ストーリー詳細 — 家飛 -カットビ!-
本作は共通の導入のあと、末尾の4つの選択肢から小鉄おとね・咲花みちる・千代・神馬葵妃それぞれの展開へ分かれ、これとは別枠で橘美空の展開が用意された構成をとる。家が飛んだ理由が明かされるのは千代の展開だけで、残る4つでは理由が語られないまま幕が下りる。 ▼詳細を読む はネタバレを含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。
共通の導入 — 家が浮くまで
従姉妹・小鉄おとねの告白をめぐる押し問答の果てに、金田家が庭と地面ごと上空1000メートルへ浮かび上がる。逃げ場のない一軒家に顔ぶれが揃い、自衛隊と報道ヘリに包囲されるまでが共通の導入にあたる。末尾の4つの選択肢が、以降の展開を決める。
金田晃二郎の日常は、近所に住む従姉妹・小鉄おとねによって毎日のように破られている。父方の従姉妹どうしで、同じ学校に通う腐れ縁。ある日そのおとねが突然「好きだ」と切り出すが、晃二郎は新手のからかいとしか受け取らず、即座に突っぱねる。脅迫、なだめすかし、懇願と手を変えた押し問答の果てに、晃二郎が投げつけた一言に対しておとねが声を限りに叫んだ、その瞬間に家が浮いた。
「家ごと空飛んだ方がましだねッ!!」(金田晃二郎)
「晃二郎の事が好きなんだからッ!!!!」(小鉄おとね)
浮いたのは建物だけではない。庭も、地下数メートル分の土もまとめて持ち上がっていた。気づけば金田家は上空1000メートルを、西南西へ時速約3キロ——人が歩くより遅い速度で漂っている。電気は落ち、水はペットボトルの分だけ。都市ガスではないガスは生きており、備蓄を数えるとおよそ10日分。照明はロウソクに切り替わる。
翌日、隣家に住む年下の少女・咲花みちるが家の中で見つかる。晃二郎を「おにいちゃん」と呼んで慕う泣き虫で、家が飛んだ状況にもさほど動じない。同じころ、晃二郎の携帯に非通知の着信が入る。相手はそれまでほとんど言葉を交わしたことのなかった同じクラスのクラス委員・橘美空だった。以降、彼女は毎晩ほぼ同じ時刻に電話をかけてくるようになるが、この電話を誰にも言わないよう約束させ、決まって公衆電話からかけ、自分の番号もメールアドレスも明かさない。
やがて自衛隊のヘリが群がり、報道のヘリがそれを取り囲む。おとねは突入してきた隊員から拳銃2丁を奪い取り、家に立てこもって国家と対峙しはじめる。そこへ、どこからともなく和装の剣士が現れ、飛来したミサイルを刀で斬り落とした。
「千代だ。覚えておけ娘!」(千代)
制圧に突入して逆に武装解除された自衛官・神馬葵妃も、「捕虜」の立場で家に留まることになる。陸上自衛隊・防衛庁長官直属部隊「99部隊」所属の准陸尉。彼女が現状を整理して見せたところで導入は終わり、末尾に4つの選択肢——おとねに説教をかます/みちるを慰める/血気盛んな千代をなだめる/葵妃に事情を聞く——が提示される。ここで選んだ相手の展開へ進む。
小鉄おとねの章 TRUE NORMAL
葵妃が立案する懐柔作戦『おとねの安寧』を軸に進む展開。終盤、家中の人間を集めておとねの過去を暴く「魔女裁判」が開かれるが、そこで示される筋書きにはもう一段の裏がある。屋根の上での選択によって結末が2つに分かれる。
葵妃は、籠城の主犯であるおとねを無力化する最短手段として、晃二郎に告白の返事をさせるという作戦を立てる。作戦名は『おとねの安寧』。晃二郎は「特務隊員」として動かされ、屋根の上で返事をすることになる。以降、二人の距離は少しずつ変わっていくが、おとねはなぜ立てこもったのかを最後まで自分の口では説明しない。葵妃に「もしかして、ホントにあなた、何も考えてないんじゃないの?」と突かれても答えないままで、この動機の空白が展開全体の引きになっている。
途中、飼い猫のシロガネが何者かに眉毛を描かれて「まゆげ猫」にされ、同時に千代の刀が抜けないよう細工されるという二つの悪戯が起きる。これが家中の疑心暗鬼に火をつけ、おとねが犯人として吊るし上げられる流れを生む。ただしこの一件の真犯人は、最後まで明かされない。
おとねが晃二郎をからかい続けてきた理由も、この展開で明らかになる。林間学校の風呂場で、泥酔した体育教師がおとねを叱ろうと連れ去ろうとした際、晃二郎は何も行動できず助けられなかった。翌朝それが「晃二郎がおとねを男風呂に連れ込んだ」という誤った噂として広まり、怒ったおとねが仕返しとして彼の身体的特徴を言いふらすようになった——という経緯である。攻撃性の裏にあるものは、折に触れて本人の口からもこぼれる。
「うさぎは寂しいと死んじゃうんだよ」(小鉄おとね)
終盤、葵妃が家中の人間を屋根の上に集め、「魔女裁判」と呼ばれる場を開く。写真が突きつけられ、おとねが同性から付きまとわれ辱めを受けていた、それが籠城の理由なのだと告発される。追い詰められたおとねは自らのこめかみに銃を当て、「3つ数えるうちに私から銃を取り上げたら私の勝ち」という賭けを晃二郎に仕掛ける。ここでの選択が結末を分ける。
「おとねを止めようとする」を選ぶと——葵妃が銃を撃ち落として介入し、賭けは成立しない。おとねは泣き叫び、二人は元どおりの罵り合いへ戻っていく。これが「変らない日常」。
「その場に立ち尽くす」を選ぶと——おとねは撃たれたように見えるが、銃に入っていたのは空砲だった。魔女裁判はおとねと葵妃が示し合わせた芝居で、写真は偽物、告発の筋書きも作り話だったと明かされる。取引の条件は「晃二郎に、おとねのことを好きだと言わせること」。替えのコンタクトが尽きたと言って眼鏡をかけたことまで「作戦のうち」だったとおとね自身が認める。狂言と共謀の全貌が明かされたうえで二人の関係は前へ進み、救助ヘリの到着とともに幕となる。これが「変りはじめる時間」で、こちらがトゥルーエンドにあたる。
なお、家が飛んだ理由はこの展開では最後まで説明されない。
咲花みちるの章 TRUE
千代と葵妃の死闘にみちるが巻き込まれかけるところから始まる展開。投降交渉の裏で進んでいた強制排除の計画が家の崩壊を招き、その最中に、みちるという人物の見え方を根本から覆す事実が明かされる。
千代と葵妃の戦いにみちるが巻き込まれかけ、晃二郎が庇う場面から動き出す。以降しばらくは、限られた材料で食卓を整えるみちるの手際や、千代との戯れ、家の中の生活の描写が続く。そのなかでみちるは、家が飛んだこと自体をむしろ歓迎するような本音をこぼす。
「だって、だってここ、お兄ちゃんがいるし…みちるゼンゼン平気だよ」(咲花みちる)
一方で外の状況は悪化していく。葵妃は、家を中心に大規模なジャミング現象——周辺の無線やヘリの通信が機能しなくなる原因不明の電波障害——が起きていること、それが諸外国にどう利用されるか分からないことを説明する。そして投降交渉と並行して、翌朝に揚陸強襲の「強行部隊」による強制排除が予定されていることを、晃二郎にだけ極秘で明かす。
その強行部隊が連絡の行き違いから誤射を起こし、葵妃自身が負傷する。直後に家は全壊し、晃二郎は空中へ投げ出されて落下していく。薄れていく意識の中で、みちるとの対話が起こる。ここで、本作でもっとも大きな事実が明かされる。
みちるの"泣き虫で天然"という人物像は、幼いころから意図的に維持してきた振る舞いだった。本人はこれを「魔法」と呼ぶ。守ってもらうために、小さな女の子のままでいようとし続けてきたのだという。晃二郎に対してだけでなく、千代に対しても本当の自分を隠していると彼女は告白する。
「みちる、お兄ちゃんの前だけでしか……私が私じゃいられないの。なのに、お兄ちゃんの前ですら私は『みちる』の演技をしている」(咲花みちる)
「女の子の涙は魔法なの。それはバリアーみたいな物なの」(咲花みちる)
起点は幼少期の記憶だった。木から降りられずに大泣きしていた際、幼い晃二郎が「泣いてりゃオマエもかわいいのにな」と言った。それが"泣けば構ってもらえる"という学習のきっかけになる。学校で友人ができず孤立していることも、おとねの証言と本人の独白の両方から確認される。
晃二郎は病院で目を覚ます。そこで見たみちるの涙は、これまでの「魔法」とは違う本物だった。みちるは自分を「子供」ではなく対等な相手として扱ってほしいと求め、晃二郎もそれを受け入れる。演技を捨てて並んで歩くことを選び取ったところで、この展開は着地する。
「いっしょにね、ずっといっしょにいこうね……いっしょにいたいから、一緒に時を歩んで、一緒に年を重ねて」(咲花みちる)
なお、みちるの展開にバッドエンドが存在するというレビューサイトの記述があるが、本編のテキストからは独立した結末を確認できなかった。当サイトでは断定を避けて記録しておく。家が飛んだ理由も、この展開では説明されない。
千代の章 TRUE NORMAL
家が飛んだ理由が明かされる唯一の展開。祖母の部屋に残された魔法陣と2本目の虎徹、オカルト雑誌に載っていた術、そして姿を消していた祖母の帰還によって、この騒動の出発点がすべて説明される。同時に、千代という人物と金田家との関係も明らかになる。
現代であることを告げられた千代は、幕府が滅んだと知ってその場で自害を図る。晃二郎がこれを止めるところから展開が始まる。
「武士道とは……! 死ぬことと見つけたり……!」(千代)
やがて祖母の部屋に手がかりが見つかる。障子紙に墨で描かれた文様——作中では「魔法陣」と呼ばれる——の中心に、祖父の形見の日本刀が突き刺さっていた。そしてその刀は、千代が腰に差している虎徹と外見も拵えも寸分たがわない。同じ刀が2本存在するという謎が、ここで提示される。傍らにはオカルト雑誌『メー』が落ちている。
その『メー』の特集記事が出典だった。「よみがえりの秘術 ―― ベルガ」。第三帝国がヒトラーを蘇らせるために使ったとされ、それを操ったという錬金術師の名から命名された術で、手順は魔法陣の中心に死者の体の一部を置いて呪文を唱えるというもの。おとねが記事どおりに唱え直しても何も起きない。
中盤、千代が自らの出自を語る。一橋徳川家の出。父は一橋家7代・慶壽で、千代が生まれる前に死去している。家督は二段階の養子相続を経ており、父の死後まず尾張徳川家出身の昌丸が継ぎ、昌丸の死後に水戸徳川家出身の慶喜が継いだ。つまり千代は徳川慶喜の義理の妹にあたる。母は道端で剣術を見せて金を稼いでいた「地下の者」で、父の死後、乳児の千代を抱えて屋敷を訪ね、葵の御紋入りの虎徹を示したことで一橋家に引き取られた。家中では厄介者として扱われ、慶喜だけが彼女を気にかけて町の道場へ通うことを許した。
そこへ、姿を消していた祖母が何食わぬ顔で帰ってくる。家が飛んでいると聞かされても「長生きするといろんなことがあるもんだねぇ」で済ませてしまう。そして真相を語る。
「おじーさんを生き返らせようと思ってねえ」(ばーちゃん)
亡き祖父にどうしても会いたくなった祖母が、『メー』のベルガを試したのだった。祖父の血が要ると書かれていたが血は残っていないため、祖父が生涯大切にしていた刀に血が付いていないかと考えて刀を用いた。結果は蘇生ではなくタイムホールの発生。祖母は江戸——小石川・加賀中納言邸の前——へ飛ばされ、入れ替わりに同じ刀を持つ千代が現代の金田家へ引き寄せられた。二人は穴の中ですれ違いざまにぶつかっており、双方が「何かにぶつかった気がする」と証言する。
家が浮いている理屈は葵妃が与える。タイムホールの発生には膨大なエネルギーが要り、空間に負の重力=斥力がかかる。その斥力で家が地球の重力に反して浮いている。裏づけとして、家は敷地の形ではなく祖母の部屋を中心に円く飛んでいることが挙げられる(部屋は建物の隅にあるが、庭を含めるとちょうど中心にあたる)。そして家が飛び続けているのは、まだ家の中にタイムホールが残っているからだと推論される。
さらに祖母の昔話から、もう一つの事実が浮かび上がる。「おじいさんのおばあちゃん」——剣術使いで、江戸の頃は姫、御維新で上野の山に行き、そこで「おじいさんのおじいさん」と出会った人物——の話。それは千代のことだった。千代は金田家の先祖であり、祖父の形見の虎徹はその人の刀。2本の虎徹は、同一の刀の時代の異なる姿だった。祖母が大切にしている赤い石の帯留めが、千代の虎徹の柄の石と同じものであることも、共通の先祖から受け継がれた証として示される。
千代が戦う理由も、本人が最後に自ら否定する形で明かされる。江戸の町を守りたい、近藤先生の生き方に共鳴した——そんなものは言い訳だ、と。
「私には大儀などなかったのだ、晃二郎殿」(千代)
葵妃はライトコーンと時間の復元力を持ち出し、「過去が変わっても未来は変わらない」と説明する。千代が過去へ帰るしかないことの理屈づけである。終盤の選択で結末が2つに分かれる。
ひとつめは、千代が祖母から渡された祖父の形見の鈴を使い、単身で江戸へ帰る結末。晃二郎は虎徹を抜き、迫るミサイルへ斬りかかる場面で幕となる。エピローグは付かない。
もうひとつは、別れの直前に鈴が魔法陣の中心へ触れてタイムホールが再起動し、晃二郎ごと千代の時代(江戸の一橋屋敷)へ転移する結末。ここで千代は、同じ時代の異なる場所に存在する"対になった同一の品"が魔法陣の中心に触れるとタイムホールが開くという法則を自力で推理していたこと、それを承知のうえで説明せずに晃二郎を巻き込んだことを、号泣しながら謝罪する。晃二郎はそれを受け入れる。
「祖母ご殿の帯止めも同じ石だった……偶然に同じ石だとは思えなかった」(千代)
この結末にはエピローグが付く。徳川慶喜の史実(水戸家生まれ→一橋家相続→将軍職→大政奉還→無血開城→大正2年没)が語られたのち、千代のその後が明かされる。明治以降、千代は「金田千代」として家庭を持ち、新政府に仕えた夫との間に4男5女をもうけ、大正12年(1923年)の関東大震災で、近所の子供を救って亡くなった(享年74)。金田家の血筋は現代の晃二郎の代まで続いており、葵の御紋入りの虎徹は世に出れば国宝級の品だが、当の金田家はそれと知らずに受け継いでいる。
「本当にいいものはずーっと受け継がれていくものなんだよ」(ばーちゃん)
神馬葵妃の章 唯一の結末
序盤で他の面々が全員脱出し、以降は晃二郎と葵妃だけの物語になる展開。任務優先を崩さなかった自衛官が、民間人を巻き込んだ責任と絶望的な命令を前に崩れていく過程が中心に置かれる。金田家が実際に完全破壊される唯一の展開でもある。
三つ巴の混戦から始まり、葵妃が状況を整理していく。この展開では彼女の背景が具体的に語られる。23歳。海外の大学を出て帰国後、防衛大学校を2年で卒業し、駐屯地勤務1年を経て現部隊に選抜されて2年。士官学校への誘いを何度も受けているが、最前線に出たいという理由で断り続けている。家系は代々武士・軍人・自衛官。作中で具体的な年齢が確定する唯一の人物でもある。
「えーと……失礼、葵妃さんおいくつですか?」「23」「お若いですね」「キミの年代の子に言われても嬉しくないわ」(金田晃二郎/神馬葵妃)
屋根から落ちかけた晃二郎を葵妃が受け止める場面を挟み、夕食の席ではラジオが伝える世論と、撃墜の方針が示される。やがて家が大きく回転する事態が起き、この混乱でおとね・みちる・千代(とシロガネ)が先に脱出する。以降、家に残るのは晃二郎と葵妃の二人だけになる。
この展開には固有の謎が置かれている。家とともに浮いている岩盤の一部が、まるで意志を持つかのようにヘリへ突進して撃墜するという現象である。
「降下を察知すれば回転して隊員を蹴散らし、攻撃を察知すれば迎撃……」(神馬葵妃)
この浮遊岩盤の原因は最後まで語られない。そして家が飛んだ理由そのものも、この展開では一切説明されない。
二人だけになった家で、葵妃の猫嫌いの由来(「ちっちゃな頃引っかかれたぐらいの話」)といった細部が明かされていく。そして彼女は初めて弱音を漏らす。
「人を……人を……守りたいって、そう思ったから私は自衛官になったのに……守り切れてもいない……」(神馬葵妃)
続いて上層部から回答が届く。1000発の一斉射撃——事実上の死刑宣告だった。
「……神馬葵妃准陸尉ならびに貴官らの栄誉と御武運を祈る」
「私は……武力を行使する者なんだから死ねと言われれば死にもする、その覚悟はある、でも……民間人の君まで……」(神馬葵妃)
常に強気だった彼女が号泣し、「ゴメンなさい」を繰り返す。任務優先の仮面が完全に外れるこの場面が、この展開最大の見どころになっている。
脱出方法を探る二人のやり取りを経て、晃二郎は自分の気持ちを告げる。葵妃は「キミの事はキライじゃないけど、そんな関係になるにはまだ早い」と留保つきで応える。降下してきた部隊員との攻防のさなか、フックが外れて屋根から滑り落ちかけた葵妃を、晃二郎が渾身のジャンプで救い上げる。
金田家はミサイルで完全に破壊される。二人はタンデムパラシュートで降下し、朝日の差す森林の上空へ脱出する。地上へ降り立ったところで、再会の約束を交わして幕となる。
「……かならず来てね。待ってる」(神馬葵妃)
なお、この展開には固有のエンド名が本文中に一度も登場しない。他の展開が結末に名前を掲げるのとは対照的である。
橘美空の章 TRUE BAD
毎晩の電話だけで進む展開。導入部から始まる別枠で、なぜ彼女が公衆電話からしかかけてこないのか、なぜ誰にも言うなと言うのかが引きになる。やがて美空は自ら試作ヘリで家へ合流し、幼少期の因縁と家庭の事情が明かされる。
家が飛んだ翌日の夜から、晃二郎の携帯に非通知の着信が入るようになる。相手は同じクラスのクラス委員・橘美空。それまで遠くから憧れるだけだった相手である。彼女は自分の行動に「クラス委員として」という理由づけを繰り返し添え、好意を口にしかけては役割の話にすり替える。
「わたしはクラス委員として、当たり前のことをしただけで……」(橘美空)
電話が習慣化していくと、おとねがこれを嗅ぎつける。おとねは晃二郎を拘束して通話を乗っ取り、三者での対決になる。ここで独占欲がむき出しになるが、美空は正面から反論する。
「私の気持ちは知ってるでしょ!? 晃二郎は私のものなの! 他の誰のものでもないのっ!」(小鉄おとね)
「誰かに言われた幸せは絶対じゃないと思うし、そういうのは本人同士の気持ちが通い合ってなくちゃ、意味ないと思う」(橘美空)
ここで電話が2晩続けて途絶えると、バッドエンドへ向かう。原因が分からないまま晃二郎はヘリで地上へ帰還し、家は失われ、美空は転校していたと知らされて話が閉じる。家が飛んだ原因も分からずじまいと明記される。
対決を切り抜けた場合、美空は全員に反対されながら、父の会社が保有する未登録の試作ヘリに無理を言って同乗し、家へ接近する。そして傾いた屋根へ実際に飛び降りて合流してしまう。物腰のやわらかさに反して行動が大胆であることが、ここではっきり示される。実家は橘重工——軍需産業にも携わる企業で、社長の橘建蔵が父にあたる。
合流後、家の存廃を巡って全員での議論になる。千代は「壊すだけが全てではない」と穏当な立場を取り、みちるは単純に反対し、それぞれの考えがぶつかる。その流れのなかで、美空は自分の事情を初めて打ち明ける。
「わたしの家、今度両親が離婚することになったの」(橘美空)
「でも本当はお母さんもわたしのことを煩わしく思ってるの、知ってる」(橘美空)
両親が仕事で多忙ですれ違いが続き、離婚が決定していた。母についていく形で転校が決まっており、出発は翌日。毎晩の電話を誰にも言わないよう約束させ、公衆電話からしかかけてこなかった理由も、家では電話しづらい事情があったからだった。金田家の食卓の賑やかさに繰り返し憧れを示していたのも、「いつも家だとひとり」という孤独の裏返しである。
「わたし……残りたい。転校なんかしたくない。このまま残って、ずっとみんなといたい。金田君と……別れたくない」(橘美空)
さらに、二人には幼少期の因縁があったことが分かる。美空は以前この町に約1年間住んでおり、引っ越しの際に金田家で送別会が開かれて、「戻ってきたら返す」約束で宝物を交換していた。晃二郎が渡したミニカー(底に幼い字で記名がある)を美空は長年保管していたが、晃二郎自身はこの記憶をすっかり忘れていた。自分も何かを託されていたはずだと気づいた彼は、明け方まで家中を探してウサギのマスコットを見つけ出し、返却する。おとねが元々の顔見知りで、美空の頼みで事情を黙っていたことも、ここで明かされる。
一方、葵妃は晃二郎たちに相談せず独断で上層部に地上帰還作戦を要請・決定させていた。安全な海上へ出たところで家に集中砲火を浴びせて殲滅し、住人だけを地上へ帰す計画である。家を守る試みそのものが断念され、金田家は放棄されることになる。
全員が無事に帰還したのち、記者会見が開かれる。そして美空は転校を撤回して家出し、晃二郎の両親のもとへ身を寄せていたことが発覚する。晃二郎一家の引っ越し先が偶然にも美空の旧宅だったことも判明し、大団円となる。これが「告白と大団円!?」。
「もう、大人の都合で振り回されるの、疲れちゃったから」(橘美空)
おとねは、美空の行動を見て「なんかさ、あの奥手な美空があそこまでやるってのを見ちゃったら、もうどうでも良くなっちゃったっていうか」と急に身を引く。動機を語らないまま気持ちが変わるという、彼女特有の行動パターンがここでも一貫している。
このほか、関係が深まらないまま電話番号の交換だけで静かに別れる分岐も存在するとみられるが、後続の場面が本編に見当たらず、これ自体が着地点である可能性が高い。断定はできないため、参考として記録しておく。なおこの展開でも、家が飛んだ理由への言及は終始なく、祖母への疑いも晴らされないまま終わる。
エンディング一覧
| 種別 | エンド名 | 展開 | 結末概要 |
|---|---|---|---|
| TRUE | 変りはじめる時間 | 小鉄おとね | 魔女裁判が狂言であり、おとねと葵妃の共謀だったと明かされる。二人の関係は前へ進み、救助ヘリの到着で幕。 |
| NORMAL | 変らない日常 | 小鉄おとね | 葵妃が銃を撃ち落として介入し、賭けは成立しない。関係は元の罵り合いのまま戻る。 |
| TRUE | (固有名なし・病院での結末) | 咲花みちる | 家の全壊と転落を経て、"泣き虫"が幼少期から続けてきた振る舞いだったと判明。対等な相手として扱ってほしいという求めを晃二郎が受け入れる。 |
| TRUE | (仮称)千代と生きる | 千代 | 鈴がタイムホールを再起動し、晃二郎ごと江戸へ渡る。エピローグで千代が「金田千代」として家庭を持ち、関東大震災で亡くなるまでが語られる。 |
| NORMAL | (仮称)千代、ひとり過去へ | 千代 | 千代が祖父の形見の鈴で単身江戸へ帰還。晃二郎は虎徹を手にミサイルへ立ち向かう場面で幕。エピローグなし。 |
| 唯一 | (固有エンド名なし) | 神馬葵妃 | 1000発の一斉射撃を受けて金田家は完全破壊。二人はパラシュートで脱出し、再会を約束して幕。 |
| TRUE | 告白と大団円!? | 橘美空 | 家は放棄・断念。全員無事に帰還し、美空は転校を撤回して家出、晃二郎の両親のもとへ身を寄せる。 |
| BAD | (固有名なし) | 橘美空 | 電話が2晩続けて途絶える。原因不明のまま帰還し、家を失い、美空は転校していたと知らされる。 |
| 代替 | (仮称)静かな別れ | 橘美空 | 関係が深まらず、電話番号の交換のみで別れる分岐。後続の場面が本編に見当たらず、着地点かどうかは断定できない。 |
※「仮称」としたものは、本編中に固有のエンド名が表示されないため、内容にもとづいて当サイトで呼び分けているものです。また、咲花みちるの展開にバッドエンドがあるとするレビューサイトの記述がありますが、本編のテキストからは独立した結末を確認できなかったため、本表には含めていません。