ストーリー詳細 — EVE burst error
本作はマルチサイトシステムを採用した2視点進行型のミステリADV。プレイヤーは小次郎篇とまりな篇を任意のタイミングで切り替えながら同じ事件を別視点から追体験できる。両篇を完走すると合流章を経て真エンドに到達する構造。 ▼詳細を読む はネタバレを含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。
物語の始まり — 2人の探偵と1つの街
舞台は東京湾沿いの架空の港湾都市セントラル・アベニュー。倉庫街の一角に居を構える私立探偵天城小次郎と、警察庁某機関の1級捜査官法条まりな——この2人の探偵が並走する12月初旬の数日間が、本作の全時間軸である。両者は互いの存在を最初は知らず、別々の事件・別々の依頼人に振り回されながら、知らないところで結ばれていた糸の対角線を辿っていく。
頭痛薬を切らした事務所、深夜の図書館、汚れた古書、そして奪われたシルクスクリーン版画原版——伏線は静かに敷き詰められ、やがて港に停泊する豪華客船トリスタン号で、すべての糸が結ばれていく。
小次郎篇 Ending I(準バッドエンド)
私立探偵天城小次郎視点。12/2深夜、事務所で頭痛薬を切らした小次郎が、ふと床に倒れていた金髪の小娘(後のプリシア)を拾うところから始まる。翌朝、ルポライターの幼馴染・柴田茜が「金になる仕事だぞ」と中華系成金孔からの絵画捜索依頼を持ち込み、小次郎は紹介料50万円を毟られながら受託する。
序盤(依頼受託〜倉庫街探索):情報屋グレンに絵画の素性を調べさせると「二束三文のクズ品」と判明。怨恨筋を疑う助言を受けた小次郎は、元恋人で私立探偵の桂木弥生とその所員二階堂と捜査線で衝突しながら倉庫街を洗っていく。図書館では監視機構捜査員氷室恭子と接触し、銃で脅されたり捜査同盟を組んだりと不安定な関係を結ぶ。
中盤(事件の連鎖):事務所に侵入してきた女・シリア=フラットと賭けの末に身体の関係を結ぶが、弥生に踏み込まれて修羅場となる。二階堂が「Mへ至急連絡を乞う」のメモを残してプリンセス・ホテルで殺害される。エール外国人学校では校長ストールマン=孔が応接室で首を切られて死亡。ディーブもまたプリシアの船室で殺害される。各事件は《テラー》の名で呼ばれる暗殺者によって連結されている。
終盤(豪華客船トリスタン号):女王戴冠式が行われるトリスタン号に乗船した小次郎は、機関室で御堂真弥子と二人篭城する。船尾デッキで打ち上がる花火の下、真弥子は小次郎に「私と、結婚して」と告白。小次郎は「わかった‥‥」と受諾する。同じ夜、首相アクア=ロイドがバスルームで喉を一突きされて殺害され、右指で血文字「d」を残す。
「【真弥子】私と、結婚して。」
「【小次郎】わかった‥‥」
— 船尾デッキ・花火の下のプロポーズ
クライマックス(船倉密室):ディーブが船底に仕掛けた爆弾が起爆し、トリスタン号は海溝の縁に引っかかり傾いていく。船倉に閉じ込められた小次郎・まりな・プリシア・真弥子は4本の酸素ボンベを共有し脱出を計る。最年少にして最も泳ぎが達者な真弥子は自ら海中へ飛び出し救援隊を呼び戻すが、浸水と崩壊で残るボンベは3本。真弥子は自分のボンベを譲り、外で待っていた仲間に「私を覚えていて」と告げて消える。
エンディング:小次郎はプリシアの女王即位を見届けながら、真弥子の最期を看取った。桂木源三郎は爆発で死亡。真弥子は海中脱出後、生命機能のみが「眠り」として維持される。小次郎は弥生のもとへ戻る含みで幕——だが、真弥子の真相も《テラー》の正体も、A単独完走では完全には明かされない。「Try again 'Mayako' Scenario」の英文だけが残る。
小次郎篇では真弥子の正体・前国王の意志体・[μ-101]の真相は断片的にしか開示されない。プレイヤーは謎を抱えたまままりな篇または「Mayakoシナリオ」へ進むよう促される。
まりな篇 Ending II(準バッドエンド)
1級捜査官法条まりな視点。同じ12月初旬の数日間を、警察庁本部のエリート捜査官の目から再演する。本部長から命じられた任務は「御堂真弥子の身辺警護」。エルディア大使の娘である女子高生を護衛するという公務が、やがて国家の闇へとまりなを巻き込んでいく。
序盤(任務開始〜オジサマとの出会い):まりなは小次郎の事務所に潜入し御堂大使のレベル7書類を発見する——「あの不法侵入者は、天城小次郎!?」。本部長から正式に護衛任務を受けた直後、まりなは「鈴木源三郎」と名乗る初老の紳士と出会う。「オジサマ」と呼んで慕う相手は、保険会社調査員を名乗りながらも、どこか戸籍上に存在しない雰囲気を漂わせていた。
中盤(捜査と恋愛の並走):幼馴染の弥生から「彼(小次郎)が謝りに来た」恋愛相談を受け、街を歩く真弥子のインシュリン注射を疑い真弥子に叩かれるなど、まりなは事件と日常の境目を行き来する。シリアによる真弥子拉致事件をオジサマと連携して阻止。図書館・廃ビル・プールでオジサマと密接に関わるうち、まりなは彼に深い恋愛感情を抱くようになる。
「鈴木」の正体露見:プールサイドの夜、まりなは「鈴木源三郎さんは、戸籍上存在しないわ」とオジサマに告げる。「その通り」と返す彼は、自分が桂木源三郎本人——つまり弥生の父であり、小次郎の師であることを暗黙に認める。「私の、息子のような男ですよ。ほとんど全てのことを教えました」。まりなは弥生の母代わりとして弥生の写真を彼の部屋で見たことがあるという伏線を回収する。プールから部屋へ場所を移し、まりなはオジサマに「愛してとは言わない。けれど、強く‥‥私の身体が砕け散るくらい、強く抱いて!」と求めて結ばれる。
《テラー》の真相:本部長から携帯通信で《テラー》の正体が告げられる——「《テラーというのは、実体の無い殺し屋だ。旧エルディア情報部の、実行部隊の別名さ》」。同時にまりなはアクア=ロイド首相暗殺計画と、自身を陥れようとする監査部・香川の動きを察知し、人質ジョークを演じて窮地を切り抜ける。
終盤(第2機関室):戴冠式当日、トリスタン号の第2機関室で爆発が発生。まりなは桂木源三郎とシリアの最期に居合わせる。桂木は脚を挟まれて水没、シリアは御堂の銃弾を受けて出血死する寸前。シリアは桂木の腕の中で「私のお姉さんのこと、聞かせて」と頼み、姉・弥生の物語を聞きながら息絶える。桂木自身は最後の力で「弥生‥‥‥‥やよいぃぃぃぃぃぃっ!!!!」——会えなかったもう一人の娘の名を絶叫しながら窒息死する。
「【まりな】オジサマ‥‥イヤよ‥‥イヤよ、イヤイヤ!」
「【まりな】弥生に‥‥私、何て言えばいいの!?」
— 桂木の死を看取った直後の慟哭
エンディング:まりなは御堂大使の逮捕を完遂し、爆破からの脱出と真弥子の自己犠牲を見届ける。本部に復帰するが、オジサマを失った傷だけは公僕の鎧では覆い切れない。Bルート単独完走では真弥子の真相と[μ-101]の正体は不完全にしか開示されず、画面には「Try again 'Mayako' Scenario」の英文が残る。
まりな篇では《テラー》の組織的構造・桂木源三郎の編成者責任・御堂の動機までは語られるが、「真弥子=[μ-101]」「前国王の意志体」「Cプロジェクトの全容」は依然として謎のまま。AB共通章と真エンドへ続く。
共通章 — 4人の密室 A+B合流
小次郎篇とまりな篇のクライマックスが合流する章。トリスタン号の爆破・浸水によって、小次郎・まりな・プリシア・真弥子の4人が船倉に閉じ込められる。残された酸素ボンベは4本——という算術が、本作で最も静かで最も残酷な数式となる。
密室の設定:ディーブが船底に仕掛けた爆弾が起爆し、トリスタン号は海溝の縁に引っかかって傾いていく。船倉では浸水が進行中。4人は「最年少にして最も泳ぎが達者」な真弥子の提案で、まず彼女が海中に飛び出して救援隊を呼び戻す作戦を採る。真弥子は冷たい海へ消え、無事に外の救援隊と合流する。
誤算:真弥子が戻ってくると、船倉の崩壊と浸水が予想以上に進み、残された酸素ボンベは3本しかない。4人で脱出するには1本足りない。その瞬間、真弥子は静かに自分のボンベを外す。
「【真弥子】私‥‥最後まで笑っていたい‥‥笑って幸せになりたい。」
「【真弥子】私を覚えていて‥‥ここにいたわ。いたの!」
— 船倉密室、真弥子の最期の言葉
真弥子の自己犠牲:真弥子は自分のボンベを譲り、最年少として、最も実年齢が短い者として、最も「人として笑いたかった」者として、自ら海の闇に身を投じる。「みんなと一緒に笑いたい、一緒に喜びたい」——真弥子の日記でも繰り返されたこの願いは、最期の場面で「皆と笑いたかった」という過去形に変わる。
桂木源三郎の死:同時刻、第2機関室では桂木源三郎が爆発で脚を挟まれ、シリアを抱きながら水没する。最後の言葉は「弥生‥‥‥‥やよいぃぃぃぃぃぃっ!!!!」——もう一人の娘・弥生の名前を絶叫して窒息する。彼の最後の願いは、まりなを通じて遠い場所にいる弥生に届くことになる。
プリシア即位:救出された3人と共に、プリシアはエルディア共和国の正式女王として戴冠式を完遂する。だが彼女が背負うのは王権そのものではなく、妹であった真弥子の罪と功績の総体である。
真エンド — Mayakoシナリオ Ending III / True End
A・B両篇を完走後に解放される真の終章。本作最大の真相「御堂真弥子=[μ-101]有機ヒューマノイド/前国王の意志体」がここで全面的に開示される。真弥子の日記と内面を追いながら、12/2〜12/7の数日間を彼女の視点で再演する形式を取る。
真弥子の日記:12/2、真弥子は「暗く深い海底に、ただ独り囚われる人魚姫」が自分である夢を繰り返し見る。窓ガラスに映った自分の顔を「とても、みにくい顔をしていた。憎しみにゆがんだ醜い顔‥‥あれは人の顔じゃない。悪魔よ、そして恐怖」と書く。インシュリン(細胞安定剤)が切れる時間帯、彼女の中で何かが目を覚まし、ナイフを握る。
[μ-101]の真相:御堂大使は最終局面で真弥子に正体を告げる——「完成された[μ-101]有機ヒューマノイド‥‥それがお前だ」「お前は1歳だ。プリシアの遺伝情報を元に培養液の中で急速に成長した‥‥創造された人間」「お前は‥‥プリシアの身体を持った国王だ。国王の意志を継ぐ者だ」。Cプロジェクトの成果として培養液中で急速成長させた肉体に、クーデター寸前まで追い詰められた前国王の意識が移植されていた——それが真弥子の正体だった。
《テラー》の真の正体:「王は《テラー》という虚名を使い、次々と目的を成就なさっていった」。《テラー》は元来、桂木源三郎が編成した旧エルディア情報部の実行部隊コードネームだった。しかし真弥子の中に固定された前国王の意志は、インシュリンが切れる時間帯に外殻人格「真弥子」へ滲み出し、自らナイフを握って邪魔者を排除していった。ストールマン=孔・二階堂・ディーブ・アクア・そして父である御堂一さえも、すべて「真弥子」自身の手で殺された。
アクアとの対面:姉でもあったアクアは真弥子に「あなたの意志で選びなさい。それがもしダメであっても、精一杯努力をすればいいの」「後悔だけは、してはいけない」と諭していた。アクアは前国王の側室の娘——真弥子と血を分けた姉——であり、自身の出生の秘密を知った上で妹の道を見守ろうとしていた。だがそのアクアもバスルームで真弥子(内部人格)に喉を一突きされ、右指で血文字「d」を残して死亡する。
プリシアとの対面:戴冠式当日、真弥子はプリシアとアクアの密談を立ち聞きする——「彼女は‥‥いま、生きていてはいけない悪しき亡霊なのです」。真弥子は嗚咽の中ですべてを思い出し、自分の手で行ってきた殺人の記憶と、表層人格としての日常の記憶が一つに溶け合う。「私が‥‥パパや大好きなアクアさんを殺すわけないじゃない‥‥」という否認は、もはや成立しない。
「【真弥子】信じない! 絶対に、信じない!!」
「【真弥子】何で放っておいてくれないの? ママを返して! 私の生活を、返して!!」
— 真弥子、自分の正体を告げられた瞬間
船倉での自己犠牲(再演):共通章と同じ密室の場面が、今度は真弥子の内面から描き直される。彼女が自分のボンベを外したのは「みんなと笑いたい」という願いだけではなく、自分の中の前国王を、自分ごと水底に沈めるという意志でもあった。「私を覚えていて‥‥ここにいたわ。いたの!」——これは、外殻人格「真弥子」が、内部に固定された王ではなく、自分自身の名前で残そうとした最後の存在証明である。最期の声は「『大好き‥‥みんな、大好き‥‥』パフッ‥‥」とプリシアの記憶へ流れ込んでいく。
「眠り」と統治:真弥子の脳細胞は破壊が進んでいたが、生命機能だけは「眠り」として維持される。「1年後か100年後か、目覚めの時を待ちながら」——エルディアは国家総力で彼女の脳細胞修復を進めることになる。プリシアは女王として即位し、罪と功績を共に背負って統治を始める。
「【プリシア】辛い‥‥旅だったのですね‥‥真弥子さん。」
「【プリシア】あなたは、いてはいけない人間ではない。いなくてはいけない人なの‥‥‥‥。」
— プリシアの追悼、True End末尾
真エンドの構造:本作のマルチサイトシステムは、A単独・B単独では「事件の半面」しか見えないように設計されている。両篇クリア後にMayakoシナリオを再プレイすることで、初めて事件を起こした側の主観——前国王の意志体に侵された真弥子の苦しみ——が読者に開示される。読者は被害者・加害者・無関係な観察者という3つの位置を行き来しながら、最後に「いてはいけない/いなくてはいけない」という両義性に着地することになる。
エンディング一覧
本作はマルチサイトシステムによる2視点進行型。両篇単独完走時には準バッドエンド扱いの暗示画面("Try again 'Mayako' Scenario")が表示され、両篇+Mayakoシナリオ再プレイによってのみTrue Endに到達できる構造。
| エンド名 | 種別 | 到達条件 | 結末概要 |
|---|---|---|---|
| Ending I | 準バッド | 小次郎篇単独完走 | プリシア即位を見届け真弥子の最期に立ち会う。プリシアの独白で幕。"Try again 'Mayako' Scenario"の英文が表示される。 |
| Ending II | 準バッド | まりな篇単独完走 | 御堂逮捕は果たすが、真弥子の真相は不完全にしか開示されないまま、まりな単独でトリスタン号を後にする。 |
| Ending III | True End | A・B両篇完走後にMayakoシナリオを再プレイ | 真弥子の日記と内面が描かれ、プリシアが妹の罪と功績を背負って統治を始める。真弥子は「眠り」として生命機能だけが維持される。 |
| 結婚拒否分岐 | 隠れバッド | 船尾デッキで「結婚しない」を選択 | 真弥子の自死的な動機が止まらず、最終局面で重要選択ミスとなる。True Endへの前提条件を満たさない。 |
※ 船尾デッキでの「結婚して/しない」分岐がTrue End到達の前提条件として機能する設計。「結婚して」を承諾することで真弥子の最後の意志を受け入れた状態で共通章へ進める。