ネタバレゾーン — 12RIVEN -the Ψcliminal of integral-
このゾーンにはネタバレが含まれます。
真稲家の三姉弟妹(鳴海・メイ・ミュウ)の真相・マイナの正体・Ψ(サイ)とΨクロンの仕組み・チサトとオメガの正体・A世界の正体・第弐/第参エクリプス計画の黒幕・∫(インテグラル)ルートの収束・タイトルの二重像など、本作のすべてのネタバレを含みます。未プレイの方はまず作品トップページをご覧ください。
レビューは準備中です。
マイナの正体は何者か?
マイナの正体は三嶋鳴海自身。本名は「真稲鳴海(まいな なるみ)」で、呼び名「マイナ」は三嶋家へ養子に入る前の旧姓「真稲」に由来する。作中でマイナ自身が「彼女の名前は『真稲鳴海』――そう……私の事です」と明言する。1992年5月7日の事故で停滞した鳴海の自我が、約20年後(2012年)の三嶋鳴海の脳内でA世界をシミュレートしている存在として描かれ、志村クラブの真の主宰として未来データに基づく「御託宣」をもたらし、物語冒頭の運命のメールを各アドレスへ送る発信源にもなっている。
鳴海・メイ・ミュウの三人の関係は?
三人は真稲家の三姉弟妹。長女が三嶋鳴海(旧姓・真稲鳴海)、その実の弟がメイ、実の妹がミュウにあたる。メイとミュウは真稲夫妻がレトロウイルスNRM66から生み出した2体のオリジナルΨクロンであり、同時に鳴海と血を分けた弟妹でもある。名前にも仕掛けがあり、両親は長女「鳴海」の名から一字ずつ取って、弟に「鳴(メイ)」、妹に「海(ミュウ)」と名付けた。メイ自身が「俺達の名前は『鳴(メイ)』と『海(ミュウ)』」「お前の名前から1文字ずつ取って、俺達に『鳴(メイ)』と『海(ミュウ)』という名前を授けた」と語る。ちなみに「霧寺冥」は施設解放後に引き取られた霧寺家での戸籍・名簿上の名(偽名)で、真名は「鳴」である。メイが終盤にミュウへ暴行めいた行動を取ったのは、ミュウが頼る相手に錬丸を選んだ嫉妬が絡んだ別の場面で、根はミュウを守るためにあえて悪役を演じていた兄であり、やがて対立者から協力者へと転じる。
Ψクロンの源「NRM66」とは? 名前の由来は?
NRM66は、全Ψクロンを生み出したレトロウイルス(塩基配列)の名。ヒロインのミュウ(オリジナルΨクロン「海」)の体内から発見され、24個の受精卵に植えられてΨクロン計画の源となった。その名「NRM」は鳴海の名『NaRuMi』の子音を並べたもので、鳴海が幼少期に父のPC上でこのRNA配列を再現したことが、全Ψクロン誕生と物語の因果ループ(積分=integral)の起点になっている。メイの「俺達兄妹はお前――鳴海によって生み出されたようなもん」という台詞は、この意味と、血を分けた弟妹であることの両方を指している。
伊野瀬オメガ・伊野瀬チサトとは何者か? Ψクロンとは?
Ψクロンとは、遺伝子操作でレトロウイルスNRM66を受精卵に植えて生まれた超能力者の総称で、Psi(Ψ)とClone(クローン)を掛けた造語。α・β・γ…ωの24体が作られた。伊野瀬チサトはその12番目「μ」で、ヒロインのミュウ(=オリジナルΨクロン「海」)を複製するために作られた“スペア”。オリジナルのミュウとよく似ているため、鳴海が一時チサトをミュウだと思い込む叙述トリックがある。伊野瀬オメガは24番目の「ω」で、A世界にミラージュ隊員として現れる誕吾(タンゴ)と同一人物。記憶が約5分しか保たない少年で、チサトとは戸籍上の双子(別々の卵子・精子から作られたクローン同士)。チサトもオメガも鳴海の血縁ではない(血縁の弟妹はメイとミュウの2人だけ)。∫(インテグラル)ルートではこのオメガが第3の視点となるが、オメガの記憶の行方や最終的な顛末は含みを残したまま締めくくられる。
Ψ(サイ)の力は生まれつきの超能力なのか?
いいえ。序盤は瞬間移動や念力じみた「怪異」として描かれるが、Ψは生来の超能力ではない。実際は「ディビジョン」と呼ばれる脳内映像(神の映像)を見ることで起動する力で、遺伝子操作で生まれたΨクロンが本来の使い手。Ψクリミナルはヘルメット内のRSD(網膜走査型表示装置)でディビジョンを網膜に直接映してΨを起動している。仕組みが「映像を見て発動する」ものである以上、視界を眩ませてしまえばΨは無力化できる。
A世界とは何か?
A世界とは、時の止まった「未来そのものを具現化した世界」で、すべての可能性が重なり合ったまま共存する未確定の領域。マイナが「ここは――未来の世界ですよ」「すべての可能性が、重なり合ったまま、共存している世界」と説明する。観測されていないため確率的にしか定まらず、ディビジョンに当てられて自我を失った者(エクリプシー)がここへ落ち込む。錬丸はこのA世界で「歴史(=ありえた結末)」を選び直し、本来の現世界へ戻ることで初めて結末を確定させる。錬丸編がA世界、鳴海編が現世界を主に描く。
第弐エクリプス計画・第参計画の黒幕は誰か?
黒幕は世界の企業・政府を裏で牛耳る秘密結社「リミナリティ」。第弐エクリプス計画は通称「人類愚民化計画」で、電波塔インテグラル・タワーからディビジョンを全世界へ配信し、太陽が頂点へ達する正午に時を止めて全人類をエクリプシー化する策動。登場人物たちは当初「5月21日正午」に実行されると思い込むが、真相の実行時刻は「5月22日正午」。しかもリミナリティにとって第弐は予行演習に過ぎず、本番は同年12月22日(マヤ暦の終わる日)に予定された「第参エクリプス計画」。公安12課の内部にも密偵として真琴が潜入していた。課長「ボス」(三嶋課長)は鳴海の血縁上の父ではなく、両親を失った鳴海を引き取った養父。1992年の事故で実子・三嶋ひろし(享年7)を亡くしており、その縁で鳴海を引き取った。鳴海の出生とエクリプス計画の根を知る当事者として物語の核心に関わる。
∫(インテグラル)ルートで何が収束するのか?
∫(インテグラル)ルートは、錬丸編・鳴海編を攻略したあとに解放される統合ルート。オメガを核とする第3視点から、それまで別々に進んでいた三つの物語が一つの真相へと「積分」されていく。錬丸編ではただの怪異や謎の人物でしかなかった事象が、鳴海編のA世界・真琴・組織の事情とリンクし、最終的に「誰が・何のために・どの世界で動いていたか」が収束する。Ψとディビジョンの仕組み、A世界とマイナの正体、エクリプス計画の全貌が束ねられ、そのうえで第参計画への前振りをもって物語は次へと繋がる。
タイトルの「integral」「Ψcliminal」にはどんな意味があるか?
いずれも二重の意味を持つ。「integral」は舞台となる廃ホテル「LE GRANTIS」の愛称「インテグラル」であると同時に、割れたロゴを並べ替えると INTEGRAL となり余った S を積分記号「∫(インテグラル)」と読ませる遊びが仕込まれている。「不可欠・欠けるところがない・全体を束ねる」の意で、複数視点を統合(積分)する物語構造そのものを指す。「Ψcliminal」は Ψ+criminal(Ψクリミナル=Ψの使い手で構成された実行部隊)を指すと同時に、subliminal/liminal(識閾・境界)を響かせる造語で、記憶や自我の境目を主題とする本作の性格を映している。
大手町の正体と、鳴海との関係は?
鳴海の相棒・大手町は、実はΨを用いて諜報活動を行う謎のセクション「公安第6課」の人間で、A世界でマイナと接触した隊員の一人。鳴海とはかつて交際していた元恋人でもあり、「オレは惚れちまったんだよ/当時交際中だった、三嶋鳴海の……かつての自我に……」と、過去の鳴海の自我への想いを口にする。物語終盤にはこの公安6課を母体として、対エクリプス計画のための特殊部隊「Speciale」が新設される。Speciale は「Anti-ECLIPSE team」から A を除いて綴りを並べ替えたアナグラムになっている。
タイトルの「RIVEN(引き裂かれた)」は物語の何を指すのか?
RIVEN は「引き裂かれた・分かたれた」の意で、本作は「二つに分かれたもの」のモチーフが全編を貫く。象徴的なのがΨを起動させる脳内映像「ディビジョン(Division)」の名の由来で、Dive(潜る)・Divest(脱がせる)・Divide(分ける・分裂させる)・Divine(神の・予言する)の頭3文字「Div」に「vision」を足した造語だとミュウが語る。とりわけDivide=分裂がタイトル RIVEN と直結する。実際、三嶋鳴海と識閾下から乖離した自我(マイナ)、オリジナルの海(ミュウ)と複製のスペアμ(チサト)、戸籍上の双子として作られたオメガとチサト、そして時の止まったA世界と本来の現世界と、「引き裂かれ二つに分かたれたもの」が物語のいたるところに置かれている。ディビジョンはこの分裂を引き起こす装置でもあり、光刺激で脳が昂ぶって自我が識閾下から乖離し、A世界へと落ちていく。
伊野瀬チサトの名前は、どこから付けられたのか?
ミュウの複製「スペア」として作られたチサトは、もともと名前を持たず、廃棄を前提とされた存在だった。彼女は研究施設の裏手、実験用のネズミの死骸が埋められた一角に咲く雑草の花「チサト草」をいつも眺めていた。それを不憫に思ったミュウがその花を「チサト草」と呼んで届け続け、やがてメイが「今日からお前の事は、この花の名前で呼ぶ事にする」と花を髪に挿し、彼女を「チサト」と名付けた。タンポポのように丈夫で、どこにでも咲くのに雑草と呼ばれ価値がないとされる花は、複製として生み出された彼女自身の境遇を映す暗喩になっている。
起点メールの聖書引用や「金星の日面通過」には、どんな意味があるのか?
物語の起点となる英文メールは、新約聖書「ヨハネの黙示録6章12節」の引用で、「大地震が起こり、太陽は粗布のように黒くなり、月は全面血のようになる」と蝕を予言する一節。これがエクリプス(蝕)計画の宗教的な裏打ちになっている。さらに、真琴が身を隠したホテルの名「Rev.」は Revelation(黙示録)の略で、その612号室が待ち合わせ場所。「6:12」という節番号が「612号室」へと繋がる仕掛けだ。もう一つ、金環蝕と対をなす天文モチーフとして「金星の日面通過(ヴィーナス・トランジット)」が置かれる。約8年周期(前回2004年、作中の年の2012年6月6日)で訪れるこの現象を、かつて真琴は鳴海と一緒に見る約束をしていた。「次に見られるのは8年後」「いつか必ずお前のところに行く」という8年越しの約束と、二人だけの合言葉だったモールス信号、そして真琴が遺した「ボイジャーは孤独なんかじゃなかった」というメッセージが、終章の切ない余韻を形づくっている。