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ストーリー詳細 — 晴れのちときどき胸さわぎ

本作は一本の進行線をたどり、途中に7つの自由行動パートが挟まる。学園編から刻美編、修学旅行編を経て終盤へ向かう構成で、以下は章のまとまりごとに追っている。 ▼詳細を読む はネタバレを含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。

プロローグ — 夕闇に消えた少女

生徒会室でうたた寝したかずひこは、子供の頃の夢を見る。夕闇の帰り道、ポニーテールの少女が「私、もう行かなきゃ」と告げて消えていく夢だった。少女の名は「ときみ」。

夢の中でかずひこは子供の姿になっている。地の文がそこに違和感を差し込む。

「び……なぜオレは子供の身体なんだッッッ」(地の文)

幼いかずひこは無邪気に「ときみちゃん、もう遅いから家まで競争して帰ろうッッッ」と誘うが、少女は別れを告げる。

「……‥私、もう行かなきゃ……。」「急がなきゃいけないの……でもきっと、きっとまた逢えるから……」(ときみ)

この短い場面が本作の全体を規定している。目覚めたかずひこが寝言で「ときみ」と口にしたせいで千尋の機嫌は最悪になるのだが、彼女の名がなぜ出てくるのかは本人にも分からない。この別れの意味と「また逢える」という言葉の重さは、物語の最後で回収される。

学園編 — 集団緊縛事件と、現れた刻美

学院では生徒が知らぬ間に縛られているという事件が続いていた。生徒会長として犯人捜しを命じられたかずひこの前に、夢でしか知らないはずの刻美が現れる。

日常は前作の続きとして始まる。地の文は千尋との関係をこう説明する。

「彼女は桃木千尋といって、オレとは大家と店子の関係である。」/「最近までは単なる友人だったが、ある事件をきっかけに オレ達は恋人になった。相思相愛で、めでたい事である♥」(地の文)

もっとも、かずひこの素行は改まっていない。千尋の告発はこうである。

「エスケープはするわ、月美ちゃんには抱きつくわ、博子ちゃんのオッパイは揉むわ、千秋姉ェのお尻は撫でるわ……信じらンないわッ!」(桃木千尋)

その日常に、生徒が知らぬ間に縛られているという事件が割り込む。犯人捜しを引き受けたかずひこの前に現れたのが刻美だった。彼女は事件の解決に手を貸すと言い、そのうえでかずひこの懐中時計を貸してほしいと申し出る。

刻美の素性は、学院の理事長にして舶用神社の宮司でもあるかなめの口から語られる。本名は天津船刻美で、かなめと月美の遠縁にあたり、年齢は14歳。ただし天津船家について月美が「天津船家が滅びたのはたしか大正の頃と聞いた事が……」と口にすると、かなめははぐらかす。刻美は舶用神社に保護され、雪美が世話役につく。

刻美編・修学旅行編 — 京都、緋雲荘、そして破導法師

記憶を持たない刻美との関わりが進み、舞台は修学旅行の京都へ移る。宿は幼なじみ・なぎさの実家である緋雲荘。そこで、時之龍のもとに封じられていた法師が動き出す。

刻美が時間移動を行うと、巨大な生物が姿を現す。月美はそれを時之龍だと説明する。日宮の巫女にとってすら文献上の存在で、地の文は「時刻の化身」と表現する。月美は日宮の役目についてこう述べる。

「日宮の役目は龍神様の嫁になる事の他に、時之龍様を暴れさせない使命もあるのですぅ。」(日宮月美)

京都では破導法師が現れる。時之龍のもとに封印されていた法師で、緊縛の行によって時間を止める法力を得た人物である。彼は一貫して「龍に選ばれし者」を捜しており、かずひこを見つけてこう告げる。

「いたとも、龍に選ばれし者よ。お前を待っていたのだ。」(破導法師)

破導法師の来歴は本人の口から語られる。若い頃から修行を重ねて時間を止める力を得たが、その力は戦に利用され、多くの死をもたらした。次の戦場へ送られることを拒んで山へ逃げ、そこでキミという女性に助けられる。正体を明かしても拒まれなかったが、やがて追手によって封印された。その封印を行ったのが、千尋の前世にあたる巫女である。

そして終盤にかけて、前世の相関が整理される。かずひこの前世が破導法師であり、月美の前世が破導法師の想い人キミ千尋の前世が破導法師を封印した巫女木塔の前世はその巫女と結ばれた相手にあたる。かずひこ自身が「オレの前世は破導法師」と認める場面がある。

なお本作には別の時空が現れる。修学旅行の三日目が繰り返されるのは、かずひこの時空に対応する龍の頭がねじ曲げられ、未来が過去につながれていたためで、別時空の月美がそれを元に戻す。別時空の人物は性格そのものが違っており、地の文は「笑わない月美ちゃん」と呼び分ける。

終盤 — 一番目の巫女と、定められた死

月美が日宮の「一番目の巫女」であることが明かされる。そして彼女には死の運命が定められていること、刻美の存在がその運命と表裏一体であることが分かってくる。

日宮には二つの力が伝えられている。時之龍の力時之龍を知る力である。この二つは、その時点で存在する日宮の巫女のうち、もっとも能力の高い者の中に封印される。それが「一番目の巫女」の意味であり、月美がその当代だった。

遙か昔、紅龍と蒼龍を仲裁した日宮の巫女が用いたのもこの時之龍の力であり、その際に二つの力を封印すると誓わされた経緯も語られる。前作で月美が舶用学院へ招かれた本当の理由も、ここにあった。

「龍神様事件の時、私が舶用学院に呼ばれた真の理由は、私にその力があるからなのです、かずひこ様。」(日宮月美)

そして月美には死の運命が定められている。本人はそれを淡々と受け入れている。

「人はいつか死にますけど、それが私の場合明日だと、ただそれだけのことだと思うんです。」(日宮月美)

刻美の正体もここで明かされる。刻美は、月美の死の瞬間に弾き出された、月美の心の一部である。実体を保っていられるのは時之龍の力によるものでしかない。だから彼女はかずひこにこう詰め寄る。

「お兄ちゃんだってそうでしょッッ 月美が死んでもいいのッッッ その時になれば、今の私もいなくなるのよッ」(刻美)

月美を救えば刻美が消え、刻美を存えさせれば月美の死が動かない。片方を救うことがもう片方の消滅を意味するという構造が、終盤の中心的な葛藤になる。

核心 — 刻美の願い 物語の中心

幼いかずひこの前に現れた刻美が、泣きながら自分の願いを告白する。プロローグで夕闇に消えた少女が、なぜそこにいたのかが明かされる一場面。

物語の核心は、たった一つの場面に置かれている。幼いかずひこの前に立った刻美が、泣きながらこう言う。

「私は……一番幸せだった時間の中で、いつまでも暮らしたかっただけなのに……それはいけないコトなのッ」(刻美)
「私は間違っていたのッ お兄ちゃん……」(刻美)

冒頭のプロローグで幼いかずひこの前から消えた少女は、最も幸せだった時間に留まろうとして時を越えてきた存在だった。時間への干渉も、緊縛事件も、修学旅行での騒動も、すべてはこの願いから始まっている。

意味も分からないまま、幼いかずひこはこう応える。

「お姉ちゃんは間違ってないよ。何だかわからないけど、お姉ちゃんが正しいよ。」(かずひこ・幼少)
「絶対に守ってやるよッ 約束するから、お姉ちゃん……」(かずひこ・幼少)

この約束が結末を決める。子供が何も分からずに口にした言葉が、そのまま最後の一手になるという作りになっている。

結末 — 運命は変わる 結末

時之龍への干渉を経て、かずひこは戻る。月美の「運命って……変わるんですねぇ」という一言が、この物語の答えになっている。

終盤、時之龍は荒れ狂い、「時之龍の力を持たない者達よ、この時之龍に何の用だッ」と敵対的に振る舞う。破導法師は「時之龍に無理をしいれば、いずれは反動がやって来るぞ」と警告し、かなめも「悪くすれば時之龍様が暴れ、時間が崩壊してしまう可能性も……」と補う。

それでもかずひこは干渉に踏み切り、戻ってくる。定められていたはずの死は動いた。月美の一言がそれを示す。

「……運命って……変わるんですねぇ……」(日宮月美)

かなめは刻美について判断を下す。「では、あなたを産み出した事故の日まで舶用と日宮の名の元に保護しましょう」。ただし条件が付く。「その“時之龍の力”は規制させてくださいな。日宮の使命はおわかりですねッ」。

エピローグでかずひこは千尋にすべてを話す。地の文はこう結ぶ。「結局オレは、数ある未来の選択の中から千尋を選んだのだと。」前世を気にする千尋への答えが、この作品の姿勢そのものになっている。

「前世は前世。今は今だよ。」/「未来は変わるんだ。なんだかんだといちいち制約されてたまるか。」(早乙女かずひこ)

一度はこう悔いる場面もある。「結局、誰も刻美ちゃんを救えなかった……」「オレは約束を守れなかったんだ。」だが、そこへ刻美が現れる。

「お兄ちゃんの龍神様の力で本格的に実体化しちゃったみたいッッ やったぁッ」(刻美)

かずひこが前作から持ち越した龍神の力によって、刻美は実体を得た。時之龍の力そのものは月美の内へ戻るが、刻美は気にしない。

「時之龍の力は無いかもしれないけど、お兄ちゃんとまた一緒に居られるんだもんッ ゼンゼン平気よッッ」(刻美)

そして最終場面は前世の側で閉じられる。破導法師とキミが並んで歩いている。

「人間のえにしは不思議なものじゃのう、キミよ……」(破導法師)
「そうですねぇ、破導様。またこうして歩けるなんて、夢のようですぅ!」(キミ)

キミの語尾が月美のそれと同じであることが、前世の対応をそのまま示している。現世で結ばれなかった二人が前世の側で並んで歩く、という締め方になっている。

前作『晴れのち胸さわぎ』との関係

本作は前作の直接の続編で、登場人物は前作の出来事をそのまま覚えている。一方で、前作の設定を書き換えている箇所もある。

本作が「龍神事件」と呼ぶ過去の出来事は、前作の物語そのものである。本作で言及される会議室の倒壊は、前作でかずひこの退学裁定の最中に巨大なタマタマが現れて壁が吹き飛んだ一件にあたる。神木が裂けていることも、社が壊れていることも、前作の顛末である。ただし呼び名は変わっていて、前作が「オオタマ」と呼んだ存在を本作は「マッスルタマタマ」と呼ぶ。

前作の結末で記憶を封じられた人物はいない。したがって前作で人物が知った事実は、本作でも既知として扱われている。かずひこは蒼龍が自分の中にいたことも、龍玉や盟約のことも、珠美の正体も知っている。井闇にいたっては、自分がオオタマを呼び出した張本人だったことを覚えている側である。

そのため、本作では説明されないまま前提になっている事柄がある。月美が「御主人様」と呼ぶ理由は、日宮の巫女が蒼龍の許嫁にあたり、その蒼龍がかずひこの体内にいたからである。津安留迂神と府安留迂神が蒼龍と紅龍を指すことも、蒼玉が何であるかも、前作で明かされている。

一方で、本作が前作から書き換えている点もある。前作では巫女が二龍を鎮めた手段は祈りのみだったが、本作ではそこに時之龍の力が加わっている。かなめの立場も、前作では学院運営に関与しない神社の巫女だったのが、本作では学院の理事長かつ神社の宮司になっている。

そしてもっとも大きいのは時之龍・前世・転生をめぐる体系がすべて本作からの導入であるという点である。時之龍も刻美も破導法師も一番目の巫女も前世も懐中時計も、前作には一度も出てこない。神話に触れるときは、どちらの版の話なのかで内容が変わることになる。

人物の出入りもある。前作にだけ登場するのは白石押絵、紅涼子、そしてかなめの夫である校長・鮒紀。本作から加わるのが日宮雪美と刻美である。もっとも大きな変化は珠美で、前作の敵役が本作では舶用神社のメイドとして神社に仕える側に回っている。前作で嘘として名乗った肩書きが、本作では本当の立場になっている。

エンディング一覧

種別 エンド 到達条件 結末概要
結末 作中に名称なし 本編を最後まで進行 時之龍への干渉を経てかずひこが戻り、千尋・月美と再会する。エピローグで千尋にすべてを話し「数ある未来の選択の中から千尋を選んだ」と告げる。刻美はかずひこの龍神の力で実体化して再登場し、時之龍の力は月美の内へ戻る。破導法師とキミの場面で幕

当サイトの調査では、確認できた結末はこの一つである。ヒロイン別の分岐エンドが存在するかまでは確定できていない。なお終盤には「やっぱり、残るよ、月美ちゃん」と月美と朝まで一緒にいることを選ぶ場面があり、ここは選択が結果に絡む数少ない箇所にあたる。