サーシャの室内花火で笑かしといて、後からちゃんと泣かせてくる。その順番が効いてる。
うちの主戦場は笑いやから、最初は「重そうな話やな」と身構えてた。母の事故死から夢を封印した主人公、っていう導入はしんどそうやった。でも実際に読んだら、笑いがちゃんと仕込まれてた。留学生サーシャが部屋で花火に火ぃつけて正樹が「花火の先端を人に向けてはいけませーんっ!!」って叫ぶとことか、後輩のゆかりが「あたしの貞操」を賭けにしてくるとことか、親友の慎太郎がさんざんいじられるとこ。そのへんで笑かされたあとに、感情の重い展開が来る。落差で殴ってくる作りや。ただ、笑いの濃さがルートでかなりムラがある。そこを正直に7.1にした。
スコア詳細
重そうな話を、笑いで殴りに行った
2000年のD.O.作品。母を亡くして宇宙飛行士の夢を封印した高校二年生が、幼馴染たちと再会する青春恋愛ADV。
うちが手ぇ出したのは、田中ロミオさんの実質的な処女作って聞いたからや。業界の名前はあんま覚えへんけど、この人の書く日常パートは笑えるっていう評判だけは知ってた。星空とか宇宙とか、喪失と再生とか、ジャケットだけ見たらしっとり系に見えるやろ。実際テーマは重い。でも、その重さの合間に、ちゃんとボケが置いてある。うちはそこを確かめに行った。
ヒロインは六人。天文部の幼馴染・瞳、無口な後輩キャラの佳多奈、剣道部主将で年上の恭子、陸上特待生の蘭子、金髪の留学生サーシャ、カフェでバイトする後輩ゆかり。主人公の今村正樹を引っ張る親友・慎太郎の関西弁ツッコミがあるから、うちは最初からちょっと親近感あった。日常がどれだけおもろいか、っていう一点で読み進めた一本や。
笑いの中心は三人——サーシャ、ゆかり、慎太郎
まず、この作品が「ちゃんと笑かしてくる作品」やということを確認しとく。
笑いの軸は三人や。留学生のサーシャは、日本語が「〜ですです」と独特で、生活力がゼロ。シャワーの混合栓を理解できずに「お湯と水が止まりませんです」って真顔で言う。室内で花火に火ぃつけて正樹に「花火の先端を人に向けてはいけませーんっ!!」って絶叫させる。天然ボケがいちいちキャラに沿ってて、わざとらしくない。後輩のゆかりは押しの女王で、「賭けない?」「あたしの貞操」で正樹をかき乱す常習犯。正樹がツッコミで「アイアンクロー!」を入れる関係が固まってるから、二人の掛け合いはテンポが死なへん。
そして関西弁の親友・慎太郎。ねずみ爆弾を喰らったり、ナイフ片手の恭子に怯えたり、修学旅行で食あたりして強制送還されたりと、コメディリリーフの仕事をきっちりやる。朝末先生が日本酒を「水」「酒瓶使ってるから残り香だ」って言い張る保健室のくだりも好きや。笑いの素材はちゃんと揃ってる。ここは素直に評価してええ。
日常のおかしみが、後でちゃんと効いてくる
この作品のうまいとこは、笑いを使い捨てにせえへんとこや。
たとえば後輩キャラの佳多奈は、最初は「だから日誌と鍵」ってオウム返ししたり、じゃんけんで毎回グーを出し続けたり、ちょっとした可愛い笑いとして置いてある。でもそれが後半でぜんぶ意味を持ってくる。日常で軽く笑わせといたものが、終盤で感情の重さに化ける。笑かしといて泣かせんのは、ほんまは一番難しいんよ。それをちゃんとやってくる。
天文部の瞳も「Passion is power」「笑ってると元気になって、元気になると情熱が出て」が口癖の脳天気キャラやけど、その明るさが後からちょっと違う見え方になってくる。ここは詳しく言うとネタバレやから抑えとくけど、表面の笑いが伏線になってる構造は、佳多奈にも瞳にも共通してる。この「笑いを仕込みに使う」誠実さは、コメディを馬鹿にしてへん証拠や。やるやんか、と思った。
ルートで笑いの濃さがムラがある
ただ、手放しでは褒めへん。うちが気になったのは笑いの量の偏りや。
サーシャとゆかりと佳多奈のあたりは、日常の笑いが濃い。テンポも良くて、掛け合いが生きてる。でも、陸上特待生の蘭子のルートや、サーシャ・瞳の後半になると、コメディがすっと消えてシリアス一色になる時間が長い。話としては筋が通ってるんやけど、うちの評価軸は「おもろいかどうか」やから、笑いが無くなると正直、言葉が足りひんようになる。「……まあ、ええ話やった」で終わってまう自分がおる。
長い共通ルートも、最初に郷愁の空気で入る分、序盤のコメディのフックは弱め。読み始めてすぐ爆笑、ってタイプの掴みではない。先に温まるのに少し時間がかかる。全ルートが同じ密度で笑いと感情を噛み合わせてたら、うちはもっと上の点をつけてた。ルート差が大きいんは、笑いの量で見てもそうやった。
Hシーンは、キャラのリアクションで読む
うちはHシーンも面白さ軸や。そのキャラらしいリアクションをしてるかどうか。
このへんはキャラがよう出てた。年上の恭子が、初めてやのに包容力でいこうとして空回りするとことか、押しの強いゆかりが本番で照れるとことか、天然のサーシャがインプットした俗世の言葉を真顔で使うとこととか、各ヒロインの普段のキャラがHシーンでも崩れてへん。下品な擬音に頼らへん、朴訥でストレートな書き方も作品の温度に合ってる。ただ、笑いのノリを残してるシーンと、完全にシリアスに振り切ってるシーンが混在してて、トーンの統一感はそこまでない。だから6点。揃ってはないけど、キャラのリアクションがキャラらしい、っていう一点は守られてた。
7.1——笑いの土台が本物やから、重い話が刺さる
7.1という数字の中身は、こうや。
笑いが濃いルート単体やったら、うちは8以上つけてもええと思う。日常の笑いを後半の感情につなげる作り方は、コメディの人として素直に「やるやんか」と言える。サーシャとゆかりと慎太郎が回す日常パートも、テンポが死んでへん。掛け合いが生きてる。ここはほんまに面白かった。
でも全体で見ると、笑いの濃さがルートでムラがある。シリアスに振り切るルートでは、うちの評価軸では言葉が足りひんようになる。長い共通ルートの序盤も、笑いのフックは弱め。全部のルートが一番濃いやつくらい笑いと感情を噛み合わせてたら、もっと上やった。
それでも、笑かしといて泣かせてくるっていう一番難しいことを、ちゃんとやり切ってる。先に油断させて、後から殴ってくる。その順番を組める作品は、そう多くない。コメディを馬鹿にせず作った人が書いてる、っていうのは伝わった。笑えるゲームが好きで、しかもちょっと泣きたい人には、これは合うと思う。7.1点。
