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キャラクター詳細 — Never7 -the end of infinity-

Windows版『Never7 -the end of infinity-』(KID、2001年)の本編と、同じディスクに収録された優夏の視点の追加シナリオ「優夏キュア」に基づき、登場人物の素性と結末まで解説する。このページでは、合宿の4月1日から6日までを最初に過ごす流れを「1周目」、4月6日のあと4月1日の朝に戻ってからの流れを「2周目」と呼ぶ。1周目の4月5日から誰と過ごすかで、4月6日に失われる人物が変わる。年齢は作中に数字が出るものだけを記した。各人物の「ネタバレ詳細」を開くと、その人物の物語の結末まで踏み込む。

4月6日に起きること

合宿は3月31日の夜に島へ着き、4月7日の午後に島を去る7泊8日の予定で組まれている。物語の前半は全員で過ごし、4月5日から誠がそばにいる相手で話が分かれる。その相手ごとに、4月6日に何が起き、どの結末へ進むかを一覧にした。

1周目では、その相手が雨の4月6日に命を落とし、どの場合も、動かなくなった手から小さな鈴がこぼれ落ちる。2周目はその4月6日をもう一度迎え、4月7日にたどり着けるかどうかが分かれ目になる。

人物1周目4月6日2周目4月7日に届く結末2周目の悲劇の分岐
守野いづみ億彦が「実験」を暴露し、誠に罵られたいづみが雨の中へ飛び出す。森の果ての崖から落ちる朝、松葉杖をつく誠と、熱の下がったいづみ。ほかに、崖の下で目覚める結末と、繰り返しではなかった系統の3つの結末がある雨の道で、誠といづみが2人とも車にはねられる
守野くるみ姉と誠の話を立ち聞きして飛び出し、夜明けの神社で、地震で崩れた神社の下敷きになる誠が紙飛行機「くるみ17号」を折ってみせ、くるみは誠の話を信じる。潰れた神社に手を合わせる神社に駆け込み、また倒壊の下敷きになる
樋口遙雨の道で子犬を抱き上げ、車にはねられる。診療所でB型の血が見つからず、息を引き取る誠をかばってはねられるが、くるみの血で助かる。本土の病院を1週間後に退院くるみが見つからず、病室で息を引き取る
朝倉沙紀売上金を盗んだと疑われ、岬の突端でフェンスを越え、誠の手を取らずに落ちる抱えていたのは弱った子犬で、窃盗団が捕まる。誠が子犬を引き取る誠が「信じてくれ」と求めると沙紀は落ち、誠も後を追う
川島優夏夜明け前、神社の裏の崖っぷちで、傾いた神社の軒の下敷きになる。誠も一緒に2人で崖から海へ落ち、朝、ロッジで目覚めて約束の朝日を見る誠が再びためらい、2人とも神社の下敷きになる

いづみには、1周目の崖の転落が実は気絶しただけで、4月1日に戻ったと見せかけられていたとわかる系統もある(いづみの項)。繰り返しが起きた理由の説明も、いづみの物語と優夏の物語とで食い違い、作中は一つの答えにまとめない。

石原誠

石原誠 いしはら まこと 主人公
読みいしはら まこと
立場主人公。物語の語り手で、一人称は「オレ」
学年大学3年生。単位がほとんど取れておらず「ほんとだったら留年するとこだった」と本人が言う
所属文学部心理学科。ゼミの第5班、川島班の班員

授業にほとんど出ておらず、ゼミのこともよく知らないまま、川島班のゼミ合宿で島へ連れてこられる。到着した翌朝から、まだ起きていないことを口にしては当ててしまう。カフェの米が足りないこと、車のバッテリーが上がっていること、3日の夕飯の献立。予知のように当たるたびに、億彦には頭ごなしに否定され、ほかの面々には気味悪がられる。

軽口とツッコミで場を回す性分で、くるみに「早く起きないと遅刻しちゃうよ!?」と起こされて飛び起きれば、「……って、んなわけあるかぁ!!」と返す。一方で、目の前の相手を守ると決めると、自分の体を顧みずに前へ出る。何度も繰り返される4月の6日間を、誠はそのたびに違う相手とともに過ごし、違う理由を聞かされる。

1周目の4月6日。誠は、4月5日から寄り添った相手を目の前で失う。いづみのそばにいた場合、その朝、ルナビーチで億彦が「そもそもこの合宿の目的は『石原をだます』ことにあったんだからね」と言い出し、米もバッテリーも夕飯も、自分といづみが当たったように仕向けていたと明かす。誠はいづみに「なれなれしく呼ぶんじゃねぇよ!!!」と怒鳴り、平手打ちを受ける。雨の中へ飛び出したいづみを追い、崖から落ちかけた彼女の手首をつかむが、2人とも落ちる。血を吐きながら動かなくなったいづみを抱き、自分もいづみを好きだったと伝えられなかったことを悔いるうちに、意識が途切れる。優夏のそばにいた場合は、崩れかかる神社の前で一瞬ためらい、まず自分の身を考えたせいで優夏を救えなかったと、2周目になっても自分を責め続ける。

2周目。目を覚ますと、日付は4月1日に戻っている。誠は億彦の胸ぐらをつかみ、またオレをだますつもりかと問い詰めてから、いづみの無事を確かめにルナビーチへ走る。繰り返しの理由は、相手によって違う形で語られる。いづみの物語では、いづみが「私達の脳は、4月6日のあの時間に、とどまったままなのよ」と言い、誠の強い思念が現実を歪めたのだと説明する。この現実は誰かの妄想かもしれないと言われて、誠は「それが、真実だろ!」「それだけが、現実だろ!」と拒む。優夏の物語では、誠が「オレ達は、4月6日土曜日に、あの神社でタイムスリップした」とまとめ、優夏は、前の4月1日にも同じような夢を見ていたのだから、これは2度目で、忘れてしまった4月1日がもう一つあるはずだと付け加える。どちらの説明が正しいのかは確かめられない。

それぞれの物語で。いづみの物語では、雨の姫ヶ浜で「――好きなんだ!」と告げ、熱を出して倒れたいづみを抱えた道で車と向き合う。くるみの物語では、1周目にくるみが折ってみせて「企業秘密」だと言った紙飛行機を、夜明けの神社でくるみの前で折る。遙の物語では、遙に「オレは、遙が遙だから、好きなんだ!」と言い、遙と同じB型の血が要ると聞くと、くるみも同じ血液型だと気づいて雨の島を自転車で駆け回る。沙紀の物語では、フェンスの向こうの沙紀に、信じてもらうためではなく自分が信じているから来たのだと言う。優夏の物語では、ポケットの鈴を地面に落として踏み潰し、崩れる神社の前で、今度はためらわずに優夏へ飛びつく。

2周目の失言。くるみの物語の4月1日、くるみを中学3年生だと思い込んだ億彦に「どこに目ついてんだ、お前は!?」「くるみは高校生だ!」と言ってしまい、まだ聞いていないはずのことを口にしたと気づく。いづみたちは、漁師の源さんから聞いたのだろうと受け取り、誠もそれに合わせる。

象徴的な台詞
「実際にオレは、ここに存在してるし、いづみさんは、そこにしっかりと座ってるんだ!」「それが、真実だろ!」「それだけが、現実だろ!」いづみの物語、この現実は妄想かもしれないと言われて
「これからはオレが……オレがお前の猫と桜になってやるって……」「それに……人を『信じる』のに理由がいるか!」沙紀の物語、岬の突端で
「オレは、遙が遙だから、好きなんだ!」遙の物語
笑える台詞
「……って、んなわけあるかぁ!!」くるみに「遅刻しちゃうよ!?」と起こされて

川島優夏

川島優夏 かわしま ゆうか 班長
川島優夏
読みかわしま ゆうか
立場川島班の班長。合宿の段取りを仕切る
学年大学3年生(自己紹介で、今年から3年生だと話す)
経歴朝倉沙紀とは中学の同級生
外見合宿初日はピンクのワンピース。照れると髪の先端をくるくるとねじる

明るく世話焼きで、会ったばかりの誠を「誠」と呼び捨てにする。料理は大の苦手で、手間をかけた料理を残されると「せっかく作ったのにぃー!」とむくれる。酒に弱く、酔うと「トロがたべたい……」とからみ、バーベキューでは「焼けた石原は、シイタケや!」と回文を披露する。恋の講釈を「優夏先生の恋愛方程式」と銘打って誠に垂れるが、ときおり寂しげな顔を見せる。沙紀とは、中学の文化祭で描いた「魔法使いの絵」をめぐって、いまもしこりが残っている。

1周目。4月5日、優夏は誠を連れて司紀の杜神社へ走り、鈴の裏に貼られた護符の歌「はるさめや みさきのはてに なりひびく すずとともにや ときはとかれん」を挙げて、「私達、この神社でタイムスリップしたのよ!」と言い出す。誠の予知は「過去の記憶を、思い出してたに過ぎない」、2人は未来を一度経験している、というのが優夏の考えで、誠は空論だと取り合わない。その夜、優夏はひとりで神社の裏の崖っぷちへ向かう。歌の「みさきのはて」がそこを指すと考え、「どうしても、過去に戻りたかったから」だった。追ってきた誠と夜明けを待つうち、地震で傾いた神社の壁と長い軒が倒れかかり、2人とも下敷きになる。

過去に戻りたかった理由。沙紀が誠に語る。中3の6月、修学旅行先のホテルが火事になり、本館4階の真ん中の部屋にいた優夏の班だけが逃げ遅れた。ひとりの男の子が頭から水をかぶって炎の中へ飛び込み、女の子たちを次々に助け出して、最後に優夏を抱えて玄関から出てきたところで力尽き、息を引き取った。最期の言葉は「前からずっと……優夏のことが……」「……好きだったんだ……」。優夏は自分の想いを伝えられないままだった。2周目の優夏は「……好きだって、言いたかったの!」と打ち明ける。沙紀は、誠のふとした仕草がその男の子に「まるで生き写し」だと言う。

優夏の物語の2周目。優夏も4月1日から6日までの記憶を持って目覚める。2人は、4月6日のあの神社で時間をさかのぼったのだと整理し、「優夏と一緒に4月7日の朝日を見よう」と約束する。4月6日、くるみがまた姿を消し、神社へ向かう誠を、優夏は石段の前で「行かないで!」と止める。誠はポケットの鈴を落として踏み潰す。それでも行こうとする誠に、優夏は「確かにあの男の子のことが忘れられなくて、私はこの神社へ行った。だけど……」「誠のこと、好きだったの……」と告げる。誠が石段を駆け上がると、優夏は誠を追い越して神社の中へ飛び込み、2人はまた神社の裏の崖っぷちに立つ。

崩れる神社の前で。誠が再びためらうと、2人は1周目と同じく倒れた神社の下敷きになり、優夏は「朝日……見れなかったね……」と言って鈴を落とす。ためらわない場合、優夏は「私も、誠と一緒にいく……」と自分の鈴を海に放り、神社が崩れ落ちる刹那、誠は優夏に飛びつく。その勢いで2人は抱き合ったまま、崖から夜の海へ落ちていく。

4月7日。誠はロッジのベッドで目を覚まし、腕時計の日付は「『1』ではなく『7』だった」。海に落ちてからロッジへ戻るまでの経緯は書かれず、2人は沙紀に「1泊2日の、恋の逃避行ですか?」とからかわれる。くるみは前の日の朝、子犬を探しに出ていただけだった。2人は約束どおり朝日を見に行き、誠は護符の歌の「みさきのはて」を「本当の岬の果て……つまり海の中」のことだったと考える。「これで全部、終わったな?」と言う誠に、優夏は「すべてはこれから、始まるんだもん……」と返し、朝の光の中で初めて唇を重ねる。

優夏キュア。追加シナリオ「優夏キュア」は、2周目の4月1日の朝に優夏が目覚めるところから、優夏の一人称でこの物語をたどり直す。初恋の男の子にもらってなくした猫のキーホルダー(「ニンニンネコピョン」)を店に探しに行く話や、沙紀がつけている紫のライラックの香水の話が加わり、遙は紫のライラックの花言葉を「『初恋』」「『愛の芽生え』」と教える。4月6日、優夏は神社の前で誠を思い切り突き飛ばし、自分が先へ行こうとする。4月7日、沙紀はライラックに込めた意味を「優夏にとって、最高の時間は終わったんじゃなくて……これからなんだから!」と明かす。2人は月浜へ行き、誠は、店で売れてしまったと言われたキーホルダーを先に買っておいたと言って差し出す。あの男の子と「……全然、似てなかったよ」と言う優夏に、誠は「オレは……オレだ」「ただ、オレは…………優夏を置いてったりしないだけだ」と答え、2人は朝の光の中で唇を重ねる。

後日談。7人で乗った船の上では、一升ビンを片手に操舵輪を握って「とりゃぁーっ! オモカジいっぱ~い!」と叫ぶ。

象徴的な台詞
「最初から、すべてが始まったあの瞬間から、誠のことが大好きだったんだよぉ!!」2周目の4月6日、神社の石段の前で
「違うよ、誠……。なんにも終わってなんか……いないよ……」「すべてはこれから、始まるんだもん……」4月7日の朝日を前に
笑える台詞
「優夏先生の恋愛方程式その1――『しつこい男は嫌われる』――よく覚えときなさい♪」合宿初日、しつこく尋ねる誠に
「焼けた石原は、シイタケや!」バーベキューで回文を披露して

守野いづみ

守野いづみ もりの いづみ 誠の大学の教授
守野いづみ
読みもりの いづみ
立場カフェ「ルナビーチ」の店員として登場し、留守の店長に代わって店を切り盛りする。正体は誠の大学の教授で、川島班のゼミの担当
家族守野くるみの姉。父は遺伝子工学の権威、守野茂蔵
経歴初めて島に来たのは中学生のころ。この島に合宿所があると知って大学を選んだ。現在の年齢の数字は作中に出ない
外見ショートカットにエプロン姿。誠の第一印象は「年のころは20歳前半」

ルナビーチで、イタリアへ食器の買い付けに出かけた店長の留守を預かっている。手伝おうとする誠を「男子厨房に入るべからず……わかった?」とあしらい、島の言い伝えや星の話に詳しい。真夜中の展望公園では、夜空の星について「本当は、真実かどうかよりも、信じられるかどうかのほうが、大切なことなんじゃないかって」と話す。4月4日のバーベキューで沙紀・遙・優夏が言い争うと、穏やかないづみが「いい加減にしなさいっ!!!」と一喝する。

1周目の4月6日。いづみは展望公園の星空の下で、誠に「好きなの」と打ち明けていた。4月6日の朝、ルナビーチで億彦が「実験」を暴露し、誠に罵られたいづみは、平手打ちのあと「さようなら……」と豪雨の中へ飛び出す。追いついた誠に、だまそうとしたことは非難されて当然だが、誠を好きだという気持ちだけは信じてほしかったと言い、なぜ協力したのかを「……キュレイ……」と言いかけたところで、また森の奥へ走り出す。森の果ての崖から落ち、「もういちど……」「……もういちど……」「見たかったね……」と言って目を閉じる。

正体。2周目の4月1日、億彦がいづみを「先生」と呼んだことから、いづみは「私が、誠くんの大学の、教授だからよ」「この川島班のゼミを担当してたのが……私だったの」と明かす。誠はいづみを大学の卒業生だと思っていた。優夏・遙・くるみの3人は、いづみが教授だということだけは知っていて、誠には伏せていた。億彦に誠をだますよう言ったのもいづみ自身で、表向きの名目は班員の親睦と、出席率の悪い誠の素行調査だった。店長に電話して、4月の頭はイタリアへ行っていると聞いたとき、この計画を思いついたという。

一度も行われなかった実験。計画は、誠の予知が当たっているように見せかけて、誠自身に予知能力があると信じ込ませるものだった。ところがいづみは「実験は……」「実際には1度も……」「……やっていないの」と言い、誠の手を車のエンジンキーに触れさせる。何度ひねってもエンジンはかからない。米は本当に足りず、3日の夕飯も本当にその献立にするつもりで材料を買ってあった。誠の予知は当たっていたのである。実験の目的は、キュレイシンドロームの第3の特徴を否定するための反証実験だった。

第3の特徴。いづみの説明では、第1の特徴は、まわりの人がついた嘘を本人が疑いもなく信じ込むこと、第2の特徴は、最初に嘘をついた人もそれを嘘だと思っていないこと。第3の特徴は「妄想が、真実になること」「強固な思念が、新たな現実を生み出すこと」である。いづみは、1周目の4月6日にいづみが死ぬのを見た誠の「過去に戻りたい」という思念が現実を歪めたのだと言い、2人の脳は4月6日にとどまったまま、理想の過去を妄想しているのかもしれないと続ける。さらに、自分の世界では、誠の死を目の当たりにした自分こそがキュレイシンドロームに冒されていて、「『誠くんが死なない』という歴史」を創ろうとしているのかもしれない、とも言う。

いづみの物語。繰り返しを本当のこととして扱う系統では、4月6日未明の雨の姫ヶ浜で、誠の告白を「誠くんの想いにこたえる資格なんか無いのに!」と拒みながら受け入れ、2人は想いを遂げる。いづみは、くるみ・遙・自分が1粒ずつ拾った3粒の星の砂を水と一緒に入れた小ビンを「私の大切な……想い出……」として誠に渡す。その直後、いづみは熱を出す。ロッジでは誠が、くるみの背中の傷が消えたと思い込み、くるみ自身も「20歳だもん」と言い出す。くるみが誘拐されなかった歴史なら遙は生まれないと恐れた誠が、雨の中へ遙を探しに出ると、心配して追ってきたいづみが道で倒れていて、そこへ車が迫る。

雨の道の3通り。誠が車の前に大の字で立ちはだかると、誠ははね飛ばされながらも立ち上がり、車は、いづみを抱いて背を向けた遙の10センチ手前で止まる。遙はいづみを「お姉ちゃん」と呼ぶ。いづみを道の端へ運ぼうとすると、誠はつまずき、立ちはだかった遙の体を車がすり抜けて、2人ともはねられる。いづみは「……これで……終わり……ね……」と目を閉じる。いづみを抱えて跳ぶと、誠が背中から落ちて衝撃を受け止め、無事だったいづみが「どうして私のことなんか……かばったりしたの……」「私も誠くんのこと、大好きだからぁぁぁぁぁ!」と泣く。どの場合も、誠の意識はそこで途切れる。

4月7日の朝。車が止まった先には、4月7日がある。誠は松葉杖をつき、片足と片腕にギプス。いづみも熱が下がっている。前の夜の異変には次々と説明がつく。傷のない背中は、くるみの服を試着していた遙のものだった。くるみは5日の午後にいづみから自分の過去を聞いていて、「くるみが生まれたのは、今から21年前なんだもん」と言う。消えたと思った神社は、隣にあった双子の神社「トキツカサ神社」の跡で、なくなったトランプは優夏が借りたままにしており、消えた鈴はペチャンコに潰れて草むらにあった。ルナビーチで口づけを交わし、いづみは「星は永遠に、輝き続けるの……」と言う。誠はポケットから3つの星の入った小ビンを取り出す。そして最後に、床に散らばったトランプには「なにも……描かれてはいなかった」と書かれて終わる。

崖の下の目覚め。もう一つの結末では、誠が雨の中、高い崖の下の泥の上で目を開け、いづみが「……あの崖から落ちて……」「……かばって……くれたの……」と泣いている。1周目の4月6日の崖である。誠は、いづみの「『私が死なない』という歴史を創り上げた瞬間に、本当の現実世界に戻るのよ」という言葉を思い出す。誠の口からは血があふれ、救急車のサイレンが聞こえる。星の砂のことを言いかけた誠に、このいづみは「星の砂って………」「……………なに?」と聞き返す。それでも誠のポケットからは、3つの星が入った小ビンが出てくる。いづみは生きているが、誠が助かるかどうかは書かれない。

繰り返しではなかった系統。こちらでは、1周目の4月6日に崖から落ちたいづみは気絶していただけで、いづみは誠に「今日は4月1日ではなくて、4月7日よ」と明かす。気を失った誠の腕時計を4月1日に戻し、全員でもう一度4月1日のふりをしようと言い出したのは億彦だった。この系統のいづみは、くるみの秘密をばらすと億彦に脅されて従っていたと話す。誠たちはいづみと組んで逆に億彦をだまし、日付を偽ったまま合宿を延ばす。結末は3通りある。雨の中、星空の下で言われた言葉に誠が「好きだよ」と返事をし、いづみが傘を投げ出して口づけをする結末。すべてがくるみの企てた「逆の逆のそのまた逆ドッキリ」だったとわかり、笑ういづみの手から鈴がこぼれる結末。誠がいづみの気持ちに応えられず、眠るいづみに「さようなら……」と告げて、ひとりフェリーで島を去る結末。どれにも死はない。

ほかの物語で。遙の物語では、本土の病院へ見舞いに来て、眠っている遙のそばで誠に「遙は私の妹なのよ……」と打ち明ける。後日談の大学の教室では、教壇から「ほぉら! 早く席に着きなさ~い!」「始めるわよ♪」と呼びかける。

象徴的な台詞
「妄想が、真実になること」「強固な思念が、新たな現実を生み出すこと」キュレイシンドロームの第3の特徴を明かして
「私の世界の中では、キュレイシンドロームに冒されていたのは、誠くんではなく……」「――私だった、ということ」いづみの物語、繰り返しの理由を語って
「星は永遠に、輝き続けるの……」「水の中で……いつまでも……いつまでも……」「だからその輝きを……忘れないでね……?」4月7日、ルナビーチで
笑える台詞
「男子厨房に入るべからず……わかった?」手伝おうとする誠に
「だって……誠くんのそばにいたいもん♪」「私も一緒に、ロッジに行く♪」いづみの物語、着替えに戻る誠について行こうとして

守野くるみ

守野くるみ もりの くるみ いづみの妹
守野くるみ
読みもりの くるみ
立場いづみの妹。学校が休みのあいだルナビーチを手伝っている
学年・年齢高校3年生。本人は「これでも17歳」と言う。いづみの物語では「20歳だもん」とも言い、作中で年齢が2通りに語られる(ネタバレ詳細)
家族姉はいづみ。父は守野茂蔵で、母はその助手(「パパとママ……『博士』と『助手』の関係なの」)
外見背中に深い傷がある。本人は3歳のころ階段から落ちてできた傷だと聞かされている

誠を「お兄ちゃん」と呼んでなつき、怖い話とお化けが大好き。何かを取り出して見せるときは「ジャ~ン♪ くるくるくるみマジック♪」が決まり文句になっている。言い争いには耐えられず、1周目の4月3日、皆に食ってかかる沙紀を止めようと抱きついて突き飛ばされ、しゃくりあげて泣く。そのくるみを抱き起こしたのが遙だった。4月4日の夜、バーベキューのあとで姿を消すが、誠たちが司紀の杜神社の中でへたり込んでいるくるみを見つけ、無事に連れ帰る。くるみはそこで「ここ……来たことあるんだ……」とつぶやく。

21年前。7月20日、生後1か月のくるみが何者かに誘拐される。7日後、群発地震で倒れた司紀杜神社の下から、指名手配中の誘拐犯の遺体が見つかったが、くるみはいなかった。3年後、建て直された神社の中で赤ん坊が見つかる。背中に深い傷があり、体は誘拐されたときから成長していなかった。警察のDNA鑑定は「99.99999%の確率で」その子がくるみだと示したが、いづみは、父が鑑定に圧力をかけた可能性を「言い切れない」と疑い続けている。くるみが消えていたこの3年が、空白の3年間である。

誠の推理。誠は、くるみは神社が倒れる直前まで誘拐犯と一緒にいて、倒壊の直後に体ごと3年後へ跳んだのであり、背中の傷はそのとき負ったのだと考える。いづみは、自分たちが経験したのは意識だけが過去へさかのぼる現象なのに、くるみは肉体ごと未来へ飛んだことになると、説明しきれない点を挙げる。作中に、この推理を事実として確かめる場面はない。

1周目の4月6日。くるみのそばにいた場合、5日の深夜、ルナビーチで姉と誠が話しているのを、くるみが立ち聞きしてしまう。「……血の繋がりなんか、関係無いの」といういづみの言葉を聞いたくるみは「くるみは、お姉ちゃんの妹じゃ……ないの?」「嘘つきぃー!!」とルナビーチを飛び出す。夜明け、雨の神社で地震が起き、くるみは崩れた神社の下敷きになる。

くるみの物語の2周目。5日の深夜、同じ立ち聞きがもう一度起きる。誠は月浜でくるみに追いつき、くるみといづみは血のつながった本当の姉妹で、くるみは「3年後の未来に」タイムスリップしたのだと話すが、くるみは「どうしてそんな……嘘つくの……?」「みんな、だいっきらい!!」と信じず、砂浜で鈴を拾って走り去る。誠が神社で夜明けまで待つと、くるみが現れる。誠は、1周目にくるみが話した月とくらげの話をなぞり、くるみの夢がお嫁さんになることだったのに重ねて「オレの夢は……優しいお嫁さんをもらうことだ」と言い、紙飛行機を折る。1周目のくるみが「名付けて、くるみ17号!」と折ってみせ、「企業秘密」だから誰にも教えるなと言った、まだ誰にも教えていない折り方である。くるみは「くるみしか……知らないのに……」「タイムスリップ……ほんとなの……?」と信じ、2人は想いを告げ合って結ばれる。

悲劇の分岐。神社で待たずにほかの場所を探したり、神社で言葉が出なかったりすると、くるみは「くるみは、自分で確かめるから……」と神社に駆け込み、1周目と同じく崩れた神社の下敷きになる。

4月7日。午後、誠とくるみは手をつないで海岸を歩き、前日の地震で潰れた神社の瓦礫に手を合わせる。遊園地の約束をして「ほっぺにちゅう」をせがんだくるみは、明日が始業式だったと思い出し、もうフェリーが無いと知ると「もう1度……タイムスリップするのぉ!」と神社の石段を駆け上がっていく。いづみとの話し合いの場面は、この結末にはない。

ほかの物語で。いづみの物語の4月6日未明、ロッジでくるみは「だってくるみ……20歳だもん」「今年で21になるんだから、誠くんと同い年」と言い出す。翌日、5日の午後にいづみから自分の過去を聞いていたのだとわかる。遙の物語では、遙と同じB型の血を持つ者として、誠の自転車の荷台に乗せられて診療所へ運ばれる。遙が島を去る日には、「遙さんの方がお姉ちゃんだよ~」と言って送り出す。後日談の船の上では、誠の大学に通うことにしたと言い、「だって試験受けるの、くるみじゃないから」と遙に替え玉を頼むつもりでいる。いづみに「替え玉なんて、お姉ちゃんがぜ~ったいに許しませんからね?」と叱られた直後、いづみから来年の入試問題を教えてあげると言われる。大学の教室の場面では、くるみも誠と同じ大学に入っている。

象徴的な台詞
「くるみは、お姉ちゃんの妹じゃ……ないの?」「嘘つきぃー!!」5日の深夜、姉と誠の話を立ち聞きして
「くるみしか……知らないのに……。なんで……?」「タイムスリップ……ほんとなの……?」くるみの物語、夜明けの神社で
「もう1度……タイムスリップするのぉ!」4月7日、明日が始業式だと気づいて
笑える台詞
「違うよ~、中学じゃなくて、高校3年生!」「くるみ、これでも17歳なんだからねっ!」合宿初日、中学生と間違われて

樋口遙

樋口遙 ひぐち はるか くるみのクローン
樋口遙
読みひぐち はるか(姓の「樋口」は優夏の紹介で一度出るだけ)
立場川島班の班員。正体は守野くるみのクローン
学年誠たちより1つ年下で、飛び級して同じ学年
外見額に幼いころの傷がある

優夏に「同じ班のメンバーで、樋口遙」と紹介されても、外を眺めたまま黙っている。タバコのにおいを嫌い(「このにおい……好きじゃない」)、テニスに誘われても「私…海が見たいから…」と断る。バーベキューにはフナムシの詰まったビニール袋を持ってきて、何をするのかと聞かれると「食べるの」と答える。くるみとは妙に気が合う。同じバーベキューで、優夏にビールをこぼした沙紀にオレンジジュースを浴びせ、「悪いと思って……ないみたいだったから」「同じことしてあげないと……分からないんじゃないかと、思ったから」と言う。

出生。くるみが見つからないまま時がたつなか、父の守野茂蔵は、その喪失感からくるみのクローンを作る準備に入る。体細胞核移植を施した卵子が母体に着床し、19年前の2月15日、くるみのクローンが生まれる。それが遙である。くるみが3年ぶりに見つかると、クローンへの迫害があった時代だったため、遙は茂蔵の助手だった青年夫婦の養子に出された。額の傷は、まだ幼かったいづみが「こんな子、私の本当の妹じゃない」と言って、追いかけてきた遙を突き飛ばしたときのものだと、いづみ自身が語る。遙は自分がクローンだと知っている。作中の世界では、9年前からクローン受精が法律で認められている。

1周目。4月3日、沙紀はくるみを突き飛ばし、詰め寄った遙に「何よ。来ないでよ。クローンに用はないわ……!」と言い放つ。4日のバーベキューでも「クローンっていう人種は、どうやら違うみたいだけどね!」と刺す。4日の夜、眠りに落ちかけた誠の耳元で、遙は「私を……私をずっと助けてくれる?」「守ってくれる?」とささやく。遙のそばにいた場合の4月6日、雨の夜道で、沙紀を追って道を横切った子犬を遙が抱き上げ、カーブの向こうから来た車にはねられる。島の診療所の医者は、体内のほとんどの血を失っていて、B型の血の輸血さえできればと言うが、同じ血液型の血は見つからず、遙は息を引き取る。

遙の物語の2周目。誠は遙に「遙の代わりになる人間なんか、この世に1人もいやしないんだ!」「オレは、遙が遙だから、好きなんだ!」と言う。6日未明の雨の中、同じ子犬に車が迫り、今度は誠が先に子犬を抱き上げるが、背後から誠を突き飛ばした遙が代わりにはねられる。診療所でB型の血が要ると聞いた誠は、遙がくるみのクローンであることから、くるみもB型だと気づき、雨の島を自転車で駆け回ってくるみを見つけ、荷台に乗せて診療所へ運び込んで気を失う。目を覚ますと遙は生きていて、「眠り姫は……キスで目覚めたんだよね?」と言う。くるみを見つけられない場合は、1周目と同じく遙は病室で息を引き取る。

結末。翌日、遙は本土の大病院へ移って精密検査を受けることになり、誠も付き添ってフェリーで島を出る。見舞いに来たいづみは、眠っている遙のそばで誠に「遙は私の妹なのよ……。血のつながりとか、クローンとか関係ない……」と打ち明け、翌日には遙と2人で話す。1週間後に遙は退院し、2人は置いてきた荷物を取りに島へ戻る。ルナビーチでいづみに「ここには、あなたのお姉さんが2人もいるんだから……」と言われ、遙はバスの窓から手を振り続ける。

沙紀の物語で。沙紀は子供のころ、別荘の裏の炭焼き小屋にいたクローンの女の子に石を投げてけがをさせた。額の左側に傷があり、同じような鈴を持っていた遙を、沙紀はその子だと思い込んでいた。遙のほうにも、大事にしていた鈴を女の子に取り上げられ、追いかけると突き飛ばされて、机かイスの角に額をぶつけたという記憶がある。誠が2人の記憶を突き合わせ、時期も傷の原因も食い違うことを示すと、2人は互いに相手を取り違えていたとわかって和解する。4月7日、沙紀は遙に「信じてくれて、ありがとう」と言う。

いづみの物語で。4月6日未明の雨の道で、車の前に大の字で立ちはだかった遙の体を、車がすり抜けていく場面がある。誠が車を止めた場合には、遙はいづみを抱いて車に背を向け、いづみを「お姉ちゃん」と呼ぶ。後日談の船の上では、くるみの替え玉受験を引き受けるつもりで「受験したのなんて、去年のことだし……」と言い、大学の教室の場面では「新しいスピニングリール……買って?」とねだる。

象徴的な台詞
「私を……私をずっと助けてくれる?」「守ってくれる?」1周目の4月4日の夜、眠りに落ちる誠の耳元で
「眠り姫は……キスで目覚めたんだよね?」遙の物語、診療所で目を覚まして
「さようなら……さようなら……お姉ちゃん達!!」「……また会おうね……」遙の物語の結末、バスの窓から
笑える台詞
「フナムシ」「食べるの」バーベキューに持ってきた袋の中身を聞かれて

朝倉沙紀

朝倉沙紀 あさくら さき 優夏の同級生
朝倉沙紀
読みあさくら さき
立場島の別荘に来ている朝倉家の娘。川島班の班員ではない
学年K大の学生。年齢・学年の数字は作中に出ない
経歴川島優夏の中学の同級生
外見髪をポニーテールに束ねている

「『朝倉』ですけど、責任者の方、いらっしゃいます?」とルナビーチに乗り込んでくるのが初登場。億彦が朝倉家の頼んだピザを「僕が、朝倉億彦です」と名乗って受け取ってしまったためで、優夏の中学の同級生とわかって食卓に加わる。気が強く口が達者で、遙とはことあるごとにぶつかる。バーベキューで優夏にビールをこぼして言い合いになると、「わざとそんなことする人がどこにいるのよ!?」と言い返す。人より動物に心を開く。

中学の絵。文化祭でクラスが描いた教室の壁一面ほどの「魔法使いの絵」は、下絵を優夏と沙紀のどちらが描くかで選挙になり、優夏に決まった。完成した絵が夜中に壊され、見回りの用務員が逃げていく沙紀を見たとされて、沙紀は犯人扱いされた。沙紀は否定し続け、謝らなかった。そのころのことを、沙紀は「学校に居着いてた野良猫と、校庭の桜の木しか、私の言うこと、まともに聞いてくれなかったのよ……」と誠に話し、誠は「オレが猫と桜になってやる」と応える。

炭焼き小屋の女の子。子供のころ、別荘の裏の炭焼き小屋に父親と2人だけで暮らしていた女の子と仲良くなり、母からもらった鈴をあげた。母に叱られ、父には「ママの言うこと聞けないなら、うちの子じゃない」と言われて、母と一緒に取り返しに行き、追いかけてくるその子に、母に言われて何度も石を投げた。その子は額の左側から血を流した。母は「クローンなんかと絶対仲良くなっちゃいけません」と言った。遙の額の左側にも傷があり、その鈴を持っていたため、沙紀は遙をその子だと思い込んでいた。1周目の4月3日と4日に沙紀が遙へ投げつけた言葉は、そこから出ている。

1周目の4月6日。沙紀のそばにいた場合、ルナビーチの前日の売上金がなくなり、沙紀が疑われる。誠は沙紀を信じきれず、沙紀は「誠も同じね……。人なんてみんな同じよ!!」と雨の中へ飛び出す。展望公園の岬の突端でフェンスを越えた沙紀は、海でなくしたと言っていた鈴を見せ、ずっと自分が持っていたと明かして「私は人なんか信じない。信じられない……信じたくない!」と言う。差し出された誠の手を取らず、沙紀は背中から崖下へ落ちていく。

沙紀の物語の2周目。誠が炭焼き小屋の記憶を聞き出し、遙と2人の記憶を突き合わせて誤解を解く。4月6日の朝、売上金が消える出来事はまた起きる。前の夜、沙紀が何かを懐に抱えて走り去るのを見ていた誠は、ここでも「沙紀じゃない」と言い切れず、沙紀は岬の突端へ走る。フェンスの向こうの沙紀に、誠が「オレが沙紀のことを信じてるから……だからここに来たんだよ!!」と言うと、沙紀は泣き出し、誠はフェンス越しに抱きしめて引き戻す。誠が「オレを信じてくれ」と求めた場合は、沙紀は1周目と同じく手を離して落ち、誠もふらふらとその後を追う。

4月7日。合宿最終日、沙紀が懐に抱えていたのは盗んだ金ではなく、林道の脇でぐったりしていた子犬だったとわかる。沙紀は子犬を診療所へ運んでいて、医者の見立ては、雨に濡れて衰弱しているだけだった。観光地を荒らしていた窃盗団が捕まったと警察から電話が入る。優夏とは中学の件で互いに謝り合い、優夏は、あの用務員が自分で壊したのを沙紀のせいにしたのだろうと言う(あくまで優夏の推測で、確かめられはしない)。誠がアパートで子犬を引き取ると言うと、沙紀は「それじゃもう1人引き取ってもらおうかなぁ……」と言い、誠は「じゃあ、1人と1匹だな?」と返す。

ほかの物語で。優夏の物語では、優夏の初恋の男の子の話を誠に語る。優夏キュアでは、紫のライラックの香水に込めた意味を4月7日に優夏へ明かす。後日談の船の上では子犬を連れていて、来年の春にK大から誠の大学に移るつもりだと話し、理由を「だって、あの大学、もう興味なくなっちゃったんだもの」とはぐらかすが、くるみに「お兄ちゃんが、いるからだよね?」と冷やかされる。大学の教室の場面では、すでに誠の大学に編入している。

象徴的な台詞
「学校に居着いてた野良猫と、校庭の桜の木しか、私の言うこと、まともに聞いてくれなかったのよ……」中学のころを誠に話して
「私は人なんか信じない。信じられない……信じたくない!」1周目の4月6日、岬の突端で
「それじゃもう1人引き取ってもらおうかなぁ……」4月7日、子犬を引き取ると言う誠に
笑える台詞
「『朝倉』ですけど、責任者の方、いらっしゃいます?」初登場、ルナビーチに乗り込んで

飯田億彦

飯田億彦 いいだ おくひこ 実験の協力者
飯田億彦
読みいいだ おくひこ
立場川島班の班員。飯田財閥の御曹司。いづみの実験の協力者
外見長い前髪をかき上げ、ソファでワイングラスをくるくる回す

「『飯田億彦』……って、聞いたこと、ないかい?」と名乗り、誠を「石原ぁ」と見下す。遙がタバコのにおいを嫌うと知ると、初日からロッジ内を禁煙にする。届いたピザを「僕が、朝倉億彦です」と注文主の名で受け取ってしまい、沙紀が乗り込んでくるもとを作る。真夜中にはロフトで寝言のヒーローごっこを始め、「その名も――『腎臓人間オックマン』だぁ!」と変身してみせる。

否定する役。億彦は、いづみに頼まれた実験の協力者だった。誠の予知を本物らしく見せるには、それを頭ごなしに否定する者が要る、というのが億彦の役回りである。いづみのそばにいた1周目の4月6日、ルナビーチで「石原の予知が、あたかも本当に当たっているかのように、見せかけていただけなんだよ」と暴露し、米も車のバッテリーも夕飯の献立も、自分たちが当たったように仕向けたのだと言う。「なにもそんなに怒らなくても」となだめようとして、誠に蹴り飛ばされる。

2周目の4月1日。ロッジでタバコを吸っているところを誠に胸ぐらをつかまれ、だますつもりはあったが「少なくとも僕は、まだ、だましてない」と言う。その日のうちに、いづみを「先生」と呼んだことで、いづみが誠の大学の教授だと露見する。優夏たちには「――君達全員を、だまそうとしてたんだ」「『敵をあざむくにはまず味方から』ってね」と言い、優夏たちも「実験」の協力者にする予定だったと明かす。いづみによれば、その実験は実際には一度も行われていなかった。

繰り返しではなかった系統。崖から落ちて気を失った誠の腕時計を4月1日に戻し、全員でもう一度4月1日のふりをしようと言い出したのは億彦だった。この系統のいづみは、くるみの秘密をばらすと億彦に脅されていたと話す。誠たちはいづみと組んで逆に億彦をだまし、日付を偽ったまま合宿を延ばす。最後にすべてがくるみの「逆の逆のそのまた逆ドッキリ」だったとわかる結末では、億彦だけが何も知らされず、本気でだまされていた。

後日談。船の上では「どうだい? 腎臓戦隊に入る決心は、もうついたかい?」と誠を誘い、「君も、極楽宴遊園地で、僕と握手!」と言う。大学の教室の場面では「僕の愛車のフェラーロ」を話題にする。億彦が誰かと結ばれる物語はない。

象徴的な台詞
「石原ぁ、僕らはね?」「石原の予知が、あたかも本当に当たっているかのように、見せかけていただけなんだよ」1周目の4月6日、ルナビーチで
「――君達全員を、だまそうとしてたんだ」「『敵をあざむくにはまず味方から』ってね」2周目の4月1日、優夏たちに
笑える台詞
「僕が、朝倉億彦です」朝倉家のピザを受け取ろうとして
「いつも爽やか好青年、粋でいなせで涙にゃもろい」「地球の平和を守る為、神が送った正義の戦士……」「その名も――『腎臓人間オックマン』だぁ!」真夜中、ロフトでの寝言

その他の登場人物

守野茂蔵

もりの しげぞう いづみとくるみの父

遺伝子工学の世界的権威として知られる守野博士。一度も登場せず、いづみとくるみの話の中にだけ出てくる。くるみによれば、母はその助手で、仕事が忙しく料理をしない。くるみが誘拐されて見つからないあいだ、その喪失感からくるみのクローンを作り、それが遙として生まれる。3年後にくるみが見つかると、遙を自分の助手だった青年夫婦の養子に出した。いづみは、くるみのDNA鑑定に父が圧力をかけた可能性を捨てきれず、「自分の最愛の娘を取り戻す為なら、手段を選ばない。……そういう人なのよ、父は……」と言う。鑑定が正しかったのかどうかは、作中で確かめられない。

マイケル・キャビン

アメリカの精神科医

いづみの話の中にだけ出てくる、キュレイシンドロームの名づけ親。その言葉が使われ始めたのは5年ほど前で、勤めていた病院でトム・フェイブリンという少年のカウンセリングにあたったのがきっかけだった。トムの幼なじみの少女ジュリアの末期ガンが消え、続いて病院中の患者の病気が次々に治ったことに気づいて仲間の医師に相談したが、相手にされなかった。古今東西の宗教的な奇跡も同じ現象なのかもしれないと考え、フランス語の「聖職者」「司祭」の意を込めて「キュレイ」と名づけた、といづみは説明する。キャビンはこの現象を論文として発表しており、いづみも「キュレイシンドロームの考察」というレポートを自分で書いて億彦に渡していた。

トム・フェイブリン

キャビン博士の患者

キャビン博士の病院に入院していた少年で、12歳でパラノイアと診断された。10歳の夏、キャンプに出かけた湖で溺れた3つ下の妹を、以前テレビで見た人工呼吸と心臓マッサージで助ける。両親と妹は奇跡が起きたと信じ込み、トムには死んだ人間を生き返らせる力があると言い続けた。トムは「ボクのなかに『死』は無い」「死なないボクに触れた者もまた、死なない」と信じるようになり、不死を伝染させるその行為を「キュア」と呼んだ。入院中、トムが幼なじみのジュリアの額にそっと手を触れたところから、病院中の病気が治っていった、といづみは語る。

初恋の男の子

優夏の中学の同級生

名前は作中に出てこない。中学3年に上がった日のクラス替えで、優夏の隣の席になった男の子。美術室でひとり鳩時計の絵を描いていた優夏に「ダメだな」と言い、「鳥は、空を飛ぶから鳥なんだ」と鉛筆を取って時計を壊すように描き直し、窓の外へ飛び立つ2羽の鳩を描いた。そのとき言ったのが「時を止めたいなら、時間を壊せばいい」「時から逃れたいなら、羽ばたけばいい」である。その年の6月、修学旅行先のホテル火災で、逃げ遅れた優夏の班の女の子たちを炎の中から助け出し、最後に優夏を抱えて出てきたところで力尽きた。優夏の物語で誠と優夏が崖から海へ落ちる瞬間、この男の子の言葉が重なる。沙紀は、誠がこの男の子に生き写しだと言う。

ルナビーチの店長

いづみの知り合い

ルナビーチの本当の店長。凝り性で、合宿のあいだはイタリアへ食器の買い付けに出かけており、一度も姿を見せない。このところの地震で店の食器がどんどん割れて減っていったのも、買い付けの理由の半分だという。いづみとは彼女が高校生のころからの知り合いで、合宿の日程が決まったあと、いづみが4月の頭に店を訪ねると電話で伝えると、「ああ~、その頃はちょうど、オラ、イタリアさ行ってるでよぉ~」と答えた。これを聞いて、いづみは実験の計画を思いついた。

診療所の医者

島の医者

島の診療所の医者。遙のそばにいた4月6日、車にはねられた遙を診て、「既に、この方は体内のほとんどの血を流して」いると告げ、輸血さえすれば持ち直せるが、遙の血液型はB型で、血を取り寄せるにはこの天候だとヘリでも4時間はかかると言う。1周目では同じ血液型の血が見つからず、遙は助からない。2周目には誠がくるみを連れてくる。沙紀の物語の4月7日には、沙紀が運び込んだ子犬を「雨に濡れて衰弱しているだけだよ」と見立てる。

源さん

島の漁師

いづみたちの話にたびたび出てくる島の漁師で、いづみに言わせれば「ほんとに口が軽い」。いづみは、店の片づけを誠に頼むときにも「漁師の源さんなら、1時間もあればぜ~んぶ片づけちゃうんだけどなぁ……」とおだてる。2周目の誠が、まだ聞いていないはずのくるみの学年を口にしてしまったとき、いづみとくるみは源さんから聞いたのだろうと受け取り、誠もそれに合わせる。

くるみの誘拐犯

21年前の事件の犯人

21年前の7月20日、生後1か月のくるみを連れ去った人物。すぐに指名手配されたが、誘拐から7日後、群発地震で倒れた司紀杜神社の下から遺体で見つかった。そばにくるみの姿はなかった。誠は、くるみは倒壊の直前までこの犯人と一緒にいたのだと推理する。遙の物語でいづみが語る経緯では、くるみはショッピングセンターで目を離したすきに連れ去られており、神社の話は出てこない。語られ方は物語によって細部が違う。

炭焼き小屋の女の子

沙紀の幼いころの友達

沙紀の子供のころの記憶にだけ出てくる女の子。島の朝倉家の別荘の裏にあった炭焼き小屋に、父親と2人だけで暮らしていた。沙紀によれば、クローンがまだ法律で認められていなかったころのクローンで、隠れるように住んでいた。沙紀から鈴をもらって仲良くなったが、取り返しに来た沙紀に石を投げられ、額の左側から血を流した。沙紀は長く遙をこの子だと思い込んでいたが、沙紀の物語で別人だとわかる。この子がその後どうなったのかは語られない。

沙紀の両親

朝倉家の両親

沙紀の回想にだけ出てくる。母は沙紀に鈴を与え、その鈴を炭焼き小屋の女の子にあげた沙紀を叱って、一緒に取り返しに行く。追いかけてくる子に石を投げさせ、「それでいい、それでいい」「クローンなんかと絶対仲良くなっちゃいけません」「情けもかけちゃいけません」と言った。取り返すのを嫌がる沙紀に、父は「ママの言うこと聞けないなら、うちの子じゃない。炭焼き小屋の子供になればいい」と言った。