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キャラクター詳細 — 家飛 -カットビ!-

逃げ場のない一軒家に閉じ込められた面々を、立場・動機・物語上の役割から掘り下げます。▼ネタバレ詳細には各展開の結末と、明かされる事実が含まれます。

金田晃二郎

金田晃二郎 かねだ こうじろう 主人公
読みかねだ こうじろう
立場主人公・視点人物。祖母と暮らす学生(名前変更不可)
年齢作中に明示なし
CVボイスなし
家族祖母と同居。両親は存命だが別居。家にはローン残債がある

平穏な生活を望む平凡な学生。ところが近所に住む従姉妹・小鉄おとねのおかげで、その平穏は毎日のように破られている。父方の従姉妹どうしで同じ学校に通う腐れ縁で、彼女の悪戯の被害を数え上げればきりがない。両親は放任主義で、本人いわく「ウチの親父は息子の事を鼻をかんだチッシュ程度にしか見てない」。

語りの基本は、状況を茶化しながら受け流す一人称。だが内心では常に不安を抱えており、決断できない自分を自認してもいる。この軽口と自己不信の同居が、荒唐無稽な状況を最後まで読ませる推進力になっている。

家の持ち主でありながら、事態に対してもっとも無力な立場に置かれる。葵妃からは「この家で比較的まともな神経を持って対話可能なのがキミしか居ない」と評され、交渉役として押し出される。一方で、バズーカの砲口に腕を差し出す、屋根から飛び降りて葵妃を救い上げるといった捨て身の行動を取る場面もあり、単なる非力なコメディ役には収まらない。

最大の伏線は、祖父から受けた極端にスパルタな剣道の稽古である。祖父の口癖は「それでも男かー!」。一度だけ祖父の面を打ち返したとき、「あの刀には金田家の魂……いや、武士の魂がこもっている」「晃二郎にもその魂がこもっているということじゃ」と言われた記憶が、虎徹を握る場面で立ち上がってくる。千代の一撃を受け止められるのも、迫るミサイルへ刀で斬りかかれるのも、この記憶があるからである。

人物としての弱さが正面から扱われるのは美空の展開で、そこでは決断できない自分を乗り越えることが物語の軸になる。また、みちるを「なだめ慣れて」しまい、感情のこもらないパターンで対応してきたことに途中で気づいて自己嫌悪に陥る場面もあり、巻き込まれ役でありながら内省の量は多い。

シリアス系
「オレは彼女がそんな事をしてないって思っているんですけど」おとねが疑いをかけられた場面で
「今のお前、メチャクチャカッコ悪いぞ」美空の章、おとねの独占欲の叫びへの返答
象徴的な台詞
「家ごと空飛んだ方がましだねッ!!」家が浮く直前、押し問答の果てに

小鉄おとね

小鉄おとね こてつ おとね 従姉妹・同級生
小鉄おとね
読みこてつ おとね
立場晃二郎の父方の従姉妹で、同じ学校の同級生。弓道部所属
年齢作中に明示なし(晃二郎より8か月年上という相対的な記述のみ)
CVこむら菜々
外見普段はコンタクト。替えが尽きて眼鏡をかける場面がある

この騒動の発端であり、籠城の主犯。突入してきた自衛隊員から拳銃2丁を奪い取り、家に立てこもって国家と対峙する。傲慢で攻撃的、晃二郎に対する加害の履歴は長い。学校中に彼の身体的特徴を言いふらす、体育の間に制服を焼却炉で燃やす、といった行状が本人の口と晃二郎の回想から次々に語られる。

一方で、その攻撃性が孤独の裏返しであることは繰り返し示唆される。「私、寂しがり、なんだよ?」と漏らす場面があり、極端な賭けに出る癖——自らのこめかみに銃を当てて勝負を仕掛ける——も、単なる気の強さでは説明がつかない。

本作最大の引きは、彼女がなぜ立てこもったのかを自分の口で説明しないことにある。葵妃に「もしかして、ホントにあなた、何も考えてないんじゃないの?」と突かれても答えない。この動機の空白は、美空の展開では「なんとなく」家に居残りたいという形でも反復され、彼女の行動原理そのものとして一貫している。

晃二郎をからかい続けてきた起点も判明する。林間学校の風呂場で、泥酔した体育教師がおとねを叱ろうと連れ去ろうとした際、晃二郎は何も行動できず助けられなかった。翌朝それが「晃二郎がおとねを男風呂に連れ込んだ」という誤った噂として広まり、怒ったおとねが仕返しとして彼の身体的特徴を言いふらすようになった、という経緯である。

そして「魔女裁判」の裏側。終盤、葵妃が家中の人間を集めておとねの過去を暴き、写真まで突きつけて「同性から付きまとわれ辱めを受けていた」という筋書きを示す場面は、おとねと葵妃が示し合わせた芝居だった。写真は偽物、筋書きも作り話。取引の条件は「晃二郎に、おとねのことを好きだと言わせること」で、葵妃はそのために考えうる最短手段を取っただけだったと自ら明かす。眼鏡をかけたことまで「作戦のうち」だったと本人が認める。

結末は屋根の上の選択で2つに分かれる。晃二郎が止めに入れば葵妃の介入で賭けは成立せず、関係は罵り合いのまま元へ戻る(変らない日常)。その場に立ち尽くせば狂言と共謀の全貌が明かされ、関係が前へ進む(変りはじめる時間)。

他の展開でも、おとねの籠城は比較的早期に終わって投降する。美空の展開では独占欲がむき出しになり、美空を執拗に追及・威圧する場面が繰り返されるが、最終的には「もうどうでも良くなっちゃった」と急に身を引く。動機を語らないまま気持ちが変化するという同じパターンが、ここでも一貫している。

シリアス系
「私は晃二郎が見守ってくれるなら……もしここで死んでも……私はそれでいい」賭けを仕掛ける場面で
「美空なんかあんたの事何も知らない。晃二郎の事を一番良く知ってるのは私なの! その私が美空より劣ってるっていうの?」美空の章、比較され劣位に置かれることへの恐怖
「じゃあ聞くけど……なんで私の携帯には連絡しないわけ?」美空の章、核心を突く追及
象徴的な台詞
「うさぎは寂しいと死んじゃうんだよ」自分の孤独を語って
「晃二郎の事が好きなんだからッ!!!!」家が浮く直前の絶叫

咲花みちる

咲花みちる さきはな みちる 隣家の少女
咲花みちる
読みさきはな みちる
立場隣の家に住む年下の少女。晃二郎を「おにいちゃん」と呼んで慕う
年齢作中に明示なし
CV佐々留美子
特徴家事が達者。飼い猫のシロガネにだけ特別に懐かれている

極端な泣き虫で天然。喜怒哀楽が「猫の目のように」入れ替わり、泣き出すと手がつけられない「本泣き」に入る。その一方で家事は達者で、限られた材料でコロッケやサンドイッチを作り、祖母の手伝いもそつなくこなす。ライフラインの絶たれた家の食卓を実質的に支えているのは彼女である。

家が飛んだ状況にもさほど動じず、むしろ歓迎するような本音をこぼす場面がある。この不自然な落ち着きが、後半に明かされる事実の伏線になっている。

本作でもっとも大きな事実が、この人物に仕掛けられている。表面的な"泣き虫で天然"という人物像は、晃二郎に守ってもらうために幼いころから意図的に維持してきた振る舞いだった。本人はこれを「魔法」と呼ぶ。晃二郎に対してだけでなく、千代に対しても本当の自分を隠していると彼女は告白する。

「みちる、お兄ちゃんの前だけでしか……私が私じゃいられないの」「なのに、お兄ちゃんの前ですら私は『みちる』の演技をしている」

起点は幼少期の記憶である。木から降りられず大泣きしていた際、幼い晃二郎に「泣いてりゃオマエもかわいいのにな」と言われたことが、"泣けば構ってもらえる"という学習のきっかけになった。学校で友人ができず孤立していることも、おとねの証言と本人の独白の両方から確認される。つまり彼女の振る舞いは、可愛げの演出ではなく、身を守るための鎧として選び取られたものだった。

この事実が明かされるのは、家が全壊して晃二郎が転落していく最中の、意識朦朧とした対話のなかである。九死に一生を得た晃二郎が病院で目を覚ましたとき、そこで見たみちるの涙は、これまでの「魔法」とは違う本物だった。

結末で彼女が求めるのは、「子供」としてではなく対等な相手として扱われることである。晃二郎もそれを受け入れ、演技を捨てて並んで歩くという着地に至る。守る側と守られる側という固定した関係を解体することが、この展開の主題になっている。

なお、みちるの展開にバッドエンドが存在するというレビューサイトの記述があるが、本編のテキストからは独立した結末を確認できなかった。当サイトでは断定を避けて記録しておく。

他の展開では、千代が一貫して彼女を庇い、年少者への配慮を見せる。美空の展開では家の存廃を巡る議論に「反対だよぅ」と単純に加わる立場で登場する。

シリアス系
「みちる、最低だ」「だから……学校でも友達ができないんだ」転落中の対話、自己認識を吐露して
「あなたが守ってくれるよう、小さな女の子のままでいたかったから」振る舞いを続けてきた理由
象徴的な台詞
「女の子の涙は魔法なの。それはバリアーみたいな物なの」自らの「魔法」を語る場面
「だって、だってここ、お兄ちゃんがいるし…みちるゼンゼン平気だよ」家が飛んだことを歓迎する本音

千代

千代 ちよ 江戸の剣士
千代
読みちよ
立場慶応4年5月10日の江戸から、タイムホールを通って現れた剣士
年齢作中に明示なし
CVRuru
外見和装に長い黒髪。腰に虎徹を差している

上野の山(彰義隊)へ合流する途中、小石川・加賀中納言邸の前で穴に落ちて現代へ飛ばされた。古風な武家言葉で話し、晃二郎を「晃二郎殿」と呼ぶ。当初は現代の器物すべてを「南蛮渡来のカラクリ」として処理し、コロッケを初めて食べて驚く。

戦闘能力は作中随一で、自衛隊のミサイルを刀で斬り落とし、99部隊の葵妃と互角に渡り合う。素手の格闘術も収めており、物理的に事態を動かせる力を持つのはこの人物だけである。「武士道とは死ぬことと見つけたり」を地で行く直情型だが、年少者への配慮を欠かさず、みちるを一貫して庇う。

出自は一橋徳川家。父は一橋家7代・慶壽で、千代が生まれる前に死去している。家督は二段階の養子相続を経ており、父の死後まず尾張徳川家出身の昌丸が継ぎ、昌丸の死後に水戸徳川家出身の慶喜が継いだ。すなわち千代は徳川慶喜の義理の妹にあたる。

母は道端で剣術を見せて金を稼いでいた「地下の者」だった。父の死後、母が乳児の千代を抱えて屋敷を訪ね、葵の御紋入りの虎徹を示したことで一橋家に引き取られた経緯を持つ。家中では厄介者として扱われ、慶喜だけが彼女を気にかけ、町の道場に通うことを許した。葵の御紋に固執する理由もここにある。血のつながりこそが慶喜との唯一の接点であるため、自分が父の娘であってほしいと願い続けているのである。

戦う理由は、本人が最後に自ら否定する形で明かされる。「江戸の町を守りたい、近藤先生の生き方に共鳴した」——そんなものは言い訳だ、と。

「私には大儀などなかったのだ、晃二郎殿」

慶喜への想いが恋愛感情か否かは、最後まで本人の口からは明言されない書き方が一貫している。

そしてこの人物は、金田家の先祖である。祖母が語る「おじいさんのおばあちゃん」——剣術使いで、江戸の頃は姫、御維新で上野の山に行き、そこで「おじいさんのおじいさん」と出会った人物——が千代にあたる。祖父の形見の虎徹はその人の刀であり、つまり作中に2本ある虎徹は、同一の刀の時代の異なる姿だった。祖母の帯留めの赤い石が千代の虎徹の柄の石と同じものであることも、共通の先祖から受け継がれた証として示される。

結末は終盤の選択で2つに分かれる。ひとつは祖父の形見の鈴を使って単身で江戸へ帰るもので、晃二郎は虎徹を抜いてミサイルへ斬りかかる場面で幕となる。もうひとつは、別れの直前に鈴が魔法陣の中心へ触れてタイムホールが再起動し、晃二郎ごと江戸へ渡るもの。後者では、千代が「対になった同一の品が魔法陣の中心に触れるとタイムホールが開く」という法則を自力で推理していたこと、それを承知のうえで説明せずに晃二郎を巻き込んだことを号泣して謝罪する。

この結末にはエピローグが付く。徳川慶喜の史実が語られたのち、千代が明治以降「金田千代」として家庭を持ち、4男5女をもうけ、大正12年(1923年)の関東大震災で近所の子供を救って亡くなった(享年74)ことまでが示される。金田家の血筋は現代の晃二郎の代まで続き、葵の御紋入りの虎徹は国宝級の品でありながら、当の金田家はそれと知らず「武士の魂の宿る刀」として受け継いでいる。

※享年74は晩年の死亡時点の数字であり、本編当時の年齢を示すものではない。原文に本編当時の年齢の明示はないため、当サイトでは逆算した記載を行わない。

シリアス系
「幕府は……滅びない。慶喜様は将軍だ。長州などの手に江戸を渡してはならない」庭で嗚咽をこらえながら
「慶喜様がどうして犯罪者にならねばならない?……江戸城を一滴の血も流さずに明け渡した慶喜様がなぜ犯罪者なのだ?」史実を知らされて
象徴的な台詞
「千代だ。覚えておけ娘!」初登場、ミサイルを斬り落として
「月も変わらぬな」帰れぬ時代の月を見上げて
「私とこの家の関係、まだ答えは出ておらぬ」美空の章、核心テーマの顔出し

神馬葵妃

神馬葵妃 かんま きさき 自衛官
神馬葵妃
読みかんま きさき
立場陸上自衛隊・防衛庁長官直属部隊「99部隊」所属、准陸尉
年齢23歳(本人が明言。作中で具体的な年齢が確定する唯一の人物)
CV北都南
弱点猫。飼い猫シロガネに飛びかかられて悲鳴を上げる

所属不明機として認識された金田家に突入し、おとねに武装解除されて「捕虜」の立場で家に留まることになった自衛官。サバイバルナイフと小太刀の二刀、素手の格闘術、銃器のすべてに練達しており、千代と互角に渡り合う。

徹底して任務優先で、感情を排した物言いをする。「考えても仕方のないことは考えない。頭より先に体で反応する。それが自衛隊員よ」。一方で辛辣かつあけすけなユーモアの持ち主でもあり、緊迫した場面でも軽口を挟む。経歴は、海外の大学を出て帰国後、防衛大学校を2年で卒業、駐屯地勤務1年を経て現部隊に選抜されて2年。士官学校への誘いを何度も受けているが、最前線に出たいという理由で断り続けている。家系は代々武士・軍人・自衛官。

物語における役割は二つある。ひとつは作戦立案者。おとねを無力化するため、晃二郎に告白の返事をさせる懐柔作戦『おとねの安寧』を立案し、晃二郎を「特務隊員」として動かす。もうひとつは知識人としての解説役で、タイムホール、斥力、ライトコーンと時間の復元力といった理屈を持ち出し、家が飛んでいる現象と千代の運命に理論的な枠を与える役割を一手に担う。

おとねの展開では、彼女の過去を暴く「魔女裁判」を主導し、写真まで突きつける。しかしこれはおとねとの取引による芝居だった。取引条件は「晃二郎に彼女のことを好きだと言わせること」で、そのために考えうる最短手段を取っただけだったと自ら明かす。

この人物の最大の見どころは、葵妃自身の展開に置かれている。序盤で他の面々が全員脱出し、以降は晃二郎と二人だけの物語になる。そこで彼女は初めて弱音を吐く。

「人を……人を……守りたいって、そう思ったから私は自衛官になったのに……守り切れてもいない……」

続いて上層部から届くのは、1000発の一斉射撃という事実上の死刑宣告だった。常に強気だった彼女が号泣し、「ゴメンなさい」を繰り返す。任務優先の仮面が完全に外れるこの場面は、他の展開では決して見られない。矛盾ではなく、裏側の描写として掘り下げられている。

その後、屋根から落下しかけた葵妃を晃二郎が決死のジャンプで救出する。金田家はミサイルで完全に破壊され、二人はパラシュートで脱出。「必ず来てね」という再会の約束で幕となる。固有のエンド名が本文に登場しない唯一の展開であり、家が飛んだ理由もここでは一切説明されない。代わりに、家の周囲を漂う岩盤が意志を持つかのようにヘリを迎撃するという固有の謎が提示され、その原因もまた語られないまま終わる。

美空の展開では、家を破壊する「地上帰還作戦」を晃二郎たちに無断で上層部へ要請・決定させる独断的な一面を見せる。すべてが決着した後には「腑に落ちないような複雑な表情」を浮かべ、望んだ結果への割り切れなさが示唆されるが、その中身は明かされない。

シリアス系
「私は……武力を行使する者なんだから死ねと言われれば死にもする、その覚悟はある、でも……民間人の君まで……」死の宣告を受けて号泣しながら
「命令は……絶対だ。それは隊に於いて常にそう」撃墜が避けられないと説明する場面
象徴的な台詞
「専守防衛という言葉は99部隊にはあてはまらないわよ?」千代との対峙
「考えても仕方のないことは考えない。頭より先に体で反応する。それが自衛隊員よ」行動原理を語って
「宇宙空間からもあなた達を見守っているのよ」監視の徹底を告げて

橘美空

橘美空 たちばな みそら クラス委員
橘美空
読みたちばな みそら
立場晃二郎と同じクラスに所属し、クラス委員を務める。彼の憧れの相手
年齢作中に明示なし
CV千川綾音
家族父は橘重工社長・橘建蔵。マンション住まい

一人称は「わたし」。丁寧でやわらかい口調を保ち、晃二郎を「金田君」、おとねを「おとねちゃん」と呼ぶ。自分の行動に「クラス委員として」という理由づけを繰り返し添えるのが癖で、好意を口にしかけては役割の話にすり替えてしまう。

家が飛んだ翌日の夜から、晃二郎の携帯に非通知の着信が入るようになる。以降ほぼ同じ時刻に電話をかけてくるが、この電話を誰にも言わないよう約束させ、かけてくるのは決まって公衆電話から。自分の番号もメールアドレスも明かさない。この不自然さが展開全体の引きになっている。

物腰に反して行動は大胆で、全員に反対されながら父の会社が保有する未登録の試作ヘリに無理を言って同乗し、傾いた屋根へ実際に飛び降りて合流してしまう。核心を突かれると沈黙する一方、正論を述べる強さも持ち、おとねに詰め寄られた際には「本人同士の気持ちが通い合ってなくちゃ意味ない」と正面から反論する。

内面は強い孤独を抱えている。「わたしの家、両親共に働いているから、いつも家だとひとりなの」——金田家の食卓の賑やかさへの憧れが繰り返し示される。自分が親にとって重荷だと思い込んでもいる。

そして、なぜ自分の携帯やおとねの携帯には連絡しないのか、家では電話しづらい理由は何かという謎の答えが、両親の不和と離婚だった。母についていく形で転校が決まっており、出発は翌日という段階まで、彼女はそれを誰にも言えずにいた。

「わたし……残りたい。転校なんかしたくない。このまま残って、ずっとみんなといたい。金田君と……別れたくない」

もうひとつ、二人には幼少期の因縁がある。美空は以前この町に約1年間住んでおり、引っ越しの際に金田家で送別会が開かれて、「戻ってきたら返す」約束で宝物を交換していた。晃二郎が渡したミニカーを美空は長年保管していたが、晃二郎自身はこの記憶を完全に忘れていた。自分も何かを託されていたはずだと気づいた彼は、明け方まで探してウサギのマスコットを見つけ出し、返却する。おとねが元々の顔見知りで、美空の頼みで晃二郎に事情を黙っていたことも、ここで明かされる。

結末は、最終的に転校を撤回して家出し、晃二郎の両親のもとへ身を寄せるという形になる(告白と大団円!?)。晃二郎一家の引っ越し先が偶然にも美空の旧宅だったことも判明する。一方、電話が2晩続けて途絶えた場合はバッドエンドとなり、原因不明のまま家は失われ、美空は転校していたと知らされて終わる。

なお「他の4人を見たあとに選べるようになる」という攻略サイト・レビューサイトの説明が広く流通しているが、この解禁条件は本編のテキストからは確認できなかった。当サイトでは断定を避けて記録しておく。

シリアス系
「わたしの家、今度両親が離婚することになったの」家庭の事情を初めて打ち明ける
「誰かに言われた幸せは絶対じゃないと思うし、そういうのは本人同士の気持ちが通い合ってなくちゃ、意味ないと思う」おとねに詰め寄られての反論
象徴的な台詞
「わたしはクラス委員として、当たり前のことをしただけで……」騒動について尋ねられて
「もう、大人の都合で振り回されるの、疲れちゃったから」家出の理由

その他の登場人物

ばーちゃん

晃二郎の祖母 この騒動の元凶

晃二郎の祖母。今年米寿で、関東大震災前の大正生まれ。常に和服で、背筋はしゃっきり伸びている。家が飛んだ直後から姿を消しており、序盤では「地上に取り残されたのでは」と心配されている。

姿を消していた理由は、自分の術で江戸へ飛ばされていたからである。亡き祖父にどうしても会いたくなり、オカルト雑誌『メー』に載っていた「よみがえりの秘術 ベルガ」を試した。祖父の血が必要と書いてあったが血は残っていないため、祖父が生涯大切にしていた刀を代わりに使った。結果は蘇生ではなくタイムホールの発生で、これが家が飛んだ原因そのものにあたる。

千代の展開では何食わぬ顔で戻ってきて、家が飛んでいると聞かされても「長生きするといろんなことがあるもんだねぇ」で済ませてしまう。千代の正体を明かすのもこの人物で、「おじいさんのおばあちゃん」の話として、剣術使いで江戸の頃は姫、御維新で上野の山に行った先祖のことを何気なく語る。美空の展開でも同様にひょっこり帰還し「たまげたもんだよ」と動じない態度を見せ、晃二郎の疑いをはぐらかしたまま話が流れる(この展開では真相を語らない)。

祖父との馴れ初め(幼なじみで、熱烈な恋の末に結婚した)を語るときだけ「遠い恋する乙女の目」になる。料理上手で、練馬大根のたくあんと梅干しは代々嫁に受け継がれた秘伝の味。小さい頃に「おじいさんのおばあさん」=千代から体術を習ったという腕力も見せ、暴れるおとねを羽交い締めにする場面がある。

「おじーさんを生き返らせようと思ってねえ」真相の告白
「本当にいいものはずーっと受け継がれていくものなんだよ」幼い晃二郎に刀を語る回想

シロガネ

祖母の飼い猫 葵妃の天敵

祖母の飼い猫で、白い毛の猫。みちるにだけよく懐き、おとねには「フーッ」と威嚇する。晃二郎が呼んでも知らんぷりを決め込む。

葵妃が猫を極度に苦手としているため、千代との死闘に割って入って戦闘を中断させるなど、事態を動かす役割を何度も果たす。猫嫌いの由来は葵妃の展開でのみ最低限明かされ、「ちっちゃな頃引っかかれたぐらいの話」とされる。

おとねの展開では、何者かに眉毛を描かれて「まゆげ猫」にされる事件が起きる。同時に千代の刀が抜けないよう細工されており、この二つの悪戯が家中の疑心暗鬼に火をつけて、おとねが犯人として吊るし上げられる展開の引き金になる。ただし真犯人は最後まで明かされない。おとね自身は否定したままで、その後に共謀の全貌が語られた際にも、この一件だけは触れられずに終わる。