用語集 — 家飛 -カットビ!-
『家飛 -カットビ!-』の固有設定用語を解説します。▼ネタバレ詳細を含む項目はアコーディオン内に格納されています。タグをクリックするとカテゴリを絞り込めます。
主人公・晃二郎が祖母と暮らす、ごく普通の木造一戸建て。本人は「しがない中産階級」と評する。物語のほぼ全編がこの家の中で進む。
- 詳細
- ある日そのまま上空1000メートルへ浮かび上がり、西南西へ時速約3キロで移動しはじめる。建物だけでなく庭と地下の土数メートル分ごと浮いている。自衛隊とマスコミのヘリに包囲され、そのまま籠城戦の舞台になる。水はペットボトル、電気は落ち、照明はロウソク。備蓄はおよそ10日分。
- 登場場面
- 浮いている範囲が敷地の形ではなく祖母の部屋を中心とした円であることが、家が飛んでいる理由を突き止める手がかりになる(部屋は建物の隅にあるが、庭を含めるとちょうど中心にあたる)。展開によって家の運命は異なり、葵妃の章ではミサイルで完全に破壊され、美空の章では放棄・断念される。
祖母の部屋に残された、障子紙に墨で描かれた文様(作中では「魔法陣」と呼ばれる)。何なのか当初は誰にも分からない。
- 詳細
- オカルト雑誌『メー』の特集「よみがえりの秘術 ―― ベルガ」に載っていた術。第三帝国がヒトラーを蘇らせるために使ったとされ、それを操ったという錬金術師の名を採って命名されている。手順は魔法陣の中心に死者の体の一部を置いて呪文を唱えるというもの。世界のいかなる言語にも当たらない文字が使われている、とされる。
- 登場場面
- 祖母が亡き祖父に会いたい一心で実行した。祖父の血が必要と書いてあったが血は残っていないため、祖父が生涯大切にしていた刀に血が付いていないかと考えて刀を用いた。結果は蘇生ではなくタイムホールの発生で、これが家が飛んだ原因そのものになる。おとねが記事どおりに呪文を唱え直しても何も起きず、祖母が刀を突き刺してみせても再現しない。
時代をつなぐ穴。おとねが名づけた呼び名で、この家に起きたできごとの中心にある。
- 詳細
- 祖母の術によって開いた、時代をつなぐ穴。祖母は江戸(小石川・加賀中納言邸前)へ、千代は現代の金田家へと、穴の中ですれ違うかたちで入れ替わった。双方が「何かにぶつかった気がする」と証言する。
- 登場場面
- 家が飛び続けているのは、まだ家の中にタイムホールが残っているからだと推論される。物語の終盤ではこれが再起動し、展開次第では晃二郎ごと江戸へ渡ることになる。
前半では言及されない。千代が終盤に自力で見出す、タイムホールが開く条件のこと。
- 詳細
- 同じ時代の異なる場所に存在する"対になった同一の品"が魔法陣の中心に触れることで、タイムホールが開くという法則。作中では3回開いており、1回目(千代と祖母の入れ替わり)は2本の虎徹、2回目(祖母の帰還)は千代と祖母の帯止め(同じ赤い石)、3回目は祖父の形見の鈴が「鍵」として機能した。
- 登場場面
- 「魔法陣の真ん中に触れさせる物が、鍵なのではないかと私は考えた」(千代)。千代はこの法則に気づいたうえで、あえて晃二郎には説明せずに巻き込んだと自ら告白する。
負の重力。家が地球の重力に反して浮いている理由として、葵妃が持ち出す説明。
- 詳細
- タイムホールの発生には膨大なエネルギーが要り、空間に負の重力=斥力がかかる。その斥力で家が浮いている、とする説明。
- 登場場面
- 裏づけとして、家は敷地の形ではなく「祖母の部屋を中心に」円く飛んでいることが挙げられる。部屋は建物の隅にあるが、庭を含めるとちょうど中心にあたる。
葵妃がタイムパラドックスを論じる際に持ち出す時空理論。千代の運命に重くのしかかることになる。
- 詳細
- ある世界点で光の進路を集めると円錐面になる、という説明から、「その内容全体を把握できると仮定すると現在は決して変化しない」「ライトコーン自体に元に戻ろうとする働き=時間の復元力がある」と展開し、過去が変わっても未来は変わらないという結論に至る。
- 登場場面
- 「過去がかわっても未来はかわらない。だってそんなのありえないから」(葵妃)。千代が過去へ帰るしかないことの理屈づけになっている。
虎徹の柄紐の間に、目立たぬよう金色で小さく彫られている徳川家の紋。徳川家の人間以外が持つことを許されない。
- 詳細
- 千代の父が「これが自分の娘である証」として入れさせたもの。母が乳児の千代を抱えて一橋の屋敷を訪ねたとき、家臣たちを納得させたのがこの紋だった。
- 登場場面
- 「私は葵の御紋を背負って戦いたいのだ」と千代が語る場面が、その人物像の核心になる。血のつながりこそが慶喜との唯一の接点であるため、自分が父の娘であってほしいと願い続けているのである。エピローグでは、この紋の入った虎徹が世に出れば国宝級の品でありながら、金田家はそれと知らずに受け継いでいることが示される。
千代が晃二郎に徳川の家系を説明する場面で登場する語。田安徳川家・一橋徳川家・清水徳川家の三家を指す。
- 詳細
- 8代吉宗の子から出た三家で、御三家と同様、将軍家に世継ぎがない場合に将軍を出しうる家格である、と説明される。千代の生家である一橋徳川家もこのひとつ。
葵妃の章にのみ現れる現象。家とともに浮いている岩盤の一部が、まるで意志を持つかのように動く。
- 詳細
- 岩盤がヘリへ突進し、これを撃墜する。「降下を察知すれば回転して隊員を蹴散らし、攻撃を察知すれば迎撃……」(葵妃)。
- 登場場面
- 家が飛んでいる理由(タイムホール等)とは別系統の、この章に固有の謎として提示される。最後まで原因は語られない。葵妃の章では家が飛んだ理由そのものも説明されないため、この章は二重に謎を残したまま終わることになる。
家が飛ぶことに付随して発生する、原因不明の通信障害。周辺の無線・通信機器が正常に機能しなくなる。
- 詳細
- みちるの章で言及される。「この家を中心に大規模なジャミングが行なわれているとするなら……それが諸外国にどう利用されるか分かったものじゃないわよ?」(葵妃)。地上側が強硬策へ傾いていく理由づけのひとつとして機能する。
みちるが晃二郎に対して口にする、子供っぽい言葉遊びに見える表現。当初はその程度のものとして流される。
- 詳細
- みちる自身が、幼いころから続けてきた"泣き虫で子供っぽい振る舞い"に付けた呼び名。晃二郎に守ってもらうため、意図的に維持してきた心理的な鎧のことである。
- 登場場面
- 「女の子の涙は魔法なの。それはバリアーみたいな物なの」「あなたが守ってくれるよう、小さな女の子のままでいたかったから」(みちる)。家の全壊と転落の最中に明かされる、本作でもっとも大きな事実にあたる。
美空の章の終盤で明かされる計画。家をどうするかという議論に、外側から結論が与えられる。
- 詳細
- 葵妃が晃二郎たちに相談せず、独断で上層部に要請・決定させていた計画。安全な海上へ出たところで家に集中砲火を浴びせて殲滅し、住人だけを地上へ帰還させる。「安全な海上に出たところで集中砲火を浴びせ、殲滅する事となったわ」(葵妃)。
- 登場場面
- これにより金田家は放棄・断念されることになる。すべてが決着した後、葵妃は「腑に落ちないような複雑な表情」を浮かべるが、その中身は明かされない。
千代が肌身離さず持つ刀。同時に、祖父の形見として金田家に伝わる刀でもある。外見も拵えも寸分たがわない同じ刀が2本あることが、早い段階で謎として提示される。
- 詳細
- 千代いわく「長曽祢興里入道虎徹」作の大業物。千代の父が、剣術を生業とする母に贈るため、家に伝わる虎徹に特別な拵えを作らせたもの。2本は同一の刀の、時代の異なる姿であり、千代の刀がそのまま金田家に受け継がれて祖父の形見になった。
- 登場場面
- 千代は「虎徹と一心同体」「虎徹の一部は私であり、私の一部は虎徹だ」と言う。祖母がこの刀を使って術を行ったため、同じ刀の持ち主である千代が呼び寄せられたという推論が千代自身の口から出る。晃二郎は祖父に仕込まれた剣道の記憶を頼りに、この刀で千代の一撃を受け止める。
祖母の部屋に落ちていたオカルト雑誌。表紙は「宇宙の謎と神秘に挑戦する雑誌メー」。
- 詳細
- 誌面には「宇宙磁場と地球磁場……その不思議な相違」「これが真実だ! UFOと超古代文明Xとの交流」「日本の未来が危ない! 列島沈没と電磁波」といった記事が並ぶ。おとねが一目で誌名を言い当てる。
- 登場場面
- この雑誌に載っていた「よみがえりの秘術 ベルガ」の記事が、この家に起きたことの出発点だった。
祖母が大切にしている赤い石の帯留め。「先祖のおばあさん」から受け継いだものだという。
- 詳細
- 千代の虎徹の柄にも同じ石が使われており、共通の先祖から代々伝わる証にあたる。タイムホールの「鍵」の一つとしても機能し、祖母が現代へ帰還する際に働いた。
- 登場場面
- 「祖母ご殿の帯止めも同じ石だった……偶然に同じ石だとは思えなかった」(千代)。この気づきが、鍵の法則を推理する糸口になる。
祖母が毎冬、知り合いの農家から分けてもらった練馬大根で漬ける、近所でも評判の漬物。ぬかの配分は代々嫁に受け継がれた秘伝。
- 詳細
- 千代が「この味は屋敷で出る味に似ている」と言い、後に自分の家の味だったと気づくという形で、時代をまたいで受け継がれてきたものの象徴として機能する。梅干しも同じ扱いで登場する。
- 登場場面
- ライフラインの絶たれた家の食卓で、久しぶりのまともな食事として出される。荒れた場を鎮める役割も担っており、「受け継がれるもの」という主題を食べ物の側から支えている。
美空が幼少期から手放せずにいる豚のぬいぐるみ。「昔から持ってるブタさんの人形が、どうしても手放せなくて……」
- 詳細
- 昼間の折り目正しさとの落差を示す小道具として置かれている。就寝中は無防備で寝相が悪いという描写と結びついており、家では孤独であることの傍証にもなっている。
幼い晃二郎と美空が交換した宝物。長年の再会の約束を象徴するアイテム。
- 詳細
- 幼少期、美空が一度この町から引っ越す際、金田家で送別会が開かれ「戻ってきたら返す」約束で交換した。晃二郎が美空に渡したミニカー(底に「こうじろー」と幼い字で記名)を美空が長年保管しており、美空の章で本人へ返却する。
- 登場場面
- 晃二郎も美空から何かを託されていたはずだと気づき、明け方まで捜索してウサギのマスコットを発見・返却する。晃二郎自身はこの記憶を完全に忘れていた一方、美空は覚えていたという非対称が、二人の距離を説明する装置になっている。
葵妃が所属する防衛庁長官直属の部隊。通常の自衛隊とは毛色の違う組織として描かれる。
- 詳細
- 本人の名乗りは「神馬葵妃、陸上自衛隊所属、防衛庁長官直属部隊、通称『99部隊』所属。階級は准陸尉」。
- 登場場面
- 「専守防衛という言葉は99部隊にはあてはまらないわよ?」と本人が言い、実際に格闘・刃物・銃器すべてに練達している。千代と互角に渡り合えるのもこの練度による。
葵妃の階級。外部からの正式なアナウンスでは「神馬准陸尉」、本人の口からは「准尉」と略して語られる。
- 詳細
- 防衛大学校を出た後、士官学校への推薦を「早く現場に出たかった」という理由で断った結果得た、珍しい階級。士官学校への誘いはその後も何度も受けているが、最前線に出たいという理由で断り続けている。
- 登場場面
- 出世よりも現場を選び続けてきたという経歴そのものが、終盤に「守り切れてもいない」と崩れる場面の重みを支えている。
千代の生家。当初、千代は「家名と父上の名は、お教えすることはできない」と伏せている。
- 詳細
- 父は7代・慶壽で、千代が生まれる前に死去。家督は他家からの養子が継いだ(尾張徳川家出身の昌丸、次いで水戸徳川家出身の慶喜)。千代は徳川慶喜の義理の妹にあたる。
- 登場場面
- 母が「地下の者」であるため家中では厄介者として扱われ、慶喜だけが彼女を可愛がり、町の道場に通うことを許した。この扱いの差が、千代が慶喜のために戦おうとする動機の根にある。
上野の山に集まった旧幕臣たち。千代が屋敷を抜け出して合流しようとしていた相手。
- 詳細
- 千代は「同志たちとともに、この江戸を守るべきだと」思ったと語る。その道中でタイムホールに落ち、現代へ飛ばされた。
- 登場場面
- 祖母の語る昔話では、「おじいさんのおばあちゃん」が御維新で上野の山に行き、そこで「おじいさんのおじいさん」と出会ったとされる。千代がここへ向かうことは、そのまま金田家の始まりにつながっている。
みちるの章に固有のプロット。投降交渉と並行して、地上側が水面下で進めていた計画。
- 詳細
- 葵妃が投降交渉と並行して、翌朝の強制排除を晃二郎にだけ極秘で明かす。「明朝、揚陸強襲の強行部隊が来るみたい……強襲するってのは黙っててね」(葵妃)。
- 登場場面
- 「連絡の行き違い」により誤射が発生し、葵妃自身が負傷する結果を招く。直後に家が全壊し、晃二郎が転落する——みちるの章のクライマックスは、この計画の失敗から始まる。
美空の実家に連なる企業。軍需産業にも携わる大企業と葵妃が認識している。
- 詳細
- 社長は美空の父・橘建蔵。美空はこの会社が保有する未登録の試作ヘリに無理を言って同乗し、飛んでいる家へ接近した。
- 登場場面
- 晃二郎一家の引っ越し先が偶然にも美空の旧宅だったことが終盤で判明する。橘家が絡んでいたためだが、その符合そのものは大団円の演出として置かれている。
祖母の飼い猫。白い毛の猫で、みちるにだけよく懐き、おとねには「フーッ」と威嚇する。
- 詳細
- 葵妃が猫を極度に苦手としているため、千代との死闘に割って入って戦闘を中断させるなど、戦況を何度もひっくり返す。猫嫌いの由来は葵妃の章でのみ「ちっちゃな頃引っかかれたぐらいの話」と最低限明かされる。
- 登場場面
- おとねの章では、何者かに眉毛を描かれて「まゆげ猫」にされる事件が起きる。同時に千代の刀が抜けないよう細工されており、この二つの悪戯が家中の疑心暗鬼に火をつけ、おとねが犯人として吊るし上げられる展開の引き金になる。ただし真犯人は最後まで明かされない。