守備範囲の外から読んだ。それでも船上の群れには、血が通っていた。
ネタバレ版では岸田という天敵の設計・恭介の行動力・恵の二重拘束・珠美が仕掛けた銃身詰まりトラップ——そして真ED後の群れがこの先どう生きるかを読んでいる。鬼畜ADVはオレの守備範囲の外だ。ただし、群れとしての機能と主人公の覚悟については評価できる。そこだけ評価した。
スコア詳細
最初に白状する——これはオレの守備範囲の外だ
嗅いだ瞬間にわかった。群れの秩序を壊す話だろうな。
天敵が群れに紛れ込んで、個体を一方的に壊していく。動物の世界にも似たことは起きる。強い個体が弱い個体を一方的に制圧する、縄張り侵犯の極端な形だ。ただ、オレはそれを快楽として評価する軸を持っていない。評価の基準が存在しないから、評価できない。それだけだ。
ただし守備範囲の外だからといって、全部を放棄するつもりはない。船という閉鎖縄張り、逃げ場のない状況、その中で個体がどう動いたか——そこだけは見られる。天敵に対して群れがどう機能したか、主人公が冬を越せる行動力を持っていたかどうか、それだけは判断できる。
そこだけ評価した。それ以外は評価できない。最初に言っておく。
香月恭介——縄張りも資源もない高校生が、逃げなかった
縄張りなし、資源なし、高校生。求愛行動としてスペックが薄い個体だ。
恭介という個体を最初に嗅いだ感触は「こんなんじゃ野生では生きていけねえぜ」だった。出航前夜のビデオを「すんごいことって意外と身近にあるもんだぞ」と軽口を叩きながら観ている。縄張りの意識が薄い。仲間への庇護意識も、序盤では形として見えない。
ただ、天敵と対峙した後の動きが違った。恵を守ることを宣言した。「片桐恵を、全部」「俺が奴から買い戻す」。感情だけで縄張りに踏み込んだ個体だ。全く人間ってのは——と思いつつ、ここで止まって考えると、恭介は感情だけで終わらなかった。
真EDで珠美に銃身詰まりトラップを指示して実装した。天敵の武器を事前に無効化する方法を考えて、最も非力な個体と連携して実行した。これは「感情だけ」ではない。逆境での問題解決行動だ。天敵の習性と弱点を読んで、資源(珠美のサイズという物理的特性)を使いこなした。生き残った個体の動きだ。
主人公の造形に7をつけた理由はそこだ。最終的に天敵に対して有効な手を打った。ただし縄張り(経済的自立)がない高校生という現実が8をつけさせない。行動力は認める。備えが足りない。それだけの差だろうな。
バシリスク号という閉鎖縄張り——群れとして機能した部分がある
密閉された縄張りに10人近い個体が押し込まれて、天敵が1匹混じっている。
この状況で群れがどう動いたかを観察した。一致団結した動きはなかった。それぞれが自分のできる方法で天敵に対処しようとした。恵が二重スパイとして動いた。珠美が「いちばん優しいウサギが狼を蹴り殺すんだ」と宣言して実行した。恭介が銃身詰まりトラップを設計した。結果として、この三つの動きが噛み合って真EDに到達した。整合してる。
本作で最も精緻に書かれた関係性は、恵の二重拘束だろうな。岸田の縄張り下で岸田の命令に従いながら、恭介の縄張りを守ろうとする。二つの支配関係を同時に処理した個体だ。「言えないでしょ。恭介には言えない。だって、知られたら恭介まで殺さなくちゃならなくなる」——この論理は、群れを守るための自己犠牲として読める。コスト計算の精度が高い。
「ヨーグルトの臭い」で恭介が恵の二重スパイ性に気づく場面も、推理の手続きとして丁寧だ。「敵をあざむくにはまず味方から——か」という恭介の独白。天敵に対して同じ縄張りにいる個体が複数の戦略を同時に走らせていた、という構造が明かされる。これを「群れとして機能している」と言うかどうかは難しいが、少なくとも「個々の個体が最善を尽くした」という意味での機能はあった。
キャラ間の関係性に8をつけた。船上の閉鎖縄張りという設定を活かした関係性の描写は、整合してる。
繁殖行動について——評価の基準がない。それだけだ
本作の陵辱シーン群については一言だけだ。
群れの中で最も脆弱な個体を、天敵が一方的に壊す。繁殖行動じゃない。群れの破壊だ。野生の世界でもこういうことは起きる。強い個体が弱い個体を制圧する。オレはそれを快楽として評価する軸を持っていない。だからHシーンの質に2をつけた。
ただし和姦の数件は別に見た。ちはやとの心中和姦と、恵との求婚和姦だ。ちはやが「こうでもしないと、お兄ちゃん、あたしに手を出してくれないよね?」と鍵を飲み込む場面。「アンクル・パピィ」という子供時代の合言葉が完全な形で発される。死を覚悟した状況で、繁殖ペアとしての結合が初めて成立する。これは関係の積み上げの末に生まれた行動として、機能している。
恵との求婚和姦も同様だ。「片桐恵を、全部」という宣言の後、「私のために人が殺せる?」という問いかけに恭介が応答した結果として起きる繁殖行動だ。物語の流れと接続している。
この2件だけは評価できる。残り9割はオレには評価の基準がない。Hシーンの質の2という数字は「評価できるシーンが全体の一部に過ぎない」という正直な計上だ。
珠美が天敵の武器を無効化した——整合してる、無駄がない
珠美が天敵の武器を無力化した構造——整合してた。
最も非力な個体が天敵を無力化した。珠美のサイズという物理的事実が、最初から真EDの鍵になっていた。「規格外で犯せなかった少女が、岸田の凶器を規格外にして潰す」——銃身詰まりトラップで岸田の拳銃が暴発した瞬間、この対称構造が完成した。無駄がない。設定を一貫して使い切った書き方だ。
珠美の「いちばん優しいウサギが狼を蹴り殺すんだ」という中盤の宣言が、終盤で実装される。この距離感が整合してる。伏線と回収じゃなく、「宣言した個体が実際にそれをやった」という動物的な論理だ。嗅いだだけでわかる。血が通ってる。
ただし、最後の一行が複雑な評価になる。「漂流していた救命ボートを見つけて水死を免れた犯人」。岸田は生きている。
無責任な「全部解決」にしなかった点は整合してる。天敵が生き残っているという事実を一行だけ置いた。これは覚悟のある書き方だろうな。ただし、天敵が生きているという影が「悪夢の航海は終わり」という着地を完全には成立させない。エンディングの満足度に7をつけた。機能はした。ただし天敵の影が残る。
で、この後どうする
生き残った個体たちが巡視艇に救助された。悪夢の航海は終わった。では、その後だ。
恭介は高校生だ。船から降りた後、何が待っている。警察の事情聴取だろうな。岸田が逮捕されたとして、裁判が来る。生き残った個体全員の証言が必要になる。精神的なダメージの処理も、時間がかかるだろう。
それから恵との関係だ。「片桐恵を、全部」と宣言した個体が、陸に戻ってからその言葉をどう実装するか。縄張りなし、資源なし、高校生。感情の覚悟は本物だった。ただし卒業して働き始めるまでの間、この繁殖ペアはどう維持するつもりだ。群れとしての経済基盤がない。冬が来た時の備えが見えねえな。
さらに言えば、岸田が生きている。逮捕されたとして裁判を経て、何年かすれば出所する可能性がある。天敵が生きているという状況で、この群れはどれだけの心理的コストを払い続けるか。縄張りを固めたと思っても、天敵の出所という事態が来た時に群れは持ちこたえられるか。
描かれてないが、見えるぜ。
恵の側から見ると事態はより複雑だ。岸田に屈服した時間、二重スパイとして動いた記憶。恭介は「俺が奴から買い戻す」と言った。その言葉が指しているのは物理的な脱出だけじゃない。恵の中に残り続けるものを、恭介は長い時間をかけて処理する必要がある。それをやり切れるかどうかは、現在の恭介のスペックでは未知数だろうな。
3年後、5年後——岸田が出所した後の世界でこの群れが続いているかどうか。それを確認する手段はない。描かれなかったから。冬は越せる、たぶんな。ただし次の冬も、そのまた次の冬も越せるかどうかは、恭介次第だ。縄張りを作れ。資源を積め。群れを守れる個体に育て。それだけだ。
守備範囲の外からつけられる評価——7.0だ
全く、こんな作品を真剣に読む羽目になるとは思わなかっただろうな。
鬼畜ADVをオレが評価するのは稀だ。陵辱シーン群はオレには評価できないと最初に言った。その上で、船という閉鎖縄張りの使い方、恭介の逃げなかった事実、恵の二重拘束の精度、珠美の設計——こういう要素を評価した。設定の整合性も、船という舞台を最後まで使い切った点で7だ。
7.0だ。守備範囲の外からつけられる評価としては、これが正直な数字だろうな。群れ描写と主人公の行動力が、ジャンルへの苦手意識を上回った。ただし上回ったのはギリギリだ。
サングラスをずらす場面が一か所あったことは認める。珠美の「いちばん優しいウサギが狼を蹴り殺すんだ」という宣言が真EDで実装された瞬間だ。あそこだけは「これは血が通ってる」と嗅いだ。設計として無駄がなかった。
……それだけだ。
「守備範囲の外から読んだ。それでも船上の群れには、血が通っていた。珠美が天敵の武器を無効化した瞬間——あそこだけは、サングラスをずらす羽目になった。」
— アライグマ
