新藤エレナのレビュー — 臭作

新藤エレナ
新藤エレナ
前戯の長さを褒める女
7.5/10
7.5 / 10

脱がせるまでが長いの。そして長いところが、いちばん効くのよ。

この作品でいちばん実用になるのは、脱がせた後じゃなくて追い込みのほうだわ。写真を突きつけて、逃げ道を潰して、自分から従わせる。そこまでの手続きが延々と描かれるから、屈服した瞬間の落差が効く。フェチの網羅量も相当なもので、剃毛・緊縛・アナル・寝取り・媚薬・監禁と一通り揃っているのよ。ただし七人ぶん、脱がせた後の順番がほとんど同じ。そこは正直に引くわ。前戯は満点、本番は既視感。それで7.5。

スコア詳細

特殊嗜好・フェチ 9
Hシーンの質 8
実用性 8
エロと物語の相乗 8
シチュの多様性 6
描写の文章力 6

この作品について

1998年の elf。伊頭家の真ん中ね。

舞台は粛正音楽学院の女子寮。臭作は本物の管理人志望者を脅して履歴書を書かせ、その名前で寮に潜り込んだ偽物よ。潜入から一ヶ月、マスターキーで部屋に入って盗撮を重ねて、ネタだけ溜めた状態でゲームが始まるの。

期限は土曜の午後五時から月曜の朝まで。八人いる相手を、その時間で何人落とせるか。手順は決まっているわ。様子を窺って、仕掛けたカメラを回収して、写真を突きつけて追い込んで、屈服したら辱める。

私が手を出したのは、遺作に6.5、鬼作に8.5を付けているからよ。あいだの一本がどこに落ちるか、確かめないと気持ち悪いでしょ。

追い込みが、この作品の前戯なのよ

脱がせるところまでを、これだけ丁寧に書いた鬼畜ゲーは多くないわ。

普通の陵辱ものは、押し倒すところから始まるでしょ。この作品は違うの。写真を一枚テーブルに置くところから始まるのよ。

相手が青ざめる。言い訳をする。泣く。怒る。それでも逃げ道がない。そこで初めて「制服を着て部屋に来い」と言われる。——この段取りが、ヒロイン一人につき何段階も用意されているの。屈服するまでに何度も呼び出されて、そのたびに一枚ずつ剥がされていく。

これが効くのよ。身体を触られる前に、逃げ場を潰されているから。だから辱めの場面に入ったとき、相手はもう抵抗の形を失っている。実用として言うなら、盛り上がるのは服が脱げた瞬間じゃなくて、従うと決めた瞬間だわ。

臭作の口が上手いこと

この男、喋りで落とすの。表向きは慇懃な管理人「加藤さん」として敬語を使うくせに、括弧の中では別のことを考えている。この二重の話法が、そのまま脅迫の道具になっているわ。丁寧な言葉で追い詰めるほうが、怒鳴られるより怖いでしょう。

本人はそれを「美学」と呼んでいるの。「その場で犯る強姦魔とは違う」ですって。自分の手口に酔っている加害者は、書き手が楽しんで書いている証拠よ。私はこういうの、嫌いじゃないわ。

八人の反応差は、ちゃんと作ってあるわ

相手の顔ぶれは、実用の観点で見るとかなり親切な配分ね。

令嬢たち

近藤渚は一人で電車にも乗れないお嬢様。最後まで敬語を崩さないのに、途中で母親を呼ぶの。あそこは効くわよ。育ちの良さが崩れる音がする。

前島香織は理事長の孫娘で、高慢。権威を盾にする女が、その盾を一枚ずつ剥がされる過程が本体ね。水無月志保は名家の娘で、動作がとにかく遅い。反応が遅いという設定がそのまま責めの持続時間になるのは、よく考えてあると思うわ。

残りの四人

南雲千秋は自分を名前で呼ぶ幼児的な子。趣味は分かれるでしょうけど、担当する領域が明確ね。栗原朝美は姉御肌で、臭作を蹴り飛ばすくらい威勢がいい。その子が「仕返しを」と口にしながら空回りする——気の強い女が効かない抵抗を続ける絵は、それ自体が責めになっているわね。

藤間萌子には恋人がいるの。この子は最後まで恋人の名前を呼び続けるのよ。呼べば呼ぶほど臭作が乗ってくる、という悪循環まで書いてある。寝取りが要る人はここね。

南綾香だけ扱いが別。写真じゃなくて物理で押さえるの。合気道の有段者を力ずくで拘束する、という荒っぽさ。しかもこの人、最後まで殺意と侮蔑で返してきて、茫然自失にならない。成人の女がここまで折れないまま終わるのは、この作品で唯一よ。

そして新入生の高部絵里。この子だけは扱いがまったく違うのだけれど、ここでは言わないでおくわ。

評価①:フェチの網羅量は認める。手順の使い回しは認めない

まず良いところから。用意されている品目が多いのよ。

制服、処女、剃毛、荒縄の緊縛、アナル、近親の妄想、寝取り、媚薬、監禁、教師。一本のソフトにこれだけ詰めてあるのは1998年としては大盤振る舞いだわ。ヒロイン一人でも段階を細かく踏むし、辱めの分量そのものが多い。尺で殴ってくるタイプの作品ね。物足りないということはないわ。

問題はここ

ところが七人分を並べて読むと、脱がせた後の順番がほとんど同じなの。

進行の型も、脅迫の型も、ほぼ共通。違うのは相手の属性だけ。令嬢か、幼い子か、気の強い子か、彼氏持ちか。それを入れ替えれば別の場面に見えるでしょう、という作り方よ。

見えないわよ。三人目で気づくもの。

語彙も同じ問題を抱えているわ。陵辱ものの常套句がぐるぐる回っているだけで、ヒロインごとの言い回しの差が、設定した属性の差ほど大きくないの。渚が母を呼ぶような一発はあるのに、地の文の温度がどの子でも同じなのよ。

綾香だけ別系統にできたんだから、やろうと思えばできたはずでしょう。そこが惜しいわ。

実用としての結論

一人目と二人目は強いわ。追い込みの手数が効いているから、屈服の瞬間まで持っていく力がある。三人目以降は、好みの属性の子だけ拾えばいい。全部順番に読む必要はないわね。

評価②:エロと物語が、ちゃんと同じ方向を向いているわ

鬼畜ゲーで物語の話をするのは野暮だけれど、この作品は例外にしておくわ。

理由は単純よ。この作品の物語は、エロを削って作られていないの。

よくあるでしょう。「実は深いテーマがあって」と言い出した途端にHシーンが申し訳程度になる作品。あれが私はいちばん嫌いなの。両方やる気がないなら、最初からどちらかにしなさいと言いたくなるわ。

この作品は逆なのよ。七人ぶん、まったく容赦なく全部やり切る。そのうえで、最後にもう一段だけ別の話を乗せてくる。順番が正しいわ。先に全部やってあるから、最後の一段に意味が出るの。

追い込みが物語でもあること

それと、この作品の追い込みは単なる前戯じゃなくて、物語の進行そのものになっているのよね。

時間が限られていて、教師には偽物だと疑われていて、失敗すれば逃げ道が消える。だから一人落とすごとに状況が動くの。Hシーンが物語を止めない構造になっているというのは、この手の作品では珍しいことだわ。

一つだけ先に言っておくと

八人目には、性的な描写がないの。心理と会話だけで進む。物語としては、そこがこの作品でいちばん良いところなのだけれど、実用としては一本まるごと抜けるということでもあるわ。

そこは正直に言っておく。あの子目当てで来ると空振りするわよ。

7.5——遺作と鬼作のちょうど間ね

伊頭家の三本で、私はこれを真ん中に置くわ。数字の上でもそうなったのは偶然だけれど。

遺作に6.5を付けたのは、追い込みの手続きが荒かったからよ。鬼作に8.5を付けたのは、手続きも本番も両方きちんと書けていたから。臭作はその中間。追い込みは鬼作に迫るのに、脱がせた後で息切れするの。

フェチの品揃えは文句なし。前戯の丁寧さも文句なし。引くのは、七回同じ順番を見せられることだけ。それだけで一点は落ちるのよ。手を抜いた場所は、必ず数字に出るわ。

買うなら好きな属性の子を二、三人決めて、そこだけ深く追いなさい。全部を順番に読むゲームじゃないわ。そのうえで、最後まで行き着く価値はあると言っておく。