ストーリー詳細 — 臭作
『臭作』は、エロゲを起動したはずのプレイヤー「俺」が、偽管理人・臭作の身体に潜り込むという異様な導入から始まる作品。盗撮と脅迫で女子寮の少女たちを追い込む鬼畜劇の裏側で、良心を持つ「俺」と加害者「臭作」の意志が静かに争い、勘の鋭い少女・高部絵里だけがそれに気づく。ふたつの人格の綱引きと、互いを救い合う真エンドまでを追う。 ▼ネタバレ詳細 には真相を含みます。 プレイ済み設定をするとアコーディオンがデフォルトで展開されます。
前提と潜入 — 臭作という男
語り手にしてプレイヤーの分身である俺は、性的なゲームを遊ぶつもりで起動したはずが、気づけば中年の偽管理人臭作の身体に入り込んでいる。舞台は名門粛正音楽学院の女子寮。そこに臭作が潜り込んでから、すでに1ヶ月が経とうとしていた。
成りすましの管理人:臭作は正規の手続きで雇われたわけではない。40年勤めた会社をリストラされ、知人のツテで女子寮管理人の職を紹介された初老の男加藤を、臭作はパチンコ屋で見つけ出す。まだ履歴書を出していないという話を聞くや、彼を脅して偽の履歴書を書かせ、その身分をそっくり奪い取った。以後、寮内では「加藤さん」という腰の低い管理人として振る舞い、少女たちに慇懃な顔を見せる。
「あの馬鹿を脅して書かせたニセの履歴書だって、疑わしそうにジロジロ見てやがったしな。」
— 臭作、偽の身分が疑われている事を独白して
1ヶ月の下準備:盗撮機材は「もちろん全て万引きで」揃えたと臭作はうそぶく。潜入からの1ヶ月、彼は風呂焚き・食事・洗濯といった下男仕事をこなす管理人を演じながら、合鍵で少女たちの部屋に侵入し、デジタルカメラやビデオカメラで盗撮を重ねてきた。弱味となるネタを蓄えたうえで、いよいよ本性を現す時が来たと嗤う。
「くっくっくっ……ついに本性を現す時が来たな。」
— 臭作、追い込みの開始を宣言して
八人の令嬢と一人の教師:臭作は「俺」に向けて、標的を一人ずつ紹介していく。世間知らずのお嬢様・近藤渚、学院理事長の孫娘で高慢な前島香織、動作の極端に遅い水無月志保、すぐ涙ぐむ幼い南雲千秋、姉御肌の栗原朝美、奔放な藤間萌子、そして今年入寮したばかりで最も臭作好みの容姿を持つ高部絵里。加えて、寮を監督するピアノ教師南綾香も標的に含まれる。綾香だけは臭作の正体を疑い、蔑んだ目を向けていた。
「加藤さん、身体が匂いますわよ。」
— 南綾香、臭作への侮蔑
追い込みシステム — 真綿で首を絞めるように
臭作の手口は一貫している。様子を窺い、仕掛けたカメラを回収してネタを握り、それを突きつけて追い込みをかけ、屈服した相手を辱める。この一連の流れを、彼は「真綿で首を絞めるように」と表現する。
スケジュール制の犯行:ゲームは時間制で進む。臭作に許された猶予は、土曜の午後5時から月曜の朝一番まで。綾香に「学院長室に来てもらう」と告げられているその時刻が、正体露見のタイムリミットだ。「俺」は寮内を巡回してネタを集め、夜の管理人室に少女を呼び出しては追い込みを重ねていく。
「俺ぁ、一応管理人だからよ。ガキ共の部屋の合い鍵は全て持ってるしな……タイミングさえ合えばいくらでも、ヤツらを追い込む事ができるぜぇ。」
— 臭作、管理人の立場を悪用して
脅迫の道具立て:盗撮で得た決定的な写真は「他人に見られたくなければ言う事を聞け」という脅しに使われる。さらに臭作は食事に媚薬を仕込み、身体の側から少女を追い詰める。彼はこうした手間を、その場で襲うだけの強姦魔とは違う流儀だと言い張り、それを美学と呼ぶ。段取りを重ねること自体が、彼にとっては加害の責任を回避する詭弁でもある。
八者八様の追い込み:屈服の仕方は相手によって異なる。世間知らずの渚は処女を奪われ「お嫁に行けない」と嘆くが一蹴される。理事長の孫娘・香織は恋人の存在を盾に取られ、金で解決しようとして拒まれる。教師の綾香だけは写真ではなく、倉庫に縛って監禁するという物理的な形で追い込まれる。臭作にとってそれは、管理人初日に綾香から掃除を命じられた因縁の場所だった。
「お前は俺の玩具なんだよ。お前の身体は俺を満足させる為だけに存在してる……わかるかぁ?」
— 臭作、渚への支配宣言
失敗すれば逆転:追い込みは万能ではない。しくじれば写真を逆手に取られ、少女たちに足止めされて警察に通報され、臭作は逮捕される。鬼畜の側にも、常に破滅の口が開いている構造になっている。
俺と臭作 — 一つの身体に宿る二つの意志
本作最大の仕掛けは、この鬼畜劇を語る「俺」が、臭作そのものではないという点にある。良心を持つプレイヤーの意識「俺」と、加害者人格「臭作」は、一つの身体を共有しながら別個の意志を持つ二重人格として描かれる。
憑依という導入:「俺」は本来、日頃のストレスを解消するためにゲームの世界でささやかなエッチを楽しもうとしただけの人物である。ところが女子寮という言葉を聞いた途端、理性とは別のところで何かが動き出し、気づけば臭作のオープニングを自然に演じていた。下品な言葉づかいも、しわがれた声も、自分のものではないのに口をついて出る。プレイヤーがエロゲを起動する行為そのものが、臭作の身体への憑依として描かれている。
「もちろん俺はこんな下品な話し方をする人間ではない。」
— 俺、臭作との人格差を意識して
通常進行では観察者:ふだんの追い込み・辱めの場面では、「俺」はおおむね観察者の位置にとどまる。臭作の所業を内側から追体験しながら、それを止められないまま見ているしかない。地の文の一人称が「俺」であるため、序盤はプレイヤーと臭作の視点が区別しづらく、加害の主体が曖昧なまま進む。臭作は「お前は俺の分身なんだぞ」と嘯き、「俺」自身もかつて臭作の姿となって加害に加担した過去を持つと突きつけられる。
役割分担と対立:臭作は「俺」に少女たちを追い込ませ、いざという時だけ入れ替わろうと目論む。だが「俺」は、その役回りを望んでいるわけではない。むしろ臭作を憎み、できることなら葬り去りたいとすら思っている。両者が別個の意志を持つことは、地の文で明確に語られる。臭作の声は「俺」にしか聞こえず、他の誰にも届かない。
「俺は臭作が喜ぶような事はしたくない。もしできる事なら、この場で首を絞めて永遠に葬り去ってやりたい気分だ。」
— 俺、臭作への敵意
臭作一人の中にある建前(腰の低い管理人)と本性(鬼畜道を極めた男)の二面性と、この「俺と臭作」という別人格の同居は、別の軸として重なっている。前者は臭作の演技、後者はプレイヤーと加害者の共存である。
絵里が見抜く — 俺を守る少女
八人の少女のうち、ただ一人だけ様子が違う者がいる。今年入寮したばかりの新入生高部絵里は、妙に勘が鋭い。臭作の隠し撮りを不意に振り向いて察知し、初対面でその人となりを見抜いてしまう。そして彼女だけが、臭作の中に宿るもう一つの人物「俺」の存在に気づく。
特異な時空の起動:絵里が合鍵を探しに管理人室を訪れ、好奇心から臭作の「ゲーム」が動くパソコンに触れてしまう。これを機に、臭作の計画が終わる午前5時を境とした特異な時空が立ち上がる。それは過去へ巻き戻ったような、あるいは画面の中に囲われたような世界で、そこでは「俺」と絵里だけが共に在るようになる。他の少女たちに向かう臭作の追い込みが、静かに軌道を外れ始める。
身を挺した妨害:絵里は「俺」を守ろうと動く。臭作が「俺」に強いる盗撮カメラの設置を、彼女は先回りして外し、そっと返してくる。志保が盗撮されそうになれば「電話の調子が悪い」と嘘をつき、他の少女が管理人室を訪れれば秘書のように応対して臭作の目を逸らす。追い込みの網を、一つずつ身を挺してほどいていく。
「私……加藤さんが部屋から出ない限りここにいます。」
— 絵里、俺のそばを離れない決意
並んで作る料理:裏ルートの核心となるのが、絵里と「俺」が厨房で並んで料理する場面だ。臭作は暖かさや優しさを生理的に嫌い、ホノボノとした空気に耐えられず嗚咽する。絵里は割烹着のポケットに仕込まれていた媚薬をそっと捨て、小さなハンバーグを差し出す。この穏やかな時間のなかで「俺」の良心が目覚め、それが臭作の意志に逆らう最大の武器になっていく。
「ほ、ほんの少しでいいですから……ハンバーグを食べて欲しいです。」
— 絵里、俺に手料理を差し出して
臭作は苛立ちを募らせる。「俺」が絵里と見つめ合うのを咎め、「ただの気の弱い管理人みたいじゃねぇか」と自らの分身を罵る。だが良心が芽吹くほど、身体を操る臭作の力は削られていった。
クライマックスと真エンド 真エンド
唯一取りこぼした絵里を、臭作は最後に陵辱しようとする。だがそこで、良心を得た「俺」と、加害者・臭作の意志が正面からぶつかり合う。絵里ルートのクライマックスである。
抗い:臭作が「俺」の身体を操り、絵里を壁に押さえつける。バネ仕掛けの人形のように動く自分の腕に、「俺」は必死で抗う。全身を震わせ、指先が絵里の身体に触れる寸前で、その手を止める。「逃げろ……俺から」と叫びながら、彼は激痛に耐えて臭作の意志と闘い続けた。
「全身をワナワナと震わせながら、俺は必死で臭作の意志と闘っている。」
— 俺、身体の主導権を奪い返そうとして
救い合う二人:「この世界での俺は絵里を救う為だけの存在でいい」と、「俺」は自らに言い聞かせる。それに絵里が呼応する。あなたが私を救うためだけの存在なら、私もあなたを救うためだけの存在になる、と。互いを救うためだけに在ろうとする二人の意志が、臭作の支配を退けていく。
「あなたが私を救う為だけの存在と言うなら……私も、あなたを救う為だけの存在になります。」
— 絵里、俺の言葉に呼応して
それぞれの帰る場所:臭作の意志を振り切った「俺」は、見慣れた元の世界、すなわちゲームをプレイしていたパソコンの前へと戻る。絵里は、臭作のいない過去、すべてが始まった土曜の午後5時へと帰っていく。ディスプレイ越しに別れを告げながら、絵里は「あなたは悪い人じゃありません」「あなたと出会えてよかったです」と微笑んで消えていった。
「あなたは悪い人じゃありません……その事は、私が1番よく知っています。」
— 絵里、俺への赦し
止まった指先:誰もいなくなった管理人室を見つめながら、「俺」は電源に伸ばした指を止める。もうしばらく、このままにしておこう。鬼畜劇の器であったはずの物語は、加害の側に取り込まれかけた者が、一人の少女に救われて人間へ戻る話として静かに閉じる。
通常ルートでは、絵里もまた計画終了後の午前5時に管理人室で襲われ陵辱される結末が存在する。同じ絵里という少女が、鬼畜が成就する世界では犠牲者となり、救済の世界では「俺」を救う鍵となる。二層に分かれたこの構造こそが『臭作』の骨格である。
エンディング一覧
結末は大きく、臭作の鬼畜が成就する通常の世界と、絵里と「俺」が救い合う世界の二層に分かれる。加えて、ゲームの開始そのものを拒む特殊な選択も用意されている。作中にエンド画面の表示名はないため、ここでは内容に即した呼称で整理する。
| 種別 | 結末名 | 結末概要 |
|---|---|---|
| ゲーム拒否 | ||
| 特殊 | 排除(ゲーム拒否) | 冒頭の選択で臭作を拒絶する(舌を噛ませる・電源を切る・中古屋へ売るなど)。臭作が死なず、あるいは挑発して、そもそもゲームが進行しない。 |
| 鬼畜が成就する世界 | ||
| 通常 | 追い込み達成 | 盗撮ネタと媚薬で少女たちを屈服させ、追い込みと辱めを完遂する。臭作の鬼畜が成就する帰結。取りこぼした絵里も計画終了後に管理人室で襲われる。 |
| 失敗 | 逮捕(追い込み失敗) | 追い込みに失敗すると写真を逆手に取られ、少女たちに足止めされて通報される。臭作が逮捕されて終わるバッドエンド。 |
| 失敗 | 期限切れ | 月曜朝の学院長室呼び出しまでに事を運べず、正体露見の刻限を迎える。綾香の告発によって計画が破綻する。 |
| 真エンド | ||
| 真END | 絵里 真エンド(救済) | 絵里の協力で「俺」が臭作の意志に抗い、絵里に触れる寸前で踏み留まる。互いを救い合い、「俺」は元の世界へ、絵里は臭作のいない過去へ帰る。救済でありビターな結末。 |