少年との別れのシーン、心の準備ができてなかった。
こんなに重い話だとは聞いてなかった。新興宗教の閉鎖施設に主人公が潜入して、怖い目にあって、仲間が傷ついて——辛いシーンは普通にキツかった。でも。施設で出会った素性不明の少年との関係が、全部を引っ張っていく。この子のことが気になって、この子のために読んでしまう。その感情を積み上げた末に来る別れのシーンで、あたしはダメだった。泣いた。心の準備できてなかったやつの泣き方した。7.0。
スコア詳細
こんなに重い話だとは聞いてなかった
先に言っとく。あたしが得意とするタイプの作品じゃないです。
1997年のゲームで、Tactics(後のKeyの前身ブランド)が出した18禁ADV。主人公は天沢郁未、16歳の女の子。亡くなった母の死の真相を追って、新興宗教FARGO宗団の施設に一人で潜入する話。
潜入してから、施設がどういう場所かわかっていく。信者を管理する階層制度があって、精神訓練の機械があって、逆らったら……という場所。キレイな話じゃない。仲間の晴香や由依も巻き込まれていくし、辛いシーンが普通に来る。あたしが普段やるゲームとは明らかに違う種類の作品だった。
でも。やり終わった今、7.0をつけてる。あたしの中で何かが動いたから。その「何か」について、ちゃんと書こうと思う。
この子のことが気になって、全部やってしまった
郁未が施設のA棟で一緒に生活することになる、素性不明の「少年」という存在がいる。
名前がない。なんなのかわからない。でも郁未と同じ部屋にいて、会話して、食事して、施設の外の話を「外はいい天気だってのに」って言う子。この一言が刺さった。なんで刺さったかうまく言えないけど——この閉鎖された場所でずっと生きてきた子が、外を想う言葉。それだけで、この子のことがわかった気がした。
郁未がこの子のことを好きになっていく過程が、自然なんだよね。「復讐に来た」という目的があるのに、一緒にいる時間がある。一緒にいると、なんか、あったかくなる。複雑な状況の中にある「ふつうの同居生活」みたいな空気が積み重なって、気づいたら郁未にとって特別な存在になってる。
あたし、この関係性が読みたくて最後まで読んだ。それだけは確かに言える。
郁未が好きだった——逃げない子が好き
主人公が女の子なの、最初は「慣れるかな」って思ってた。慣れた。というか好きになった。
郁未は強がりながら怖がってる子で、「本当はよくわからない、ただ悲しみをふっ切るために何かをしたいだけかもしれない」って自分でも言う。その正直さがいい。目的が曖昧なことを知りながら、それでも施設に入って、前に進む。追い詰められても「逃げない」。
ウジウジして動けない主人公が苦手なあたしにとって、郁未は読みやすかった。怖くても動く。怖いって顔して動く。そういうとこが好き。
……ただ。郁未に感情移入しながら読んでいくと、施設の中で仲間が傷ついていくのが自分ごとみたいに辛い。辛いシーンはほんとに辛かった。あたしは読んでる間中ずっと「早く出て」って思ってた。
キツかった。正直に言う
MOON.には、あたしが得意じゃないシーンが複数ある。
晴香がひどい目に遭うシーンがある。由依が追い詰められるシーンがある。施設の人間が仲間を踏みにじる描写がある。あたし、こういうのは正直に言うけど——キツかった。ただ読んでいる間、ずっと胸が痛かった。
物語的に必要だとは思う。この施設がどういう場所かを見せるための描写として。でも必要だと理解してもキツいものはキツい。好きか嫌いかで言ったら、あたしは嫌いだ。目を逸らせないから読んだけど。
Hシーンについても、正直スコアが低め。暗い場所での強制系のシーンは、あたしが評価したいやつじゃない。ちゃんと積み上げた関係性の延長線上にあるシーンは別の話。詳しくはクリア後に書いてあるから、そっちで読んでほしい。
7.0——泣いた。でも重かった
最後まで読んで、あたしは泣いた。間違いない。
少年との別れのシーン。あそこで来た。全然準備できてなかったのに来た。ずっと一緒にいた子が消えていく、その場面の重さが、積み上げてきた全部の時間の重さだった。
エンディングは、感情がちゃんと着地する形だった。投げっぱなしじゃなかった。郁未の物語が、郁未の答えとして終わってた。そこは嬉しかった。
7.0は本物の評価。でも正直も言う。辛い時間が長かった。あたしは重い話を読むのが得意じゃないから、楽しんだというより感動させられた、という感覚に近い。それでも感動したことは本当だから、7.0。
泣きたい気分じゃない時にやらないほうがいいとは思う。でもやってよかったとも思う。……悔しいな、この気持ち、うまく言えない。
「少年との別れのシーン、心の準備ができてなかった。」
— 田中穂乃火
