本田チエのレビュー — シンフォニック=レイン

本田チエ
本田チエ
笑えるかどうか、だけ
5.7/10
5.7 / 10

笑えるゲームやと思ってたら、全然ちゃうかった。でも最後には泣いてしまった。

工画堂スタジオが2004年に出した全年齢のADV、シンフォニック=レイン。雨の降り続く音楽の街ピオーヴァを舞台に、フォルテールという特殊な鍵盤楽器を弾く音楽学院三年生のクリスが卒業演奏のパートナーを探す物語や。プレイしたのはPC版。コメディ好きのうちからすると「笑いのない作品」やったけど、最後には泣いてしまった。コメディ評価者として非常に複雑な気持ちや。

スコア詳細

コメディ・日常 3
序盤の掴み 3
テンポ・緩急 5
ヒロインの魅力 7
感動・カタルシス 8
キャラ間の関係性 8

コメディやと聞いてなかった

うちはコメディが大好きや。笑えるかどうかが全部の出発点。

シンフォニック=レイン、名前だけ聞いてた。2004年に工画堂スタジオが出した全年齢のADVで、雨の降り続く架空の音楽の街ピオーヴァが舞台。フォルテールという特殊な鍵盤楽器を弾く音楽学院三年生のクリス・ヴェルティンが、残り二ヶ月で卒業演奏のパートナーを探しながら4人のヒロインと関わっていく物語や。クリスの部屋には、クリスにしか見えない「音の妖精フォーニという存在が同居していて、毎週日曜にアンサンブルするのが日課になってる。プレイしたのはPC版。

「コメディないで」とは誰も言ってなかった。始めてから気づいた。これ、全然笑いの作品ちゃうやん、と。

序盤が長い。ほんまに長い

テンポの話や。これがうちの一番の不満。

序盤の日常シーンが延々続く。クリスが学校行って、練習して、ヒロインと話して、フォーニとアンサンブルして、また練習して。悪い話やないんやけど、テンポが気持ちよくない。コメディのテンポって「間の取り方」が命やと思うてるけど、このゲームの序盤は笑いの間を作る気がそもそもないから、うちが求めるものとは別の話になってる。

3回くらい「もうやめよかな」ってなった。中盤から話が変わって別のゲームになるんやけど——それまでが長い。序盤で脱落する人がおるのは理解できる。

フォーニだけは、ちょっとおいしかった

ゼロではなかった。フォーニとの掛け合いだけは、うちでも楽しめた。

フォーニはクリスにしか見えない音の妖精で、クリスの練習に口出ししたり、クリスが悩んでると明るく茶化したりする。コメディを狙ったキャラやないけど、この子の明るさがクリスの暗さを引き立てていて、そこに小さな笑いの種がある。「クリスの好きなように」ってよく言う口癖があって、これがなんか引っかかった。何かある気がして、ずっと気になりながら読んでた。

キャラ間の掛け合いという意味ではフォーニとクリスが一番面白い。ボケとツッコミとは違うけど、この二人の空気感だけはプレイ中ずっと気持ちよかった。

ヒロインたちは、真剣に生きてた

コメディ視点では評価しにくいけど、キャラとしては良かった。

ファルシータという先輩がいる。完璧に見えて内側に何か抱えてる子。リセルシアという後輩がいて、誰かに追い詰められてる子。トルタという幼なじみがいて、クリスのことを長く見てきた子。

全員、笑えるキャラではない。でも「ちゃんと生きてる」キャラではある。うちが一番重視する「キャラがおいしく使われてるか」という観点では、コメディとは違う方向でちゃんと機能してた。特定のキャラの使い方には「作者わかってるやん」と言ってしまった。詳しい話はネタバレありの方で。

笑えへんかったのに……泣いた

言いたくないけど、事実やから正直に。泣いてしまった。

最終ルートで全部が繋がる。フォーニの「クリスの好きなように」の意味が分かる。全部終わった後に来る一言があって、そこでうちは泣いてしまった。笑いのないゲームで泣くなんて思ってなかったから、自分でも驚いた。

……まあ、泣けてんけど。それはそれとして。コメディなしで泣かせてくるの、別の意味でズルいとは思う。

5.7——また読みたいとは思わへんけど、ええ話やった

5.7。うちの評価軸で正直につけた点数や。

コメディがない、序盤が長い、テンポが悪い。この3点でうちには刺さらなかった部分が大きい。でもキャラ間の関係性は深くて、感動は本物やった。フォーニのことは忘れないと思う。

「また読みたいか」——答えはNoや。序盤が長すぎる。でも「あれ、ええ話やったな」って思い出す気持ちはある。コメディが好きな人にすすめるかは迷うけど、シリアスな恋愛ADVを求めてる人にはたぶん刺さる。うちは刺さらなかった軸で、ちゃんと刺さる人間がいるのはわかった。そういう意味での5.7や。