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ストーリー詳細 — 晴れのち胸さわぎ

本作はルート分岐のない一本道で、物語は4日間で完結する。日中は場所を選んで移動する自由行動になっていて、そこで拾った断片が夜の本筋につながっていく。 ▼詳細を読む はネタバレを含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。

1日目 — 下着泥棒と、許嫁を名乗る転入生

校内で続く下着盗難とロッカー荒らし。生徒会長として捜査を任されたかずひこの前に、舶用神社の巫女を名乗る転入生・日宮月美が現れ、いきなり「御主人様」と呼んでくる。

朝は千尋の鉄拳で始まる。生徒会は下着泥棒の捜査に駆り出され、かずひこは「生徒会特殊部隊」などと名付けて動き回る。転入してきた月美はその日のうちに部隊へ配属され、以後ずっとかずひこの傍にいることになる。

この日のうちに、のちに効いてくる断片がいくつも置かれる。未確認生物好きの白石押絵が「自分はUMAを見た」と言い張って千尋と衝突し、かずひこはそれを聞いて胸の内でこう呟く。

「押絵ちゃんが見たって言った“UMA”って“タマタマ”の事なのかなァ‥‥」(早乙女かずひこ)

また、人物が誰も登場しない奇妙な独白の場面がある。眠りについていた何かが「その生物との接触により意識を復活させた」と語り、続けてこう言う。

「この身体を手にいれた後‥‥アレを手に入れる事が出来れば‥‥‥‥」(話者不明)

この独白の主体が誰なのか、「アレ」が何を指すのかは、最後まで明示されない。同じ場面には「その空間の持ち主に対して同類の波長を感じていた」という一文もあり、宿主の側にも同じ種類の存在がいることが示唆される。

2日目 — タマタマの保護と、龍の力

捜査の対象に「タマタマの保護」が加わる。かなめ夫人はそれを魑魅の一種・霞だと説明し、かずひこ自身にも正体不明の「龍の力」が宿っていることが明らかになる。

朝礼で千尋が任務を告げる。

「内容は昨日に引き続き下着泥棒、ロッカー荒らしを捕まえる事と、更にタマタマを保護する事とします。」(桃木千尋)

下着泥棒とタマタマ捜索という二つの筋がここで一本につながる。下着盗難の真犯人はタマタマだった。

タマタマの正体については、かなめ夫人が原文にルビつきで説明している。

「この、かずひこ様方が“タマタマ”と呼ぶ生物は、魑魅〔スダマ〕の一種で、霞〔カスミ〕といいます。」(かなめ夫人)

月美は祝詞を唱えて霞を浄化してみせる。そしてかずひこにも同じことができると分かる。本人の説明はこうである。

「オレの中にあるらしい龍の力でタマタマを浄化してるんだよ。」(早乙女かずひこ)

ただし本人は力の使い方を理解していない。発動に難儀し、感情の込め方が条件だと後から分かる有様である。千秋が「龍の力で浄化してるんでしょぉ☆ かず君ッ」と横から補うのも、彼女が事情を知る側にいることの表れになっている。

3日目 — 退学宣告、オオタマ、そして封じられていた記憶

政経教師の井闇がかずひこの退学を宣告する。博子の新聞が裁定を覆した直後、井闇の恨みが巨大なオオタマを呼び出す。龍の力は通じず、オオタマは「龍玉を差し出せ」と言い残して去る。

井闇は「婦女子に取り入る事の巧みな早乙女かずひこを、この学園に野放しにしておいては」と主張して退学を突きつけるが、そこへ博子が刷り上がったばかりの新聞を持って乱入し、証言で裁定をひっくり返す。取材が目的でついて回っていた新聞部員が、ここで筋を通す側に回る。

ところがその直後、恨みを抱えた井闇の思念が巨大な霞を呼び出す。月美の説明はこうである。

「井闇様の御主人様に対する恨みの思念が、この大きなタマタマを呼び出したんでしょうっ」(日宮月美)

オオタマにかずひこの龍の力は通じない。

「人間を通して出す弱々しい力など、我には無力。姉妹達なら別だがね‥‥。」(オオタマ)
「龍玉を差し出せ。」(オオタマ)

ここで初めて「龍玉」という言葉が出るが、かずひこには何のことか分からない。蒼龍☆ 蒼龍って、いったい何の事だよッ!!」と叫ぶ場面があるのは、彼の記憶が実際に封じられているからである。

一同は舶用神社へ向かい、かなめ夫人が社の縁起を語る。二柱の龍神が争い、天から選ばれた巫女が純真無垢な祈りを捧げて鎮めた、という筋である。名も明かされる。

「名前を、紅龍様を“ファンルー”、蒼龍様を“ツァンルー”と呼びました。私達は津安留迂神、府安留迂神と崇めております。」(かなめ夫人)

博子は聞いた話から要点を言い当てる。「だからこの神社の宮司は巫女で女系家族なワケね」。かなめ夫人はそれを認め、巫女の家系についてこう述べる。

「私達の家系は龍神様を奉り、怒りを静める巫女の家系。龍神様の花嫁の家系とも言いましょうか☆」/「血族を絶やさない為に夫を持つ事はあっても、心は龍神様ダケのものなのですよ。」(かなめ夫人)

この設定は校長という人物の立ち位置で裏づけられる。かなめの夫である校長は、自分の立場を「ン〜ッ、婿養子という奴ですかなァ☆ はっはっは。」と笑って説明する。

そしてかずひこが蒼玉に触れた瞬間、封印されていた記憶が戻る。5日前に何があったのかが明かされる。

「うむ。我が名は蒼龍ツァンルー。ゆえあってこの男の中に潜んでおるぞ。」(蒼龍)
「紅龍に追われて天を駆けていた時に、たまたま波長が似ていたコイツが神木に居たから入り込んで隠れた」(蒼龍)

蒼龍はかずひこの体内にいた。そして自分の存在を言いふらされないよう、かずひこの記憶そのものを封じていた。

「万が一この男が我の事を喋り回らないよう、念のために今日までの記憶を封印するとするか。」/「心配するな。我がまた再び蒼玉を手にする時、記憶は蘇ろう。」(蒼龍)

作品の冒頭からここまでが、実は「記憶を封じられた男の視点」だったことが、この時点で読者に開示される。

さらに蒼龍は、霞の中に危険な個体がいることを告げる。

「我はこの男に残り、高度に成長した霞を追おうと思っておるが。邪悪に囚われ、自我が芽生え始めておる。」(蒼龍)

かなめ夫人は儀式で神託を得て紅龍の所在を探ろうとする。月美は紅龍の憑代として紅涼子という名を挙げるが、かなめ夫人の答えは奇妙なものだった。

「紅涼子様という方は、御姿を含めてこの世に存在してません。何故だかは判りませんが‥‥。」(かなめ夫人)

4日目 — 蒼玉を失い、力を奪われる 結末

かずひこは蒼玉を失う。持ち去ったのは押絵だった。そこへ助けられた娘として珠美が現れ、かずひこから龍の力を奪う。祭儀の間は半壊し、紅龍が神話の裏側を語りはじめる。

千尋は前日から念を押していた。

「かずッ★ 蒼玉を肌から離しちゃダメだからね」(桃木千尋)

それでも蒼玉は手を離れる。月美の証言で持ち去った相手が分かる。

「さっき出て行くときに、手の中に蒼いペンダントが在りましたぁ」(日宮月美)

押絵である。そして助けられた娘として珠美が姿を見せ、かずひこから龍の力を奪い取る。

「龍の力は微塵も出ないッ!! オレの気合は十分だってのにッ!?」(早乙女かずひこ)

祭儀の間は半壊し、かなめは倒れる。そこへ現れた涼子が告げる。「私とアナタは敵なのよ☆ 理解してるかしら。」

そして紅龍が、神社の縁起では語られなかった真相を明かす。

「私こと紅龍と、その蒼龍は、数千年前にお互いに惹かれあい、契りを結んで夫婦になったの。」(紅龍)

二柱は夫婦だった。そして争いの原因は蒼龍の側にあった。

「崇める人間が気に入った蒼龍は「願いを叶えるから」とか言いながら人間に処女の娘を求め」(紅龍)

夫の不貞に激怒した紅龍が人間を滅ぼそうとし、それを止めるために結ばれたのが盟約だった。三つの玉の由来もここで明かされる。

「身体を3つに分かち、身体は舶用巫女が預かり、龍力は互いが共に管理し、二度と浮気をしな〔い〕」(紅龍)
「しかも、舶用の巫女は代替わりしてすっかり蒼龍の妾になってた」(紅龍)

神社が伝えてきた「相争う二柱を巫女の祈りが鎮めた」という縁起は、夫婦喧嘩と後始末の物語だったことになる。蒼龍が紅龍から逃げ回っていたのも、封印から逃れるためではなく浮気を詰められるのを避けていたにすぎない。

そして真の敵は珠美だった。魑魅のうち悪しき自我が芽生えた個体で、その目的は取引でも復讐でもない。

「私はね、2つの龍神の力を得たら、真っ先に2つの龍神をこの世から消すの。」(珠美)
「邪魔な人間もうっとうしいから消してあげたいわねぇ‥‥。私達魑魅の理想郷を作るのも悪くないかもッ★」(珠美)

珠美は退けられ、二龍は和解して共に封印へ帰る。紅玉から涼子の声で語りかける紅龍は、蒼龍を叱ったうえで赦す。

「あやまるくらいなら逃げないで。迷惑なんだから‥‥」/「まぁいいわ。久しぶりにいいもの見られたし‥‥許してあげる」(紅龍)

それを見た千尋の評が、この作品の締め方をよく表している。「くす‥‥ホントは仲がいいのね‥‥紅龍と蒼龍って‥‥」

かずひこは千尋と結ばれる。後日談には博子と月美も合流し、クレジットで幕が下りる。この結末は続編『晴れのちときどき胸さわぎ』に正史として引き継がれ、「前作での騒動をきっかけに恋人同士となったかずひこと千尋」という前提で次の物語が始まる。

分岐について

本作にルート分岐はないが、3日目に短い選択が2箇所ある。どちらもすぐ本筋へ合流するものの、片方は世界観の説明そのものが選択に依存しているという珍しい作りになっている。

① 儀式を行うか否か。かなめ夫人が再度の儀式を提案する場面で、「やっぱ、儀式はしないよ」と「出来る時に出来る事をヤルのも手だぜ」に分かれる。二つの分岐は直後に同じ文へ合流するため、進行そのものは変わらない。

ところが、紅涼子がこの世に存在しないという説明と、紅龍が人間を乗っ取ったうえ姿まで変えているという蒼龍の推論は、儀式を行った側にしか出てこない。行わなかった場合、同じ情報は本筋で補われない。終盤の真相が腑に落ちるかどうかが、この一択で変わってしまう。

「紅龍の奴、どうやら入り込んだ人間を完全に乗っ取って、更に姿を変えているのでは‥‥。」(蒼龍・儀式を行った場合のみ)

② タマタマ捜索の組み分け。誰と組むかを選ぶ場面で、押絵が「圧力かけたら違反ですの。キチンと選択してもらうですのッ」と念を押す。結果は月美+押絵の組と、かずひこ+千尋の組に分かれる。

このほか4日目にも、博子に関する先行条件で分岐する箇所がある。ただし何が条件になっているのかは、現存するテキストからは読み取れない。

エンディング一覧

種別 エンド 到達条件 結末概要
単一 唯一のエンディング 本編を進めれば到達する 珠美が退けられ、二龍は和解して封印へ帰る。かずひこは千尋と結ばれ、後日談には博子と月美も合流する

本作にバッドエンドや分岐エンドは確認できない。複数のヒロインが並び立つ作りだが、ヒロイン別のエンドは用意されておらず、結ばれるのは千尋である。到達条件を示す記述は作中にないため、上表は「本編を進めれば到達する」とだけ記している。