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ストーリー詳細 — EVE The Lost One

本作はマルチサイトシステムを継承した複数視点進行型のサスペンスADV。内閣調査室の見習い調査官桐野杏子を主視点に、先輩調査員見城の視点、そして真の首謀者桜把=アドニスの挿話が交錯し、同じ事件を別の角度から描き出す。物語は前作『burst error』の数年後を描くスピンオフでもある。 ▼詳細を読む はネタバレを含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。

物語の始まり — 初仕事と1つの殺人

12月某日。休暇最終日のショッピング中、内閣調査室の見習い調査官桐野杏子は港湾都市のシンボルワールドインポートタワー1階の爆発に巻き込まれ重傷を負う。それでも翌朝、満身創痍のまま初出勤した彼女に、上司の甲野本部長から最初の任務が渡される。水族館ジェネシス・シー・ワールド地下の望月生物学研究所で殺された若い研究員・瀬野尾靖夫の事件ファイルである。

水族館でバイトをする愛想のない高校生・雄二、イルカに心酔する女子大生・綾乃、所長・望月、所長と密談する若い男・桜把。タワー最上階の若き社長・工藤社長とその娘・玲奈、そして杏子に同行する先輩・見城。無関係に見えた爆発事件と研究員殺人は、研究所で開発中の新薬<ADD>と、殺された瀬野尾が託したという茶色の小瓶をめぐって、やがて急速に結節していく。

桐野杏子編 — 初仕事から国際謀略へ メインPOV

内調見習い・桐野杏子の視点で進む本筋。瀬野尾事件の捜査から始まり、相棒となる高校生ハッカー・雄二、元教官の法条まりなを巻き込み、やがて中東の小国エルディア共和国へと舞台を広げていく。

序盤(捜査開始〜研究所潜入):杏子は水族館で雄二・綾乃と接触し、先輩・見城と共にアルタイル・コーポレーションの工藤社長を訪ねる。そこで望月研究所の桜把を再び目撃し、彼への警戒を強める。雄二は望月所長と桜把の密談を盗み聞きし、見つかりかけた杏子を機械室に隠した上で、セキュリティの指紋認証データを死んだ瀬野尾のものと入れ替え、杏子の研究室単独立ち入りを可能にする。

中盤(<ADD>の浮上):瀬野尾が恋人の鈴田夏海に「茶色の小瓶」を託していたことが判明する。研究所が開発する新薬<ADD>をめぐり、アメリカ国防省の影もちらつきはじめる。本部長は「日本の一研究所の研究を、なぜアメリカのほうが先につかんでいるのか」と違和感を口にし、事件は国際的な広がりを見せていく。

転機(見城への疑念):雄二が送ってきた画像に映る人影が見城によく似ていたことから、杏子は一時、信頼していた先輩・見城を真犯人だと思い込み、本部長の前でショックのあまり口を滑らせてしまう。ここで物語は内調内部の危機へと反転する。

「ウソよ……/見城先輩が……/ウソよ……」
— 見城が犯人かもしれないと疑った瞬間の杏子

まりなの大ブリーフィング:杏子を庇ったまりなは、真犯人が見城ではなく桜把=アドニスであること、そして杏子と雄二自身も内調から追われる立場になったことを明かす。さらにまりなは、エルディア王宮で眠り続ける<EVE>御堂真弥子の存在と、自分が護れなかった「0.1%」の真相を語る。茶色の小瓶=「記憶」は、<EVE>の中の前国王の記憶を覚醒させる薬品だった。

「真弥子ちゃんはいま、エルディアの王宮で眠り続けているわ」
「護衛任務を任された相手を、護りきれなかったの」
— まりな、内調を辞めた本当の理由を語る

エルディア渡航:まりなの手引きで、杏子と雄二は私立探偵天城小次郎の事務所を経由し、助手の氷室に偽造パスポートを用意してもらってエルディアへ渡る。「わたし、エルディアに行きます」——杏子は自分の意志で一線を踏み越える。雄二も「自分の運命を機械音痴に託すなんて恐くて」と憎まれ口を叩きながら同行を決める。

見城(スネィク)編 — 罪と脅迫の裏面 POV②

同じ事件を、もう一人の主役・見城の視点から裏側として再構成する系統。表向きは杏子の頼れる先輩、その実体はタワー爆発事件の真犯人であり、桜把=アドニスに脅迫されて「スネィク」と名付けられた男の物語。

出来心の爆発:タワー爆発の真犯人は見城本人。インターネット上に流れていた爆弾の製法を、ムシャクシャした出来心で自宅で組んだものが、計算外の威力でタワー1階を壊滅させた。「ちょっと音がでて、椅子一つ吹っ飛ぶくらいのつもりだった」。皮肉にもその製法は学生運動時代の古いレシピ「ハラハラ時計」であり、「未知の物」を手にしたつもりだった見城を幻滅させる。

アドニスの脅迫:爆発を目撃していたハッカー「アドニス」=桜把から脅迫の電話が入る。「火遊びは……たのしかったかい?」と囁く相手に、見城は「スネィク」という名を強要される。楽園の果実を渡した蛇——罪を後ろ盾に支配される構図ができあがり、見城は小瓶争奪戦の実行役にされていく。

「あんなヤツに弱みを握られたからって……/自分の好きなことしかやらない/そんな考えは幻想だったのかな」
— 脅迫を受けた夜、孤独に内省する見城

夏海の死と「約束」:桜把の指示で見城は鈴田夏海から「茶色の小瓶」を奪取しに向かうが、現場に着いたとき夏海は既に桜把の手で殺害されていた。見城が殺害容疑をかぶる構図が成立する。死の間際の夏海から「これは……大事なもの……だ」「エルディアへ……」と託された見城は、死者との「約束」を理由に小瓶を桜把へ渡さない選択をする。

米国防省としてエルディアへ:見城は米国防省特別部員の肩書きでモニカ・セレッティの協力者としてエルディアに渡航し、王宮内部の権力闘争に巻き込まれる。ロメオス大司教暗殺が迫る廊下で女王プリシアと出会うが、そのとき実際に死を迎えていたのが誰だったのかを、見城は後に知ることになる。

桜把との対峙へ:プリシアの隠れ家にたどり着き、長い真相の告白を聞いた見城は「やり残したことがあるんだ」と告げて去る。自分の中の闇と向き合いながら、彼は桜把=アドニスとの決着へと向かっていく。

桜把=アドニス視点 — 世界を変えた男 POV③

本作の真の首謀者・桜把の挿話群。見城への脅迫、夏海の殺害、そして人工ウイルス<LOST ONE>の解放——本作のタイトルそのものを背負う破滅の実行者の内面が描かれる。

二つの顔:表向きはアルタイル・コーポレーション役員で、工藤社長を傀儡として裏から牛耳る補佐役。口癖は「ね、社長」。その裏の顔がハッカー「アドニス」で、「火遊びは……たのしかったかい?」と幼児退行的なエクスタシーに浸る人格に切り替わる。望月研究所の<ADD>研究を実質的に支配し、「記憶」と<EVE>を奪い合う争いの中心にいた。

夏海殺害:桜把は「記憶」を託された鈴田夏海を直接殺害した犯人でもある。後に「女を殺すのは二度目だな。1人目は……苦しんで死ぬようにわざと少し急所をはずして刺してやった」と語り、その異常性を露わにする。殺した相手の名前すら「名前なんて忘れた」と切り捨てる。

<LOST ONE>の解放:桜把の最大の罪は、<ADD>研究データに人工ウイルス<LOST ONE>を密かに同梱し、インターネット経由で世界中に解放したこと。感染5日で死亡、5つのコピーが遺伝配列を変えながら自己複製する、出口のない殺戮ウイルスである。

「オレのバラ撒いた<LOST ONE>の効果をみたか/すごいだろう。ボタン一つで世界中に広がっていった/そのボタンを押したのはオレだ。オレが世界を変えたんだ」
— 桜把=アドニスの自負

動機の核心:桜把はかつて見城に窓から突き落とされ、顔の半分を失った過去を持つ。「半分残ったって、全部なくしたのと同じだ」。失ったものへの復讐心と、それでも生かされたことへの倒錯した顕示欲が彼を駆り立てる。「オレをすごいと言え」「オレに許しを乞え」——他者からの承認を強迫的に求めながら、世界を自分の道連れにしようとする。

エルディア篇 — <EVE>覚醒とパンデミック 合流

舞台は中東の小国エルディアへ。前作の事件の地で、女王プリシアと反女王勢力バスキーヤ派の対立を背景に、<EVE>の覚醒、<LOST ONE>の正体、そしてプリシア「暗殺」の真相が次々と明かされる。

潜伏と接触:杏子と雄二はエルディア下町のホテル・ルカンシェに「駆け落ちカップル」を装って潜伏する。女主人ルカはバスキーヤ派信者だが二人を匿い、隣室の留学生マイナを通じて女王プリシアとの密会が実現する。

<EVE>覚醒:バスキーヤ派の影響が薄いエニア村の小さな教会で、杏子は「記憶」による<EVE>覚醒の儀式に立ち会う。プリシアは小次郎との数日間を「プリンという名前の、ただの女のコだったことがある」と回想し、女王ではない素顔を覗かせる。

<LOST ONE>の発見:日本に残った氷室から送られた研究所データの解析で、<ADD>に同梱されていた人工ウイルス<LOST ONE>の存在が判明する。「感染後死に至るまでの日数は……5日」「5つのコピーはどれもが少しずつ、ちがう遺伝配列になっている」。雄二はマイナの遺伝子工学の知識を引き出し、アンチセンスDNAを用いたワクチン製造法の糸口をつかむ。

「あれが<LOST ONE>よ!」
「ウイルスに感染後死に至るまでの日数は……5日なのよ」
— 氷室による人工殺戮ウイルスの解析

パンデミックの開始:ダンスホール奥の控え室の死体を皮切りに、<LOST ONE>による世界規模のパンデミックが始まる。各地で人が倒れていく中、米国防省特別部員モニカ・セレッティが介入してくる。

プリシア「暗殺」の報:バスキーヤ派のロメオス大司教による暗殺が迫る中、プリシアが暗殺されたという報せが届く。だが——その死には、容易には見抜けないトリックが隠されていた。

真相と結末 — 身代わりの死と砂漠の帰路 クライマックス

プリシア「暗殺」の真相、<EVE>=真弥子の最期、桜把との最終決戦、そしてワクチンを抱えた砂漠の帰路。本作のすべての糸がここで結ばれる。

身代わりの真相:プリシアは生きていた。バスキーヤ派の暗殺が迫ったとき、モニカは女王を空になった<EVE>の棺に隠し、身代わりに<EVE>自身を女王として死なせていた。「眠りを妨げるのはよくないぞ」というモニカの台詞が、棺の中身を隠す伏線になっていた。

「私は空になった安置室の<EVE>の棺に、服を脱いで入りました」
「死んだのは……<EVE>よ/私の分身/彼女が……私の代りに死んだの」
— プリシア、身代わり死の告白

モニカの正体と背景:モニカは表向き米国防省特別部員だが、その実体は女王プリシアの旧友。前国王時代の内戦で家族を失い、アメリカに渡って女王を守る協力者として国防省の地位を利用していた。彼女は<EVE>の棺を抱え、砂漠の彼方へと消えていく。

<EVE>の最期:<EVE>=真弥子は、自分が数時間の命であると知った上で、プリシアの身代わりとして死を選ぶ。前国王の意識を背負わされた存在でありながら、最後は他者の幸福を願う一人の人格として、プリシアの中へと消えていく。

「あなたのなかにずっといる」
「わたし、いつも傍にいる人の笑ってる顔を見ていたいの」
— <EVE>=真弥子、プリシアへの最期の願い

ワクチンの鍵:世界を救う唯一の手がかりは「<LOST ONE>はクローンのボディにだけは作用しない」という発見だった。クローン体である<EVE>の身体組織からしかワクチンは作れない。だからこそ、砂漠に消えた<EVE>の棺を追わねばならなかった。杏子と雄二は砂漠を踏破し、ベドウィン村で力尽きたモニカの遺体と<EVE>の棺を発見し、その場でワクチンを合成する。

桜把との最終決戦:砂漠で杏子は桜把=アドニスと対峙する。銃口を向けられても怯まず、「わたしは<LOST ONE>に効くワクチンをつくるために、ここまできたのよ」と返す。見城もまた桜把と対峙し、「おまえは……自分を恐れてるんだ」とその本質を看破する。最終局面で見城は、銃口を向けられた杏子を庇って撃たれる。

「あなたが1人でどんなに悪いことをしたって、わたしをここで殺したって……/わたしたちのうちの誰かが……その先の道を受け継いで、きっと、たどりつく……」
— 桜把の銃口の前で、杏子

結末:ワクチンの合成には成功した。だが杏子と雄二もすでに感染していた。「きっと、モニカから感染したんだ……もしくは、モニカがもってきた水や食料から……」。桜把はパンデミック後の世界を見届けるためだけに生き、プリシアは生存して新生エルディアの女王として再起する。氷室と見城への「必ずワクチンを持って帰る」という約束を抱え、杏子と雄二は感染したまま、もと来た砂漠の道を引き返していく。

「わたし、約束したわ。必ずワクチンをもって帰るって/氷室さんに、見城先輩に、生き残った人たちを助けるって、約束した。/だから……帰らなくっちゃ……」
— 杏子、終幕の独白

エンディングと進行構造

本作はマルチサイトシステムを継承しつつ、各視点が終局で一つの到達点に合流する単一帰結型の構造を取る。明示的な「エンド分岐」は章タイトル化されておらず、いわゆる個別ヒロインENDは存在しない。代わりに、選択ミスや戦闘失敗で発生する「ゲームオーバー(コンティニュー)」が複数あり、これがいわゆる失敗エンドにあたる。

名称 種別 到達条件 結末概要
ザ・ロスト・ワン 単一帰結 全視点を最終局面まで進行 プリシア生存・新生エルディア女王として再起。<EVE>=真弥子は消滅。モニカは砂漠で力尽きる。杏子と雄二はワクチンを合成し自らも感染しながら帰路へ。見城は杏子を庇い負傷・生存。
水槽爆破 ゲームオーバー 水族館の選択ミス 杏子が水槽内で銃撃され溺死。
捕縛 コンティニュー 内調のスケープゴートを受容 杏子と雄二が逮捕され、渡航前で物語が停止する。
見城屈服 コンティニュー アドニスの脅迫に従う 見城が「記憶」を桜把に渡し、拡散の片棒を担いでしまう。
砂漠遭難 コンティニュー 砂漠の体力・水分管理ミス 砂漠の途中で行き倒れる。