加奈がこの世界にいてよかった、と思った。
ここから先は全部しゃべります。エンディング6つ、血縁の真実、加奈と隆道のあの時間、夕美のこと、Hシーンのこと、全部。ネタバレ版だからこそ言える「あたしがどこで泣いたか」「どこで叫んだか」を、隠さずに置いていく。先に言っておくと、6本全部読んで、それでもあたしの中で加奈は加奈のままだった。ほんとに。
スコア詳細
「実の妹じゃない」って言われた瞬間、あたし固まった
これ、ぜったい先に書かせて。血縁の真実のところ。
腎移植のドナーを探してる流れで、両親が隆道に「加奈とおまえは血のつながりがない」って告白するシーン。お父さんの友人の娘さんで、お母さんが亡くなって、お父さんも体が弱くて、藤堂家が引き取った、っていう。あれを読んだ瞬間、あたしマウスから手が離れた。マジで。声出して「えっ」って言った。家族だと思ってた人間が家族じゃないって告げられるのって、こんなに体が固まる感覚なんだって、初めて知った。
でもね、不思議なんだけど、固まった次の瞬間、加奈のことがもっと特別になった感じがあったの。「血がつながってないのにここまでお互いを大事にしてきたんだ」って、これまで二人が積み上げてきた時間の意味が一気に変わった気がして。血のつながりがあるから家族なんじゃなくて、選んだから家族なんだって、加奈と隆道はずっと言葉にせずやってきたんだなって。あたしこれショックって言うより、むしろ加奈と隆道のことが好きになり方を変えた瞬間だった。
そして隆道がそれを知ってもなお、鹿島先生にドナー検査を頼みに行くじゃん。あれ、ほんとに偉い。「血のつながりがないなら適合しないかもしれない、それでも調べてください」って。普通の男の子ができることじゃない。あたしここで隆道の評価ちょっと上がった。普段ふつうの大学生だと思ってたけど、こういう時に逃げないところがある男の子だった。
ED1「はじまりのさよなら」— 加奈が自分の足で歩いていった
最初に到達したのがこれだった。あたし、これが一番好きかもしれない。
移植が成功して、加奈が生きる。死なない。あの加奈が、明日も明後日もちゃんと続いていく。これだけで、あたしはもう泣いてた。「生きたい」って言い続けた加奈の言葉が、ちゃんと現実になった結末だから。「生きたい」って祈りが届くって、こんなに嬉しいんだって思った。
そして加奈は兄妹を超えた関係を選んで、最後には家を出ていく。これ、すごい結末だと思うの。隆道のそばにずっといる、じゃなくて、自分の足で外に出ていく加奈。病気でずっと家にいた子が、自立して、自分の人生を歩き始めるっていう着地。「守られる加奈」が「自分で歩く加奈」になるの。あたし、これが一番加奈らしい結末だと思った。生きる、っていうのはそういうことなんだって、加奈自身が選んで見せてくれた感じ。
隆道との関係が兄妹のままじゃないのも、あたしは納得できた。だって血のつながりがないってわかった後で、ここまでお互いを選び続けてきた二人なんだもん。家族のかたちが変わっていくのは、むしろ自然なことだと思った。さよならがはじまりになるって、タイトル通り。あたし、ED1は加奈が「生きる」ってことを世界に証明してくれた結末として、ずっと覚えていたい。
ED2「追憶」— 加奈が声で残ってくれていた
ED2、これはやばかった。ペンダントのとこ、本気で泣いた。
移植が失敗して、加奈は死ぬ。隆道は一年間ずっと喪に服してて、立ち上がれない。あの隆道の一年が、文字で描かれてるだけなのに、こっちまで一年経った気分になる。空虚さがすごい。あたしも一緒に立てなくなってた。
そして墓前で、加奈が生前にペンダントに録音してた声を、隆道が聴くシーン。これね、ずるい。ずるすぎる。加奈、いなくなった後にちゃんと隆道のために声を残してたんだよ。「兄さんが立ち直れるように」って思って、自分の声を録音してた。死ぬ準備をしながらも、残された人のことを考えてた加奈。これが加奈なんだよ。最後まで加奈なんだよ。
あたしこの場面で、加奈が「もし死んだら雪を降らせてみようかな」って言ってたのを思い出した。雪じゃなくて、声で残ってくれてた。「わたしは消えても、わたしの声はそばに置いていきます」っていう加奈の優しさが、ペンダントっていう形で物理的に残ってた。隆道はそれを聴いて、もう一回立ち上がる。加奈は死んでも隆道を立ち上がらせてくれた、っていう結末。あたしこのED、泣くために用意されてる、って言ったら軽すぎるけど、加奈が最後まで加奈だったって意味でほんとに大事な結末。
ED3「迷路から」— 夕美の強さと痛さ、これは反則
夕美の話、ここでさせてください。ED3、これがいちばんしんどかった。
加奈が死んで、隆道が現実を受け入れられなくて錯乱しちゃう結末。加奈がまだ生きてるかのように振る舞ったり、独り言を加奈に話しかけたり。読んでてつらい。隆道がこんなになっちゃうほど、加奈の存在って大きかったんだなって、あらためて思い知らされる。
そこに夕美が来る。夕美が加奈のかつらをかぶって、加奈のふりをして、それで「加奈ちゃん……もう死んだんだよ」って言うの。これ、何重にもしんどい。加奈の真似をして、加奈の口から自分の死を告げて、隆道を正気に戻す。夕美にしかできない方法だけど、夕美にとってどれだけ痛い方法か考えるとあたしほんとに苦しい。隆道のことが好きで、加奈のふりをして、自分を消して、隆道を救いに行く。これ、夕美が夕美であることを一回手放してる行為なんだよ。
夕美って、ふつうに考えれば「隆道のことが好きだから加奈の死は内心ちょっと…」みたいな立ち位置になれちゃう女の子なのに、絶対そっちに行かないの。隆道のために、加奈になりきって、加奈の死を告げる役を引き受ける。あたし、夕美のこと甘く見てた。夕美ってすごい女の子だった。ED3はしんどいけど、夕美の強さが一番出る結末として、あたしの中に残った。読み終わってあたしは夕美にも「ありがとう」って言いたかった。
ED4「雪」— 加奈、約束通り雪を降らせてくれた
これはね、もう、書きながら泣きそう。
移植をしない選択をして、家族と看護師の美樹さんに看取られて、加奈が静かに死ぬ結末。激しい展開はない。叫ぶこともない。加奈はずっと加奈のまま、自分のペースで世界から離れていく。そして、雪が降る。あの「もしわたしが死んだら、雪を降らせてみようかな」が、ほんとに来る。加奈が降らせたとしか思えないタイミングで、雪が降る。
あたしね、この雪のシーンで、画面の前で動けなかった。「あ、加奈、約束守ったんだ」って思った。冗談みたいに言ってた言葉が、事実として実現する。これを安っぽい奇跡として書かないのが、この作品のすごいところで、加奈の意思がちゃんと世界に届いた、っていう静かな確認なの。雪はただ降ってるだけで、加奈が降らせたなんて誰も言わない。でもプレイヤーは、加奈の言葉を覚えてる。覚えてるからこそ、この雪が加奈からの返事だってわかる。
そして翌春、ウメバチソウが咲く。加奈が好きだった花。死んだ後に、加奈の好きだったものがちゃんと咲いてくれる世界。残された家族は加奈がいない春を迎えるけど、その春には加奈の花がある。あたしこのエンディング、悲しいんだけど、なんか温かいの。加奈の死が、世界から加奈を消すんじゃなくて、世界に加奈の痕跡を増やしていく、っていう描き方。あたしはこのEDで、加奈が「死を恐れなくなった」っていう日記の言葉の意味が、やっとわかった気がした。
ED5「おもいで」・ED6「今を生きる」— 加奈の意思が命をつないだ
この二つはセットで話したい。あたしの中ではかなり重い結末。
ED5とED6では、加奈が亡くなった後、ドナーカードを持っていたことが明かされる。加奈の肝臓が、霧原香奈っていう同名の「かな」に移植される。香奈ちゃんは、加奈がホスピスで一緒に過ごした須摩子叔母の娘さん。同じ病気を抱えてた、もう一人の「かな」。これね、加奈が事前に意思を残してたっていうのがほんとに重い。「わたしが死んだら、わたしの体を誰かのために使ってほしい」って、まだ生きてる時に決めてた。加奈が哲学する女の子だったのは、こういう時のための準備でもあったんだなって、あとから気がついた。
そして加奈の日記が『命を見つめて』として本になって、世の中に出ていく。加奈が書いてた日記が、加奈がいなくなったあとも誰かのところに届く。これあたし「加奈がぜったい消えない結末」だって思った。体は香奈ちゃんの中で生き続けて、言葉は本になって生き続けて、加奈は二重に世界に残ってる。死んだのに、消えてないの。これってすごいことなんだよ。
ED5は隆道が前を向き始めて、夕美との再会はなく終わる。ED6はそこに大学キャンパスでの夕美との再会が加わって、紅葉狩りに行く約束で終わる。あたしね、ED6まで読んで、ようやく「隆道、前に進めたんだ」って息ができた。ED4までは隆道が立ち止まったままの結末も多くて、心配で心配で、見てらんなかった。ED6で夕美と紅葉狩りに行く隆道を見て、加奈が望んでた「兄さんが幸せに生きること」がやっと実現した気がして、あたしほっとして泣いた。ED6は、加奈がいない世界で隆道が生き直す結末。これがあるから、この作品の6本セットが完成する。
Hシーンの話、加奈らしさが守られてた
これ、書くの正直ちょっとためらったけど、ちゃんと話します。
加奈とのHシーンが存在するルートがある。これね、最初聞いたとき「えっ、大丈夫?」って警戒したの。だって加奈はずっと病気と向き合ってて、哲学する女の子で、そういう加奈にHシーンが必要かって言われると、あたしは少し身構えた。安っぽく扱われたら絶対許せないって、構えて読みに行った。
でもね、加奈らしさが保たれてた。少なくともあたしが読んだ範囲では、加奈の感情の延長線上にちゃんとある描き方で、突発的な装飾じゃなかった。加奈と隆道がここまで積み上げてきた時間の、その先にある形として置かれてた。「兄妹だった二人が、もう兄妹ではない関係に踏み込む」っていう移行を、肉体の場面として描いてる。だから加奈は加奈のまま、その場面に入っていく。あたし、ここで加奈が壊されなかったことに、ほっとした。
夕美とのHシーンは別の重みがある。夕美は序盤から隆道と関係を持つ流れがあって、加奈に対する隆道の気持ちが固まっていく前段階の場所にいる。だから夕美とのHシーンは、隆道の揺れの一部として機能してる。「加奈に向かい切れない隆道が、夕美のところに行く」っていう描き方で、罪悪感とか申し訳なさとか、ぐちゃぐちゃの感情込みで描かれてる。あたしはこの夕美シーンを「楽しいやつ」としては読めなかったけど、隆道が加奈に向き直っていくための過渡期として、必要だったんだなって受け取った。夕美もそれを引き受けてくれてる感じがあって、夕美の優しさがここでも出てた。
6本通してやって、加奈は加奈のままだった
全エンディングやり終わったあと、画面の前でしばらく動けなかった。
加奈が生きる結末(ED1)も、死ぬ結末(ED2〜6)も、ぜんぶ読んだ。普通こんなに分岐させたら、どこかの結末で加奈が「都合よく動かされてる」って感じが出ちゃうものなんだよ。でもこの作品の加奈は、どの結末でも加奈のままだった。生きても死んでも、自立しても看取られても、加奈は最後まで加奈の言葉で動いていた。これがあたしには一番すごいことだった。
そしてどの結末でも、加奈は「自分が消えたあとに何かを残す」っていうことを、自分の意思でやってる。ED1なら自分の生活を、ED2ならペンダントの声を、ED3なら隆道を支えてくれる夕美を、ED4なら雪と花を、ED5・ED6なら肝臓と日記を。加奈は常に「自分の後」のことを考えてる女の子だった。これを健気って言葉で片付けたくない。加奈は、自分が消えても世界が続くってことをちゃんと知ってて、その世界に何を残したいかを自分で選んでた女の子。これは強さなの。哀しい強さじゃなくて、立ってる強さ。
あたしね、6本全部やって、加奈っていう女の子がますます好きになった。減るって思ってたの、複数ルートだと「正解の加奈」が薄まっちゃうんじゃないかって。でも逆だった。6本の加奈を全部見て、加奈の輪郭がもっとはっきりした。どの結末の加奈も加奈で、6つあわせて加奈なの。これ、ほんとにすごい作品。
9.0— ぜんぶ知ったうえで、もう一回加奈に会いたい
ネタバレ全部知ったあとで、それでもまた加奈に会いたい、って思える作品。
普通、ネタバレを知ったあとってもう一回読むモチベ下がるじゃん。あたしも下がるタイプ。でもこの作品はちがった。エンディングを全部知って、血縁の真実を知って、加奈の死を何回も看取って、それでも「もう一回、加奈の最初の退院シーンから始めたい」って思った。加奈に「おかえり」って言いたい。日常の積み重ねを、もう一回隣で見ていたい。これって、加奈が結末のためのキャラじゃなかった証拠だと思う。日々の加奈そのものが愛おしかったから、結末を知っても日々が読み返したくなる。
主人公の隆道、ふつうなんだけど、ED1の自立を見送れる隆道、ED2でペンダントから立ち直る隆道、ED3で夕美に救われる隆道、ED6で前を向く隆道、それぞれちゃんと違う。ふつうの男の子が、加奈との時間でちょっとずつ変えられていった、っていう描き方ができてる。だからふつうのままでも、あたしは隆道を嫌いになれない。
「今日、海を見た。もう恐くない。」
— 加奈(日記より)
ネタバレ版だから言うね。この日記の一文は、加奈が「自分の死を受け入れた」って報告なんだよね。海を見て、恐くなくなった。これを書いた加奈のことを思うと、今でも胸がぎゅっとなる。でもね、あたしはこの一文を悲しいだけのものとしては読まない。加奈が自分の意思で「恐くない」って書いた、っていう加奈の強さの記録として読みたい。加奈は最後まで自分で考えて、自分で決めた女の子だった。あたしはそういう加奈に会えて、ほんとうによかった。9.0、これは加奈にあげるスコアです。加奈、ありがとう。
