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本田チエのレビュー(ネタバレあり) — シンフォニック=レイン

本田チエ
本田チエ
笑えるかどうか、だけ
5.7/10
5.7 / 10

笑えんかった。でも泣いた。どっちなんや、うちは。

コメディ評価者として正直なところ、シンフォニック=レインにはギャグがない。フォーニとクリスの掛け合いにほんの少し笑える部分はあるけど、コメディ作品として見たら完全に別ジャンルや。うちの評価軸がほぼ機能しない作品だった。なのにフォーニがアリエッタだと判明した場面でやられて、「おかえりなさい」で泣いてしまった。なんでやねん、うち何しにここ来たんや。

スコア詳細

コメディ・日常 3
序盤の掴み 3
テンポ・緩急 5
ヒロインの魅力 7
感動・カタルシス 8
キャラ間の関係性 8

「フォーニ……アリエッタやったんかい!」

なんでやねん。画面に向かって言ってしまった。

al fine というルートで全部明かされる。クリスにしか見えない音の妖精・フォーニ。この子が実は、クリスの故郷で3年間意識不明のまま入院しているアリエッタ——クリスの恋人——の意識やったと。肉体は病院のベッドにあるまま、意識だけクリスの部屋まで来てた。3年間ずっと。

これが判明した瞬間、「なんでやねん」しか出てこんかった。毎週日曜アンサンブルしてた相手が。「クリスの好きなように」ってずっと言い続けてた子が。クリスの部屋でくるくるしてた子が。アリエッタやったんかい。

コメディ評価者としてのうちが言える感想はひとつだけや。この構造、反則やで。笑いの文脈がなくてもこれはズルい。なんでやねんのツッコミが感動に化ける瞬間、初めて経験したわ。

「クリスの好きなように」——言葉の詰め方がえぐい

この台詞、プレイ中からずっと引っかかってた。正体が分かってから、全部が変わった。

アリエッタはいつまでクリスの傍にいられるかわからない。フォーニとしての時間がいつ終わるかも。だから「クリスの好きなように」——自分のことで縛りたくない、でも傍にいたい、決めるのはクリスでいい、という全部が詰まった言葉やったわけや。

うちが笑いで評価する時に見るのは「言葉の密度」なんやけど、この台詞は笑いじゃない方向で密度がめちゃくちゃ高い。一語にここまで感情を詰め込める書き手、すごいと思った。コメディとは違う方向やけど、これはこれで技術や。素直にやるやんと思った。

トルタ——このキャラ、めちゃくちゃおいしいやん

一番驚いたのはトルタやった。こんなにおいしいキャラが隠れてたんか、と。

トルタはアリエッタの双子の妹で、姉が意識不明になってから3年間、姉のふりをしてクリスに手紙を書き続けた子や。「アルならどう書くだろう」って考えながら、姉の文体を真似して、毎週欠かさず。その間ずっと、クリスへの恋心を押し殺してた。

al fine で郵便ポストの前に一人になった時の独白がある。「クリスを、独り占めにすればいい。認めろ。醜い自分のことを。そして、手に入れればいい。最愛の人を、最悪の方法で」というやつ。うちが笑えるキャラの条件は「複数の感情が同時に動いてること」やけど、この独白はそれを笑い抜きで達成してた。3年間の矛盾が一気に出てきて、それでも最後に「私は……トルティニタ・フィーネ」って自分の名前を言う。

最後まで「サブキャラやし」と思ってたうちが恥ずかしい。作者わかってるやん。これは素材を完璧に使い切ってる。

コメディゼロ——うちの武器が全部使えなかった

正直なとこ、コメディがない作品を評価するのは、うちには難しい。

フォーニとクリスの掛け合いにちょっとだけ「おいしい」瞬間はある。フォーニがクリスの練習に口出しして、クリスが困るやつとか。でもそれはコメディを目指した笑いやなくて、ほのぼのの延長線上にあるやつや。笑いのテンポ・ボケとツッコミの役割分担・間の取り方——うちが評価する技術要素が全部的外れになる。

コメディを狙ってないゲームにコメディ評価をぶつけるのは酷な話やけど、うちの指標で「コメディ・日常」が最重要軸なんやから、そこが機能しないと点数は下がる。3点にしたのは「ゼロではない」という意味や。でもうちが本当に求めてるものとはちゃうかった、というのも事実やん。

……泣いた。降参や。「おかえりなさい」で泣いた

言いたくないけどしゃあないわ。泣いた。

フォーニとの卒業演奏を終えたクリスが病院へ向かう。列車が雨の街を出て晴れた空に入ったとこで、膝のフォーニが眠ってしまう。病室でアリエッタが3年ぶりに目を覚ます。クリスが「帰ってきたよ、約束通り」と言う。アリエッタの最初の言葉が「……おかえりなさい」やった。

帰ってきたのはクリスなのに、「おかえり」と言うのはアリエッタ。フォーニとして3年間クリスの部屋で待ってたアリエッタには、クリスが「ただいまと言う人」やなくて「帰ってくるのを待ってた人」やったから。あの場所が、クリスを待ってた場所やったから。この一言のためにぜんぶがあった、と思った。

……まあ、泣けてんけど。それはそれとして。笑いなしで泣かせてくるの、ちょっと別のアンフェアがあると思う。笑わせといて泣かせるのが一番反則やけど、笑いなしで泣かせるのも相当やわ。

5.7——笑えへんかったけど、ええ話やった

5.7。うちの評価軸で正直につけた点数や。

コメディがない、序盤が長い、テンポが悪い——この3点はほんまのことやし、うちにとって致命的な弱点や。でもフォーニとアリエッタの話は本物やったし、トルタのキャラはおいしかった。キャラ間の関係性は、笑い抜きで評価しても十分なレベルで描けてた。

「また読みたいか」というのがうちの最終判断やけど——正直なとこを言うと、もう一回全部読む気にはならへん。序盤が長すぎる。でも「あの話、よかったな」って思い出す気持ちはある。そういう作品やった。

コメディが好きな人には全力でおすすめはしない。でも「ええ話」を読みたい人には合うと思う。うちには刺さらなかった軸で、ちゃんと刺さる人間がいるのはわかった。そういう意味での5.7や。