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美香のレビュー — EVE burst error(ネタバレあり)

美香
美香
覚悟を問う者
7.8/10
7.8 / 10

逃げませんでしたわね——二人の探偵の動機が、最後まで揺らがなかった。

ネタバレあり版では、真弥子の正体と動機の論理、各Hシーンの動機評価、源三郎の最期とまりなの覚悟の連鎖、そしてTrue Endで作者が逃げなかった根拠を論評いたします。

スコア詳細

主人公の造形 9
エンディングの満足度 9
設定の整合性 8
文章力 8
ヒロインの魅力 7
Hシーンの質 6

「μ-101」という存在——動機の正体

ネタバレ版で最初に申し上げなければならないのは、御堂真弥子という存在についてでございます。

エルディア大使の娘。エール外国人学校の生徒。慢性の「糖尿体質」を抱える黒髪の少女。それがわたくしたちに見せていた表向きの顔でございます。正体はμ-101有機ヒューマノイド。プリシアの遺伝情報を元に培養液で急成長させた人造体であり、前エルディア国王の意志を移植された存在。実年齢は1歳でございます。

「完成された[μ-101]有機ヒューマノイド……それがお前だ」。True Endでこの台詞が来た時、わたくしはしばらく止まりましたわ。

この正体は、物語における動機の構造を根本から変えてまいります。真弥子が「テラー」の名で邪魔者を排除してきたのは、前国王の意志体としての一貫した動機がございましたの。自らの即位のために、障害となるものを消す。御堂一さえも、その手で命を奪われていきます。残酷な話ですけれど、論理として筋が通ってございますわ。

わたくしが覚悟を問う時、最初に見るのはここでございます。この人物は、自分の動機の論理を最後まで保てているか。真弥子は保っておりましたの。そして最終局面で、その動機が「皆と笑いたかった」という人間としての言葉に収束する。ここで初めて、真弥子という存在が人造体から人間へという変容を完了いたします。

この変容に論理はあったか。ございましたわ。インシュリンで抑制されていた時間、真弥子の外殻人格は普通の少女として学校に通い、日記を書いておりましたの。その時間が積み上げた「普通でいたかった」という感情が、最後の覚悟の根拠になっております。これは設計として誠実でございます。

動機から評価するHシーン——4件の精度の差

わたくしの嗜好とは異なる内容ですけれど、動機の積み上げという軸は変わりませんわ。

まりな×桂木源三郎(まりながオジサマと呼んでいた人物)から申し上げます。B系でのオジサマとの感情線は、序盤から丁寧に積み上げられておりますの。「鈴木源三郎」という偽名の紳士とまりなの関係がこのシーンに至る動力でございます。正体が判明した後に読み返すと意味がまた変わります。4件の中でこのシーンが最も動機の論理として誠実でございましたわ。

弥生×小次郎(事務所)は、元恋人の復縁という文脈でございます。A系で積み上げた「冷たい応酬から接近へ」という流れの到達点として、論理に問題がございませんでしたわ。

弥生×小次郎(船上)については、プリン乱入の件はチエが詳しく申し上げておりますので、わたくしは動機の側から一言だけ。復縁の意志として、元恋人の関係が船上という非日常でも継続していることを示しており、一貫しておりましたわ。

シリア×小次郎。脱獄後の状況という力学が根拠でございます。ただ、感情の積み上げとしては薄うございましたわ。シリアという人物の内面がもう少し掘り下げられておりましたら、このシーンの踏み込みも深くなったはずでございます。ここが全体を6点に留めた要因でございますわ。

覚悟は連鎖いたします——源三郎とシリアの最期

桂木源三郎という人物について申し上げます。

「テラー」の実行部隊を編成した男。弥生とシリア、二人の娘を持つ父親。小次郎の師。「鈴木源三郎」として偽名を使い続けた男が、爆発で脚を挟まれ、シリアを抱きながら水没していく。その最後に語られた願いは、もう一人の娘・弥生のことでございましたわ。

わたくしはここで止まりましたの。この人物は、すべての罪を一人で抱えたまま逝くことを選んでおります。シリアに「お前のことが心配だ」とは言わない。弥生への言葉だけを最後に残す。この選択に、覚悟がございますわ。

そしてその最期が、まりなの動機に積み上がります。「もうこれ以上、誰も死なせない」というまりなの決意は、源三郎の最期を看取った後に来る言葉でございます。覚悟は人から人へ連鎖いたしますのね。源三郎の覚悟がまりなを動かし、まりなの動かし方が小次郎の義理と交差する。二人の主人公がなぜ最後まで動き続けられたかを考えた時、わたくしはここに根拠を見ます。主人公の造形に9を申し上げた根拠の一つは、この連鎖が崩れなかったことでございます。

「皆と笑いたかった」——作者は逃げませんでしたわ

True Endの核心について申し上げます。

船倉に閉じ込められた四人。酸素ボンベが三本しかない。真弥子は自分のボンベを譲り、一人で海中へ飛び出して救援を呼びに行きます。「皆と笑いたかった」。それが彼女の最後の言葉でございます。

作者はここで、真弥子に都合の良い救済を与えませんでしたわ。μ-101として、プリシアの遺伝情報から生まれた存在として、前国王の意志を継ぐ者として、すべてを抱えたまま海の中へ消えていく。

覚悟がございましたわね。

「皆と笑いたかった」という言葉は、μ-101という人造体が最後に発した人間としての本音でございます。前国王の意志体がどれだけ殺戮を繰り返しても、その外殻の中で「普通でいたかった」少女が、ずっとそこにおりましたの。この言葉ひとつに、物語全体の答えが詰まっておりますわ。

脳細胞の破壊が進んでいながら、生命機能だけは「眠り」として維持されるという結末の扱いについて、一言申し上げますわ。これは「逃げ」ではないかとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんの。わたくしの見方では、逃げではございません。プリシアが妹の罪を背負いながら女王として統治し続けるという収束と、真弥子が眠りの中で目覚めを待つという宙吊りが共存しているのは、完全な解放を与えないという選択でございます。作者は読者に忖度いたしませんでしたわ。

エンディングの満足度に9を申し上げたのはこのためでございます。そしてこの評点を支えた最大の根拠は、作者が逃げなかったということ一点でございます。

「逃げませんでしたわね——二人の探偵の動機が、最後まで揺らがなかった。真弥子もまた、最後まで逃げませんでしたわ。」

— 美香