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用語集 — Never7 -the end of infinity-

『Never7 -the end of infinity-』に出てくる場所・組織・概念・言い伝え・品物・出来事と、物語の構造を解説します。記述はWindows版(2001年)の内容に基づきます。6日間の繰り返しの仕組みはヒロインの物語ごとに説明が異なるため、一つに決めずに書き分けています。▼ネタバレ詳細には各ヒロインの物語の結末まで含まれます。タグをクリックするとカテゴリを絞り込めます。

舞台・場所
ロッジ 舞台・場所

川島班がゼミ合宿のあいだ寝泊まりする宿舎。林に囲まれた坂道を登った先にあり、歩いて5分ほどのところにテニスコートが、すぐ近くには沙紀の家の別荘がある。誠たちは3月31日の夜に島へ着き、4月7日の午後に島を去るまでの7泊8日をここで過ごす。

詳細
物語は4月1日の朝、ロッジの誠の部屋に、班長の優夏が寝ぼけて飛び込んでくるところから始まる。いづみが誠たちの大学を選んだのも、この島に大学の合宿所があると知っていたからだという(いづみの物語)。沙紀の物語では、4月6日の朝、ロッジに泊まっていたいづみのハンドバッグからルナビーチの売上金が消える(→売上金と窃盗団)。優夏の物語の結末では、海に落ちたはずの誠と優夏が4月7日の朝、ロッジのベッドで目を覚ますが、どうやって戻ったのかは語られない。
ルナビーチ 舞台・場所

月浜に面した喫茶店で、夜はレストランを兼ねたバーになる。店長はイタリアへ食器の買い付けに出かけて留守で、バイトのいづみが、手伝いのくるみと2人で店をきりもりしている。月屋ホテルに客を取られ、くるみいわく「開店休業状態」。合宿の一行が毎日のように集まる。

詳細
いづみの物語で明かされるところでは、いづみがこの店で働き始めたのはつい最近のこと。高校生の頃から店長と親しく、今年の2月頃、ゼミ合宿の日程が決まって「4月の頭に、またうかがいます」と電話をかけたとき、店長がその頃はイタリアに行っていると聞いて、店員に成りすまして誠を観察する計画を思いついた(→キュレイシンドロームの実験)。1周目の4月6日の朝、億彦が合宿の目的を暴露するのもこの店の中。くるみの物語では、姉と誠の話をドアの陰で聞いてしまったくるみが、ここから月浜へ飛び出していく。遙の物語の結末では、誠と遙が島へ戻り、この店でいづみとくるみに別れを告げる。
月屋ホテル 舞台・場所

ルナビーチの窓からも見える大きなホテル。くるみは「あれが月屋ホテル。この店の商売敵ってわけ」と紹介し、見た感じは豪華だが実はけっこう庶民的なホテルだと言う。温水プールがついていて、合宿初日の夜、誠たちはそれを見に出かける。

詳細
初日の夜、プールサイドで誠は「地震が来るんだよ!!」と叫び、その直後に地震が起きて、いづみがプールに落ちる。誠の最初の予知の一つである(→予知)。いづみの物語の2周目には、夜のこのプールで、いづみが水に浮かびながら父から聞いた「お月様とくらげの話」を語る(→月とくらげの話)。
月浜 舞台・場所

ルナビーチの海に面した窓から見渡せる海岸。合宿初日、優夏に誘われて坂をのぼった誠は、ここで「ここが、月浜かぁ」と声をもらす。2日目の夜には一行がこの砂浜に集まり、いづみが神社にまつわる言い伝えを語って聞かせる。

詳細
いづみの物語では、誠は2周目の1日の夜、前の6日間と同じように月浜で鈴を拾い、コンクリートのカケラで潰そうとするが、カケラをどけてみると鈴は消えていた(→鈴)。くるみの物語では、姉の話を立ち聞きしたくるみが「嘘つきぃー!!」と月浜へ飛び出し、砂浜で鈴を拾って走り去る。優夏キュアの結末では、4月7日の朝、誠がここで優夏に猫のキーホルダーを手渡す。
姫ヶ浜 舞台・場所

島の浜のひとつで、岩場の潮だまりにはカニがたくさんいる。くるみはここへカニを捕まえに出かけ、カニ相撲をして遊ぶ。4月4日の夕方には、一行がここでバーベキューをする。いづみによれば、名前の由来は「秘め事をする浜」だという。

詳細
「恋の岬で想いを告げて、愛の入り江で想いを遂げる」という言い伝えの「愛の入り江」は姫ヶ浜のことだと、いづみが説明する(→恋の岬)。前の6日間では4月4日にくるみがここで鈴を拾っていづみに渡していたが、いづみの物語の2周目に同じ日にくるみが拾うのは、鈴ではなく星の砂になっている。4月6日へと日付が変わる夜、誠はこの浜でいづみに想いを告げ、2人は結ばれる。いづみも波打ち際で星の砂を見つけ、くるみ・遙が拾ったぶんと合わせて3粒を小ビンに収める(→星の砂)。
展望公園 舞台・場所

月浜から南東に見える、海にせり出した岬の先端の公園。突端に灯台が立ち、いづみいわく、あそこから見える景色は「そりゃあもう最高」。合宿2日目の昼間、誠はこの岬の突端で、一人で海の彼方を見つめるくるみの横顔を見ている。

詳細
灯台の下は「恋の岬」の言い伝えの場所とされる(→恋の岬)。沙紀の物語では、売上金の盗みを疑われた沙紀が雨の中を駆けて、公園へ続く岬の突端でフェンスを越える。1周目の沙紀はここで誠の手を取らずに落ち、2周目は誠の言葉で引き戻される(→猫と桜)。優夏の物語では、優夏がこの公園で、見知らぬ女の子に鈴を持っていかれたと打ち明ける(→猫のキーホルダー)。
司紀の杜神社 しきのもりじんじゃ 舞台・場所

展望公園よりさらに西の岬にある神社で、地図には岬の先端に鳥居の印がある。いづみによれば正式な名前は「司紀の杜神社」で、「司紀杜神社」とも書かれる。昔は「死鬼の杜」と書いたという噂もあり、地元の人も寄り付かないいわく付きの場所だという。

詳細
いづみが島の役場で確かめたところでは、この神社へ出かけて行って戻らなかった人が何十人もいて、全国紙にも載っている。島の人々はそれを「神隠し」と呼び、死鬼の神の祟りだと言う(→死鬼の神)。21年前、誘拐されたくるみの行方もこの神社と結びついている。誘拐から7日後、群発地震で倒壊した神社の下敷きから誘拐犯の遺体が見つかったがくるみはおらず、3年後、再建された神社の中で成長していない赤ん坊のくるみが見つかった(→空白の3年間)。1周目の4月4日の夜、行方不明になったくるみは、誠と優夏によってこの神社の中で見つかり、「ここ……来たことあるんだ」と言う。中の小さな社に下がった鈴の裏には護符が貼られている(→護符の歌)。4月6日の地震では、くるみの物語で神社が倒壊してくるみが瓦礫の下敷きになり、優夏の物語では神社の裏の崖っぷちにいた優夏と誠の上に、傾いた神社の壁と軒が倒れかかる。
物語による違い
いづみの物語の2周目、誠は「あの司紀杜神社が消えていた」と思い込み、自分の想いが現実を変えたのだと考える。しかし4月7日になって、誠が行き着いたのは隣にあった双子の神社の跡だったと説明される(→トキツカサ神社)。
トキツカサ神社 舞台・場所

いづみの物語の最後の日に名前が出てくる神社で、表記は「杜紀司神社」。いづみが新聞の折り込みチラシで見つけ、「この島のことなら、何でも知ってると思ってたけど」「まだまだねぇ、私も……」と驚く。

詳細
チラシの「杜紀司神社と司紀杜神社の歴史」によれば、二つの神社は島に古くから伝わる双子の神を祀るために建てられ、それぞれ御神体として銀色の鈴を1つずつ納めていて、その鈴に触れた者には不思議な力が宿るという言い伝えが残っている。トキツカサ神社のほうは大昔の地震か何かで潰れ、長い石段だけが残った。誠が「神社が消えた」と思い込んだのは、森の中で道を間違え、このトキツカサ神社の跡に行き着いていたからだった、といづみは説明する。
炭焼き小屋 舞台・場所

島にある朝倉家の別荘の裏に、かつて建っていたという小屋。沙紀が子供の頃、沙紀と同じくらいの年の女の子が、父親と2人だけでここに暮らしていた。沙紀の物語で、沙紀が誠に打ち明ける思い出の中に出てくる。

詳細
沙紀はこの女の子と仲良くなり、母からもらった鈴をあげた。母はひどく怒り、父には「ママの言うこと聞けないなら、うちの子じゃない。炭焼き小屋の子供になればいい」と言われ、沙紀は母と一緒に鈴を取り返しに行く。抵抗する子から鈴を奪い、追いかけてくるその子に、母に言われて何度も石を投げ、額の左側にけがをさせた。母は「クローンなんかと絶対仲良くなっちゃいけません」と言った。その子は、まだクローンが法律で認められていなかった頃のクローンで、隠れるように住んでいたのだという。沙紀は、額の左側に傷があり、同じような鈴を持つ遙をその子だと思い込み、遙にきつく当たっていた。一方、遙の記憶では、鈴を取り上げて突き飛ばしたのは見知らぬ女の子で、傷は机かイスの角にぶつけたものだった。沙紀の物語で、誠は2人の記憶の時期も傷の原因も食い違うことを示し、互いに相手を取り違えていたのだと誤解を解く(→クローン)。
人と組織
川島班 かわしまはん 人と組織

誠が配属された、文学部心理学科のゼミの第5班。正確には、来年から始まる本格的なゼミの準備段階にあたる「プレゼミ」の班。班長は川島優夏で、誠・飯田億彦・樋口遙が班員。誠は大学の掲示板の名簿を見て、自分がこの班に入ったことを初めて知った。

詳細
ゼミの担当教授は守野いづみ。優夏・遙、それにくるみは、いづみが教授だということだけは知っていたが、誠には言わないよう口止めされていた。優夏は合宿の主旨について、教授じきじきのお達しで「合宿最終日まで、その主旨は教えてはならない」と言われていると誠に話していた(→ゼミ合宿)。大学の教室の後日談では、いづみが教壇から「始めるわよ♪」と呼びかける(→教室の後日談)。
飯田財閥 いいだざいばつ 人と組織

億彦の実家。誠の大学の学生なら誰でも一度は名前を聞いたことがあり、学外の人間でも「飯田財閥の御曹司」と聞けばピンと来るほどの、国家級の資産家一族。億彦は、本人いわく「そういう言い方は、あまり好きじゃない」。

詳細
いづみの物語では、誠をだます役を引き受けたのが億彦だったと明かされる。億彦は「敵をあざむくにはまず味方から」と、ほかの班員にも黙っていた(→キュレイシンドロームの実験)。いづみの物語のもう一つの道筋では、気を失った誠の腕時計の日付を戻してだまそうとし、逆にだまし返される(→逆の逆のそのまた逆ドッキリ)。
K大 人と組織

沙紀が通う大学。沙紀は高等部からK大に進み、島で再会した優夏とは、沙紀が高等部に入って以来5年ぶりになる。優夏は「やっぱりK大行ってるんでしょ?」と尋ね、沙紀は「もちろんよ」と答える。

詳細
船の後日談で、沙紀は「来年の春、K大からウチの大学に移るつもり」と言い、くるみに「お兄ちゃんが、いるからだよね?」と冷やかされる。教室の後日談では、沙紀はすでにK大から誠たちの大学へ編入している(→船の後日談、教室の後日談)。
マイケル・キャビン 人と組織

いづみの話の中に出てくる、アメリカの精神科医。今から5年くらい前、勤めていた病院で少年トム・フェイブリンのカウンセリングにたずさわり、その症例から「キュレイシンドローム」という名前をつけた。作中に姿は見せない。

詳細
博士は、トム少年が幼なじみの少女ジュリアの額に触れたあと、全身に転移していた彼女のガンが消え、病院中の患者の病気が次々に治っていった出来事に立ち会う。医師仲間に相手にされず、一人で原因を調べ、「強固な思念(妄想)は、新たな現実を創造することができるのかもしれない」という仮説にたどりついた。古今東西の宗教的な奇跡も同じ現象かもしれないと考えたことから、名前の「キュレイ」には、フランス語の「聖職者」「司祭」の意味が込められているという(→第3の特徴)。いづみは、観察者の願望が過去の事実を変えてしまう現象を論文として発表した人物としても、博士の名を挙げる。
トム・フェイブリン 人と組織

キャビン博士が勤めていた病院に入院していた少年。成績優秀で性格も良く、みんなに慕われる子供だったが、10歳の夏から「ボクのなかに『死』は無い」「不死は伝染し、やがて世界から死は消える」といったことを口にし始め、12歳でパラノイア(妄想症)と診断された。

詳細
きっかけは10歳の夏、キャンプ先の湖で3つ下の妹が溺れたこと。息も脈もない妹に、トムはテレビで見た人工呼吸と心臓マッサージを見よう見まねで繰り返し、妹は一命を取りとめた。両親と妹はそれを奇跡と信じ込み、「トムは死んだ人間を生き返らせることができるんだ」と言い続けた。トム自身はこの「不死を伝染させる行為」を「キュア」と呼んだ(→キュア)。のちに入院中、トムは幼なじみの少女ジュリア(12歳になったばかりの末期ガン患者)の病室を何度も訪ね、ある日その額にそっと手を触れる。その後、彼女の体中の悪性腫瘍は跡形もなく消え、病院中の患者の病気が次々に治っていった(→第3の特徴)。
概念・現象
キュレイシンドローム 概念・現象

誠がファイルの1ページ目に見つける、レポートの題名「キュレイシンドロームの考察」の中の言葉。心理学科の学生のくせに誠には意味がわからず、記憶錯誤や空想虚言といった言葉と並んで「未知の言葉」として頭に残る。

詳細
いづみが書いて億彦に渡したレポートだった。アメリカの精神科医マイケル・キャビンが、少年トム・フェイブリンの症例から名づけた、パラノイア(妄想症)の特殊な類型。名前は、少年が自分の行為を呼んだ「キュア」のフランス語読みから来ている(→キュア)。いづみの説明では、主な特徴は「まわりの人がついた嘘を、本人が疑いもなく信じ込んでしまうこと」と「最初に嘘をついた人も、それを嘘だとは思っていない」ことの2つ(→第1・第2の特徴)。ただしそれだけなら、すでに知られた「感応精神病」と変わらない。新しい名前が要ったのは、もう一つの特徴が見つかったからだった(→第3の特徴)。いづみと億彦は、ゼミ合宿で誠にこの症状を起こさせる実験を計画していた(→キュレイシンドロームの実験)。この言葉が詳しく語られるのは、いづみの物語の2周目である。
第1・第2の特徴 概念・現象

いづみがキュレイシンドロームの「主な特徴」として挙げる2つの性質。第1は、まわりの人がついた嘘を、本人が疑いもなく信じ込んでしまうこと。第2は、最初に嘘をついた人も、それを嘘だとは思っていないこと。いづみは2つをまとめて「妄想が伝播する」と呼ぶ。

詳細
トム少年の場合、家族は少年の力を心から信じて「お兄ちゃんには奇跡を起こす不思議な力があるのよ」と言い続け、少年もそれを信じ込んだ。いづみは、嘘をついた本人がその嘘を本当の出来事だと思い込んでしまう「空想虚言」(ファンタスティック・シュードロジー)にも触れる。さらに、誰かの抱いた妄想が別の人へうつっていく病気はすでに「感応精神病」と呼ばれていて、とりたてて珍しくないと付け加え、キャビン博士が新しい名前で定義しなければならなかったのは、感応精神病にはない「第3の特徴」を見つけたからだと説明する(→第3の特徴)。
第3の特徴 だいさんのとくちょう 概念・現象

キュレイシンドロームの3つ目の特徴。いづみは「たぶん、信じてもらえないと思うけど」「この世界の在り方が、根底からくつがえされることになるかもしれない」と前置きし、なかなか明かさない。前にくるみが言っていた「シュレディンガーの猫」と関係があるのだという。

詳細
いづみの言葉で「妄想が、真実になること」「強固な思念が、新たな現実を生み出すこと」。根拠になったのは、トム少年がジュリアの額に触れたあと彼女のガンが消え、病院中の病気が治っていった出来事だった(→トム・フェイブリン)。
物語による違い
いづみの物語では、いづみがこの特徴で6日間の繰り返しを説明する。4月6日、いづみが死ぬ光景を見た誠の「過去に戻りたい。過去に戻って歴史を変えてしまいたい」という強い思念が、誠の中の現実を歪めた。ただし体ごと過去に戻ったのではなく、「私達の脳は、4月6日のあの時間に、とどまったまま」で、そうはならない別の可能性を妄想しているのだという。予知も、誠がカードの数字を「創」っていたのだと説明される(→予知)。その後、鈴やトランプが消え、神社まで消えたように見えると、誠は自分が強くそう想ったからだと考える。しかし4月7日になると、それらは一つずつ現実的に説明されていく(→トランプ)。これはいづみの物語の中での推論で、優夏の物語では2人は別の言葉で事態を説明する(→タイムスリップ)。
キュア 概念・現象

トム・フェイブリン少年が、自分の「不死を伝染させる行為」を呼んだ言葉。いづみの説明では「『いやし』とか『救済』とか、そういう意味」。作中では「CURE」とも書かれる。

詳細
キャビン博士がつけた「キュレイシンドローム」の「キュレイ」は、このキュアのフランス語読み。いづみはのちに、キュレイにはフランス語の「聖職者」「司祭」の意味も込められていたと明かす。博士が、少年の起こした奇跡を古今東西の宗教的な奇跡と同じ現象かもしれないと考えたためである(→マイケル・キャビン)。Windows版に収録された優夏の追加シナリオの題名「優夏キュア」にも、この語が使われている(→優夏キュア)。
予知 よち 概念・現象

誠が、これから起こることを次々と言い当ててしまう現象。合宿初日、月浜で遙が転ぶこと、ルナビーチの米が切れていること、月屋ホテルのプールで地震が来ることを、誠はなぜか知っていた。「ひと言で言うと……『予知』なんだ」と打ち明けるが、話はあっさり流されてしまう。

詳細
2日にはいづみの車のエンジンがかからないこと、3日には夕飯のメニューも言い当てる。いづみの物語の1周目には、ルナビーチで神経衰弱をして、52枚のカードを一枚も外さずにめくってしまう(→トランプ)。1周目の4月6日の朝、億彦は、米・バッテリー・夕飯の件は誠に予知能力があると信じ込ませるための仕掛けだったと暴露する。しかし2周目にいづみは「実験は……実際には1度も……やっていないの」と言い、誠の予知は「現実に、全部、当たってたの!」と、エンジンキーで示してみせる(→エンジンキー)。
物語による違い
いづみの物語では、誠は記憶していたのではなく現実を創っていたのだと説明される。「誠くんが『お米が無い』と言ったから、お米はなくなった」「『地震が来る』と言ったから、地震が来た」。夕飯のメニューも、誠が別の料理を口にしていればそれが現実になっていたのかもしれない、という(→第3の特徴)。優夏の物語では、優夏も前の6日間をあいまいに覚えていて、何かが起こる直前に「予知まがいのこと」を体験していたと語る。
無限ループ 概念・現象

予知が当たる理由を考えるうちに、誠がたどり着く考え。自分は4月1日から始まる6日間を、何度も何度も繰り返しているのではないか。作中では「無限ループ」という言葉で呼ばれる。

詳細
1周目の4月6日にヒロインが命を落とすと、誠は再び4月1日の朝を迎える(→4月6日、1周目と2周目)。ループを経た誠は日数を数え続け、「この島に来て今日で11日目」「約『2週間』ぶりに、島を出る」と口にする。
物語による違い
ループの正体は、ヒロインの物語によって説明が違う。いづみの物語では、いづみが、無限ループは誠が自分は妄想しているという事実を隠すために創った「架空の物語」だと言う。「『妄想などでは決してなかった』と、自分自身に信じ込ませる為にね」。誠が「私が死なない」という歴史を創り上げた瞬間に、無限ループは現実の出来事として成立するのだという(→第3の特徴)。優夏の物語では、2人は「4月6日土曜日に、あの神社でタイムスリップした」と考え、誠が鈴を踏み潰した瞬間を、地の文は「無限ループの鎖は、今この瞬間、引き千切られた」と書く(→護符の歌)。いづみの物語のもう一つの道筋では、ループはそもそも起きていなかった(→逆の逆のそのまた逆ドッキリ)。
タイムスリップ 概念・現象

誠が、自分の身に起きていることを説明しようとして考える言葉。前に一度経験した6日間を、もう一度生きているのではないか。優夏の物語では、優夏が神社の護符に書かれた和歌を、タイムスリップするという意味だと読み解く。

物語による違い
いづみの物語では、いづみが「タイムスリップなんか、していなかったの!」と言い、2人の脳は4月6日にとどまったまま、意識が理想の過去を思い描いているのだと説明する(→第3の特徴)。そのいづみは、くるみの「空白の3年間」について誠が立てた、くるみは神社の倒壊の直後に体ごと3年後の未来へタイムスリップした、という推理に対し、自分たちの経験は「意識だけが過去へとさかのぼる」現象なのに、くるみは肉体とともに、しかも未来へ時間を飛び越えたことになると言って、説明しきれないと返す(→空白の3年間)。くるみの物語では、くるみがこの推理を信じるかどうかが結末を分ける(→くるみ17号)。優夏の物語では、誠と優夏は「4月6日土曜日に、あの神社でタイムスリップした」「あの6日の神社に意識がとどまったまま」と考え、護符の歌をその手がかりにする(→護符の歌)。
シュレディンガーの猫 概念・現象

物理学の思考実験の名前。いづみの物語の1周目、神経衰弱の一件のあとで、くるみが「『シュレディンガーの猫』の話と、おんなじことなんだよぉ!」と言い出す。くるみも『カンタンアイランド』というマンガで読んだだけで、詳しくは知らない。

詳細
2周目、優夏が「シュレディンガー地方特産の猫のこと!」とふざけたあとで、この思考実験を解説する。箱のフタを開けるまで、外から見ているだけの観察者には猫の生死が決まっていない。誠はそれを、フタを開けたことで観察者が「過去を決めた」ことになる、と受け取る。いづみはこれを受けて「観察者の意思は、過去の事実を決めるのよ」と言い、キュレイシンドロームの第3の特徴と結びつける。神経衰弱でカードがすべてそろったのも、カードをめくった瞬間に、共存した可能性の中から誠が自らの意思で1つを選び出していたからだ、と説明する(→第3の特徴、トランプ)。
クローン 概念・現象

人の細胞をもとに人工的に生み出された人。作中の世界では9年前からクローン受精が法律で認められ、億彦によれば今や小学生1000人中1人や2人の割合だという。かつては罪に問われ、クローン自体も迫害を受けていた。合宿3日目、沙紀が遙に「クローンに用はないわ……!」と言い放ち、一同が凍りつく。

詳細
いづみによれば、法律が変わったきっかけは、クローン取締法があった頃、事故で死んだ息子のクローンを作った科学者の裁判だった。いったんは無期懲役が決まったが、クローンの少年の「パパは何も悪いことなんかしてない。僕はパパに感謝してる。だって、僕の命はパパが与えてくれたものだから……」という証言が報道されて世論がひっくり返り、法律が改正された。
遙とくるみ
遙は守野くるみのクローンである。くるみが誘拐されて見つからなかったあいだに、遺伝子工学の世界的権威である父・守野茂蔵が、その喪失感から体細胞核移植でくるみのクローンを作り、19年前の2月15日に生まれた。その後くるみが見つかると、クローンへの迫害があった時代だったため、その子は茂蔵の助手の青年夫婦の養子に出された。額の傷は、幼いいづみが「本当の妹じゃない」と、追いかけてきた新しい妹を突き飛ばしたときのもの。遙は自分がクローンだと知っている。遙の物語では、くるみと同じB型の血が遙の命をつなぐ(→4月6日)。沙紀が遙をクローンと決めつけたのは、子供の頃の別の出来事の思い違いだった(→炭焼き小屋)。
言葉・言い伝え
護符の歌 ごふのうた 言葉・言い伝え

司紀の杜神社の中、小さな社の軒に下がった鈴の裏に貼られた、ボロボロの和紙の護符に、古めかしい草書体で書かれていた和歌。1周目の4月4日の夜、くるみを探して神社に入った誠と優夏がこれを目にし、優夏がふと「ときは……とかれん……」とつぶやく。

作中の言葉
「はるさめや みさきのはてに なりひびく すずとともにや ときはとかれん」
詳細
優夏の物語で、優夏はこの「ときはとかれん」を、「時」の流れから「解き」放たれて別の時間へ飛ばされる、つまりタイムスリップするという意味だと読み解く。2周目、優夏は歌の意味に気づいたのは前の5日の夜だったと打ち明ける。外がどしゃ降りになった1周目のその夜、優夏はポケットの冷たい鈴を確かめながら「岬の果て」、つまり神社の裏へ向かった。「あのときに……戻りたかったから……」。初恋の男の子に好きだと言えなかった過去をやり直したかったのである(→修学旅行のホテル火災)。2周目の4月6日、誠と優夏は神社の裏から抱き合ったまま海へ落ち、4月7日の朝を迎える。誠はそこで、「ときはとかれん」を無限ループの時の流れから解き放たれること、「みさきのはて」を「本当の岬の果て……つまり海の中」のことだったと読み直す。
死鬼の神 しきのかみ 言葉・言い伝え

司紀の杜神社にまつわる言い伝えの神。合宿2日目の夜、月浜でいづみが語る。文字どおり「死をつかさどる鬼神」で、人々を呪い殺したり祟ったりする凶暴な邪神。昔の人は奇病や天災をこの神の怒りと信じ、生けにえまで捧げたという昔話も残っている。

詳細
いづみが誠にだけ打ち明けるところでは、この話はいづみの作り話だった。ただし、あの神社で大勢の人が行方不明になっていることだけは事実だという。それだけでは不十分だと思ったいづみは、一行を神社に近寄らせないために、怖い話をこしらえた。一行さえ近寄らなければ、くるみがそこへ行くこともないだろう、と考えたのである(→空白の3年間)。
恋の岬 こいのみさき 言葉・言い伝え

いづみが「この辺の、古い言い伝えみたいなもの」として教える文句。「恋の岬で想いを告げて、愛の入り江で想いを遂げる」。灯台の下で好きな異性に告白すると恋が実り、そこで結ばれた2人は近くの入り江、つまり姫ヶ浜へ行って、今度は愛を実らせるのだという。

詳細
億彦は地図を見て、恋の岬とはむしろ鳥居の印がある西の岬、つまり神社のほうではないかと言い出すが、いづみは「そんなことは絶対にあり得ないのよ」と否定し、神社の言い伝えを語り始める(→死鬼の神)。いづみの物語のうち、ループではなかったと明かされる道筋では、雨の中で誠が「星空の下で言ってくれた言葉の返事」として「好きだよ」と告げ、この文句を口にする。いづみは傘を投げ出して口づけする。
月とくらげの話 つきとくらげのはなし 言葉・言い伝え

海の水がしょっぱいわけを語る、短いおとぎ話。くるみが夜の海を見ながら誠に聞かせる。「海の水は、お月様の涙なの。だから、しょっぱいんだよ……」「まんまるお月様は、それでもまだ淋しくて、涙の中に子供を生みました」「海の月と書いて、くらげ……」。

詳細
くるみは「くらげみたいに、なりたいなぁ……」とつぶやく。いづみの物語では、夜の月屋ホテルのプールに浮かびながら、いづみも同じ話を語り、小さい頃、一緒にお風呂に入ると父が決まって聞かせてくれた話だと明かす。父といづみ・くるみ・遙の4人で入ったときのことも覚えているという。水の上に浮かぶのが好きなくるみ、雨が好きないづみ、プールで水しぶきを上げる遙と、3人の姉妹は水の感触を原風景として共有している。くるみの物語では、神社で夜明けまでくるみを待った誠が、1周目にくるみから聞いたこの話をなぞって、くるみに語りかける(→くるみ17号)。
リラの花咲く頃 言葉・言い伝え

優夏キュアの最後の日、沙紀が優夏に「『リラの花咲く頃』って歌、知らない?」と尋ねる歌の題名。いづみによれば、フランスで生まれた有名なシャンソンで、リラはライラックのフランス名。

詳細
いづみは「『リラの花咲く頃』とは……1年で最高の季節を指す言葉」と説明する。優夏は、沙紀から譲られた紫のライラックの香水を、花言葉の「愛の芽生え」と結びつけて、沙紀も誠を好きだったのだと考えていた。しかし沙紀の真意は「優夏にとって、最高の時間は終わったんじゃなくて……これからなんだから!」だった(→ライラックの香水)。
眠り姫 言葉・言い伝え

遙の物語で繰り返される童話の題名。ある朝、なかなか起きない誠の顔をのぞき込んでいた遙が「『眠り姫』……読んだことある?」と尋ね、グリムでは「いばら姫」、ペローでは「眠り姫」と呼ばれる同じ話だと教える。誠は「『眠り姫』では、お姫様の方から王子様にキスしちゃダメなんだ」と返す。

詳細
4月6日の未明、遙は誠を突き飛ばして身代わりに車にはねられる。くるみの血の輸血で一命を取りとめた遙は、目を覚ますと「眠り姫は……キスで目覚めたんだよね?」と言う。くるみを見つけられなかった場合、遙は病室で息を引き取る(→4月6日)。
猫と桜 言葉・言い伝え

沙紀が中学の頃を振り返って口にする言葉。「学校に居着いてた野良猫と、校庭の桜の木しか、私の言うこと、まともに聞いてくれなかったのよ……」。沙紀の物語で、それを聞いた誠は「オレが猫と桜になってやる」と応える。

詳細
沙紀の物語の4月6日、売上金の盗みを疑われ、展望公園へ続く岬の突端でフェンスを越えた沙紀に、誠は「オレが沙紀のことを信じてるから……だからここに来たんだよ!!」「これからはオレが……オレがお前の猫と桜になってやるって……」と叫び、フェンス越しに抱きしめて引き戻す。ここで「オレを信じてくれ」と求めると、沙紀は「私は人なんか信じない」と言って手を離し、崖下へ落ちる。誠もそのあとを追う(→売上金と窃盗団)。
品物・モチーフ
鈴 すず 品物・モチーフ

なめらかに磨かれた金属製の小さな鈴。底に細長い音孔が刻まれ、頂きには色あせた紅色のひもが結ばれている。物語の冒頭、動かなくなった「彼女」の手からこぼれ落ちる鈴として描かれ、合宿のあいだも浜で拾われたり、人の手から人の手へ渡ったりして何度も姿を見せる。

詳細
1周目の4月6日、どのヒロインが命を落とす場合も、その手から鈴がこぼれ落ちる(→4月6日)。持ち主の筋道はいくつもある。前の6日間では、くるみが4日に姫ヶ浜で鈴を拾っていづみに渡していた。沙紀の物語では、遙が浜で拾った鈴を「何だか懐かしかった」と言い、それを見た沙紀が取り乱す(→炭焼き小屋)。優夏の物語では、展望公園で女の子に持っていかれた鈴を、優夏が自分のキーホルダーと交換して手に入れていた(→猫のキーホルダー)。誠は「あの鈴さえ無ければ」同じ出来事は繰り返さないと考える。いづみの物語では、2周目の1日の夜に月浜で拾った鈴をコンクリートのカケラで潰そうとするが、鈴は消えてしまう。4月7日、鈴はペチャンコに潰れて草むらに落ちていたとわかり、誠は「ガラクタ」と言って海へ投げる。優夏の物語では、誠が鈴を踏み潰し、優夏も自分の鈴を海に放つ。
関連
いづみの物語の4月7日に見つかるチラシによれば、島の二つの神社には、それぞれ御神体として銀色の鈴が1つずつ納められ、その鈴に触れた者には不思議な力が宿るという(→トキツカサ神社)。合宿のあいだに現れる鈴がそれと同じものかどうかは、作中では語られない。
星の砂 ほしのすな 品物・モチーフ

星の形をした小さな白い砂粒。いづみの物語に出てきて、くるみは姫ヶ浜の岩場で、遙は港の防波堤で、それぞれ1粒ずつ拾う。手のひらにたまったしずくの中で、星はまばゆく輝く。

詳細
いづみの物語の2周目、4月4日にくるみが姫ヶ浜で拾ったのは、前の6日間とは違って鈴ではなくこの星の砂だった。誠はそれを、変わりゆく現実の一つとして受け止める。くるみは小ビンに入れた1粒をいづみに渡し、5日の午後には遙も、防波堤に打ち上げられていた1粒をいづみにくれる。4月6日へと日付が変わる夜、姫ヶ浜の波打ち際でいづみ自身も1粒を見つけ、くるみ・遙・いづみが拾った3つの星が、水の入った小ビンの中で寄り添うように輝く。いづみはそれを「私の大切な……想い出……」と言って誠に渡す(→姫ヶ浜)。
結末で
4月7日、いづみが「星は永遠に、輝き続けるの……」「水の中で……いつまでも……いつまでも……」と言うと、誠はポケットから3つの星の入った小ビンを取り出す。誠が雨の崖の下で目を覚ます別の結末では、そばで泣いているいづみは「星の砂って……なに?」と星の砂を知らない。それでも誠のポケットからは、3つの星の入った小ビンが出てくる。
レグルス 品物・モチーフ

しし座の1等星。いづみの物語で、夜空を見上げたいづみが「あのこいぬ座のプロキオンは、今から11年前の光」「しし座のレグルスは、今から84年も前の光……」と語る。いま見えている光は、その瞬間に星が輝いている証拠にはならない。

詳細
いづみは、星はもう消えているかもしれない、目に見えるもののすべてが真実だとは誰にも言い切れない、人の心も同じだ、と話し、「レグルスは、今も変わらず輝き続けてるんだって……そう信じてたほうが幸せなんだって……思ったの」「本当は、真実かどうかよりも、信じられるかどうかのほうが、大切なことなんじゃないかって……」と続ける。2周目にもいづみはこの言葉を繰り返す。4月6日へと日付が変わる夜、いづみが姫ヶ浜で見つけた星の砂は「まるで獅子座の星のように」またたいている(→星の砂)。
くるみ17号 品物・モチーフ

くるみが折る真っ白な紙飛行機。日夜研究を重ねて編み出した、いちばん遠くまで飛ぶ折り方で、いわばバージョン17。くるみは「この折り方、企業秘密だから。絶対誰にも教えちゃダメだよ?」「くるみも、まだ誰にも教えてないんだから……」と念を押す。

詳細
くるみの物語の1周目、誠と1時間以上も折り紙を折ったあと、くるみが最後に残った白い紙で折り、空へ放つ。2周目、姉と誠の話を立ち聞きして自分が本当の妹なのか疑ったくるみは、誠のタイムスリップの話を「どうしてそんな……嘘つくの……?」と信じない。誠は神社で夜明けまでくるみを待ち、現れたくるみの前で「ほら……くるみ17号だ」と同じ紙飛行機を折ってみせる。「くるみしか……知らないのに……」。くるみは「タイムスリップ……ほんとなの……?」と誠の話を信じ、2人は想いを告げ合う。待てなかった場合、くるみは神社に駆け込み、倒壊の下敷きになる(→4月6日)。
魔法使いの絵 品物・モチーフ

優夏と沙紀が中学の文化祭で、クラスみんなで描いた教室の壁一面ほどもある大きな絵。色付けの前の下絵を優夏が描くか沙紀が描くかでもめ、クラスの選挙で優夏に決まった。島で再会した優夏は「一緒に魔法使いの絵、描いたじゃない?」と沙紀に声をかける。

詳細
優夏によれば、できあがった絵は夜中にメチャクチャに壊され、見回りに来た用務員が逃げていく姿を見たことから沙紀が疑われた。沙紀は否定し続け、先生に注意されても謝らず、優夏に「そんなに好きならずっと描いてればいいのよ」と言い放った。沙紀の物語で誠は、沙紀は悔しくて一人で絵を見に深夜の教室へ忍び込み、泣いているところを見られたくなくて逃げたのではないかと言い、沙紀はうなずく(→猫と桜)。4月7日、優夏は「本当は、あの用務員さんが、自分で壊したのを沙紀のせいしちゃったんでしょ?」と言って沙紀と互いに謝り合うが、これは優夏の推測で、誰が壊したのかは確かめられない。
鳩時計の絵 品物・モチーフ

中学3年の優夏が美術室で描いていたイラスト。黒板の上の鳩時計には2羽の鳩がいて、1時間ごとに交互に出て時を告げ、12時にだけ一緒に鳴く。1日に2回、合わせて24秒しか会えないツガイを不憫に思った優夏は、右の鳩が翼で針を12時に止め、左の鳩が寄り添う絵を描いていた。

詳細
そこへ、その日のクラス替えで隣の席になった男の子が入って来て、「ダメだな」「そんなんじゃ窮屈だろ?」「鳥は、空を飛ぶから鳥なんだ」と言い、優夏の鉛筆と消しゴムで時計を壊し、窓の外へ飛び立つ2羽の鳩を描き直した。
作中の言葉
「時を止めたいなら、時間を壊せばいい」「時から逃れたいなら、羽ばたけばいい」「縛られたままじゃ、自由にはなれない」「自由になりたいなら怖れてはいけない」。彼はその絵を丸めてゴミ箱に放り、何も言わずに出て行った。この男の子が優夏の初恋の相手で、のちに修学旅行のホテル火災で命を落とす(→修学旅行のホテル火災)。優夏の物語の4月6日、神社が崩れる刹那に誠が優夏に飛びつき、2人で崖から海へ落ちる場面に、この言葉が重なる。
猫のキーホルダー 品物・モチーフ

優夏が島の土産物屋で自分のために買った、太った猫のマスコットのついたキーホルダー。優夏は「ニンニンネコピョンって言うんだよ?」と、勝手につけた名前を誠に教える。

詳細
優夏の物語では、優夏は展望公園で見知らぬ女の子に鈴を持っていかれ、不安になってその子を探し、このキーホルダーと鈴を交換してもらっていた。誠はキーホルダーを手にしたその女の子に出会い、猫の名前を教えてやる。
優夏キュアで
優夏は小さい頃、額に手裏剣のような傷のある、ちっとも可愛くない小さな猫のキーホルダーを「ある人」からもらい、ランドセルにつけて大事にしていたが、小学1年生くらいの頃、迷子になった日になくしてしまった。土産物屋の太った猫は、姿は違っても似ていると思えたのだという。鈴と引き換えに手放したキーホルダーを買い戻そうと店に行くと、すでに売れていた。優夏の思い出の中で、最初のキーホルダーをくれたのが初恋の男の子だったとわかる(「今度プレゼントする時は、なくさないように、もうちょっと大っきなやつにするよ」)。4月7日の朝、月浜で誠は「一昨日の仲直りも兼ねての……プレゼント、だ」と、先に買っておいたそのキーホルダーを優夏に贈る(→優夏キュア)。
ライラックの香水 品物・モチーフ

沙紀が使っている香水。優夏キュアに出てきて、いづみに「沙紀ちゃんの使ってる香水って、もしかしてライラック?」と聞かれた沙紀は「ライラックとフルーツのブレンド」だと答える。沙紀は紫のライラックがとても好きだという。

詳細
沙紀は優夏に、ライラックの花言葉は「青春の喜び」「若き日の思い出」だと教え、誠への想いは初恋の男の子を重ねていただけの思い出に過ぎなかったと言う。その夜、遙が「もう必要ないから」という沙紀の言葉とともに、紫のビンの香水を優夏に届ける。遙によれば、沙紀の言った花言葉は白いライラックのもので、紫は「初恋」、それと「愛の芽生え」。優夏は、沙紀も誠のことが好きだったのだと考える。4月7日、沙紀は「リラの花咲く頃」という言葉で、香水を譲った本当の意味を明かす(→リラの花咲く頃)。
エンジンキー 品物・モチーフ

いづみの車のエンジンキー。合宿2日目、誠は車のバッテリーが上がっていてエンジンがかからないことを言い当て、実際にエンジンはかからない。予知の一つとして数えられる出来事である。

詳細
1周目の4月6日の朝、億彦は、いづみがわざとエンジンがかかる前にキーをOFFに戻していたのだと暴露する。しかし2周目、いづみは車の中で誠の手首をつかみ、その手をエンジンキーに触れさせて「エンジン……かけてみて?」と言う。何度ひねってもエンジンはかからない。午前中に試したときは何の異常もなかったという。いづみは、4月2日のときも本当にエンジンはかからなかった、店の米も本当に足りなかった、3日の夕飯も本当にそのメニューにするつもりで材料を買っていた、と明かし、実験は一度も行われていなかったことを示す。億彦は、予知が当たるたびにいづみが演技をしているのだと勘違いしていた(→キュレイシンドロームの実験)。
トランプ 品物・モチーフ

ルナビーチにあったトランプ。いづみの物語の1周目、誠はいづみ・くるみとトランプをすることになる。いづみが、よく切ったカードを神経衰弱をするときのようにテーブルの上にでたらめに広げ、誠は「っていうかそれ『神経衰弱』だろっ!!」とつっこむ。

詳細
誠がでたらめにめくると、カードは次々と同じ数字の組になり、52枚すべてが表を向く。いづみは、自分とくるみが最初にめくったカードを除いても残りは46枚、その位置を誠が知るはずはなく、偶然では絶対にあり得ないと言う。2周目、いづみはこれを「誠くんは、そこにあるカードの数字を『覚』えてたんじゃない」「そこにあるカードの数字を『創』っていただけなのよ」と説明する(→第3の特徴)。誠が「トランプなんか、絶対にやりたくない」と強く想ったあと、店のトランプは見当たらなくなり、誠はそれも自分の想いのせいだと考える。
結末で
4月7日、くるみが「犯人はぁ、優夏さんだったの!」とトランプを持ってくる。4日の夕方、バーベキューの前に借りたまま返していなかったのだった。しかしその日、ルナビーチで誠がいづみに口づけしたとき、テーブルから床に散らばったトランプには「なにも……描かれてはいなかった」。
腕時計 品物・モチーフ

誠のデジタルの腕時計で、日付も表示される。合宿初日の朝、二日酔いのような体を起こした誠は、まず左手を持ち上げて腕時計の文字盤を見る。同じ6日間を過ごすなかで、今日が何日なのかを誠が確かめる手がかりになる。

詳細
2周目の始まり、誠は腕時計の日付を見て4月1日に戻っていることを知る。いづみの物語では、誠は最初、億彦が日付まで変えて自分をだまそうとしていると疑う。いづみの物語のもう一つの道筋では、それが実際に起きていた。崖の下で気を失った誠をロッジに運んだあと、億彦が誠の腕時計の日付を1日に戻し、全員で4月1日のふりをして誠をだまそうとしていたのである(→逆の逆のそのまた逆ドッキリ)。遙の物語の1周目は、病室で遙が息を引き取ったあと、ふいに鳴り出した腕時計のアラームとともに、誠の目の前が白く染まって終わる。優夏の物語の結末では、目覚めた誠と優夏が肩を寄せ合って文字盤を見つめ、日付が「1」ではなく「7」になっていることを確かめる。
子犬 品物・モチーフ

沙紀が、合宿の一行が島に来る前からずっと面倒を見ている野良の子犬。4月4日のバーベキューで沙紀が牛肉のパックを持ち出していたのも、この子犬に食べさせてやりたかっただけだと、誠は知っている。

詳細
遙の物語では、4月6日の未明、沙紀のもとへ駆けていく子犬に車が迫る。1周目は遙が子犬を助けようとして車にはねられ、2周目は誠が先に子犬を抱き上げたところで、遙が誠を背後から突き飛ばして身代わりになる(→4月6日)。沙紀の物語では、沙紀が5日の夜に懐に抱えて走り去ったのは盗んだ金ではなく、林道で衰弱していたこの子犬で、沙紀はタクシーで診療所へ運んでいた。4月7日、誠が子犬を自分のアパートで引き取ると言うと、沙紀は「それじゃもう1人引き取ってもらおうかなぁ……」、誠は「じゃあ、1人と1匹だな?」。優夏の物語では、6日にくるみがいなくなったのは子犬を探しに出ていただけだったとわかる。船の後日談でも、沙紀の足元には子犬がじゃれついている。
腎臓人間オックマン 品物・モチーフ

億彦が寝言で演じるヒーロー。「いつも爽やか好青年、粋でいなせで涙にゃもろい」「地球の平和を守る為、神が送った正義の戦士」で、相棒はレイディジェニー。テーマソングは「1万の~2乗でぇ~♪ オックマン~なのさ~♪」(1万の2乗は1億)。

詳細
いづみの物語の2周目、たまたま寝言を聞いてしまった誠は「底知れぬ恐怖」を感じて逃げ出す。船の後日談でも、億彦は「腎臓戦隊に入る決心は、もうついたかな?」「君も、極楽宴遊園地で、僕と握手!」と言い出す(→船の後日談)。物語の筋には関わらない。
出来事・事件
ゼミ合宿 ぜみがっしゅく 出来事・事件

文学部心理学科のゼミの各班が、班員の親睦会を兼ねて行う合宿。掲示板の張り紙には「即刻除名処分」という厳しい文言まであり、誠は強制的に島へ連れて来られた。川島班の日程は7泊8日で、誠は「たかがそれだけの為に?」「7泊8日は長すぎる」とぼやく。

詳細
優夏は、合宿の本当の主旨は教授じきじきのお達しで、最終日まで教えられないと言う。のちにいづみが明かすところでは、表向きの口実は「班員の親睦を深めること」と「出席率の悪い誠くんの、素行調査」で、本当の目的はいづみと億彦によるキュレイシンドロームの実験だった(→キュレイシンドロームの実験)。日程は、3月31日の夜に島へ着き、4月1日の朝から、4月7日の午後に島を去るまで。いづみの計画では、4月7日の午前零時に誠へすべてを打ち明けるはずだった。
キュレイシンドロームの実験 出来事・事件

ゼミ合宿の裏で進められていた計画。1周目の4月6日の朝、ルナビーチで億彦が「そもそもこの合宿の目的は『石原をだます』ことにあったんだからね」と言い出し、誠はいづみの言葉まで嘘だったのかと激しく取り乱す。

詳細
いづみが億彦に頼み、誠の予知が当たっているかのように見せかけて、誠自身に予知能力があると信じ込ませ、その心の変化を観察するはずだった(→第1・第2の特徴)。実験に関わっていたのはいづみと億彦の2人だけで、優夏・遙・くるみは、いづみが教授だということだけは知っていたが実験のことは知らされず、沙紀は完全に想定外だった。億彦は「敵をあざむくにはまず味方から」と、ほかの班員はあとから協力者にする予定だったと言う。2周目、いづみは「実験は……実際には1度も……やっていないの」と打ち明け、エンジンキーで予知が本当に当たっていたことを示す(→エンジンキー)。
いづみの推論
実験の本当の目的は、第3の特徴に別の解釈を見つけること、つまり第3の特徴を否定するための反証実験だった。いづみの推論では、誠が巻き込まれる前の最初の6日間には誠に予知などできず、実験は予定どおり行われた。誠は「自分はタイムスリップしたのでは?」という妄想を抱き、4月7日の午前零時に種明かしをすれば消えるはずだったが、その直前にいづみが死んでしまった、という(→第3の特徴)。1周目の4月6日、億彦の暴露を聞いた誠はいづみを激しくなじり、いづみは雨の中へ飛び出していく(→4月6日)。
空白の3年間 くうはくのさんねんかん 出来事・事件

くるみの過去にまつわる謎。くるみの背中には大きな傷があり、くるみ自身は3歳の頃に階段から落ちてできた傷だと聞かされている。からかわれたことがあり、くるみは人前で背中を見せるのが怖くなっている。

詳細
21年前の7月20日、生後1ヶ月のくるみが何者かに誘拐された。7日後、群発地震で倒壊した司紀杜神社の下敷きから、指名手配中の誘拐犯の遺体が見つかったが、くるみの姿はなかった。倒壊から3年後、再建された神社の中で泣いている赤ん坊が観光客に見つかる。それはくるみで、背中に深い傷があり、おびただしい出血で病院へ運ばれたが、体には成長のあとが見当たらなかった。警察のDNA鑑定で「99.99999%の確率で」くるみと証明されたが、いづみは父が鑑定結果に手を加えた可能性もないとは言い切れないと疑い、くるみが本当の妹なのか確信を持てずにいた。遙の物語では、誘拐はショッピングセンターで乳母車から、と細部が違って語られる。
物語による違い
誠は、くるみは神社の倒壊事故に巻き込まれて背中に傷を負い、その直後に3年後の未来へタイムスリップして、再建された神社の中で見つかったのだと推理する。いづみは説明しきれないと返す(→タイムスリップ)。くるみの物語では、くるみがこの説を信じる(→くるみ17号)。いづみの物語の4月6日の未明、くるみは「だってくるみ……20歳だもん」と言い、4月7日には「くるみが生まれたのは、今から21年前なんだもん」と、5日の午後にいづみから聞いた事実を受け入れている。本人は自分を17歳と言ってきたが、生まれたのは21年前ということになる。
修学旅行のホテル火災 出来事・事件

優夏と沙紀が中学3年の6月に行った修学旅行で起きた火事。宿泊先のホテルの、本館3階の給湯室から火が出た。優夏の物語で沙紀が誠に打ち明ける出来事で、優夏がずっと胸にしまってきた過去でもある。

詳細
沙紀の班は別館に泊まっていて無事だったが、本館4階の真ん中の部屋にいた優夏の班だけが逃げ遅れた。同じ別館に泊まっていた男の子が、頭から水をかぶって燃え盛る炎の中に飛び込み、次々に女の子たちを助け出して、最後に優夏を抱えて玄関から出て来たところで力尽き、息絶えた。最期の言葉は「前からずっと……優夏のことが……」「……好きだったんだ……」。この男の子が優夏の初恋の相手で、優夏は自分の想いを伝えられなかったことを悔い続けていた(→鳩時計の絵)。沙紀は、誠がその男の子に「まるで生き写し」だと言う。優夏は、1周目の雨の夜に鈴を持って岬の果てへ向かったのは「……好きだって、言いたかったの!」と打ち明ける(→護符の歌)。
売上金と窃盗団 出来事・事件

沙紀の物語の4月6日の朝に起きる騒ぎ。いづみの「昨日の売上金が……全部なくなってる!」という声で始まる。ロッジに泊まっていたいづみのハンドバッグから、ルナビーチの前日の売上金が消えていて、億彦たちは沙紀を疑う。

詳細
誠も前の晩、沙紀が何かを懐に抱えて走り去るのを見てしまっていたため、「沙紀じゃない」と言い切れない。沙紀は「誠も同じね……。人なんてみんな同じよ!!」と雨の中へ飛び出し、展望公園へ続く岬の突端でフェンスを越える(→猫と桜)。1周目でも沙紀は同じように疑われ、岬から落ちる。2周目に誠が沙紀を引き戻した場合、4月7日に警察から、観光地を狙って荒らしまわっていた窃盗団が今朝捕まり、ロッジへの侵入も認めたと電話が入る。沙紀が懐に抱えていたのは、衰弱した子犬だった(→子犬)。
地震 出来事・事件

合宿のあいだ、島を何度か揺らす地震。初日の夜、月屋ホテルのプールで誠が「地震が来るんだよ!!」と叫んだ直後に揺れが来て、いづみがプールに落ちる。誠の予知の一つだが、そのとき誠が言ったことを、みんなはまるで気にとめていなかった。

詳細
島では21年前にも群発地震があり、司紀杜神社が倒壊して誘拐犯が下敷きになった(→空白の3年間)。1周目の4月6日にも地震が起き、くるみの物語では神社が崩れてくるみが瓦礫の下敷きになり、優夏の物語では、神社の裏の崖っぷちにいた優夏と誠の上に、傾いた神社の壁と軒が倒れかかる。2周目の同じ日にも地震は起きる。優夏の物語では、神社が崩れ落ちる刹那に誠が優夏に飛びつき、2人は抱き合ったまま崖から海へ落ちる。くるみの物語の4月7日には、2人が前日の地震で潰れた神社の瓦礫に参拝する。トキツカサ神社が潰れたのも、大昔の地震か何かによるとされる(→トキツカサ神社)。
4月6日 出来事・事件

合宿6日目の土曜日。誠が繰り返すことになる6日間の最後の日。雨の降るこの日、ヒロインの身に取り返しのつかない出来事が起こり、物語は、この日をどう越えるかをめぐって進んでいく。

1周目
4月5日から誠がともに過ごしたヒロインが、6日の雨の中で命を落とす。誰が失われるかは決まっていない。いづみは雨の中、森の果ての崖から落ち、遙は沙紀の子犬を助けようとして車にはねられ、診療所で息を引き取る。くるみは地震で倒壊した神社の下敷きになり、沙紀は展望公園へ続く岬の突端でフェンスを越え、誠の手を取らずに落ちる。優夏は神社の裏の崖っぷちで、倒れかかる神社の軒の下敷きになる(誠も一緒に)。どの場合も、ヒロインの手から鈴がこぼれ落ちる(→鈴、冒頭の夢)。
2周目
誠は、それぞれの形で同じ危機に向き合う。遙の物語では、遙と同じB型のくるみを島じゅう探して自転車で診療所へ運び、輸血で遙を救う。沙紀の物語では「オレが沙紀のことを信じてるから」と沙紀を引き戻す(→猫と桜)。くるみの物語ではくるみ17号を折って信じてもらい(→くるみ17号)、優夏の物語では鈴を踏み潰し、優夏と抱き合ったまま海へ落ちる(→護符の歌)。いづみの物語では、雨の道で倒れたいづみを抱えた誠に車が迫る。誠が車の前に立ちはだかり、遙がいづみを抱いて守ると、4月7日の朝を迎える。2人ともはねられる結末や、誠がいづみを抱えて跳び、衝撃を一身に受ける結末もある。どの物語にも、救えなかった場合の結末がある。
4月7日 出来事・事件

合宿の最終日、日曜日。川島班は午後には島を去る予定になっている。1周目の誠はこの日を迎えることができず、2周目に4月7日へたどり着けるかどうかが、それぞれの物語の行き着く先になる。

詳細
ループを抜けることは、初めての4月7日を迎えることでもある。沙紀の物語の地の文は「そして、初めて体験する4月7日……。」と書く。優夏の物語では、「優夏と一緒に4月7日の朝日を見よう」と約束した2人がロッジで目覚め、腕時計の「7」を確かめて、朝日の中で初めて口づけを交わす(「すべてはこれから、始まるんだもん……」)。いづみの物語では、松葉杖をつき、片足と片腕にギプスをはめた誠が4月7日の朝を迎え、前夜の異変が一つずつ現実的に説明されていく(→トランプ)。くるみの物語では、潰れた神社の瓦礫に参拝したくるみが、明日が始業式だと気づき、もうフェリーが無いので「もう1度……タイムスリップするのぉ!」と神社の階段を駆け上がる。遙の物語では、遙は本土の大病院に移され、誠が付き添って約2週間ぶりに島を出る。
逆の逆のそのまた逆ドッキリ 出来事・事件

いづみの物語のもう一つの道筋で、最後に明かされる仕掛けの名前。考えたのはくるみ。名前のとおり、だます側とだまされる側が何度も入れ替わり、最後に誰が誰をだましていたのかが一度にひっくり返る。

詳細
この道筋では、ループは起きていない。1周目の4月6日に崖から落ちたいづみは気を失っていただけで、今日は4月1日ではなく4月7日だと、いづみが誠に明かす。億彦は、崖の下で気を失った誠の腕時計の日付を1日に戻し、全員で4月1日のふりをして誠をだまそうとしていたのである(→腕時計)。いづみは、くるみの秘密をばらすと億彦に脅されていたという。誠といづみは、逆に億彦をだまし返すことにし、日付を偽ったまま合宿を延ばす。ところが最後に、その延長も、くるみが途中で抜けたことも、優夏・遙・沙紀が次々に誠を誘惑してきたことも、すべてくるみの企てた「逆の逆のそのまた逆ドッキリ」だったと明かされる。億彦だけは本当にだまされていた。笑いをこらえるみんなの中で、目に涙を浮かべて笑ういづみの手から、あの鈴がこぼれ落ちる。
結末
この道筋の終わりはいくつかに分かれる。誠が雨の中でいづみに「好きだよ」と告げ、恋の岬の言い伝えをなぞって2人が口づけを交わすもの(→恋の岬)、ドッキリの種明かしで終わるもの、いづみの気持ちに応えられなかった誠が、眠るいづみに「さようなら……」と告げ、一人でフェリーに乗って島を去るものがある。どれにも死は描かれない。
物語の構造
冒頭の夢 物語の構造

物語の最初に置かれた場面。音も色も風もない白濁した世界で、誠は動かなくなった「彼女」の胸に泣きすがり、その手から色あせた紅いひもの鈴がこぼれ落ちる。4月1日の朝、ロッジで目覚めた誠は「嫌な夢を見たもんだ」と思う。

詳細
結びの「オレは彼女を失った。」を含め、この場面は、1周目の4月6日にヒロインが命を落とす場面とほとんど同じ言葉で書かれている。しかし「彼女」が誰かは名指しされず、どのヒロインの場面にも当てはまる(→4月6日)。優夏の物語では、優夏も「誰かが死ぬ夢」を覚えていて、夢の中の手のひらが誠の手だったと打ち明ける。前の4月1日の朝、優夏がまっさきに誠の部屋へ行ったのはそのためだった。
1周目と2周目 物語の構造

この作品は、4月1日から6日までを描く1周目と、4月1日の朝に戻ってもう一度やり直す2周目の、二重の構造になっている。4日までは一行がそろう場面が中心で、5日から、誠がどのヒロインと過ごすかによって物語が分かれていく。

詳細
1周目の4月6日にヒロインを失った誠は、4月1日の朝に戻り、前の6日間の記憶を持ったまま2周目を始める。2周目では、誠の知っている出来事がほぼ同じように繰り返され、誠はそれを手がかりに悲劇を避けようとする(→4月6日)。優夏の物語では優夏も、いづみの物語ではいづみも、前の6日間を覚えている。いづみの物語は二つの道筋に分かれ、一方ではループが本当に起きたものとして扱われ、もう一方ではループは起きておらず、億彦の仕掛けだったと明かされる(→逆の逆のそのまた逆ドッキリ)。いづみの推論では、描かれる1周目より前に、誠に記憶のない最初の6日間があったことになる(→キュレイシンドロームの実験)。
優夏キュア 物語の構造

Windows版に収録された、優夏の視点で描かれる追加シナリオ。優夏が2周目の4月1日の朝、ロッジで思い切り布団を蹴飛ばして目覚める場面から始まり、優夏の一人称で4月7日までを描く。本編とは別立てのシナリオとして収められている。

詳細
本編の優夏の物語と同じ出来事を優夏の側からなぞりながら、独自の筋が加わる。鈴と引き換えに手放した猫のキーホルダーを土産物屋へ探しに行く話、くるみが代わりに折り紙の猫をくれる話、初恋の男の子との思い出、沙紀が譲ったライラックの香水と花言葉などである(→猫のキーホルダー、ライラックの香水)。4月6日、くるみがまた姿を消し、神社へ向かう誠を優夏が止め、誠は鈴を踏み潰す。燃えるホテルと美術室の男の子の姿がよぎった優夏は、誠を追い抜いて告白し、誠を突き飛ばして自分が先へ行こうとする。
結末
4月7日の目覚めは本編とほぼ同じだが、沙紀が「リラの花咲く頃」の意味を明かし(→リラの花咲く頃)、月浜で誠がキーホルダーを贈る。優夏が、あの男の子と誠は「……全然、似てなかったよ」と言うと、誠は「オレは……オレだ」「ただ、オレは…………優夏を置いてったりしないだけだ」と答え、朝の光の中で2人は初めて口づけを交わす。「最初から、すべてが始まったあの瞬間から、誠のことが大好きだったんだよぉ!!」「すべてはこれから、始まるんだもん……」といった優夏の台詞は、本編の優夏の物語にもある。
船の後日談 物語の構造

7人全員がそろって船に乗っている、短い後日談。港を出てかれこれ1時間ほど、海の真ん中を行く船の甲板で、誠・優夏・いづみ・くるみ・遙・沙紀・億彦がにぎやかに話している。

詳細
沙紀の足元には子犬がじゃれつき、沙紀は「来年の春、K大からウチの大学に移るつもり」と言って、くるみに「お兄ちゃんが、いるからだよね?」と冷やかされる。くるみも誠の大学に通うことにしたと言い、遙が「受験したのなんて、去年のことだし……」と、いづみには内緒で替え玉を引き受けるつもりでいる。いづみは「替え玉なんて、お姉ちゃんがぜ~ったいに許しませんからね?」と叱ったかと思うと、自分がちゃんと教えてあげると言い出し、それが「来年の入試問題」だというオチがつく。億彦は腎臓戦隊の勧誘をし(→腎臓人間オックマン)、優夏は一升ビンを手に操舵室で「オモカジいっぱ~い!」と叫ぶ。最後に、水平線の彼方から、新緑に覆われた小さな島の輪郭が近づいてくる。どこの島か、いつのことかは書かれず、特定のヒロインの物語の続きとしても書かれていない。遙がいづみを「お姉ちゃん」と呼び、沙紀が子犬を連れているなど、各物語の結末をひとまとめにしたような場面である。
教室の後日談 物語の構造

誠たちの大学の教室を舞台にした、もう一つの短い後日談。合宿の顔ぶれが同じ教室にそろい、高校生だったはずのくるみや、K大にいた沙紀の姿もある。みんなは掲示板に出たゴールデンウィークの「あの話」で持ちきりになっている。

詳細
沙紀はK大から誠たちの大学に編入しており、くるみも「おんなじ大学入った」と言って、誠に「おまえもう高校生じゃないんだぞ?」と言われる。遙は今度のゴールデンウィークに向けて新しいスピニングリールをねだり、優夏は「一升しか」飲んでいないと言い張り、億彦は「僕の愛車のフェラーロ」を持ち出す。「あの話」の中身は最後まで明かされない。最後に、いづみが教壇から「ほぉら! 早く席に着きなさ~い!」「始めるわよ♪」と呼びかけて終わる。いづみが誠たちのゼミの教授であることを踏まえた締めくくりである(→川島班)。