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ストーリー詳細 — Ever17 -the out of infinity-

本作は、プロローグの最後に「俺は」と「ぼくは」のどちらで読み進めるかを選ぶアドベンチャーである。倉成武の視点につぐみ編と空編、記憶を失った少年の視点に優編と沙羅編があり、つぐみ編・空編・優編・沙羅編の4つのグッドエンドを見ると、ふたつの視点が交わる最終章のココ編が解放される。エンドは8本、エピローグは3本。以下は各編の出来事を結末までまとめたもので、記述はドリームキャスト版(2002年)の内容に基づく。 ▼詳細を読む はネタバレを含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。

プロローグ — 天国はどこにある?

東京都駒ヶ原諸島M島の沖合16キロ。洋上の人工島インゼル・ヌルの真下に、海中テーマパークLeMUが沈んでいる。5月の連休、ここへ遊びに来た青年と、海底の広場で誰かを待ち続ける少年の姿が、区切りなしに交互に語られていく。

青年・倉成武は友人3人と来たが、入場の列でひとりだけ次の回に回される。加圧室では子犬のピピを連れた少女・八神ココに「コメッチョ」を聞かされ、ドレス姿の係員から、館内が約6気圧の混合ガスで満たされていること、上からインゼル・ヌル、エルストボーデン、ツヴァイトシュトック、ドリットシュトックと続く4層の構造を教わる。一方、憩いの間で誰かを待ち続ける少年は、案内係の田中優美清秋香菜に「I am YOU!」と名乗られ、「めんどくさいから……『優』でいいよ」と呼び名を決められる。少年はマスコットのみゅみゅーんの着ぐるみを着せられる。

二人の話は何度も触れ合う。地下1階で友人を捜す男が少年に声をかける場面や、武が「俺を殴り逃げた」タヌキの被り物を剥がすと中から少年が出てくる場面は、二人がすれ違ったかのように読める。ただし本文は、二人が同じ場所で出会ったとは書いていない。船着場の石碑には「天国はどこにある?」「空の上と、あなたの足元に……」という問答が刻まれている。

やがてエレベーターが止まり、浸水と悲鳴が重なって視界が黒に沈む。少年は「(だったら、ぼくを見ている『ぼく』は誰なんだ?)」と自問する。最後に「俺は――」と「ぼくは――」の二択が現れ、「俺は」を選ぶと武がエレベーターの扉を開き、「ぼくは」を選ぶと少年が目を開く。二つの話が同じ年の出来事ではないことは、ココ編で明かされる。

武視点 — 閉じ込められた6人(5月1日〜3日)

停止したエレベーターから抜け出した武は、黒い服の少女とともに無人の館内をさまよう。浸水を生き延びた先で出会った人々と、6人で最下層に取り残されたことを知る。

武と黒い服の少女・小町つぐみが2階をさまよっていると、足音もなく係員の女性・茜ヶ崎空が現れ、避難を促す。直後にガラスが割れて海水が押し寄せ、3人は水流ごとダクトへ飛び込んで階下へ投げ出される。LeMUでアルバイトをしていた田中優美清春香菜(作中では「優」と呼ばれる)、ココ、記憶を失った少年と合流した6人は、3階の中央制御室で空から被害の状況を聞く。外部との通信は途絶え、上へ通じる道は閉ざされていた。自己紹介では少年だけが自分の名前を思い出せず、そのまま「少年」と呼ばれる。制御室の生体反応の数は「6」「5」「7」「6」と数秒ごとに揺れる。

自由行動の時間、田中優美清春香菜はメリーゴーランドの前で父の失踪を語り、つぐみは「これは事故じゃなくて事件よ」と言い切る。第2次浸水のあと、ココは減圧症の疑いで再圧チャンバーへ運ばれる。5月2日の朝、空はLeMUが5月7日午前4時30分前後に完全に圧潰すると告げる。

停電が起きると、つぐみは止まった中性浮力式エレベーター「EI」にガスバーナーで穴を開けて沈め、武を「錘」として連れて発電室を直す。電気の戻った会議室で、武が投げた缶コーラとサンドが空の体をすり抜け、空が実体を持たない人工知能で、RSDによって姿を見せていたことが分かる。夜には暗闇の缶蹴り「ヤミオニ」が行われ、誰も蹴っていない缶が2度蹴られ、鬼の少年が目の前にいるのに100まで数える声が続く。

5月3日、2階の倉庫で配管が破裂し、廃材の山が崩れる。つぐみはココを突き飛ばして身代わりになり、右腿に鉄材がめり込む重傷を負う。田中優美清春香菜が空の補助を受けて執刀し、40針を縫う。手術のあと、空は武を「内緒の話」に誘い、自分を3体に分けて見せながら、分かれた自己も一点でつながっているという「遍在」の話をして、「……内緒ですよ?」とかわす。食料はタツタサンドだけになりつつあり、憩いの間では、萎れた花壇のために空がスプリンクラーを動かして花に水を与える。

武視点に出てくる記憶を失った少年が何者なのかは、ココ編で明かされる。

武視点 — つぐみと空(5月4日〜5日)

5月4日から、武が心を向ける相手によって、物語はつぐみ編と空編に分かれていく。どちらに進むかは、それまでの選択の積み重ねで決まる。この2日間の場面は、進んでいる編によって一部が入れ替わる。

目を覚ましたつぐみは、見舞いに来た武に「死にたかっただけ」と打ち明け、生きることをめぐって武と激しく言い争う。つぐみは最後に「あなたが、偽善者だってことが」と突き放す。その夜、空は武に「恋とは何でしょう?」と問い、さらに「私は何の為に、生まれてきたのでしょうか?」という問いを残す。

翌朝、つぐみは救護室から姿を消していた。点滴を引きちぎり、医療用のコンピューターを壊し、発煙筒でセンサーを潰して3階の隔離区画へ移っていたのである。追いついた武は、怪我をした右足ではなく左足を引きずるつぐみを見る。午後、武は空に「恋愛心理学」を教え、それを試した空がココと田中優美清春香菜に暴言を吐いて騒ぎになる。つぐみは再び救護室から消え、ベッドの下から小動物の巣が見つかる。武は水没した水深51メートルの非常通路を潜ってつぐみのハムスターを助け出し、その名が「チャミ」だと知る。つぐみは出会ってから初めて、心からの笑顔を見せる。

5月5日の午前3時過ぎ、クヴァレのゴンドラで二人きりになったつぐみは、2005年8月、12歳のときにあるウイルスに感染し、体が17歳のまま老いなくなったと武に告白する。自分とは何かをめぐる思考実験を仕掛けながら、つぐみは武に馬乗りになって首を絞め、「私を……殺して?」と懇願する。定期メンテナンスを終えた空は、自分に「若干の思考ノイズ」が見つかったと報告する。憩いの間では、ココと少年が石像の背中に「6人と2匹」の姿を彫る。

その夜の夕食で、白いご飯が食べたいと少年が爆発し、武とぶつかる。ここから先は編によって違う。つぐみ編では、つぐみが武をクヴァレへ連れ出し、チャミを素手で握り潰してみせる。数分で動き出すチャミを前に、つぐみは「生きてるだけじゃ……生きてるとは言えないのよ!」と言い、施設で8年間、実験体として扱われた過去を語る。空編では、止めに入った空に武が「お前は俺達人間とは、違うんだから」と言い放つ。空は走り去り、武はヒンメルの扉の前に閉じ込められて、スプリンクラーの水に溺れかける。仮想の海の中で空は「私……壊れてしまったんです」と告白し、分かれて現れたもう一人の空が、空の恋心と、つぐみと武に向けた殺意を「致命的な思考ノイズ」として告発する。

武視点 — ティーフ・ブラウ(5月6日)

残された時間を紛らわすための宴会の最中、ココが血を吐いて倒れる。手がかりは、LeMUのさらに下にあった。

6日目の朝、空が改めて状況を報告し、気を紛らわすための宴会で各自が一芸を披露する。「キュレイ」という名がここで初めて出る。つぐみは空に「LeMUにはさらに下の階がある」と詰め寄り、ヒンメルの扉のパスワードを求めて口論になる。その最中に、ココが血を吐いて倒れる。

救護室の診断装置L-MRIは、ココの体に「Tief Blau 2017-Rev.17」と表示する。致死性のウイルス、ティーフ・ブラウである。空は、LeMUの真下の水深119メートルに、運営母体のライプリヒ製薬が設立した研究施設IBFがあることを明かす。開かなかったヒンメルの扉が内側から開き、瀕死の研究員が倒れている。一行は約1時間の加圧を経てIBFへ降り、ココと研究員を高圧酸素治療装置に収める。

IBFでは、数人の研究員の遺体と、ティーフ・ブラウの資料、「IBF来館ゲスト登録:八神ココ」と書かれた業務日誌が見つかる。研究員は「娘を……頼む……ぞ」と言い残して息を引き取る。脱出用のポッドはすべて持ち去られていて、退路は断たれた。時刻は、LeMUの最速圧潰推定時刻である5月6日午後4時30分を過ぎようとしていた。

つぐみ編 — キュレイ・ウイルス/約束の日へ グッドエンド

IBFで次々に発症していく仲間たち。ただひとり症状の出ないつぐみの体が、全員を救う手立てになる。

武とつぐみは、5月1日の警報の真相を推理する。恐怖に駆られたスタッフの誰かがIBFから上がり、減圧の手続きを踏まずに緊急通路を開けたため、LeMUの一部が圧潰して浸水が始まった。警報は、館内の圧力異常とウイルスの漏洩という二重の意味で出されていた。救助が来ないのは、ライプリヒ製薬が事故そのものを隠そうとしているからかもしれない、とつぐみは言う。

直後に武が発症し、少年と田中優美清春香菜も感染していると分かる。ピピが症状を抑えるオレンジのアンプルを運んでくるが、そこでつぐみだけがティーフ・ブラウに冒されていないことが露見する。つぐみはキュレイウイルスのキャリアで、体に入ったティーフ・ブラウをすぐに抗体で退けていた。「もう、人でいられなくなるのよ!?」と血の提供を拒むつぐみを、武は平手で打ち、最後のアンプルを床に叩きつけて割る。つぐみは「私が逆らえないの、知ってるくせに……!」と応じ、その血から作った抗体が全員に打たれる。

海上保安庁特殊救難隊と通信がつながり、救助は約1時間後、万一のときは遠隔操作の小型潜水艇を呼べると知らされる。空はIBFへは降りられず、ヒンメルに残る。別れ際、空は「しかし私は――遍在しています」と告げ、その像は虹に変わって消える。つぐみは、置いてきた「友達」のチャミを迎えにLeMUへ戻る。武は12時間かかる減圧を緊急脱出レバーで強行し、暗い非常通路を潜って、救護室でつぐみと再会する。

「俺の何よりも大切な、仲間、だ」(武)

IBFに戻ると、田中優美清春香菜・少年・ココは先に海上の病院へ運ばれていた。目を覚ました武は、つぐみに「生き物は生きている限り、生きていいと思う」と語り、ふたりは結ばれる。動かなくなったピピの口には、テラバイトディスクがくわえられていた。圧潰5分前のアナウンスの中、ふたりは小型潜水艇でIBFを出るが、浮上の途中でバッテリーが尽き、浮力が足りずに沈み始める。武はアルキメデスの原理を持ち出してつぐみの気をそらし、エアロックに入って内側から閂を下ろす。強化ガラスを叩くつぐみに、武は言う。

「だったら、生きろ」「生きている限り、生きろ」「俺は――」「俺は、死なない」(武)

武は水深74メートルで船底のハッチを開けて海へ出る。潜水艇は昇っていき、武は沈んでいく。「俺の姿は海に溶け、やがて混ざり合って……ひとつになった。」でつぐみ編は終わる。武が死んだとは書かれず、生還したとも書かれない。生還が確かなのは、つぐみ・田中優美清春香菜・少年・ココである。

空編 — 空知らぬ雨/空で覚えてる グッドエンド

IBFで田中優美清春香菜から、空の記憶がLeMUの中にしかないと聞かされた武は、空を置いて脱出することができなくなる。

武は通路で田中優美清春香菜と今後を話し合う。彼女は、亡くなった研究員がLeMUの管理プログラムを作った開発者のひとりだったと明かし、「ヒンメル、レミ、そして……空。彼の手になるものは、LeMUにあった」と語る。浮島には中央演算処理装置があるが、LeMUで起きたことの記憶はすべてLeMU内の記憶装置に収められている。空と別の空を区別するものは「記憶、だけなんだよ」と彼女は言う。LeMUを出れば、自分たちの知っている空には二度と会えない。

武と少年も発症し、つぐみを含む全員にアンプルが打たれる。目を覚ました武は、「私を……置いて行かないで!」「ひとりにしないで!!」とすがるつぐみを突き飛ばしてLeMUへ戻る。直後にIBFへのリフトが壊れ、退路はなくなる。空は、LeMUの倒壊を遅らせながら武だけを浮上させる脱出案を示す。それはドリットシュトックの水没、つまりヒンメルにある空の記憶が消えることを意味していた。拒む武に、空はRSDのレーザーを当てて目をあぶり、床に高電圧を流してまで従わせようとする。武は警備室で『Willkommener LeMMIH Login:T.Y』と表示される管理者用の画面を開き、空の制止を押し切ってキーを押す。ドリットシュトック全域が水に沈むが、水密扉が閉じ、ヒンメルの制御室にいた武と空は生き延びる。

空は、IBFの通信を外壁伝いの電波から解析し、田中優美清春香菜・つぐみ・ココ・少年の4人が救助されて浮島へ脱出したと伝える。武は拾ったテラバイトディスクに、空のすべての記憶を写す。そのあいだに、空は「宿題」の答えを告げる。

「私が何の為に、生まれてきたのか」「私はきっと、人間と同じように……」「恋をする為に、生まれてきたんだと思います」(空)

武はピグマリオンの伝説を語り、空への想いを口にする。空は「今、コピーの間に倉成さんと話したことは、どこにも記憶されませんね」と言い、武は今度会ったときに全部話して伝えると指切りで約束する。「俺は、死なない」と武が告げたあと、ヒンメルの壁が割れる。水の中でふたりは抱き合い、「空と海の溶け合う世界へ、俺の身体はゆっくりと昇って行った。」で空編は終わる。武の死は明言されない。つぐみ編では沈んでいった武が、ここでは「昇って行った」と書かれ、向きが逆になっている。

つぐみ・空編バッドエンド — Spiel バッドエンド

IBFから外へ出る手立てが見つからなかった場合の結末。つぐみ編と空編で共通の1本である。

外への通信はつながらないまま数時間が過ぎ、万策は尽きる。つぐみの右足は動かなくなっていた。「何があっても、自分は死ねないと思ってたんだけど……」「それもまた、間違いだったのかも……しれない」とつぶやいたつぐみは、「私の場所は、ここだったみたい」「死に場所だった」と言い、「仲間ごっこってのも、そんなに悪いもんじゃなかったけど……」と言い残して診療室を出る。つぐみは外側から水密扉を閉め、直後、扉の向こうで濁流の音が響く。つぐみが死ぬ瞬間そのものは書かれない。

カプセル・ポッドで眠っていた少年の生体反応が止まる。田中優美清春香菜は武の右手を自分の胸に押し当て、「私、死にたくない……」と言い、「本当はね、わたし、倉成の、こ……と」と言い終わらないまま息を引き取る。武も目から血を流し、呼吸が止まる。最後の一行だけが三人称に変わる。

「ピーピーガーガーと、掠れるような通信音を聞いた。」「それが、倉成武の聞いた、最後の音だった。」

この結末に八神ココは登場せず、ココの所在も生死も語られない。

少年視点 — 名前のない「ぼく」(5月1日〜3日)

救護室で目を覚ました「ぼく」は、自分の名前も年齢も思い出せない。案内係の田中優美清秋香菜、エレベーターから助け出した松永沙羅と行動をともにするうち、知らないはずのことが見え始める。

少年は、ツヴァイトシュトックの売店で倒れたところを田中優美清秋香菜に救護室へ運ばれていた。浸水から逃げる途中で気を失った彼女を担いで水密扉に滑り込み、名前を訊かれても答えられないことで、記憶を失っていると分かる。非常階段はどれも上の階が隔壁で塞がれていた。ドリットシュトックで止まったエレベーターの中から松永沙羅を助け出すとき、少年は自分の左手の親指に、乳白色の異物が埋まった古い傷跡を見つけて、とっさに隠す。

制御室の前で武・空・つぐみと顔を合わせ、6人が取り残されたことを知る。呼び名を決める話し合いは、武の「あーっ、もうめんどいから『少年』でいいよ」で決着する。夜、少年は救護室の真下の部屋で、正体の分からない少女に出会う。5月2日の朝、空は館内が5月7日午前4時30分前後に完全に圧潰すると告げ、つぐみはその時刻と誤差を先回りして言い当てる。

停電した発電機を直すため、四人は中性浮力式エレベーター「EI」で最下層へ潜る。暗闇の中で少年だけが周りを見通し、扉に触れる前から発電室の中が高温になっていると察する。修理の合間に、田中優美清秋香菜はレムリア大陸と「第3の眼」、そして「第3視点」の話をする。電気が戻るまでは、ちょうど17秒だった。昼には、武が投げたコーラとサンドが空をすり抜け、空がRSDで姿を見せる人工知能だと分かる。夜のヤミオニでは誰も蹴れないはずの缶が蹴られ、少年は暗闇の中で全員の居場所を言い当てる。

5月3日の朝、少年は「嫌な予感がする……2階……どこだろう」と口走り、直後に2階倉庫の配管の異状が報告される。ここで少年は、選択肢「優を捜しに」と「沙羅と一緒に修理に」のどちらかを選ぶ。「優を捜しに」を選ぶと、田中優美清秋香菜は警備室で、17年前の事故で父が行方不明になったと打ち明ける。彼女がLeMUに来たのは、レミのデータベースから父の手がかりを盗み出すためだった。彼女は母の名でログインを試み、母の研究室から持ち出したバーコードのような紙を横から見て『海月の虚空に秋涼し時鳥』という句を読み取るが、パスワードは通らず、名前ごと締め出されてしまう。「沙羅と一緒に修理に」を選ぶと、少年は「物が崩れ落ちてきて……水が溢れてくる…………それに誰かが、大怪我を……」と口走ってつぐみに平手打ちされる。その予感は外れ、ひとり残った倉庫の奥で、少年は鉄扉の病室と、壁越しに殴られて泣き続ける少女の幻を見る。

夕方、救護室で沙羅がつぐみを問い詰め、「そうやって、あの人からも逃げたんだ?」の一言でつぐみの動きが止まる。沙羅の平手打ちが飛び、逆上したつぐみは沙羅のペンダントを奪って壁に叩きつけようとするが、寸前で思いとどまる。ペンダントはつぐみの手から滑り落ちる。このあと物語は、優編と沙羅編に分かれる。どちらに進むかは、それまでの選択の積み重ねで決まる。

少年のそばにいる「武」が何者なのか、少年視点の一週間が武視点の一週間とどうつながるのかは、ココ編で明かされる。

優編 — the 1st eye ほか グッドエンド

父の手がかりを追う田中優美清秋香菜に、少年は力を貸すと約束する。レミから引き出した記録は、彼女の家族について噛み合わない数字を示す。

5月3日の夜、少年がつぐみを追って問いただすと、つぐみは手の内を明かすことを拒み、最後に告げる。

「7日に……」「――あなたは死ぬの」(つぐみ)

少年は時間をさかのぼったのではないかと考えるが、田中優美清秋香菜に「そんなの、ただのデジャヴでしょ?」「時間は……絶対不可逆なの」と退けられる。深夜、彼女は少年を「第3視点、ゆかりの地」レムリア遺跡へ誘い、「私達、誰かにだまされてるんじゃないかな?」と疑いを口にする。誰も助けに来ない、電力は生きているのに通信だけが断たれている、警報と停電の原因も分からない。少年は小指で指切りをして、彼女を助けると約束する。

翌朝、沙羅がレミへの侵入を試みる。防衛プログラムとして襲いかかる空が自ら抵抗して二人に分かれた隙に、沙羅はシステムを奪い取る。空が掘り出した15年前のチャットログでは、陽一とゆきえの名が「Yöichi」「Yükie」と、ドイツ語のウムラウトという記号の付いた綴りで書かれていた。少年がその異常に気づき、空がウムラウトとは何かを説明する。空と少年はログの日付「02/07/19」を2002年7月19日と読み、空は文脈から、田中陽一は34年前に亡くなったものと「推測されます」と言い、田中ゆきえも15年前に亡くなっていると告げる。18歳の田中優美清秋香菜とは噛み合わない数字だった。

田中優美清秋香菜は母の死を受け入れて立ち直るが、少年は発電機の点検中に落ちて右腕を折る。彼女はギプスに「痛くなくなるオマジナイ」を掛け、少年が浦島太郎になぞらえて時間のずれを言い出すと、「病的な妄想」と切り捨てる。やがて少年にだけ「やっほー♪」という声が聞こえ、石像の台座に幻の少女が見え始める。追いかけた先の宇宙クジラの部屋は、数時間後に完全に水没する。

5月6日、遺跡の屋根の上で、田中優美清秋香菜は少年に口づけをする。空は完全圧潰推定時刻を改めて告げ、つぐみは空とふたりで話したいと迫って「あのヒンメルは、一体なんなのよ!!」と声を荒げるが、武に遮られる。この日から全員が体調を崩し始める。更衣室で「第3視点」の講座を開いたあと、彼女は「真実を知るのが……怖くなったのよ!!」と本音を漏らす。そしてレミの認証で弾かれていた原因がパスワードではなく名前にあったと気づき、自分の本当の名前が「田中優美清秋香菜」だと明かす。外部から通信が入り、画面に田中優美清秋香菜の母を名乗る女性と男が現れて、高圧送風機による排水を告げる。午後9時30分、避難通路を進むが、沙羅・武・つぐみが非常階段の向こうへ消えた直後に浸水が起き、少年・田中優美清秋香菜・空だけが取り残される。

5月7日未明、体調が限界に近い少年は、死を口にする田中優美清秋香菜をコーヒーの砂糖のなぞかけで引き止める。サイフォンの動きから水位の差を使って水を移す方法を思いつき、水密扉を一斉に開けて通路を乾かすことに成功する。空は「私はみなさんと一緒には行けません」とLeMUに残って見送る。非常階段へ向かう途中で幻の少女が現れ、少年の頭に「――ココ!!!」という名が浮かぶ。少女はヒンメルの扉に吸い込まれて消える。圧潰のカウントダウンの中を駆け上がったふたりは、浮島で朝日を見る。少年は、なぞかけの答えを告げる。

「ふたりが交じり合って成せる、甘く愛おしいもの……」「――恋、だよ」(少年)

脱出のあと、つぐみはいつのまにか姿を消していた。死んだとは書かれていない。ヒンメルの扉の向こうへ消えた少女は、この編には戻ってこない。優編では、第3視点の正体や幻の少女の謎は解かれないまま残る。

優編バッドエンド バッドエンド

田中優美清秋香菜にも病状が現れ、脱出の手立てを見つけられないまま圧潰の時刻を迎える結末。

優編グッドエンドと同じ書き出しで始まるが、ここでは田中優美清秋香菜も高い熱で弱り、動けなくなる。少年は一度は死を覚悟するが、指切りの約束を思い出し、彼女を背負って、いちばん頑丈なドリットシュトックの制御室を目指す。空は誘導を続けながら「結局、おふたりをお救いすることができませんでした……」と詫びる。

途中でまた幻の少女が現れ、追った先のヒンメルの扉は開かない。開けてくれと叫ぶ少年に、空は「無理です。その扉は私の管轄外なのです」と答えるしかない。壁から水が噴き出し、ふたりは水に呑まれる。水の中で田中優美清秋香菜は何かを言い残すが、「それはただ、小さな泡となって、闇の中へと……消えた。」。握った手は、もう握り返してこない。少年の肺からも、最後の息が吐き出される。

最後の数行は、プロローグの結びと同じ文で終わる。

「ぼくは――」「静かに、」「その目を、開いた。」

ただしその直前には、「もう一度、逢えるのかもしれない。」「今度こそ護り通せるかもしれない。」というこの結末だけの言葉が置かれている。これが物語の繰り返しを意味するのかどうかは語られない。

沙羅編 — 常 ~とこしえ~ ほか グッドエンド

沙羅が肌身離さず持つペンダントに、少年と沙羅にしか見えないホログラムが浮かぶ。少年の左手の親指に埋まった異物が、ふたりの過去をつなぐ。

衝突のあと、少年は宇宙クジラの部屋で沙羅と落ち合う。沙羅が古いオイルライターの炎でペンダントを照らすと、男性の胸から上の姿がホログラムで浮かぶ。翌日、割れたペンダントのカケラを探すうち、武にも田中優美清秋香菜にもその像が見えないことが分かる。加減圧室で子守歌を唄って涙をこぼす沙羅に、少年は、同じように泣く別の少女の光景を重ねる。少年は発電機の点検中に右腕を折る。

5月5日の未明、少年は配管室で泳ぎの練習をしていた沙羅に泳ぎを教える。沙羅は、兄がいたこと、その兄と「必ず、迎えに来るって……」という約束を交わしたことを打ち明ける。夕方、宇宙クジラの部屋が浸水し、沙羅が取り残される。「けが人は、黙って引っ込んでて」と少年を制して潜ったのは、つぐみだった。

「……しかたないでしょ」「『仲間』……なんだから」(つぐみ)

引き上げられた沙羅に脈はなく、除細動器も効かない。ほかの三人が手を止めたあとも、少年だけが心臓マッサージを続け、沙羅は息を吹き返す。

5月6日、空が少年の左手の親指から異物を取り出す。それはペンダントの鏡のカケラだった。空は、ホログラムを見るには850ナノメートル前後の赤外線が必要で、少年と沙羅はその赤外線が見える目を持っていること、そしてDNA鑑定の結果、ふたりが兄妹である確率はほぼ100%であることを告げる。

「あなたと松永さんが、兄妹だからです」(空)

その瞬間、少年の記憶が奔流のように戻る。施設でのいじめ、ライプリヒ製薬に誘われて研究所で暮らした日々、そして沙羅と引き離された日に交わした「必ず迎えに来る」という約束。少年は「違う!」と沙羅を拒んで逃げ出す。年齢も住所も養父母のことも思い出したのに、自分の名前だけが思い出せない。田中優美清秋香菜・武・つぐみは、地上との連絡がついて非常階段が使えるようになった段階で先に上がっていた。LeMUが圧潰を始め、沙羅が姿を消す。

少年は沙羅を捜し、水没した救護室の天井近く、4.5気圧に圧し縮められた空気だまりで沙羅を見つける。沙羅が戻ったのは、少年の指から出てきた鏡のカケラを取りに行くためだった。沙羅は、外へ出るのが怖かった、またライプリヒに監視されて自由のない世界に戻るのかと思ったと打ち明け、LeMUの事故が自分にとっては「自由」だったと語る。少年は「死んでしまったら何にもならない! あんな奴らに負けたことになるんだぞ!」と言い、泳いで海面を目指すことを決める。最後の空気だまりで息を整え、ふたりは亀裂を抜けて昇っていく。

沙羅編バッドエンド バッドエンド

沙羅を見つけるまでに時間がかかりすぎた場合の結末。

救護室の水面に浮かび上がった少年は、沙羅に泳ぎ寄る。戻った理由はやはり鏡のカケラだった。沙羅は疲れ切っており、4.5気圧の空気を吸い続けたことによる酸素中毒で浮いていられなくなる。LeMUが揺れた衝撃で水を飲み、力が抜けて意識を失う。

少年は折れた右腕で沙羅を抱えたまま亀裂から海へ出るが、暗闇の中で方角を見失い、水を飲む。「右腕の中の沙羅の体は、冷たく、冷え切っている。」

「ぼくは……、また沙羅を助けてあげることが……。」「できなかったみたいだ……。」(少年)

「そして、暗黒がぼくの意識を包んだ…………。」で沙羅編バッドエンドは終わる。本文にふたりが死んだという言葉は無く、その後に救助されたのかどうかも書かれていない。

ココ編 — ふたつの入口(5月2日)

つぐみ編・空編・優編・沙羅編の4つのグッドエンドを見ると、「『第3の眼』開眼」の表示とともに最終章のココ編が現れる。入口は武視点と少年視点の2つあり、どちらも5月2日から始まって、入口ごとに違う場面がある。

少年視点から入ると、少年は知らないはずのことを次々に口にしてしまう。エレベーターから助けた少女に名前を教わる前から「沙羅」と呼び、5月1日のうちに空がRSDの幻だと言い当てる。誰にも教わっていない海底の研究所の存在を口にして、空に「あなた一体……何者なんですか?」と動揺される。救護室の真下では、名乗られる前に少女を「ココ」と呼ぶ。そこへ顔を出した「武」は、ココの名に唇を震わせながら、知らないと言い張る。

ヤミオニの最中、少年は自分の一人称につまずき、「『ぼくではないぼく』って……誰……?」と思う。記憶が無いはずなのに「16歳なんだから……」と口にして、武に「自分の顔も、忘れちまったのか?」と突かれた少年は、更衣室の鏡の前で、映る顔が自分だと思えずに崩れていく。

「大きな鏡の中……。『ぼくの知らない少年』が、ぼくのことを見ていた。」「キミハ……ダレ?」「ボクハ……ダレ?」

武視点から入ると、武は理由の分からないまま「ココは本当に減圧症なのだろうか?」という疑いを抱いて夜を明かし、「目を閉じたとき、月はそこにあるか」という問いに出会う。

どちらの入口からも、5月3日からは同じ一本の話になる。

ココ編 — 交互に語られる「俺」と「ぼく」(5月3日〜5日)

ココ編では、武の「俺」の語りと少年の「ぼく」の語りが、ひとつの流れの中で交互に入れ替わる。同じ言葉や同じ歌を境目にして、場面は二つの世界を行き来する。

5月3日の朝、会議室で目覚めた武は、自分を「俺」と呼ぶことに不自然さを覚える。武の世界では倉庫の事故が起き、つぐみがココをかばって、大腿骨が肉を突き破るほどの重傷を負う。少年の世界にも同じ事故は起きるが、つぐみは無傷で、そのかわり少年が、見ていないはずの事故の様子を細かく語ってしまう。武の世界に沙羅はおらず、少年の世界にココはいない。少年の前に現れるココは、幻としてだけである。

二つの世界は、泣き声、「パパ」「お兄ちゃん」という呼びかけ、一字一句同じ子守歌で結ばれていく。武の世界では、空がクローン法と「遍在」の話をし、ココは武にだけ、自分の父がLeMUのずっと下にある「いーべーえふ」の研究員だと打ち明ける。武は水没した通路を潜ってチャミを助ける。発作を起こした田中優美清春香菜は「私には、時間が無いの」と言い、武に、自分には双子の妹がいること、「だけど、彼女は私自身でもあるの」ということを告げる。

少年の世界では、田中優美清秋香菜がレミへの侵入を試み、少年はパスワードの句を「うみつきの、こくうにすずし、ほととぎす」と口走る。沙羅のペンダントのホログラムが少年にも見え、親指のカケラ、赤外線が見える目、DNA鑑定から、少年と沙羅が二卵性の双子だと分かる。沙羅は少年の名前を「ホクト」だと告げるが、少年はその名前を自分のものと思えない。田中優美清秋香菜は本当の名前を「ユウビセイアキカナ」と名乗り、少年は、その名前は「春」のはずだと思う。空が調べ直すと、田中陽一は17年前に、田中ゆきえは15年前に亡くなっていた。田中優美清秋香菜は「間違ってたのは、パスワードじゃなくて……『名前』だったのよ」と気づく。

幻の少女が少年の前に現れ、「ホクト……」と呼びかけて「ホクトのこすうみ、すぎしときに、つうず」と唱える。武の世界のココは「うみつきの、こくうにすずし、ほととぎす」と詠む。二つは同じ17文字の並べ替えになっている。幻のココは、少年が見てきた夢について語る。

「そこには、マヨちゃんがいなくて、つぐみんがケガしちゃって、顔の違うもうひとりの自分が存在して……」「ホクたんが見たあの夢は、夢じゃないからね?」(ココ)

その夜、武の世界では、クヴァレのゴンドラでつぐみが、12歳でキュレイウイルスに感染して17歳の体のまま老いなくなったこと、赤外線が見える目を持つことを打ち明け、全身に残る数え切れないほどの傷跡を「武にだけは……全部、見せてあげるから……」と見せる。ふたりは結ばれ、つぐみは赤外線のレーザーで「あなたをね、焼き付けたのよ」と言う。

ココ編 — 「……34年、だけど?」

自分と沙羅の年齢、見てきた世界の出来事、ペンダントの男。少年は、どう数えても計算が合わないことに気づく。

少年と沙羅は16歳である。今年が2017年なら、ふたりが生まれたのは2001年になり、見てきた出来事とどうしても噛み合わない。少年は「もしも今年が、2017年じゃないとしたら……。」と考え、田中優美清秋香菜に西暦を尋ねる。

「今は……西暦で言うと……」「20……」「……34年、だけど?」(田中優美清秋香菜)

少年のいる世界は2034年だった。武のいる世界は2017年で、少年が見てきたのは17年前の出来事である。2034年の一週間は、2017年であるかのように見せかけられていた。武が入場券の半券を見て「2017年だ!」と言う同じ小芝居も、17年を隔てて両方の世界に置かれている。空が田中陽一の死を「34年前」と推測したチャットログの日付「02/07/19」も、田中優美清秋香菜によって「ドイツ式の表記」で書かれた日付だと指摘され、2019年2月7日と読み直される。

ほかの謎も、続けてほどけていく。ペンダントのホログラムの男は、本物の倉成武だった。つぐみは少年に「お母さん……なんだよね?」と問われ、いったん否定したあとで認める。

「ええ……そうよ……」「私はあなた達を産んだ……」(つぐみ)

沙羅が「ママァーッ!」と飛び込み、三人は抱き合う。ホクトと沙羅は、2017年の武とつぐみの子だった。2017年の事故のあと、つぐみは浮島でライプリヒ製薬に待ち伏せされて逃げ、妊娠に気づく。2018年1月21日、船小屋で双子を産んだ。1年半ののち、ライプリヒに居場所を突き止められ、ふたりを施設に預けてペンダントを持たせる。数年後に戻ったときには、子どもたちはいなかった。『ホクト』と『沙羅』という名前をつけたのは、つぐみではない別の誰かだったようだ、と地の文は書く。

問い詰められた2034年の「倉成武」は、「2018年に生まれたお前のことをだませるはずがないだろ?」と言い返し、「そろそろ正体を現したらどうなんだ?」と少年に迫ったあとで、「カブラキ・リョウゴ」と名乗る。2017年の武の世界にいた、記憶を失った少年・桑古木涼権が、17年後に武を演じていたのである。同じ頃の2017年では、「思い出したんだ、ぼくの名前……」と自分の名前を思い出した15歳の桑古木が同じ名乗りを口にし、憩いの間の石像に自分と仲間たちの名を刻んでいた。

2034年に「優」と呼ばれていたのは、2017年の「優」こと田中優美清春香菜が産んだ娘、田中優美清秋香菜だった。田中優美清秋香菜が「父」「母」として調べていた田中陽一と田中ゆきえは、田中優美清春香菜の両親である。田中優美清春香菜は2013年、14歳のときに心臓の病を発症して、あと3〜4年の命と告げられる。翌年、モリノシゲゾウ博士から「不死には3つの種類がある」と聞かされ、2014年12月、自分の細胞核を自分の卵子に移して着床させた。2015年9月22日に生まれた田中優美清秋香菜は、母とまったく同じ遺伝子を持っている。

「あなたは私の子供」「あなたは私の妹」「そしてあなたは……私自身」

ココ編 — 「視点」になった少年(5月6日)

宇宙クジラの部屋に現れたココは、「第3視点」の話をする。その直後から、少年の見る世界は2017年の出来事へと移っていく。

2017年の宇宙クジラの部屋で、ココは武に、別の世界にいる人の「視点」を借りれば過去も未来もいっぺんに分かる、4次元の中から自分たちの世界を見下ろすのだと語る。話の相手は途中で、2034年の少年に入れ替わる。ココは少年に「ホクたんは、本当のホクたんじゃないでしょ?」と言い、少年は視点を借りているのではなく「『視点』……そのものなんじゃないかな?」と続けて、初めて「ブリックヴィンケル」という名を口にする。

直後、2034年の宇宙クジラの部屋の天蓋が破れて浸水し、ココは消える。沙羅と合流した少年の左手から流れた血が水たまりに落ちた瞬間、視界が真紅に染まる。

「ぼくには見えた。」「すべてが見えた。」「2017年の世界の、すべてが……。」

以後、少年は2017年の出来事をただ見届けるだけの「視点」になる。武の世界の語りも「俺」から「武は」に変わる。

2017年5月6日、ココがティーフ・ブラウを発症し、一行はIBFへ降りる。研究員は「娘を……頼む……ぞ」と言い残して死に、業務日誌から、ココが5月1日より前にIBFを訪れていたことが分かる。記録者の名は八神岳士。日誌は「T.Yの娘がLeMUにバイトとして来ているらしい。」と書いたところから先が壊れていた。武・田中優美清春香菜・桑古木も感染していると分かり、つぐみは自分から検査を求めて、キュレイウイルスのキャリアであることを明かす。「一度キュレイになれば、戻れないの!」と拒んだつぐみは、最後には血の提供に応じる。

つぐみの血から作った抗体が、武・田中優美清春香菜・桑古木に打たれる。ポッドの中のココにはまだ打てないため、もうひとり分の抗体が保管装置に収められる。救助は約1時間後。LeMUが浸水し、武はつぐみを迎えにひとりで戻る。ヒンメルの端末には『Willkommener LeMMIH Login:T.Y』と表示され、閃光の中で田中優美清春香菜の声が「TANAKA YOUICHI……」「ありがとう……お父さん」と響く。空の記憶が写されたテラバイトディスクを、武は「ポチッとな」とキーを叩いて取り出す。空は「私は存在しません」「しかし私は――遍在しています」「もう一度、必ず会えるときが来ます」と告げ、虹に変わる。

IBFに戻ると、診療室は無人だった。管制官は「診療室に残っていた要救助者3名は、すでに回収した」と告げる。武はそれを田中優美清春香菜・桑古木・ココの3人だと受け取り、「あとひとりは、助からなかった……」と報告して倒れ込み、つぐみとともに眠る。

同じとき、2034年の救護室で少年は目を覚ます。脱出口が見つかり、仲間と非常階段を駆け上がって星空の下へ出る。午後11時43分、「新しい1日が、始まろうとしていた……。」。だが少年は、肝心なことは何も知らないまま終わらせるわけにはいかないと感じている。

ココ編 — ブリックヴィンケル(5月7日) ココ編エンド

5月7日の未明。2017年の海の底と2034年の浮島で、同じ時間帯に物語の最後の場面が進んでいく。

2017年 — 海の底の武

圧潰5分前、武とつぐみは小型潜水艇でIBFを出る。つぐみ編と同じように、潜水艇はバッテリーが尽きて沈み始め、武は「だったら、生きろ」「生きている限り、生きろ」「俺は、死なない」と言い残してエアロックから海へ出る。つぐみの乗った潜水艇は海面へ達するが、武は沈み続け、水深119メートルで最期の息を吐く。

「岩肌に舞い降りた男の肢体は、人形のように動かなくなった。」
2034年 — 浮島の告白

浮島で目覚めた少年に、桑古木は「これで、終わったと思うなよ?」「すべてはこれから……」と告げる。実体を持った空に導かれた広場では、田中優美清秋香菜と、その母・田中優美清春香菜が向き合っていた。田中優美清春香菜は、少年というより、少年の向こう側にいる者に語りかける。

「第3視点――ブリックヴィンケル――」「ホクトの向こう側にいる『あなた』――」「そう、今、私のことを見ている『あなた』……」「あなた自身のこと」(田中優美清春香菜)

2034年5月1日15時17分、ブリックヴィンケルがホクトの視点と重なり、ホクトは記憶を失って「あなた」になった。少年が知らないはずのことを知り、予知のようなことができたのは、「あなた」がこの世界のすべてを知っていたからである。田中優美清春香菜は点と直線のたとえを使い、2034年を2017年に見せかけたのは、4次元にいる「視点:ブリックヴィンケル」に、自分たちと同じ空間にいると錯覚させるためだったと説明する。ココと倉成を助けるには、時間を自由に移動できる「あなた」の力がどうしても必要だった。そして彼女は「すべて、あなたの指示に従っただけよ」「あなたを呼んだのは、あなた自身なの」と言う。

少年の意識の中で、ひらがなの「ぼく」はカタカナの「ボク」に変わり、自分がホクトではないことを知る。

「ボクは、ただの視点……。」「次元を超えて俯瞰する目……。」「第3視点……。」「ボクこそが……。」「ブリック……ヴィンケル……。」
2017年へ — 「お父さん!」

ブリックヴィンケルは2017年を見る。動き出したピピが海へ飛び込み、海底の武のかたわらからテラバイトディスクを拾ってIBFへ運び、通路に倒れているココを見つける。地の文は、ピピが電気仕掛けの子犬だったのだと考える。ココはピピを探してポッドを抜け出しており、救助隊が回収した3名は、田中優美清春香菜と桑古木と、すでに亡くなっていた田中陽一だった。ブリックヴィンケルは、ココが「見落とされた……いや、見捨てられた」ことを知る。

ブリックヴィンケルの意識が海の底へ降りたとき、ホクトの自我が噴き出すように叫ぶ。

「お父さん! お父さん! 死んじゃやだよ!」「ぼくはまだ、一度もお父さんに会ったことがないのに!」「約束したじゃないか! ――『絶対死なない』って言ったじゃないか!」「ココはまだ、研究所にいるんだよ!」(ホクト)

武の目が開く。武はIBFのプールへ泳ぎ着き、ココを見つける。だが保管しておいた抗体は、武たちより何日か前に感染していたココには効かない。水深119メートル、12.5気圧のIBFから浮上する手段もない。オレンジのアンプルについて田中優美清春香菜が口にした「使い方によっては、ハイバネーションすら可能」という言葉から、人工冬眠でしのぐことが決まる。ポッドに入る直前、ココは武の後ろに立つ者を見る。

「4次元人間、さん……」「ブリック、ヴィンケルさん……」「やっと会えたね……?」「必ず……迎えに……来てね……?」「約束、だよ?」(ココ)

ココは「それじゃあ、おやすみ……」「お兄ちゃん……」と言って眠り、武も「約束しちまったからな……」「俺は、寝ることにする」と隣のポッドに入る。

「17年間待って!」

ブリックヴィンケルは、2017年の浮島にいる田中優美清春香菜に、武とココが冬眠していることを伝える。2034年に戻ると、世界は全員がそろって笑い合う団欒に変わっていた。しかし、この世界とつながった過去でも2017年の事故は防ぎようもなく起きている以上、その世界は「致命的な矛盾」を抱えていた。武の体は崩れ落ち、ココの姿は消える。ブリックヴィンケルは2017年へ戻り、今度は逆のことを頼む。

「17年間待って!」「だから17年後、ボクをだまして!」「だから絶対に、17年経つまで、どんなことがあっても、IBFに近づいちゃダメだ!」(ブリックヴィンケル)

すぐにふたりを救い出してしまえば2034年の事件は起こらず、ブリックヴィンケルも現れない。そして海の底の武を蘇らせるには、17年後に呼び出されたブリックヴィンケルが、2017年へ戻らなければならない。2034年の事件の首謀者は、ほかならぬブリックヴィンケル自身だった。ホクトが海の底で「お父さん!」と呼びかけたあの瞬間のためだけに、すべては起こったのである。

2034年5月7日 — 17年後の目覚め

ブリックヴィンケルは、浮島の石碑から砕けたカケラを抱えて海へ飛び込む。刻まれていた文字は『天国』。重い石を抱えたまま水深119メートルのIBFまで沈み、17年間眠り続けていたココと武を目覚めさせる。

「やっぱり、来てくれたんだぁ♪」「ココ、絶対迎えに来てくれるって、信じてたの」(ココ)

何日眠っていたのかを尋ねた武は、答えを聞いて「17ねぇーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!?」と叫ぶ。ココにとっては眠って目覚めただけでも、外では17年が過ぎていた。ココは「17年前から、お兄ちゃんのこと、知ってたんだよ?」と言い、ブリックヴィンケルに「今日からお兄ちゃんとココは、恋人どうし、ね?」と想いを告げる。

2034年5月1日の事件 — 仕組まれた一週間

2017年、ブリックヴィンケルが田中優美清春香菜に口述した計画。少年が過ごした2034年の一週間は、この計画どおりに進んでいた。

  • 日付は2034年5月1日月曜日。2017年5月1日も月曜日だった。
  • その日、沙羅が学校の行事「トクシ」でLeMUに来る。つぐみには「LeMUに来れば、娘と息子に逢えるよ」、ホクトには「LeMUに来れば、お母さんと妹に逢えるよ」と伝えて誘い出す。
  • 田中優美清秋香菜は、2017年の田中優美清春香菜と同じようにLeMUの係員として働かせる。
  • 空には何も知らせず、2017年の記憶はいったん消しておく。記憶のバックアップはテラバイトディスクに残っている。
  • 桑古木少年を協力させ、17年後、倉成武に見せかける。そのための訓練をさせる。
  • 計画に必要なのは以上の6人。彼らを全員集めてLeMUに入れ、2017年と同じような事故を起こす。
  • 期間は1日から7日までの一週間。そのあいだは決して干渉しない。6日の夜9時ごろになってもブリックヴィンケルが現れる兆しがなければ、全員を救出する。
  • 17年後、何も知らないブリックヴィンケルに「ボクを呼び出した理由は……なに?」と尋ねられたら、「すべて、あなたの指示に従っただけ」と答える。

田中優美清春香菜と桑古木は、それから17年間のすべてを、この計画のためだけに費やした。桑古木が納得するまでには数か月かかった。田中優美清春香菜は2025年からLeMUで働き、第3視点を研究していた。ライプリヒ製薬の不正を内部告発しながらも、「今日、5月7日になるまでは、絶対に、何があっても動かないで!」と、5月7日まで動かないよう取引していた。それがブリックヴィンケルとの約束だったからである。

計画を考えたのはブリックヴィンケルで、そのブリックヴィンケルはこの計画によって呼び出される。最初にこの計画を思いついたのが誰なのかを、本文は決めていない。

グランドエピローグ — BlickWinkel

2034年5月7日、午前11時17分。本土へ向かう船の上に、9人と2匹が乗っている。語りは一人ずつ、それぞれの視点へ移っていく。

乗っているのは、武・ホクト・つぐみ・田中優美清春香菜・空・ココ・桑古木・田中優美清秋香菜・沙羅の9人と、チャミ・ピピの2匹である。武にとって、LeMUの事故は6日前の出来事にすぎない。目覚めたら17年がたっていて、16歳の娘と息子までいる。つぐみは「武……」「おかえりなさい」と迎え、武は「ああ、ただいま、つぐみ」「遅くなって……悪かった……」と答える。直後、武の「可愛い」がチャミのことだったと分かり、「武のバカァーッ!」というつぐみの声が響く。つぐみは、紫外線に弱いキュレイの体を守るため、レミュール(キツネザル)の着ぐるみを着ていた。

新聞は、ライプリヒ製薬がティーフ・ブラウの蔓延に関わった疑いで強制捜査を受けると報じていた。2017年から数年にわたって世界に広がったティーフ・ブラウの犠牲者は、数千人とも数万人とも言われた。内部告発をしたのは田中優美清春香菜である。彼女は、IBFの研究員が父・田中陽一だったことを明かす。2000年、レミ開発の一員だった陽一は、ライプリヒがティーフ・ブラウを研究開発していると知り、告発しようとして拘束された。脱走すれば妻と娘が交通事故で死ぬと脅され、家族には事故で海へ転落して行方不明になったと伝えられた。2017年にIBFにひとり残っていたのは、LeMUで働く娘の身を案じてのことだったらしい。母ゆきえは2019年に、ティーフ・ブラウで亡くなっていた。

田中優美清秋香菜は17年間だまされてきたことを母に問い詰め、「ライプリヒの施設に監禁されてたマヨを助け出すことだってできたでしょ?」と責める。田中優美清春香菜が17年待ったのは、ココと武を助けるためだった。最後に田中優美清秋香菜は母に抱きしめられる。ホクトは田中優美清秋香菜に「ぼくと、付き合ってください」と告白し、「別の歴史の流れの中では、ぼくはそんな未来を歩むことになってるんだ」と言う。

桑古木は、17年間みんなをだまし続けた唯一の理由を語る。2017年、15歳で記憶を失って怯えていた自分の心を暖めてくれたのは、八神ココの無邪気な笑顔だった。ともに過ごしたのはたった6日間だったが、この17年間、ひと時も忘れたことはなかった。

「なぜなら俺は、彼女のことが、好きだったから――」(桑古木)

ココは桑古木を「少ちゃん」と呼び、「少ちゃんは、命の恩人さんなんだよ?」と言って赦す。空は実体を持って甲板に立ち、その理由を「これは、奇蹟なんだと思います」「――女神、アフロディテの奇蹟、です」と語る。そして空は、テラバイトディスクには書き込まれているはずのない『ピグマリオンの話』と『ポチッとな』の記憶を持っていた。

最後はココの視点になる。ピピが宙に向かって吠え、ココはそこに「お兄ちゃん」の姿を見る。

「今、この瞬間、ココちゃんはきみのことを見ているのです。」

全員が見えない誰かに向かって手を振り、語りはブリックヴィンケルの独白で閉じる。

『ボクは今、見ている』
『ボクは今、見られている』
『キミは今、見ている』
『キミは今……
……きっと誰かに、見つめられている』

つぐみ・空編/優編/沙羅編のエピローグ エピローグ

エピローグは3本ある。優編と沙羅編のエピローグはそれぞれのグッドエンドに続けて流れ、つぐみ・空編のエピローグだけは、ココ編をクリアしたあとに見られるようになる。

つぐみ・空編エピローグ — Geschichte

表示されるのはドイツ語の2行だけである。

Eine Geschichte setzt auf
1 Mai, 2034 fort.

「ひとつの物語は、2034年5月1日に続く」。武視点の物語の締めくくりに、別の年の日付が置かれている。つぐみや空のその後は、ここでは語られない。

優編エピローグ

「それから、2年後……。」。船の上に少年と田中優美清秋香菜がいる。回想の中で、脱出直後の浮島に空が現れ、少年の肩を叩き、再会の握手を交わす。画面に映っていた女性が「田中先生」として姿を見せ、少年に「久しぶりね……」と言い、田中優美清秋香菜には「私は……あなたの……」「『母親』よ……優……」と答える。少年たちは質問を浴びせるが、答えは「それは、とてもとても、長い話だった。」の一行で伏せられる。少年の身には不可解なことが起きなくなり、予知もできなくなって、失われた記憶も取り戻せた。ふたりは口づけを交わし、最後の一行は「ぼくらは時間を超えられるんだ」で終わる。田中先生が田中優美清春香菜であることは、ココ編で分かる。

沙羅編エピローグ

少年は浮島の公園で目を覚ます。意識のない沙羅を抱えてツヴァイトシュトックから海面まで34メートルを泳ぎ切り、非常用フラップを登り切ったところで気を失っていた。目を覚ました沙羅は「まだ……、生きてる……?」「やった、やったね、お兄ちゃん!」と喜ぶ。少年は救助を受けず、身元を伏せたままライプリヒから逃げようと言う。

「このまま、逃げよう」「ああ、あいつらから……、ライプリヒから」「それどころか、ぼくらは、すでに死んでいると思われていてもおかしくない……」(少年)

ほかの人たちの安否を尋ねる沙羅に、少年は「たぶん、大丈夫だと思う」と答えるだけである。左手を差し出して沙羅と手を握り、「ぼくらは、自由になるんだ!」と、ふたりは駆けだす。

年表 — 作中世界で起きた順

ゲームで知る順ではなく、作中の出来事を起きた順に並べ直した。年月は本文に書かれたものだけを載せている。

年月出来事
1993年7月小町つぐみが生まれる
2000年 初夏田中陽一がライプリヒ製薬のティーフ・ブラウ開発を告発しようとして拘束される。家族には行方不明と伝えられる(田中優美清春香菜は1歳)
2005年8月12歳のつぐみがキュレイウイルスに感染する
2010年人間のクローン受精が法律で認められる
2011年4月茜ヶ崎空が実用レベルで稼働する(空いわく「2011年4月2日生まれ」)
2013年14歳の田中優美清春香菜が心臓の病を発症し、あと3〜4年の命と告げられる
2014年12月田中優美清春香菜が自分の細胞核を自分の卵子に移して着床させる
2015年9月22日田中優美清秋香菜が生まれる
2017年5月1日〜7日LeMUの事故。5月6日、ココが発症し、一行はIBFへ。研究員(田中陽一)が死亡。5月7日未明、武が海の底で一度息絶え、蘇生してココとともに人工冬眠に入る。同じ日、ブリックヴィンケルが田中優美清春香菜に「17年間待って!」と頼む。午前11時、つぐみは浮島で待ち伏せを逃れる
2018年1月21日つぐみが双子のホクトと沙羅を産む
2019年田中ゆきえがティーフ・ブラウで亡くなる。夏、ライプリヒに居場所を突き止められたつぐみが、双子を施設に預ける
2025年田中優美清春香菜がLeMUで働き始め、第3視点を研究する
2034年5月1日計画の実行。15時17分、ブリックヴィンケルがホクトの視点と重なり、ホクトは記憶を失う
2034年5月6日午後11時43分、閉じ込められていた人々が浮島へ脱出する
2034年5月7日ブリックヴィンケルがIBFでココと武を目覚めさせる。午前11時17分、9人と2匹が本土へ向かう船の上にいる

作中で明かされないこと

以下は作中で明確な答えは示されていない。

  • 2034年のLeMUに現れた幻の少女は何者だったのか。2034年のココはIBFで眠り続けていたはずで、ブリックヴィンケル自身も「この時代のココは、ホクトのことをまだ知らないのか。」「じゃあ、あの幻影の少女は一体……?」と考える。答えは与えられない
  • つぐみ編・空編の武は生きているのか。つぐみ編では海へ沈んでいき、空編では「昇って行った」と書かれて終わる。どちらも死は明言されない
  • 沙羅編バッドエンドのふたりのその後。ふたりとも意識を失うところで終わり、死を示す言葉も救助の描写もない
  • つぐみ・空編バッドエンドのココ。登場も言及もなく、どこにいて、どうなったのかが分からない
  • 空の「あり得ない記憶」はどこから来たのか。『ピグマリオンの話』は空編でディスクへのコピー中に交わされた会話で、空自身が「どこにも記憶されませんね」と言っている。『ポチッとな』はココ編でコピーが終わったあとにディスクを取り出すときの掛け声である。どちらもディスクに入っているはずがないが、誰が、何がその記憶を空に渡したのかは書かれない
  • 2034年の空が実体を持つ理由。「奇蹟」「女神、アフロディテの奇蹟」とだけ語られる
  • 『ホクト』『沙羅』と名づけたのは誰か。つぐみではない別の誰かだったようだ、とだけ書かれる
  • 武はキュレイに感染したのか。17年の冬眠と海の底での蘇生について、地の文は「真相はわからない。」とする
  • 田中優美清春香菜と桑古木は完全なキュレイ種なのか。抗体を打ったふたりの老化は止まったと書かれるが、少年は「わかんないや……」と考えるのをやめる。紫外線に弱いはずの面々が昼の甲板で過ごしていることの説明もない
  • チャミの感染。作中ではキュレイウイルスは種の壁を越えないと説明される一方、つぐみの血でハムスターのチャミもウイルスに侵されたことになっており、食い違ったまま残る
  • ティーフ・ブラウの正確な感染経路。つぐみは「TBの正確な感染経路は、私達にはわかってないんだから」と言う
  • つぐみの全身の傷跡の由来と、田中優美清春香菜の心臓の病のその後。どちらも作中で説明されない
  • 憩いの間の石像の落書き。2017年に桑古木が名前を刻んだのは胸に手を重ねた石像だけで、南と天を指す石像の落書きを誰が描いたのかは書かれない
  • ココ編の朝、武が自分を「俺」と呼ぶことに違和感を覚えた理由。少年の側の違和感は田中優美清春香菜が説明するが、武の側には誰も触れない
  • プロローグの謎。加圧室の係員は実体だったのか、「彼でも、彼女でもない」第三の声は誰か、少年が憩いの間で待っていた相手は誰か。最後まで明かされない
  • 計画の始まり。ブリックヴィンケルを呼んだのはブリックヴィンケル自身で、最初にこの計画を考えた者は決まらない。作品はこの輪の起点を書いていない

エンディング一覧

種別 エンド名 編 結末
グッド つぐみ編グッドエンド 武視点/つぐみ編 武が潜水艇を浮かせるために海へ出て、沈んでいく。つぐみは生還する。武の生死は明言されない
グッド 空編グッドエンド 武視点/空編 空の記憶をディスクに写し、ヒンメルの水没の中で空と抱き合う。IBFにいた4人は救助される。武の生死は明言されない
バッド つぐみ・空編バッドエンド 武視点(両編共通) IBFから出られず、つぐみが扉の外へ去り、少年・田中優美清春香菜・武が命を落とす。ココは登場しない
エピローグ つぐみ・空編エピローグ 武視点(両編共通) ココ編のクリア後に見られる。「ひとつの物語は、2034年5月1日に続く」というドイツ語の2行
グッド 優編グッドエンド 少年視点/優編 サイフォン効果で通路を乾かし、少年と田中優美清秋香菜が浮島へ脱出する。「――恋、だよ」
エピローグ 優編エピローグ 少年視点/優編 グッドエンドに続けて流れる。2年後の船の上。浮島で「田中先生」が田中優美清秋香菜の母だと名乗る
バッド 優編バッドエンド 少年視点/優編 ヒンメルの扉は開かず、ふたりは水に呑まれる。最後はプロローグの結びと同じ文で終わる
グッド 沙羅編グッドエンド 少年視点/沙羅編 兄妹と分かったふたりが、救護室の空気だまりから海面を目指して泳ぎ出す
エピローグ 沙羅編エピローグ 少年視点/沙羅編 グッドエンドに続けて流れる。浮島に上がったふたりが、ライプリヒから逃げると決めて駆けだす
バッド 沙羅編バッドエンド 少年視点/沙羅編 沙羅が意識を失い、少年も暗闇に包まれる。その後は書かれない
ココ編 ココ編エンド ココ編(武視点と少年視点) 17年後、ブリックヴィンケルがIBFでココと武を目覚めさせる。続くグランドエピローグで、9人と2匹が本土へ向かう

エンド8本(グッドエンド4本・バッドエンド3本・ココ編エンド1本)とエピローグ3本の、計11本。ココ編は、つぐみ編・空編・優編・沙羅編の4つのグッドエンドを見ると解放され、バッドエンドは条件に含まれない。2011年のXbox 360版以降のリメイク版とリマスター版は、シナリオとエンディングの構成が異なる。