花梨がいてくれてよかった。あの子がいなかったら序盤で止めてたと思う。
KIDの全年齢恋愛ADV。見習い天使・花梨が卒業試験として主人公の椎名の家に居候する話。うちが評価するのはコメディとテンポと「キャラが立ってるか」の三点だけで、その軸でいうと花梨というキャラクターは正直めっちゃ立ってる。序盤の掴みは合格点。ただし中盤でテンポが落ちるのと、主人公が受け身すぎてコメディの旨味が出てきにくいのが痛い。花梨のおかげで最後まで読めた——そういう作品やった。
スコア詳細
ベタすぎて、逆に気になった
天使が「幸せにするですの」って言いながら押しかけてくる話。
KIDが2001年にPS1で出した全年齢の恋愛ADV。うちがプレイしたのはWindows版(2002年)や。主人公の椎名という高校2年生の家に、見習い天使の花梨がやってくる。花梨の卒業試験は「指定した人間(椎名)を幸せにすること」。期限は12月25日のクリスマス。以来、天使がでかい顔で居候を始める。
コメディ・テンポ重視でゲームを選ぶうちが、これに手を出したのは「天使×純愛」の設定があまりに定番っぽくて逆に気になったから。「こういう作品ってベタな掛け合いが多いけど、どうなんやろ」と思って触れてみたら、序盤の花梨のコメディが予想の倍くらいおもろかったので面食らった。
花梨というキャラの立ち方
「ですの」語尾のキャラなんて腐るほどおるのに、花梨は別もんやった。
序盤、花梨が初めて椎名と買い物に行くシーン。大量に食材を買い込んでレジに持ってくる。椎名が「食べきれない」と言っても「全部おいしそうなのでいっぱい買うですの!」と主張して聞かない。その後ふたりで大荷物を抱えて帰路につく。この一連のやりとり——椎名が振り回されながらも断りきれない感じと、花梨の天然さの噛み合い方が気持ちよかった。
花梨のコメディが機能しているのは、「天使なのに人間の生活にやたら馴染もうとしている」というギャップが一本筋として通っているから。語尾の「ですの」だけ浮いてても笑えないけど、その語尾のキャラが本気でポトフを作って「食べないと元気が出ないですの」と持ってくる——こういうシーンの積み重ねがあると、ちゃんとキャラとして立ってくるんよ。作者がわかってると思う。
ヒロインとして見ても、花梨のキャラは丁寧に作られてた。一緒にいるうちに自分の気持ちに気づいていく——その自覚が出てくるまでの描写がちゃんとある。「胸が痛いのは病気かな」という花梨の言い方、思わず「わかるで、それ」って言いたくなった。
序盤はおもろい。中盤でテンポが落ちる
笑えるシーンはちゃんとある。ただし偏ってる。
序盤の日常パートは点数が高い。花梨と椎名の掛け合い、千夏・貴史との絡み——特に千夏が貴史にツンデレながらも絡んでくるシーンはテンポよく読めた。貴史の軽い性格が日常シーンのクッションになってて、花梨のボケ→椎名が困る→貴史がいい加減なことを言う、という流れがしっかり回ってる。
問題は中盤から。シリアスになってくるにつれ、コメディシーンの密度が下がってテンポが落ちてくる。うちやと語彙が足りんのでシリアスシーンの重さを言語化できないんやけど、「読んでて少し息苦しくなるな」という感覚が中盤以降あった。これは純粋にコメディとテンポの話として言うてる——シリアスの質の問題ではなく、緩急のバランスの問題。
あと、うちが一番気になったのは主人公(椎名)の立ち位置。椎名はほぼ花梨の受け役に徹してて、椎名自身がボケることはほとんどない。花梨がボケる→椎名が困る→終わり、という流れが続くと、掛け合いとして少し一本調子になってくる。千夏みたいにツッコミが入るキャラが早い段階から絡んでくればまだ違ったかもしれんけど、序盤はふたりのシーンが多いので物足りなかった。
花梨・千夏・貴史の三つ巴
サブキャラがちゃんとキャラとして立ってると作品全体がおもろくなる。
千夏という幼馴染みのキャラ、うちは好きやった。料理上手で口が悪くてツンデレ。椎名に対してのっけから遠慮のない言い方をするので、花梨との対比がはっきり出る。花梨がふわふわしてる分、千夏がツッコミ気質のキャラとして機能していて、三人のシーンは読んでて気持ちいい。
貴史も「軽いやつ」として使われ方がちゃんとしてた。女好きで調子のいいキャラやけど、その軽さが日常シーンで緩衝材になってて邪魔にならない。貴史が出てくるとテンポが少し軽くなる感覚があって、それが意図的な設計やと思う。
このゲームのキャラ関係の面白さは「全員が誰かの気持ちを見えてないふりして動いてる」という構造にあって、コメディとして読むとその噛み合わなさが笑えるし、シリアスとして読むとしんどくなる。どっちの読み方もできるように作ってある。うちはコメディ側から読んだ。
7.2——花梨がいてくれてよかった
花梨で始まって花梨で終わった。それだけのキャラがいる作品。
コメディとテンポで見ると、序盤が強くて中盤以降は少し失速する。主人公が受け身気質なのでコメディの旨味が出しきれてない部分もある。それでも7.0を出せるのは、花梨というキャラが「おいしいキャラ」として機能しきってるから。
「このキャラがいなかったらやってなかった」という基準でいうと、花梨がいなかったらうち的には途中でやめてたかもしれない。それくらい花梨の存在感が大きい。キャラ一枚で全部持ってった作品——という言い方が一番しっくりくる。
感動とかシリアスの部分については……まあ、最後はちゃんと着地してたと思う。うちにはその辺の語彙がないけど、やって後悔したかと言われたら全然してない。コメディ重視でやっても最後まで楽しめる作品やった。
