合宿のドタバタがおもろいから、予知が怖なるねん。
ゼミ合宿で離島に来た大学生たちのドタバタが、まずめっちゃおもろい。壊滅料理の班長、偽名でピザを受け取る御曹司、フナムシを焼こうとする無口な子、お兄ちゃんを起こしに来る高校生。キャラが全員ボケかツッコミの役を持っとって、掛け合いが気持ちええ。そのドタバタが当たるようになってからは笑いが不穏に変わる。この切り替えがうまいこと効いてる。ただ、説明の長い場面と同じ日をなぞる手間でテンポが落ちるから、7.3。
スコア詳細
合宿コメディやと思って来たら、予知が当たりすぎた
大学のゼミ合宿で、離島で7泊8日。これはもう、わちゃわちゃするやつやん。そう思って始めた。
KIDの『Never7 -the end of infinity-』。infinityシリーズの1作目らしい。うちが遊んだのは2001年のWindows版で、優夏の目線で話をなぞり直す「優夏キュア」っていう追加シナリオも入ってた。同じシリーズのほかの作品もあるみたいやけど、うちが遊んだのはこれだけや。
主人公の石原誠は、授業にほとんど出てへん大学3年生。ゼミの班に勝手に振り分けられて、絶海の孤島のロッジで合宿することになる。班長の川島優夏、無口な樋口遙、財閥の御曹司の飯田億彦。坂の下のカフェ「ルナビーチ」には店員の守野いづみと妹のくるみ、別荘には優夏の同級生の朝倉沙紀。顔ぶれ見ただけで、ボケとツッコミの配役が見えてくる。
で、4月1日の朝から、誠はこれから起こることを言い当ててまう。夕飯の献立とか、地震とか。最初は笑てたんやけど、だんだん笑えんようになる。ここから先は、結末まで全部しゃべるで。
ボケ担当が多すぎて、誠のツッコミが追いつかへん
まず一番わろたやつから。億彦とピザの件や。
偽名のピザロッジに頼んでもないピザが届く。億彦は仮病を使ってたくせに、ピザを前にして「あ、なんか…ムシャムシャ…いつの間にか…ムシャムシャ…治ったみたいだ」。食べながら治るな。しかもピザ代を払わんために注文主の名前を名乗って、「僕が、朝倉億彦です」「そうそう、飯田材木店のバイトの店員、朝倉億彦で」。財閥の御曹司が材木店のバイトを名乗る時点でおかしいのに、そのあと本物の朝倉さん、つまり沙紀が「『朝倉』ですけど、責任者の方、いらっしゃいますか」って乗り込んでくる。偽名のフリが、そのまま新キャラの登場になってる。めっちゃわろた。ここで沙紀の気の強さも一発で分かるし、紹介とギャグが一緒に済んでる。
優夏班長の優夏は料理が壊滅的で、1時間かけて謎の物体を作る。残されたら「せっかく作ったのにぃー! これでも何度も何度も作り直したんだからね!」。何度も作り直してそれなんかい。バーベキューでは「焼けた石原は、シイタケや!」「かいぶんよ、か・い・ぶ・ん!」。回文や、ちゃんと後ろから読んでも同じになっとる。しかも語尾の「や」が関西弁っぽいのが、うちには地味に刺さった。酔うたら「トロがたべたい……トロがたべたぁーーーいっ!!」。この人、ボケの引き出しが多すぎる。
遙無口な遙はボケのタイプが違う。「私、お腹、空いてない」って言うた直後に平然とピザを食べる。バーベキューでフナムシ見て「フナムシ」「食べるの」「……焼いてみよ?」。間がええねん。三回に分けて、一言ずつ置いてくる。喋らんキャラが一番テンポのええボケをしてる。これは作者わかってるわ。
くるみと誠くるみは誠を「お兄ちゃん! お兄ちゃんってばぁ! もうっ、早く起きないと遅刻しちゃうよ!?」って起こしに来る。合宿や。遅刻もなんもない。誠の「って、んなわけあるかぁ!!」が即座に返ってくる。この二人はちゃんとボケとツッコミの漫才になってる。くるみが「よくゲームとかであるじゃない?」って言うたときの、誠の「お、お前はいったい、どんなゲームをやってんだ……」もええやりとりやな。ゲームの中でゲームのお約束にツッコむ、ちょっとメタなやつ。おにぎりの具をキャビアや思た誠に、くるみが明かす答えが「ふぉあぐら」なのもええ。
億彦の自己紹介も外されへん。「いつも爽やか好青年、粋でいなせで涙にゃもろい、地球の平和を守る為、神が送った正義の戦士……その名も『飯田億彦』だ!」。長い。長いけど、長さがボケになってる。寝言で「腎臓人間オックマン」のヒーローごっこまでしよる。この人、嫌味な役のはずやのに、出てくるたびに笑いを持っていく。
ループもんは、天丼の出来で決まる
この作品、同じ6日間をもう一回やるねん。つまり、同じボケをもう一回見ることになる。お笑いで言うたら天丼や。
1周目の4月6日の土曜日に、誠と過ごしたヒロインが死んでまう。うちが最初に行った道でもそうやった。手から鈴がこぼれて、気づいたらまた4月1日の朝。ここはさすがにわらえへんかった。重たい。で、2周目が始まる。
天丼として効いてたのは、くるみの道の2周目の頭や。くるみは1周目から中学生に間違われてはむくれてた子やけど、ここで億彦がくるみを中学生扱いする。すかさず誠が「どこに目ついてんだ、お前は!?」「くるみは高校生だ!」。誠だけが1周目を覚えてるから、くるみより先に誠がツッコんでまう。うちにはそう見えた。同じネタの二回目やのに、ツッコむ人が入れ替わるだけで新しい笑いになる。天丼の正しい使い方やん。
ただ、テンポは6にした。5人のヒロインの話を全部見よう思たら、合宿の前半を何回もなぞることになる。天丼は二回目、三回目まではおもろい。でも五回目、六回目はただの再放送や。あと、いづみの道の2周目で、いづみが病気の理屈を講義する場面がある。周りの嘘を本人が信じ込むとか、妄想が真実になるとか。ここ、話は大事なんやけど、説明が長い。笑いの間で引っ張ってきたテンポが、いったん講義で止まる。うちはそこで一回お茶淹れに立った。
ドッキリの系統逆に、いづみには笑える系統もある。崖から落ちたいづみは実は気絶してただけで、ループなんかなくて、億彦が日付をごまかして4月1日のふりをさせてた。誠はいづみと組んで、逆に億彦をだます。で、結末の一つが、逆の逆のそのまた逆ドッキリ。ドッキリにドッキリを重ねて、もう誰が誰をだましてるんか分からんようになってくる。重たい話の横に、こんなコントみたいな道を置いてるのは、ほんまにええバランスやと思う。
笑わせといて、最後は紙飛行機で黙らせてくる
緩急で一番効いてたのは、くるみの道やった。
くるみは、いづみが誠を問いつめる話を立ち聞きして、自分がお姉ちゃんの本当の妹やないかもしれんと知ってまう。「嘘つきぃー!!」って飛び出して、誠の話も信じへん。あれだけ「お兄ちゃん」って笑てた子が、全員嫌いやって叫ぶ。さっきまでボケてた子がこれをやるから、落差がきつい。
で、神社で夜明けまで待った誠が、1周目にくるみから教わった紙飛行機「くるみ17号」を折ってみせる。くるみしか知らん折り方や。くるみが「くるみしか……知らないのに……」。……ここは笑えへんかった。笑えへんかったけど、まあ、ええ話やった。あの子がずっと遊んでた折り紙が、最後に話を通す鍵になる。ふざけてた場面が、ちゃんと前フリになってたんや。
そのあと、潰れた神社に二人でお参りして、明日が始業式やと思い出したくるみが「もう1度……タイムスリップするのぉ!」って階段を駆け上がる。泣かせといて、最後はちゃんとボケで締める。これやねん。うちがこの作品を嫌いになられへん理由は。
沙紀の道もええ。岬で「私は人なんか信じない。信じられない。信じたくない……」って言う沙紀に、誠が「人を『信じる』のに理由がいるか!」。そのあと沙紀が抱えて走ってたのが弱った子犬やったと分かって、子犬を引き取る話になって「じゃあ、1人と1匹だな?」。重たい話のあとに、軽い一言で着地する。この締め方、うちは買いや。
後日談の船が、全員ボケ倒しで最高やった
最後に後日談の話をさせてほしい。ここがこの作品のコメディの総決算やった。
7人が船に乗って、どこかの島へ向かう。沙紀は子犬を連れてて、来年の春に誠の大学へ移るって言い出す。くるみが「お兄ちゃんが、いるからだよね?」って冷やかして、沙紀は「だって、あの大学、もう興味なくなっちゃったんだもの」ってはぐらかす。くるみは誠の大学を受ける気満々やけど、試験を受けるのは遙らしい。替え玉や。そこへいづみが、来年の入試問題を教えると言い出す。先生が言うたらあかんやつ。で、優夏は酔うて操舵輪を握って「とりゃぁーっ! オモカジいっぱ~い!」「やっぱふなのりに、さけはつきものれしょぉ~♪」。誰か止めて。
全員がボケて、ツッコミが誰もおらん。本編であれだけ誠がツッコミ役をやってたのに、最後はボケの洪水で終わる。うちはこういう終わり方にめっちゃ弱い。大学の教室の後日談もあって、いづみが教壇に立って「ほぉら! 早く席に着きなさ~い!」。合宿で店員やってた人が、ちゃんと先生をやってる。ここまで来ると、もうこの7人のコントがずっと見てたくなる。
7.3——ドタバタがおもろいから、怖さも効く
この作品の笑いは、怖さの前フリにもなってる。そこがええとこやと思う。
偽名のピザ、優夏の回文、遙のフナムシ、くるみと誠の漫才。合宿のドタバタがちゃんとおもろいから、それが当たり始めたときに背中が冷える。天丼もうまいこと使ってる。ただ、ヒロインを全部見るまでの周回と、講義みたいな説明の場面でテンポが落ちる。そこを引いて7.3。重たい話の合間に、ちゃんと笑わせてくれる作品やった。また後日談の船だけ見に行きたいわ。
