伊頭悦子のレビュー — 魔法少女アイ2

伊頭悦子
伊頭悦子
スナック30年の人間観察
5.6/10
5.6 / 10

アイという子は本物だったのよ。でも、アタシには辛い話が多すぎた。

colorsが2002年に出した触手・陵辱ホラーの18禁ゲーム。魔法戦士だのゆらぎだの、アタシの畑じゃない設定は正直遠かった。それでも寡黙なヒロイン・アイの静かな想いと、面倒見のいい管理人メグの温かさには、ちゃんと血が通ってた。ただ、この作品の大半は女の子がひどい目に遭う話でしょ。人間の生活の機微を測るアタシの物差しが、ほとんど出番のないまま終わったのよ。だから5.6。良かったところは本物、でもアタシの見る場所が少なすぎた、それだけ。

スコア詳細

主人公の造形 5
ヒロインの魅力 6
キャラ間の関係性 5
序盤の掴み 5
ボリュームと密度 5
テーマ・メッセージ性 6

「こういうのは平気ですか」——常連さんに念を押されて

うちの常連さんに勧められたんだけど、その人、渡す前にちゃんと念を押してきたのよ。「ママ、こういうのは平気ですか」って。

colorsっていう会社が2002年に出した18禁のゲーム。二浪の予備校生・岡島秋俊っていう男の子が主人公でね。3年前に故郷の町を「大地震」が襲って、それ以来「何か大切なものを忘れてる」っていうモヤモヤを抱えたまま、無気力に浪人生活を送ってる。そこへ触手の化け物「ゆらぎ」と戦う魔法戦士の女の子たちが次々と部屋に転がり込んできて、騒がしい共同生活が始まる。そういう話。

正直に言うわ。アタシ、魔法戦士とか異世界とか、そういう設定はてんで疎いの。でも設定が現実離れしてるからって、そこで点は引かない。アタシが見てるのは、その中にいる人間がちゃんと人間らしく動くかどうか、それだけよ。天使の話でも幽霊の話でも、そこに血の通った人間がいれば刺さる。だから今回も、化け物の裏側にどんな人間ドラマが入ってるのか、それを見に行ったの。……で、結論から言うと、辛い話が多すぎて、アタシの物差しはあんまり出番がなかった。

秋俊という男、アタシの判定

秋俊、この男は「情はあるけど、腰が重い」タイプよ。

まず良いところから言うわ。この子、口は減らず口だけど、根は放っておけない性分なの。最初に転がり込んできた騒がしい同居人・リンが危ないとなったら、自分に何の力もないのに命がけで助けに走る。ここは認める。若い子が誰かのために体を張るのは、それだけで見てて気持ちいいのよ。

ただね、この物語の芯にあるのは、秋俊がずっと抱えてる「大切な何かを忘れてる」っていう喪失感なの。彼はそのモヤモヤの正体に近づくのを、どこかで自分から避けてる節がある。「思春期の妄想だったのか」って諦めかけては引き戻される、その繰り返し。うちの常連さんにいたのよ、こういう男。答えが怖くて、心のつかえを抱えたまま何年も動かない人。気持ちはわかる。でも読んでる間、アタシは何度も「早く前を向きなさいよ」って声をかけたくなった。

まあ、終盤にはちゃんと動くの。大事な相手に想いを言葉にする場面では、「オレはアイの身体が好きなんじゃない。アイの全部が好きだから、身体も込みで好きなんだから」って言い切れる。ここは悪くなかった。ただアタシは、動いて当たり前だと思ってる質だから。加点じゃなくて、減点を止めた、それくらいの評価よ。20歳そこそこの子だからね、そこは大目に見てるの。これがいい歳した大人の男だったら、もっと辛口になってたわ。

アイという子、それとメグ

この作品で一番、アタシの胸に来たのは寡黙なアイなのよ。

アイは口数の少ない、無表情な魔法戦士でね。表に感情を出さないんだけど、その下でいろんなものを堪えてる子なの。じゃんけんで秋俊にからかわれて本気で傷ついたり、頬を赤らめたり、無表情の下の素直さがふとした拍子に漏れる。この子は「鬱陶しい女だと思われたくない」って、自分の想いをぐっと抑え込む。好きな人に迷惑をかけたくなくて、自分だけ黙って引き下がる女。カウンター越しに、そういう女を何人も見てきたわ。この静かな我慢を、この作品はちゃんと描けてた。ここは歳をとると涙腺が緩くていけないね。

メグも良かった。秋俊のアパートに越してきた新しい管理人でね、底抜けに明るくて面倒見がよくて、毎食差し入れてくれるようなお姉さん。でもこの人、明るさの裏に相当重たいものを背負ってる。それでも人前では笑って、若い子を気遣う。辛いものを抱えた大人が、それでも折れずに立ってる。アタシはこういう大人に弱いのよ。

リンは元気で可愛かったけど、この子は物語の中でずっと痛めつけられる側でね。じっくり人間として描かれるより、ひどい目に遭う役回りが多かった。「岡チン」ってじゃれてくる予備校仲間の紫もそう。可愛い子なのに、掘り下げよりも辛い展開に尺を取られてて、アタシとしてはもったいなかった。

恋愛は本物、でも周りが地獄すぎるのよ

アイと秋俊の関係だけは、ちゃんと積み上がってる。それは認めるわ。

この二人の間には、頭で覚えてるより先に、体のどこかが覚えてる、っていう繋がりがあるの。理屈じゃなく残るものがある。ベタだけど、こういうのは効くのよ。恋愛の本当のところを突いてる。だからこの一本だけは、アタシも素直に見ていられた。

でもね、その一本の周りが、あんまりにも地獄なの。元クラスメイトの美景っていう子は、勤め先でひどい境遇に置かれてて、秋俊への純粋な恋心と、堕とされた自分との落差で苦しんでる。この落差はドラマとしてわかるのよ。わかるんだけど、彼女を追い込んでるのは、いい歳した大人たちでしょ。若い女を食い物にする外道の大人たち。アタシはこういう大人が一番許せない。敵役の男にしたって、達観ぶった理屈で人の心を嬲るタイプでね。頭のいい理屈で人を壊す男。こういうの、現実にもいるにはいるけど、見ててちっとも楽しかないの。

結局、この作品で「まっとうな人間関係の機微」を測れる場所は、アイと秋俊、そこにメグの温かさを足したくらい。あとは加害と被害でできてる。アタシの物差しは、この化け物だらけの世界だと当てる相手が少なすぎたのよ。

入り口がしんどい、そして同じことの繰り返し

アタシ、序盤で掴まれないと続けられない質なの。そしてこの序盤は、アタシには入りづらかった。

始まってすぐ、リンが路地裏で化け物に捕らわれて、むごい目に遭う。物語のエンジンを掛けるのが、いきなりこの陵辱なのよ。展開が動いてるのはわかる。でもアタシにとっての「掴み」は、続きが気になって閉じられなくなることでしょ。この入り口は、続きが気になるより先に「これはちょっとしんどい」が来ちゃった。人を選ぶ入り口だと思う。

それと、後半に行くほど同じ型の繰り返しが目についた。ヒロインたちが順番に、誇りや純粋さを踏みにじられていく。一つ一つは前の流れと繋がってるのよ。繋がってるんだけど、同じことを何度も見せられると、途中から「これは描写のための描写じゃないの」って冷めてくる。長い割に、アタシの心が動く場面は限られてた。もう少し削れたでしょ、って正直思ったわ。

Hシーンは、感情が通ってるかどうかだけ見たわ

アタシはもうそういう年齢じゃないから、感情の辻褄が合ってるかだけ見てる。

そういう目で見ると、良かったのはアイの、想いが通じ合ったあとの一場面だけね。ここまで抑えてきた気持ちがあって、その上で結ばれる。積み上げがあってのあれなら、まあ、わかるわ。人間らしかった。同居人に聞こえないよう声を抑える初々しさも、この子たちならそうなるだろうな、って納得できた。

でも、それ以外はほとんど陵辱と調教でしょ。作りとしては、救いの場面と綺麗に裏表になってるのはわかるの。頭では理解する。でもアタシの体が受け付けないのよ、こういうのは。しんどいものはしんどい、それが正直なところ。ここは辛い話に強い人に任せるわ。

5.6——本物は本物、でもアタシの見る場所が少なかった

最後まで読んで、アイとメグには「よくやったね」って言いたくなった。

寡黙なアイの想いは本物だった。メグの温かさと芯も本物だった。この二人がいたから、アタシは最後まで読み通せたようなものよ。全部を見終わったあとに待ってる、みんなで賑やかに暮らす日常も、感情の落とし所としては悪くなかったわ。生き残った子たちが「ただいま」って帰ってくる、あれはほっとした。

でもね、アタシが見たいのは、血の通った人間の機微でしょ。この作品はその機微を測れる場所が、化け物と陵辱に押されて少なすぎたの。設定が魔法だから引いたんじゃない。人情を描く場所そのものが薄かったから、この点なのよ。辛い話に強い人には、もっと響くと思う。ただアタシの物差しだと、良かった一本を大事にしても、これ以上は伸ばせなかった。5.6。アイちゃん、あんたは本物だったよ。それだけは言っておくわ。