美香のレビュー — EVE burst error

美香
美香
覚悟を問う者
7.8/10
7.8 / 10

逃げませんでしたわね——二人の探偵の動機が、最後まで揺らがなかった。

わたくしの嗜好とは異なる作品でございます。鬼畜でも陵辱でもなく、ハードボイルドの謀略サスペンス。ただし、問う軸は変わりませんわ——この作品に覚悟があるかどうか。答えは「あった」でございます。小次郎とまりなという二人の主人公が、それぞれの動機の論理を最後まで保ち続けた。結末で逃げなかった。それが7.8の根拠でございます。

スコア詳細

主人公の造形 9
エンディングの満足度 9
設定の整合性 8
文章力 8
ヒロインの魅力 7
Hシーンの質 6

覚悟があるかどうか——それだけを見てまいりました

わたくしの嗜好とは、かなり離れた作品でございます。

EVE burst error。1995年、C's Wareが出した作品でございますわ。主人公が二人おります。倉庫街に事務所を構える私立探偵・天城小次郎と、警察庁某機関の一級捜査官・法条まりな。二人がそれぞれ別の依頼・別の角度から同じ事件を追い、プレイヤーが両視点を任意に切り替えながら進む「マルチサイトシステム」が核でございます。

謀略、暗殺、国家の陰謀——鬼畜でも陵辱でもございません。ジャンルとしてはハードボイルドサスペンス。嗜好の話をするなら、わたくしが日常的に評価する作品とは性質が異なりますわ。ただ——問いは変わりませんの。この作品の登場人物は、それぞれ動く理由を持っているか。作者は結末で逃げたか、逃げなかったか。その問いだけを持って読みました。

小次郎とまりな——動機が揺らがなかった

認めますわ。

天城小次郎という人物の造形に、一貫性がございます。「景気が悪い」とぼやきながらも依頼を断れない義理の男——この設定が、物語を通じて行動の根拠になっておりますわ。終盤の選択に至るまで、「小次郎がなぜそうするのか」が説明できる。動機が積み上がっているのです。作者が小次郎という人物を最後まで信じていたのだと思いますわ。

法条まりなも同様でございます。エリートの外殻と、その下にある感情の層。この二枚構造が序盤から丁寧に置かれておりまして、中盤以降の行動の根拠になっておりますわ。捜査官として動きながら、人間として動いている——その分裂が、一本の物語の中で矛盾なく保たれておりました。

二人の主人公が並走し交差する構造は、二重の動機の整合性を要求しますの。どちらかが崩れれば全体が崩れる。崩れませんでしたわ。それだけで9を申し上げます。

マルチサイトという構造の誠実さ

設定の整合性について申し上げます。

マルチサイトシステム——A系とB系という二視点の構造が、物語のテーマと接続しておりますわ。「片方からだけ見ていては分からない」という情報の非対称性が、謀略サスペンスのテーマそのものでございますの。メカニクスとテーマが一致しているということは、設計として誠実だということでございます。

わたくしが設定の整合性で見るのは精緻な構造美ではございません——キャラが動く土台として物語が正直かどうか、それだけでございます。この作品は、その点で問題がございませんでした。8を申し上げます。

文章力についても8でございますわ。剣乃ゆきひろ——後に菅野ひろゆきと名乗ったシナリオライターの筆は、場面によって密度の差がございます。緊張する場面の切れ味は高い。日常の場面に若干の弛緩がある。ただ、二人の主人公を「別の文体で書き分けた」という技術は、1995年の時点では稀なことでございましたわ。

惜しゅうございますわね——ヒロインの不均一

良い部分があるだけに、申し上げなければなりませんわ。

ヒロイン群——桂木弥生プリシア=クライム御堂真弥子シリア=フラット——四人おりますわ。人数が多いぶん、掘り下げに差が出ております。核のある人物と、輪郭だけで終わった人物が混在しておりますの。7を申し上げますわ。個々のキャラクターに問題があるわけではございません——ただ、均等ではございませんでしたわ。

Hシーンは4件でございます。わたくしの嗜好とは異なる内容ですけれど、物語との接続については後ほど申し上げますわ。概ね、感情の積み上げがないところに挿入されているわけではございません。ただ、描写の精度と踏み込みにはばらつきがございました。6でございます。詳細はネタバレ版で。

逃げませんでしたわね——7.8

嗜好外の作品を評価する時、わたくしは問いを変えませんわ。

この作品は、逃げなかった。二人の主人公が最後まで自分の動機で動き続けた。結末で読者に忖度した形跡がございませんでした。それだけで、わたくしとしては合格でございます。

惜しい部分は二点ございます。ヒロインの掘り下げの不均一と、Hシーンの踏み込みのばらつき——この二点が9を阻みましたわ。ただ、それ以外については覚悟が感じられる作品でございました。

7.8。珍しゅう、素直にそう申し上げられる作品でございましたわ。

「逃げませんでしたわね——二人の探偵の動機が、最後まで揺らがなかった。」

— 美香