アライグマのレビュー — 鎖 -クサリ-

アライグマ
アライグマ
動物行動学の目
7.0/10
7.0 / 10

守備範囲の外から嗅いだ。それでも船上の群れには、確かに血が通っていた。

鬼畜ADVはオレの守備範囲の外だ。個体を一方的に壊す話を、快楽として評価する軸をオレは持っていない。だから最初に言っておく——このジャンルの本筋は評価できない。ただ、逃げ場のない船という閉鎖縄張りに10人近い個体が押し込まれて、そこで主人公がどう動いたか、群れがどう機能したか。そこだけは観察できる。香月恭介という観察者気質の高校生が、追い詰められた状況で逃げなかった。その一点を評価して、7.0を付けた。

スコア詳細

主人公の造形 7
キャラ間の関係性 8
エンディングの満足度 7
設定の整合性 7
Hシーンの質 2
雰囲気・没入感 8

このゲームについて

クルーザーで沖に出た若い個体の群れに、天敵が一匹紛れ込む。それが本作の縄張りだ。

2005年、Leaf(大阪開発室)が放った18禁ADV。豪華クルーザーバシリスク号で沖に出た香月恭介ら若い個体たちが、閉じ込められた船の上で追い詰められていく。陸から切り離された密閉空間、逃げ場のない状況、そこに天敵が混じっている——設定を聞いた時点で、これは群れの秩序を壊す話だろうなと嗅いだ。

先に断っておくが、本作は陵辱を主軸にした鬼畜ADVだ。オレはその軸を評価する基準を持っていない。快楽として点数を付ける器官がオレには無い。だからこのレビューは、船という閉鎖縄張りの使い方、主人公の行動力、群れの機能——オレに観察できる部分だけを見た、偏った記録だ。それを承知で読んでくれ。

最初に白状する——本筋はオレの守備範囲の外だ

天敵が群れに紛れ込んで、個体を一方的に壊していく。動物の世界にも似たことは起きる。

強い個体が弱い個体を一方的に制圧する、縄張り侵犯の極端な形だ。ただ、オレはそれを快楽として評価する軸を持っていない。評価の基準が存在しないから、Hシーンの質には2しか置けない。低く付けたのは出来が悪いからじゃない。オレに測る物差しが無いからだ。そこは正直に計上した。

ただし守備範囲の外だからといって、全部を放棄するつもりはない。船という閉鎖縄張り、逃げ場のない状況、その中で個体がどう動いたか。天敵に対して群れがどう機能したか、主人公が冬を越せる行動力を持っていたかどうか。それだけは観察できる。そこだけ評価した。最初に線を引いておく。

香月恭介——縄張りも資源もない高校生が、逃げなかった

縄張りなし、資源なし、高校生。守る側に立つには、客観的にスペックが薄い個体だ。

恭介という個体を最初に嗅いだ感触は「こんなんじゃ野生では生きていけねえぜ」だった。縄張りの意識が薄い。序盤は仲間への庇護意識も、形として見えてこない。物事を一歩引いて観察している気質で、群れの中でも自分の位置を測りかねている若い個体だ。

ところが、追い詰められた後の動きが違った。逃げ場のない状況で、この個体は逃げなかった。守ると決めた相手に対して、感情だけで終わらず、自分に何ができるかを考えて手を打とうとする。縄張り(経済的な自立)を持たない高校生が、天敵の前で足を止めて考えた。ここは認める。備えは足りない。それでも動ける個体だった。

主人公の造形に7を付けた理由はそこだ。最終的に有効な一手にたどり着く行動力がある。ただし縄張りの無い高校生という現実が8を付けさせない。行動力は認める。地力が足りない。その差だろうな。細部の顛末はネタバレ版で書いた。

バシリスク号という閉鎖縄張り——群れとして機能した部分がある

密閉された縄張りに複数の個体が押し込まれて、天敵が混じっている。この状況の書き方が悪くない。

陸から切り離された船という舞台を、本作は最後まで使い切っている。逃げれば海、留まれば天敵。この二択が全編にわたって効いていて、個体たちの選択に常に重さが乗る。設定の整合性に7を付けたのは、この閉鎖空間のルールを途中で緩めなかったからだ。ご都合主義で陸が近づいたり、都合よく助けが来たりしない。縄張りの条件を最後まで維持した。そこは信用できる。

群れの描き方も、一致団結の安い美談にしなかったのがいい。それぞれの個体が、自分にできる方法で天敵に対処しようとする。噛み合う時もあれば、すれ違う時もある。その不揃いさが、閉じ込められた個体群のリアルとして機能していた。雰囲気・没入感に8を付けたのは、船の湿った空気と逃げ場のなさが、読んでいる間ずっと鼻の奥に残っていたからだ。キャラ間の関係性に8を置いたのも同じ理由——閉鎖縄張りという設定を、関係性の描写にちゃんと変換できている。

7.0——守備範囲の外からつけられる、正直な数字だ

全く、こんな作品を真剣に読む羽目になるとは思わなかっただろうな。

鬼畜ADVをオレが評価するのは稀だ。陵辱の本筋はオレには測れないと最初に言った。その上で、船という閉鎖縄張りの使い方、恭介の逃げなかった事実、群れの不揃いな機能、最後まで緩めなかった設定——こういう要素を評価した。守備範囲の外からつけられる評価としては、7.0が正直な数字だろうな。群れ描写と主人公の行動力が、ジャンルへの苦手意識をギリギリ上回った。

このジャンルが好物の個体なら、オレの数字はあてにしないでくれ。オレが測れなかった部分にこそ、この作品の本体があるはずだ。ただ、群れと主人公の行動だけを見ても血が通っていた——それだけは、守備範囲の外から嗅いだオレが保証する。細部の顛末と、群れがこの先どう冬を越すかは、ネタバレ版に書いた。

「守備範囲の外から読んだ。それでも逃げ場のない船の上で、恭介という個体は逃げなかった。そこだけは、確かに血が通っていた。」

— アライグマ