、ぬいぐるみや人形が置かれている。
- 詳細
- 乃依とアルトが同一人物として育てられた部屋で、屋代兄弟も同じ環境で8年間の「教育」を受けた。天井の空の絵は、外の世界を見せずに育てたことの証でもある。少女はこの部屋のベッドの下に隠れていて、ここで自分の本当の名前を名乗る。
沖岸島の北の草原に立つ、赤い屋根の建物。外壁のペンキが剥がれ、トタン屋根がめくれ上がったほとんど廃墟だが、いちばん奥の一室にだけ新しいパソコンが並んでいる。
- 詳細
- 約30年前、デボラ製薬はここから始まった。いまは表向きの施設にすぎず、本当の研究施設は灯台の地下にある。現役のパソコン部屋は屋代億斗の部屋で、サイバーテロと線条痕のデータの書き換えはここから行われた。ミカエルのボイスレコーダーの中身も、ここのパソコンに移して初めて聞くことができた。
沖岸島の北東、森を丸くくり抜いた空間の真ん中に建つ木造の小屋。玄関がそのまま居間につながり、靴を脱がない造りになっている。ビーグルとミニチュアシュナウザーの2匹の犬がいる。
- 詳細
- ここで小次郎とまりなが会った老婦人は、初海に成り代わった乃依だった。飼われているビーグルの母犬はVOJを宿していて、何度身ごもっても自分の複製を産み続ける状態にある。ラベイユの仔犬3匹と大五郎は、この2匹の子である。思想をめぐる長い対話の舞台にもなる。
沖岸島の高台にある廃墟の学校。木造の校舎と、正面の入口しかない体育館、校庭からなる。小次郎は校舎の保健室で、柱に縛られた状態で目を覚ます。
- 詳細
- 体育館はエフィが「テレポーテーション」を見せた場所で、まりなに扮したエフィの一人二役が演じられた。出入口が事実上ひとつしかない密室であることが、消失を成り立たせた。校舎の保健室はミカエルが自分の正体を明かす場所、校庭はエフィが連行される場所で、結末で小次郎とアルトが語り合う舞台にもなる。
デボラ製薬の地上の研究所の東にある丘。初海の手紙では「月の見える丘」と呼ばれる。ふもとは高さ7mほどの崖で、崖の下を研究所へ続く道が通っている。
- 詳細
- 「初海」が死ぬ場所であり、計画が完成するはずだった場所。8月13日の夜、乃依は初海の姿でまりなに全てを自白し、撃たれることを望んだが、まりなは空へ撃った。翌14日の夕方、乃依はここで自分の胸を撃ち、そのあとエフィがまりなに扮して空砲を撃つ芝居を、小次郎に見せた。
沖岸島の漁港のすぐ上にある旅館。枯山水の庭があり、番頭が観光案内の島の地図をくれる。まりなはここの2階に泊まる。
- 詳細
- 番頭は島の暦を疑いもしない島民の代表のように描かれ、まりなが最初に日付の食い違いに気づく場所になる。8月14日の夜には、番頭も従業員も姿を消し、旅館は無人になる。
沖岸島の隣の島で、観光が収入の中心。警察署があり、船で片道2時間ほどかかる。
- 詳細
- まりなはミカエルの遺体を中年の漁師に託してこの島の警察へ運ばせたが、6時間たっても警察は来なかった。漁師が初海の信者で、警察を呼んでいなかったからである。8月15日、氷室恭子が改めて漁船で渡って応援を呼んだことで、ようやく強制捜査が動き出す。
あまぎ探偵事務所のある一帯。対岸にビル群が見え、マネキン倉庫や桟橋、隅には廃工場がある。物語はここで、小次郎と少女が出会う深夜の場面から始まる。
- 詳細
- 小次郎はマネキン倉庫から桟橋へ逃げ、マネキンに二人の服を着せてボートに乗せ、囮として燃やして難を逃れた。この爆発が、まりなの側で語られる港の爆発にあたる。隅の廃工場は、大五郎が捨てられていた場所でもある。
噴水と木立のある公園。片隅に並ぶブルーシート小屋のひとつに、情報屋の三六九が住んでいる。小屋は自家発電でエアコンまで動いている。
- 詳細
- 首都圏が停電した夜、冷房のある三六九の小屋に小次郎たちが転がり込む。噴水の前で、少女は星の消えた空の下、クロノスの神話を語る。
街の中心の繁華街。大きなビルと商店街が並び、お盆には人がほとんどいなくなる。裏通りにはタトゥスタジオがあり、そこから2ブロック先の路地にクラブ『ハイヴ』がある。
- 詳細
- 表通りの繁華街の裏側に、組織の末端が並んで存在している。まりなはこの通りのオープンカフェで、本部長との会話に三六九を代役に立てる。
セントラルアベニューの裏通りの突き当たりにあるタトゥの店。まりなはここで『B』のタトゥの出所を探り、クラブ『ハイヴ』の名を聞き出す。
- 詳細
- 彫り師から、蜜蜂を表すものなら文字でも絵でもいいと教わったまりなは、蜜蜂の絵のシールを左肩の裏に貼る。ハイヴに潜り込むためのこのシールが、のちにまりなの無実を示す決め手になった。
このあたりで有名な10階建てのデパート。泥酔したまりなが屋上の人影を見つけ、非常階段を駆け上がる。まりなの物語はここから始まる。
- 詳細
- 屋上から落ちた青年は屋代那由太だった。手首を切ってから屋上に立ち、時間までにまりなが気づいてくれたら全てを話すという賭けをしていた。後日談では、弥生がこの屋上で尾行中の少女を見失ったと報告し、同じ屋上が何事もない日常の場所として描かれる。
表札も郵便受けもない古い洋館で、小湊龍司が人目を忍ぶために使う別宅。2階の書斎の書棚の裏に隠しリフトがあり、地下室へ下りられる。
- 詳細
- 1年前の誘拐事件と、本編の小湊殺害事件の両方の現場。1年前、小湊はここの地下室でアルトを傷つけ、小次郎はGPSを頼りに踏み込んだ。本編では、まりながエイプの家だと案内されてここに来て、同じ地下室で小湊の死体を見つける。
日銀襲撃事件でけがをした小次郎と、犯人4人が運ばれた病院。容疑者を収容する棟は9階建てで、二重の鉄格子のゲート、壁がゴムの病室、鉄格子の窓を備える。
- 詳細
- 8月10日の夜、9階から「乃依」が消えた。実際に消えたのは入れ替わっていた鐘本リエで、連れ出したのは母親の鐘本美奈代だった。無人のストレッチャーに死体が乗っているように見せかけて棟に入り、自殺した青年に会わせると言ってゲートを通り、娘を台に乗せて連れ出したのである。
高級住宅街にある家で、地下にマジックミラーで仕切られたレコーディングスタジオを持つ。家政婦がいる。8月12日の夕方、この地下の収録室で「大隈朋義」が撃たれる。
- 詳細
- 大隈名義の家には鹿取宏務が、鹿取名義の家には本物の大隈が住んでいた。大隈の名を騙って潜入するために、二人は住まいを入れ替えていたのである。同じ時刻、小次郎は前者で殺人を目撃し、まりなは後者で本物の大隈と向き合っていた。
日銀の新館の、公式の図面に載っていない地下4階にある部屋。停電のときに防犯の機能を保つための設備で、ここだけは電子ロックではなくアナログの鍵で閉まる。
- 詳細
- 犯人たちがこの部屋に立てこもったのは、ここで犯人4人と人質側の4人が服を取り替えて入れ替わるためだった。犯人側が地下4階の存在と鍵を知っていたことは、日銀の内部に協力者がいた証拠になる。
法条まりなの住むマンション。最上階の403号室がまりなの部屋で、天井がガラス張りになっている。隣の402号室には、親友の桂木弥生が住んでいる。
- 詳細
- 小次郎のかつての恋人で、まりなの親友で、ミゾグチの依頼を受けた探偵事務所の所長でもある弥生に、物語の三つの線が集まっている。その配置が、隣同士の部屋という形で示されている。
川幅の広い一級河川で、毎年8月12日に花火大会が開かれる。弥生の家の近くで、彼女が小次郎を誘っている。
- 詳細
- 8月12日の夜、小次郎は少女を花火大会に連れて行き、そこで少女は連れ去られる。同じ夜、まりなとミカエルは堤防で、大隈朋義が殺されたという知らせを分かち合う。
脳神経外科医の獅子渡が勤める病院。MRIとその制御室があり、停電のあいだも自家発電で動いている。
- 詳細
- 少女が密室のMRI室から消える場所であり、獅子渡が記憶喪失の原因をBLD-Vectamideだと突き止め、記憶を取り戻す薬を小次郎に渡す場所でもある。
8月10日の昼、日銀の本店に車2台が突っ込み、覆面の武装した犯人が営業場を制圧した事件。見学ツアーの子供15人が人質に取られ、犯人は地下4階の発電室に立てこもった。人質の子供たちが犯人からスタンガンを奪って全員を取り押さえ、死者は出なかった。
- 詳細
- 人質役の15人と犯人4人の計19人が、そろって仕組んだ芝居だった。発電室で犯人4人と人質側の4人が服を取り替えて入れ替わり、営業場からは3000万円が持ち出され、犯人の記憶喪失も演技だった。本当の狙いは金額ではなく、突っ込んだ車両2台を現場に残させることで、2日後にその車両がそのまま金塊の運び出しに使われた。
8月12日の未明、日銀の地下金庫から6トンの金塊が奪われた事件。今の価値で約90億円にあたる。
- 詳細
- 2日前の襲撃事件で現場に残された車両2台が、そのまま運び出しに使われた。前の夜のサイバーテロによる停電と予備電源の破壊で、警報は鳴らなかった。実行はジャガーノート、手引きは大隈朋義で、大隈は金塊の半分を自分のものにしていた。逮捕された大隈が隠し場所を残らず話し、金塊はすべて日銀に戻った。
8月11日の午後11時55分に起きた大停電。原発2基と火力14基の発電所が一斉に止まり、街の明かりが消えて、満天の星が見える夜になる。その日の昼には、内調の本部も一時停電していた。
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- ジャガーノートを率いる屋代億斗のサイバーテロで、インフラを遠くから操るSCADAシステムに侵入して起こされた。昼の内調の停電も同じ手口によるもので、その隙にまりなの銃の線条痕のデータが書き換えられた。停電は、翌未明の金塊強奪の下準備も兼ねていた。
サイバーテロの犯行声明に添えられた要求。8月14日までに全国の原発を止めなければ、15日の午前0時に首都圏西部の原発をメルトダウンさせるというもので、内調と公安を震え上がらせる。
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- 屋代億斗によれば、これははったりだった。本当に原発を操る手立ては無く、狙いは公安の足止めと、ブラーへの強制捜査を15日以降に遅らせることだった。その間に、初海の計画を最後まで進める時間を稼いだのである。
まりなと鐘本美奈代がかつて担当した事件。まりなが鐘本を許せない理由として何度もほのめかされるが、中身は長く伏せられる。小次郎のほうには、この事件の記憶がまるごと無い。
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- 前の年の夏、沖岸島で小次郎と出会ったアルトが小湊龍司に連れ去られ、洋館の地下室で腹部を切り裂かれた。GPSを追って踏み込んだ小次郎と、銃を構えたまりながその場にいた。まりなは壁を撃っただけで、小湊に3発撃ち込んだのは鐘本。小湊と内調の鹿取室長が組んで事件を闇に葬り、小次郎の記憶は消された。瀕死のアルトは生きていて、まりなが小湊と通じていると思い込み、その思い込みが本編の事件の出発点になった。
8月11日の夕方、小湊龍司が別宅の地下室で射殺されているのを、まりなが見つけた事件。胸に3発、薬莢はまりなの銃と同じ種類で、小湊本人が死の直前に、法条まりなに殺されると110番していた。
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- 撃ったのは紀瀬木乃依。まりなを犯人にした証拠は、すべて作られたものだった。線条痕は内調のデータベースの照合用のデータのほうが書き換えられ、110番の声は変声器があれば作れる。まりながこの屋敷へ誘われた経路は、大隈から鐘本リエへ、そしてアルトを名乗る乃依へという指示の連なりだった。
8月12日の夕方、大隈邸の地下の収録室で、大隈朋義が眉間を撃たれて殺された事件。マジックミラー越しに調整室から目撃した家政婦が、写真からまりなを犯人だと証言した。凶器の弾は、まりながミカエルから借りた拳銃と同じ種類だった。
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- 殺されたのは大隈ではなく、大隈の名を騙ってブラーに潜入していた公安の鹿取宏務で、撃ったのはまりなに変装した乃依だった。大隈が鹿取を裏切って密告し、組織が鹿取の抹殺を決めた。小次郎が殺人を見た家と、まりなが本物の大隈と向き合っていた家は別で、二人は同じ時刻に別の場所にいた。
8月10日の未明、デパートの屋上から青年が落ちた直後に、港の方角で起きた爆発。鐘本が朝早くから確かめに出るが、まりなの側ではそれ以上追われない。
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- 小次郎が追っ手をかわすために、マネキンに服を着せてボートに乗せ、燃やした囮だった。翌朝の現場で、小次郎は名乗らないエフィと初めて顔を合わせる。
公安と内調が準備していた、ブラーの本拠への一斉捜査。第六機動隊を主力とし、鐘本美奈代が当面の指揮を任されている。メルトダウン声明は、これを遅らせることを狙っていた。
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- 8月15日、氷室が漁船で隣の島へ渡って呼んだ応援によって、ようやく実行される。研究所が押さえられて職員は全員逮捕、ブラーの主宰も逮捕され、ミカエルの遺体も収容された。これでまりなの容疑は晴れる。
核移植で作られる、遺伝的に同じ個体。エフィはラベイユの仔犬3匹を、父がミニチュアシュナウザーなのに純粋なビーグルとして生まれた、母犬のクローンだと明かす。
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- 紀瀬木家の人々は、クローンで結ばれている。エフィは初海のクローン、乃依とアルトは36年前に殺された双子の耳から取った細胞で作られたクローンで、どちらも代理母は露崎真由美だった。露崎自身は、自分が産んだのがクローンだと知らされていなかった。
染色体の両端にある塩基の並びで、細胞が分裂するたびに短くなる。エフィが自分の余命について話すときに持ち出す。
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- クローンは、元の人のそのときのテロメアの長さを受け継ぐため、寿命が短くなる。エフィの余命が長くないのはそのためで、計画を急いだ理由のひとつになった。
記憶を失った少女の症状の原因として、獅子渡が突き止めた薬。デボラ製薬が極秘に開発したもので、脳の受容体に働いて、記憶を呼び出せなくする。消すのではなく、取り出せなくする薬である。
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- 作中で何度も、決定的な場面で使われる。1年前に鐘本が小次郎に打って記憶を奪い、アルトは姉を止めるために自分の体に打ち、8月13日には「初海」がまりなに打って3時間の記憶を奪った。乃依は特別な拮抗薬で、成り代わっているあいだも自分の記憶を保っていた。
Vectamideの効き目を打ち消す薬で、失われた記憶を取り戻せる。獅子渡が注射器を3本、小次郎に渡す。効き目が出るまで約4時間かかり、副作用は無い。
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- この3本が終盤の謎を解く鍵になった。少女に、小次郎自身に、そしてまりなに打たれ、4時間後に記憶が戻るまでの時間が、そのまま結末へのカウントダウンになる。獅子渡は自分にも打って記憶を取り戻しており、彼もまた記憶を操作されていたことになる。
肌に密着する変装用のマスク。長くつけても肌が荒れず、見た目も手触りも本物に近い。ミカエルは、まりなの脱走のために老婆のマスクとウィッグをそろえて差し入れる。
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- 本作の仕掛けの中心にある道具。まりなの顔をもとに作られたマスクで乃依がまりなに化けて鹿取を撃ち、エフィも同じマスクでリネンボックスの囮と体育館の一人二役を演じた。乃依が初海に成り代わるのに使った皮膚も同じ素材で、手術室の遺体は死斑が出ていなかったことからその皮膚が剥がされ、下からアルトの顔が現れた。
ドイツのメーカーが作った、出回っていない機器。声帯に小さなパッチを貼って微弱な電流で声の高さを変え、設定しだいでどんな声も出せる。ミカエルが老婆のマスクと一緒に、まりなに渡す。
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- 小湊が死の直前に法条まりなの名を挙げた110番の声も、これがあれば作れる。乃依が初海の声で組織を動かせたのもこの機器のためで、手術室の遺体の胸元からこれが見つかったことが、成り代わりの物証になった。
弾丸に刻まれる、その銃だけの痕と、それを照らし合わせるためのデータ。小湊の遺体から取り出した弾がまりなの銃と一致したとされ、彼女を犯人とする最大の証拠になる。
- 詳細
- 書き換えられていたのは弾ではなく、照合に使う元のデータのほうだった。8月11日の昼に内調の本部が停電した隙に、屋代億斗がデータベースに入り込み、初海の指示で書き換えていた。
まりなが8月12日の昼過ぎ、ハイヴに入るために左肩の裏に貼ったシール。ハートの槍を持った蜜蜂が陽気に踊る絵柄で、こすらなければ2〜3日はもつ。
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- まりなの無実を示す、決定的な証拠になった。同じ日の夕方、小次郎が収録室で見た「まりな」の左肩には、このシールが無かった。貼りっぱなしだった本物のまりなが、現場にいたはずはないのである。潜り込むための小道具が、そのまま不在の証明になった。
紀瀬木エフィが身につけている香り。鼻のきく小次郎は、行く先々でこの香りに気づく。小次郎の事務所とラベイユの応接室には、ラベンダーの鉢植えも置かれている。
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- 初海とエフィと乃依が、同じ香りを身につけていた。現場に残り香があれば紀瀬木家の誰かがいたことにはなるが、3人のうち誰かまでは絞れない。だから小次郎のエフィ犯人説は、エフィ本人の問い返しで崩れる。後日談の最後に小次郎の鼻先をかすめる香りが誰のものかは、書かれない。
ホテルでシーツを運ぶ、キャスター付きの箱。包囲されたホテルで、まりなを隠すために「アルト」が用意した。
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- エレベーターの消失の仕掛けに使われた。まりなのマスクを着けたエフィがこの中に隠れて囮を務めていて、用意したのは初海、運び込んだのはミカエルだった。
ミカエルが記者として常に持ち歩いている録音機。死の間際、ミカエルは車のダッシュボードにそれを入れておいたと、まりなに告げる。
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- 録音には、鹿取と大隈が入れ替わっていたこと、大隈の裏切りと密告、トラックを運転している男こそ本物の大隈だというミカエルの声が残っていた。肝心の犯人の名前を言う直前で録音は途切れるが、その後ろには、大隈がミカエルを撃つ瞬間の声と、金のためだけに動いていたという大隈の本音までが入っていた。
投身する直前の青年が胸元から引きちぎり、まりなに託した品。もう一度会ったときに自分に渡してほしいと言い残された。
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- 青年は屋代那由太で、渡してほしい相手は、体を分け合う兄の億斗だった。まりなは沖岸島で億斗にこれを渡し、翌日も億斗がそれを持っていたことが、島の暦を見破る決め手のひとつになる。億斗は、これを握ると計画を止めてほしいという弟の気持ちが伝わる気がしたと言い、真相を話す決心をした。
記憶を失った少女の左の太ももの内側に、本人の筆跡によく似た字で書かれていた言葉。小次郎は「アルト」という名に、どこかで聞いたような引っかかりを覚える。
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- アルトが、記憶を失ったあとの自分に宛てて書いた伝言だった。組織に背いて逃げ、姉を止めるために自分の体に記憶を消す薬を打つ前に、目覚めた自分がすべきことを書き残したのである。結末では、同じ太ももに同じ筆跡で、1行のメッセージが記されている。
記憶を失った少女が薬指にはめていた、蜜蜂の形の小さな銀の指輪。ラベイユの門柱の紋章と同じ意匠で、施設を突き止める最初の手がかりになる。小次郎は依頼料の担保としてこれを預かる。
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- 灯台の裏の扉の操作盤には同じ紋章のくぼみがあり、この指輪をはめて回すと、地下研究所への扉が開く。結末で、小次郎は預かっていた指輪をアルトの薬指にはめて返す。依頼の担保が持ち主に戻ることで、物語の輪が閉じる。
日銀襲撃犯の男の子3人の右の二の腕にあった、アルファベット1文字だけのタトゥ。街の若者のあいだで流行っていて、体のどこかに入れればハイヴの一員と見なされる。
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- 『B』はBee、つまり蜜蜂のこと。蜜蜂を表すものなら絵でもよく、初めは絵だったが、中高生の仲間が増えるにつれて安上がりな1文字が広まった。投身した那由太の左手の平にあったのは、蜜蜂の絵のタトゥだった。後日談では大五郎の耳の裏にも「B」の1文字が見つかるが、その意味は説明されない。
エフィが小次郎に貸した、ラベイユができてからの在籍者全員の名簿。直近10年分には顔写真が付いている。小次郎は返しそびれたまま、事務所に置いていた。
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- これが鐘本リエの身元を割り出す手がかりになった。警察病院に収容された少女がラベイユの出身で、3年前に鐘本家に養子に入っていたことが、ここから分かる。
弥生が小次郎に持たせた携帯電話で、居場所を地図の上に表示できる。少女はそれを自分の御守りだと言って手放さない。
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- 1年前、小次郎は写真を撮るためにこれをアルトにひと晩貸し、彼女がさらわれたあと、弥生にGPSを追わせて洋館を突き止めた。アルトがこれを御守りと呼んだのは、1年前に小次郎が本当に助けに来たことを覚えていたからだった。沖岸島では、乃依がこのケイタイの日付を書き換えていた。
物語の最初、倉庫街で黒服の男が小次郎に投げ渡した口止め料。小次郎はケイタイの動画から、銀行と支店と名義人の文字を読み取る。
- 詳細
- 名義人が大隈朋義だったことから、事件は日銀とブラーへつながっていく。1枚の小切手から中央銀行の襲撃までが1本の線で結ばれる、本作の入口の仕掛けである。
物語の最初、小次郎が深夜のスーパーで買い、蜜蜂に驚いて落とした果物。少女がひとつ拾って、海へ投げ捨てる。翌日、少女は返しに来たと言って、同じ果物を持って現れる。
- 詳細
- 沖岸島の果樹園にある時計草の実と同じもので、乃依とアルトは島でそれをかじって遊んでいた。記憶を失った少女が果物を海へ投げた仕草は、故郷の島の記憶のかすかな名残として置かれている。
本土と沖岸島を結ぶ小型の飛行機。ミカエルが操縦してまりなを島へ運び、エフィもこれで島に来る。島の漁港に係留されている。
- 詳細
- 終盤、大隈がアルトを乗せてこの機体で島を出ようとし、小次郎は滑走中の機体に飛びついてアルトを奪い返した。反転して突っ込んできた機体のエンジンを、小次郎はグロックの最後の1発で撃ち抜き、機体は燃えて海に沈んだ。大隈は爆発の直前に脱出して生きていた。
天城小次郎の愛用の拳銃。装弾数は15発で、予備の弾倉は持たず、初弾は装填しない主義を通している。
- 詳細
- 本作の決着は、この銃の残りの弾の数で組み立てられている。沖岸島で残り2発になり、最後の1発で、突っ込んでくる水上飛行機のエンジンを撃ち抜いた。
原発や発電所、変電所、ガスや水道など、インフラを遠く離れた場所から見張り、操るためのプログラム。
- 詳細
- 屋代億斗によれば外からの侵入にきわめて弱く、彼はこれを破って首都圏を停電させた。メルトダウン声明もこれを盾にした脅しの形をとったが、原発を実際に操る手立ては無かった。
クラブ『ハイヴ』のDJで、若者たちのカリスマ。とりわけその言葉に皆が心酔していて、人類の救済を語るという。本名も住まいも素性も分からない。
- 詳細
- 正体は屋代億斗。名前はイタリア語で蜜蜂を意味するアペが由来で、綴りが同じためにエイプと読まれるようになった。まりなは自殺した青年をエイプだと結論するが、それは誤りで、落ちたのは弟の那由太だった。島でまりなに語った時空の歪みや未来の話は、すべて嘘だった。
8月9日の夕方、約束も無しに桂木探偵事務所を訪れ、少女の捜索を頼んだ中年の女性の名乗り。連絡は非通知で、総額10万USドルという法外な報酬と引き換えに、素性を詮索しないことを条件にした。
- 詳細
- 正体は露崎真由美。ブラーの婦人部長でラベイユの職員、そして乃依とアルトを産んだ代理母だった。組織に背いた彼女は、記憶を失ってさまようアルトを守るために、この依頼を出していた。別の探偵社にも、アルトの捜索を頼んでいた。
日銀の発電室で入れ替わり、警察病院に収容された少女に付けられた呼び名。写真の少女が五月病にかかった雪国のお姫様のような顔をしていることから来ていて、ジャガイモの品種名でもある。小次郎は「Q」とも呼ぶ。
- 詳細
- 正体は鐘本美奈代の娘の鐘本リエ。ラベイユの出身で、3年前に鐘本家の養女になった。まりなを小湊の別宅へ案内させた張本人でもあり、8月10日の夜、母親の手で警察病院から連れ出された。
沖岸島の港で、警告もなく小次郎をサブマシンガンで撃ってきた敵。戦闘服に目出し帽で顔を隠し、一言も発しない。
- 詳細
- 正体は本物の大隈朋義。氷室を盾に取って逃げ、ミカエルを射殺し、アルトをさらい、崖のふちで追い詰められても、最後まで口を開かなかった。
中央公園のブルーシート小屋に住む女性の情報屋のコードネーム。小次郎は「サブロク」と呼ぶ。小屋の中はアンティーク調で、自家発電でエアコンまで動かしている。
- 詳細
- 三六九は本名ではなく、もとは店での源氏名だった。大隈の住所やラベイユの名の意味、ミゾグチの二重の依頼をつかんでくる。まりなの代役を務めて第六機動隊に捕まり、それきり姿を見せない。
桂木弥生の父で、桂木探偵事務所を作った人。小次郎はその下で長く働いた。故人で、作中には登場しない。
- 詳細
- 小次郎と弥生の関係や、小次郎が探偵になったいきさつの背景として名前が出るだけで、本人の姿は描かれない。
小次郎の飼い犬。倉庫街の廃工場に捨てられていたのを、梅雨のどしゃ降りの日に拾った。名前は「小次郎」と合わせて「小五郎」になるから。
- 詳細
- 初海の小屋の、VOJを宿したビーグルの母犬から生まれ、母の複製にならずに雑種として生まれた「25%の失敗」だった。隠すために研究員が島の外へ捨てたのである。結末では、この犬こそがVOJは完全ではないという証になり、後日談で耳の裏に「B」の一文字が見つかる。