ストーリー詳細 — 蒼色輪廻
『蒼色輪廻』は、死ぬたびに人生が巻き戻る「走馬燈」の理に支配された輪廻の物語。自殺志願の青年・堂浦聡が生きる現代日本と、彼が両性具有の剣士サティー・ドーラとして覚醒する異世界。ふたつの世界で無数の死を重ねた先に、彼を翻弄する少女インフィニティーの正体と、世界そのものの真相が明かされる。 ▼ネタバレ詳細 には真相を含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。
走馬燈と鍵の仕組み
本作を理解する鍵は、世界を貫く走馬燈という理にある。主人公・堂浦聡は死ぬたびに人生を過去へ巻き戻され、別の生をやり直すことになる。彼の一人称は「僕」。物語はそのやり直しの積み重ねとして進んでいく。
死と巻き戻し:堂浦聡が死ぬと、その生は終わらず走馬燈の中で過去へ巻き戻る。死の代償として彼が得るのが鍵で、これを心の鍵穴に挿すと、それまで選べなかった別の道、別の可能性の扉が開いていく。ひとつの死=ひとつの結末が、そのまま次の生への鍵になる構造だ。
徴と眼:聡の右目には、常人には見えない紋章涅槃の眼が宿っている。これは世の穢れを流す祭神が一時に一人の男へ与える徴で、前世を鍵の形で記憶し、別の生を開く力を持つ。異世界では同じ力が左目の覇王印として現れる。この眼を持つ者の多くは、幾度もの転生の果てに業に耐えきれず正気を失うとされる。
ふたつの世界:物語は表裏一体のふたつの世界をまたいで進む。ひとつは聡が暮らす現代日本。もうひとつは、聡が両性具有の剣士サティー・ドーラとして生きる剣と魔法の異世界だ。両者は「全く同じ因果の系を持つ」世界として描かれ、聡は強く念じることで両者を行き来する。ただし繰り返すほど心身は蝕まれていく。
「結論は、最初から決まってるんだ。その人が、その人生において選択する全ての道は、最初から定められてる。だから、人生に選択肢なんてものはない」
— インフィニティー、運命を語る
空にかかる日蝕は、この輪廻の象徴として繰り返し描かれる。赤い月が太陽を呑む現象は、主人公の死と走馬燈の再起動を告げる予兆にほかならない。全ての業を流し終えるまで、聡は本当の死にも輪廻にも至れない。
「走馬燈がある限り、死はボクたちに微笑まない。全ての業を流し終えるまで、輪廻転生することもない」
— インフィニティー、業をめぐる独白
現代日本の物語 — 堂浦聡
堂浦聡は、頭脳も容姿も社会適応能力も「いずれを取ってもダメ」と自嘲する、自殺志願の引き籠もり童貞青年。両親を事故で亡くし、遺産もなく、ヤミ金の取り立てに追われる彼は、遺書をしたためてデパートの屋上から飛び降りようとする。
屋上の少女:屋上で「童貞バンザイ」と叫んで飛び降りようとした聡の前に、心を読むコスプレ風の少女インフィニティーが現れる。彼女は聡の死を煽る一方、その人生を大きく狂わせていく。逃げ帰った部屋に先回りしていた彼女に、聡は童貞を捨てさせられる。その瞬間、彼女の眼に紋章が浮かび、聡の右目にも同じ涅槃の眼が宿った。
「死ぬにしても、あまりアセらない方がいいよ……方法を間違えると、苦痛が大きいから」
— インフィニティー、屋上での初対面
街を蝕む影:以後、聡はヤミ金の取り立て屋・浅黄智之の暴力、そして街を裏から支配する一族神之薗との抗争に巻き込まれ、死を繰り返す。当主・神之薗秀人は、代々授かるはずの転生眼を得られず、聡がそれを持つことに執着していた。秀人は不老不死を求め、インフィニティーを神社の地下で拷問する。聡の亡き父は、かつてこの一族に不死研究者として雇われていた。それが聡が眼を持つに至った遠因だった。
「生きるっていうのはね、続けるものじゃない……つなげるものなんだ。だから、あんたは死ななきゃならない……死ななきゃ、続きがない」
— インフィニティー、神之薗の拷問を拒んで
無数の生と死:聡は死ぬたびに鍵を得て、別の生を試していく。そこには救いと破滅が混在する。初恋の相手・時野美樹に諦めず告白して結ばれ、末期がんで看取られるまで生涯を添い遂げる純愛の結末桜の咲く頃。大家の娘・桜野遥香と公園で結ばれ、二児をもうけて添い遂げる結末純粋。一方で、神之薗の娘・山田仁奈の「処女の証明」の儀式が悲劇に転じ、実父の手で仁奈を喪い、聡が自らの首を斬って血の雨を捧げる結末雨。ほかにも放火による焼死、毒殺、冤罪の処刑、凍死など、鍵ごとに数えきれない死が枝分かれしていく。
「これで……、私は……、あなたにとって……、忘れられない人になる」
— 山田仁奈、自ら聡と結ばれようとして
最初の分岐へ:不老不死を求めた神之薗秀人は、神社の岩戸の光に身を投じ、跡形もなく消滅する。「不死とは我を繰り返すことに他ならない」と見送られながら。すべての可能性を巡り終えた聡は、自分の人生を狂わせた「最初の分岐」がどこにあったのかを知る。諦めさえしなければ、その扉はいつでも開かれていた。現代日本の物語は、こうして最初の場所であるデパートの屋上へと収束していく。
「諦めなければ、それの扉は、開かれていた」
— インフィニティー、告白を促して
異世界の物語 — サティー・ドーラ
日蝕とともに、聡はもうひとつの世界で目を覚ます。そこでの彼の姿は、男の記憶を持ちながら両性具有の美しい肉体をまとった剣士サティー・ドーラ。運動音痴だったはずの体は、兵士を百人単位で斬り倒す戦闘力を得ていた。舞台は、大公が支配するハルモニア大公国だ。
処刑と脱獄の国:ドーラが覚醒したのは、騎士団長ゲオルグに背後から犯されている最中だった。ハルモニアは「無限の収容人数」を誇る処刑監獄を持つ苛烈な国で、ドーラもまた捕縛と処刑を繰り返す。邪神を祀る大司教マルトは、インフィニティーの居場所を教えれば放免すると取引を迫る。そんな中、大公の実娘でありながら父の暴虐から逃れ放浪詩人となった大公女リリス・コパーポットが、竪琴の歌で番人を眠らせ、ドーラの脱獄を助ける。彼女は「地の底で逢いましょう」という謎めいた予言を残していく。
三つの陣営:ドーラは三つの勢力に翻弄される。砂漠の彼方の冥王府を治める冥王メイは、ドーラの覇王印を求めて「ダーリン」と呼び溺愛する。魔法院の長ワン・シャオシイは、かつてドーラを村から誘拐して弟子にした師であり、蟲を操る禁忌の秘術の使い手。そしてハルモニア大公シャルル・フォーイェルバッハは、覇王印を持たぬがゆえに「神を殺して新たな神になる」野望を抱く、この世界の元凶である。
「妾は、ヌシの魔羅に惚れたと、そう言うておる!」
— メイ、ドーラへの求愛
世界を貫く理:冥王メイは、この世界が梵我一如の理で成り立っていることをドーラに語る。全体としての「梵」と、その中を巡る個としての「我」。本来は等しく循環するはずのそれが、メイの内では滞り、彼女は「死にたいのに死ねぬ」不死の業を負っている。冥王府の中心には、宇宙を内包する唯一の回路円生樹がそびえ、婚姻の誓いもこの樹に捧げられる。
「妾は元来、我でありながら梵の如く滞っておるのよ……死なねばならぬが、死する事ができぬ」
— メイ、不死の業を語る
幸福と破滅の分岐:この世界でも、ドーラは鍵ごとに多様な結末を辿る。メイと結婚し、インフィニティーの加勢で戦に勝利して、数年後にメイとの褥で果てる結末飛天。廃屋でリリスを介抱して正気を取り戻させ、結ばれて冥王府に家庭を築く結末再会。師ワンを連れて駆け落ちし、追手からワンを庇って命を落とす結末恩師。その一方で、処刑場での輪姦や火刑、串刺し、四肢を断たれての敗死といった凄惨な死もまた、鍵として量産されていく。
リリスは、ドーラを前世から慕い続けていたことを打ち明ける。彼女は「小さき者の瞳を借りて」ずっとドーラを見守っていたのだと。この言葉は、現代日本の一場面とひそかに繋がっている。ふたつの世界は、やはり同じ因果の系を分かち合っていた。
「小さき者の瞳を借りて、ずっと……ドーラ様の事を観ていたのです」
— リリス、ドーラへの想いを語る
真相と「蒼色輪廻 END」 真エンド
現代日本と異世界、その全ての業を流し終えたとき、物語は再びデパートの屋上へと回帰する。そこで、聡を導き続けた少女インフィニティーの正体と、この世界そのものの真相が明かされる。
インフィニティーの真名:彼女の名はアシュダ。悟りの木にちなみ、師ドーラが名付けた名だ。彼女は「最初に走馬燈という夢を見た者」「この世界という名の幻影を生んだ、最初の人間」であり、今にも息絶えようとしている蒼の剣士の成れの果てだった。この世界とは、アシュダが死の際に見続ける連鎖する夢そのものであり、堂浦聡はその夢の中の登場人物にすぎない。
「ボクは、最初に走馬燈という夢を見た者さ……この世界という名の幻影を生んだ、最初の人間」
— インフィニティー、正体を明かして
最後の我:さらにアシュダは、かつて冥王メイから「我」を奪い、永遠の命と引き替えに彼女を不死にした張本人でもあった。そして堂浦聡こそ、アシュダの師「サティー・ドーラ」の最後の生まれ変わり、この世界における最後の我だった。聡が今生を終えるとき、アシュダの走馬燈は終わる。彼女が長く見続けてきた夢を閉じる唯一の手段が、聡の死なのだ。
「キミの生の意味は、ボクの生を終わらせること……死を選び、ボクを殺すことにある」
— インフィニティー、聡の生の意味を告げる
指輪と投身:愛する者が延々と苦しむ様を見守り続けること、それがアシュダに課せられた最期の試練だった。聡と幸せになる道ははなから存在しない。それでもふたりは「一緒に死ぬ」ことを選ぶ。聡は両親の形見である二つの結婚指輪を取り出し、母のものをインフィニティーの薬指に、父のものを自らの薬指にはめる。そしてふたりは屋上から共に飛び降り、永遠の眠りにつく。
「父さんのは僕がつけるから、インフィニティーはこっち……母さんの方」
— 聡、指輪を渡して
輪が閉じる:投身のあと、視点は蒼の剣士アシュダへと移る。師ドーラの死後、彼女が大公シャルルを討つ様が描かれる。自らの胸に剣を残したまま、アシュダは走馬燈の再開を願う。「また……始まるんだ。また……キミに、会いに行くよ」。そして物語は冒頭の屋上へと回帰し、最後の一行で輪が閉じる。長い夢の終わりは、そのまま次の夢の始まりでもあった。それがこの物語の題、蒼色輪廻の意味である。
「はじめまして……ドーラ……」
— アシュダ、輪が閉じる最終行
空にかかる日蝕は、アシュダが宝物である指輪を隠した場所でもある。「宝物をね……、空に隠したのさ。それは時折、日蝕となって、そのままの形で空に輝く」。輪廻を告げる予兆と、ふたりの形見が、同じ空でひとつに重なる。
エンディング一覧
結末は「鍵」として数え、現代日本編・異世界編それぞれに数多く枝分かれする。ここでは代表的な結末を系統ごとに整理して掲げる。それぞれの死が次の生への鍵となり、全てを流し終えた先に真エンド「蒼色輪廻 END」が置かれる。
| 種別 | 結末名 | 結末概要 |
|---|---|---|
| 現代日本編 — 堂浦聡 | ||
| 純愛 | 桜の咲く頃 | 諦めずに初恋の時野美樹へ告白して結ばれ、生涯を添い遂げて末期がんで看取られる。輪廻の苦痛から人並みの幸福へ抜ける道。 |
| 結ばれ | 純粋 | 公園で桜野遥香と結ばれて妊娠・結婚し、二児をもうける。数十年後にダンプに轢かれて死亡。 |
| 結ばれ | 統一 | 山田仁奈と結ばれて神之薗の総裁となり一時代を築くが、造反した浅黄に撃たれて死亡。 |
| 悲劇 | 雨 | 仁奈の「処女の証明」の儀式が悲劇に転じ、実父に仁奈を喪う。聡は自刎して血の雨を捧げる。 |
| 死=鍵 | 誓い/流れゆくもの ほか | 放火による焼死、毒殺、冤罪の処刑、凍死など。各々の死がそのまま次の生を開く鍵となる。 |
| 収束 | ニルヴァーナ | 全ての可能性が最初の分岐点であるデパート屋上へ収束する、現代日本編の最終鍵。 |
| 異世界編 — サティー・ドーラ | ||
| 結ばれ | 飛天 | メイと結婚し、インフィニティーの加勢で戦に勝利。数年後、メイとの褥で果てる。 |
| 結ばれ | 再会 | リリスを介抱して正気を取り戻させ結ばれ、冥王府で家庭を築くが、後のハルモニア侵攻で敗死する。 |
| 悲劇 | 恩師 | 師ワンを連れて駆け落ちし、追手からワンを庇って命を落とす。 |
| 死=鍵 | 報われぬ世界/忍耐/修羅 ほか | 処刑場での輪姦・火刑・串刺し・四肢切断の敗死など、凄惨な死が鍵として量産される。 |
| 悟り | 双子の世界/解脱 | 世界移動や輪廻の理を悟って死に、走馬燈のシステムそのものを解禁していく初期の鍵。 |
| 真エンド | ||
| 真END | 蒼色輪廻 END | 全ての鍵を集めて屋上へ到達。インフィニティー=アシュダの正体が明かされ、聡と両親の形見の指輪を交換して共に投身。蒼の剣士による大公討伐を経て冒頭に回帰し、「はじめまして……ドーラ……」で輪が閉じる。 |